No.395228

仮面ライダーディージェント

水音ラルさん

第27話:拒絶者の悪夢

2012-03-20 19:36:06 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:272   閲覧ユーザー数:272

異世界のライダーがミラーモンスターと同じように鏡面化した機材に吸い込まれる様にして消えるのを見ながら、ファイズはカイザに訊ねた。

 

「どうでしたか?社長から見てアレは……?」

「俺は少なくとも彼が世界を壊すとは思えない。美玖はどう思ってたんだい?ここに連れて来たって事はそれなりに信用したからじゃないのかい?」

「……アイツには私達にない物を持ってましたからね。それを見た時、何となくですが信じてみたくなったんです」

「俺達にない物?何だいそれって?」

「“家族”です……。私達には絶対ない物ですから、少し羨ましくもありましたね」

「なるほど…家族、ねぇ……」

 

美玖や正幸、そして章治やオルフェノク達には家族のいない者が殆どだ。

実を言うとスマートブレインに所属しているオルフェノクの殆どが事故などで家族を失い、オリジナルのオルフェノクとして覚醒した者達ばかりだ。

そう言った者達を匿って、この会社は成り立っている。

それはただ単に仲間…家族が欲しかったからに他ならない。

だからこそ、人間は羨ましくもあり、愛しくもあり、同時に妬ましい。

彼にその家族と呼べる存在があるのならば、彼はそれを裏切る様な真似はしないだろう。

 

そんな事を考えていると、その空間を支配する殺気が完全に消えた。

どうやらミラーモンスターを倒したようだ。

それから間を置かずに、異世界のライダーが鏡面化した機材の中から再び姿を現し、こちらへ歩いてきた。

 

「ミラーモンスターは倒しました」

 

その一言にここにいる全員が安堵の息を漏らした。

 

『はぁ~助かったぁ~……』

「でも、研究所がボロボロですね」

「なぁに、また作り直せばいいさ。それにしてもありがとうね、須藤歩君」

 

そうカイザがこの場にいる全員を代表して礼を述べた直後、ライダーは全身を藍色の砂嵐に包まれ、変身を解除したかと思うとそのまま倒れた。

 

「おい!どうした!?」

「しっかりしてください!!」

『だぁ~どけ!診察の邪魔だ!!』

 

突然倒れた青年に思わず正幸が声を荒げ、ライオトルーパーが駆け寄って肩を揺さぶっていると、スネークオルフェノクが人間態に戻りながらライオトルーパーを蹴って退かすと、青年の容体を看始めた。

 

「一体彼はどうしたんだい、二階堂(にかいどう)?」

「うっせぇ、ちょっと黙ってろ。そんなすぐに分かるかっちゅうの」

 

カイザが変身解除しながらそのボサボサのパサついた髪に、無精髭を生やした白衣の男に尋ねるが、その男、二階堂(にかいどう)泰樹(やすき)はとても社長に対する口の聞き方ではない口調で無愛想に答えた。

 

彼は使徒再生、つまりオルフェノクに殺されて覚醒したタイプのオルフェノクで、正幸達オリジナルとは少し立場が違う。

 

使徒再生によって覚醒したオルフェノクは他のオリジナルに比べて寿命が短い。

それは肉体に直接オルフェノク因子と呼ばれる体組織を直接流し込んだために、オリジナルよりも急激な変化が起こったことに起因する。

 

しかしこの男はそんな事など一切気にせず、スマートブレインの一員としてこうして正幸の夢を実現させるために尽力してくれているのだ。

 

やがて診察が終わったのか立ち上がって正幸の方を向くと、青年の容体を伝えた。

 

「コリャ軽い疲労だな。一晩寝かせてやりゃあ大丈夫だろ」

「そうか…仮眠室はまだ大丈夫だったっけ?」

「襲撃を受けたのはこの第一研究室だけですから恐らくは……」

 

二階堂の診察結果に安堵の息を漏らすと、すぐ横にいた丸メガネをかけた背の低い中年男性…オウルオルフェノクだった男に仮眠室は無事か尋ねた。

 

この第一研究室は研究所の要となっている部分であり、ここを中心に第二研究室、主任室、仮眠室等へと続く廊下が何本か存在している。

どうやらミラーモンスターの狙いは自分だけだったようで、そのおかげで正幸がいた主任室とミラーモンスターに引っ張られて来た第一研究室しか被害は被(こうむ)らなかったようである。

しかし、逆に言えば自分がここへ来た所為で何人もの仲間が死んでしまった事に変わりはない。

 

そんなネガティブな思考に耽っていると、側頭部に「スパーン」と小気味良い音と共に衝撃が走った。

何事かと思い後ろを振り返ると、手を振り上げた状態でこちらを不機嫌そうに見ている、ファイズの変身を解いた美玖が立っていた。

 

「社長、先程も言いましたが我々は貴方のためなら命を捨てる覚悟を持っているんです。だからそんなに思い悩まないでください。貴方は…我々にとっては“王”なのですから。“王”はただ胸を張って堂々と立って我々を新たな世代へ導いていればいいのです。それが出来るのは…貴方だけです」

 

正幸は叩かれた頭を擦りながら、美玖の言葉に耳を傾けた。

やはり正幸が思っていた通り、自分は“王”としての責務を負わなければならない様だ。

 

「そうとなれば責任重大だな……」

「それなら私が全力でサポートいたしますよ」

「ハハッ、心強いね美玖は……」

「二人とも、イチャついてないで早く仮眠室へこの人運びますよ」

 

そんな会話をしていると、ライオトルーパーを装着した研究員が歩を背負いながら茶々を入れて来た。

それに美玖は顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らし、正幸は「また俺に乗り換える?」などと追い打ちを掛ける。

先程とは打って変わった空気に和みながら、一行は仮眠室へと向かった。

 

一行の後ろに神童がアタッシュケースを持っているのに気付かずに……。

 

「よし、ここまでは順調だな。後はコイツを『歪み』に渡しておけばいいか」

 

そうぼやくと、次元断裂空間の中に姿を消した。

 

 

 

 

 

好太郎は夢を見ていた。

2年前のあの日、ディジェクトドライバーを手にした時の夢……。

それは必然だったのか、はたまた神の悪戯だったのかは分からない。

だが、それが皆葉好太郎と言う名の青年の人生を大きく狂わしたのは確かだった。

 

その日、好太郎の世界に「歪み」が現れた。

次々と人々を殺していく怪物達。

その目を何とか掻い潜りながら当時高校三年生だった好太郎は、親友の一人である達浩(たつひろ)、通称タツと共に崩れたビルの隙間に隠れた。

 

『ったく何なんだよアレ!?何がどうしてどうやったらこうなった!?』

『落ち付けタツ、後ちゃんと日本語を喋れ』

 

その日二人は高校生最後の休日を満喫するため、繁華街で丸一日遊び尽くすつもりでいた。

だが結果は今の通りだ。突然空が灰色に歪んだかと思うと、その中から大量の化け物が雨の様に降って来て街を壊し始めたのだ。

 

『……ひょっとしたら、これが地球最後の日ってヤツだったのかな』

『何縁起でもねぇ事言ってんだよコウ!こんな非現実な事があってたまっかよ!!』

 

好太郎は徐(おもむろ)に何時かのテレビでやっていた胡散臭い「人類最後の日」とか言うテーマの特別番組を思い出しながら呟いた。

それに対しタツは好太郎の胸倉を掴み、そんな事などある筈無いとまるで駄々をこねる子供の様に自分に…いや、タツ自身にも言い聞かせた。

そんな意味のない言い争いをしていると、タツの後ろから「ガシャン」と言う何か金属がアスファルトに落ちる音が聞こえた。

 

『うおおぉぉあああぁぁぁ!?』

『だから落ち付けタツ。ちょっと瓦礫が崩れただけだろ…後何気に抱きつくな気持ち悪い』

 

好太郎は頭にくっ付いたタツを引っぺがすと、タツの身体の所為で死角になってしまった正面を見た。

するとそこにはグレーのゴツゴツしたトリケラトプスの横顔を模した大きなバックルが落ちていた。

 

『?何だこれ……ヅッ!?』

 

そうぼやきながらそのバックルに近づいてそれを拾った瞬間、頭の中に何かが入りこんで行く衝撃に襲われ、膝を着いた。それほどまでの激痛だ。

 

(何だこれは…!?このバックルの事か!?)

 

頭の中にはこのバックル…ディジェクトドライバーに関する情報が濁流の様に押し寄せて来る。

その性能、ライドカードシステム、そして刺々しい異形の姿……。

それらの情報がすべて頭の中に叩きつけられると、荒い息を整える。

今の頭痛は決して偶然ではないだろう。

そして、これを使えばこの最悪の状況を乗り越えることだってあるいは……。

 

『お、おい大丈夫かよ……って前前!!』

『ん?』

 

タツに言われて前を向くと、カブトムシを人に近づかせたような怪物がこちらを見据えていた。どうやら見つかってしまったようだ。

 

『ッチ…!タツ!お前は先に逃げろ!出来るだけ俺が時間を稼いでやる!』

『なにいきなりヒーロー気取りな事言っちゃってんだよ!?お前とうとうおかしくなっちまったのか!?』

『俺は絶対に死なん!だからとっとと行け!!』

『……クッソ!死んでもシラネェからな!!』

 

タツは好太郎が意固地な事を思い出したのか、そう叫んで逃げて行った。

 

そう、それでいい……。後は、俺が倒せばいいんだ……。

 

好太郎がバックルを腹部に宛がうとトリケラトプスの後頭部に当たる部分から帯が伸びベルトを形成する。

更に右腰に現れたカードホルダーを開いてその中から一枚のカードを引き抜く。

その絵柄は、まさしく先程頭の中に流れて来た異形の姿その物だった。

 

『やってやるよ…俺がお前らをすべて…この世界から消し去ってやる!変身!!』

 

[カメンライド…ディジェクト!グオオォォォォ!!]

 

 

 

そこで場面は代わり、全ての世界の脅威を拒絶する事が出来た時間まで夢は一気に進んだ。

変身を解除し、好太郎はタツの元へと歩みを進める。

しかしその表情から恐怖が拭い去られてはおらず、今も尚ヘタリ込んだままだった。

タツは昔から怖がりだからなぁなどと思いながら好太郎は声を掛けた。

 

『終わったぞ、まだビビってんのか?』

『ヒッ…く…るな……』

『ん?どうした?』

『こ、来ないでくれえぇぇぇぇ!!』

 

タツは突然逃げ出した。

世界の脅威はもういない。ならば一体何にそんなに恐れているのだろうか?

そう思っていると、未だにディジェクトドライバーが装着されている事に気が付いた。

それを取り外そうと手を伸ばした時……我が目を疑った。

 

『なっ!?』

 

その両手は自分の物ではなかった。

ましてや先程変身を解いたばかりだ。その手は普通の人間の筈だ。

その筈なのに…その手は赤黒い恐竜の様な甲殻に包まれていた。

更に驚くべきはその部分が徐々に自分の身体を愛用のダークレッドのロングコートごと浸食しながら甲殻を増やしている事だった。

 

『い、一体何が…まさか、これの所為か!』

 

好太郎は改めてディジェクトドライバーを見た。

その赤い宝石が嵌めこまれた瞳からは、常に禍々しい光が漏れ出している。

そしてその光が好太郎の身体を包み込んでいるのだ。

 

『く…!外れろ…外れろ…!!』

 

好太郎は必死でバックルを取り外そうとするが、全く外れる気配がない。

その間に今度は両足も禍々しい形状に変わって行く。

やがて下半身全体が怪物その物になり、そこから胴体、首、そして顔へとどんどんその姿を人ならざる物へと変貌させようとする。

 

『や、やめろ…!俺は人ゲンだ…!か、カイ物なンか、ジャ…ナイ……』

 

顔の形状が変わって行き、徐々に上手く喋れなくなってしまう。

 

そしてそこには……黒い刺を身体中から生やし、赤黒い甲殻に包まれた、恐竜の風貌を呈した一体の怪物が立っているだけだった。

 

 

 

 

 

「うわあああああぁぁ!!!」

 

好太郎はそこでようやく目を覚まし、息を荒げながら自分の両手を見た。

そこにはちゃんとした人の手があり、自分を人間だと証明してくれている。

それを確認すると、深く息を落とした。

 

(クソ…久々に見たぞあの夢……。今日は厄日か何かか…?)

「こ、好太郎さん…どうしたんですか?」

 

ふと声のした方を向くと、そこには亜由美が自分と同じ視線で座っていた。

そこで時丁度自分の置かれている状況を把握した。

どうやら自分はどこかのベッドに寝かされているようだった。

そして、その壁や装飾から見るに、それなりにインテリアに凝った部屋だ。

とても今の自分には似つかわしくない場所だ。

 

「……ここはどこだ?」

「歩のこの世界の移住先らしいですよ。それにしてもまさかの高級マンションって…基準どうなってんの?真司さん家のアパートと雲泥の差……」

 

ここに真司がいれば「うるせぇよ!?」というツッコミが返って来るだろうが、今この空間にいるのは好太郎と亜由美のみ。そんなツッコミが返ってくる筈がない。

 

「ところで…歩の奴はどうした…?」

「それが…この世界のライダーの人を助けに……」

 

亜由美は大まかな事情を説明した。

どうも自分が気を失った後、歩がこの状況での戦闘は不利と判断し、敵前逃亡をしたらしい。

しかし少なくとも、アイツと戦った時にその実力は自分と互角かそれ以上というのが分かっている。

あの時自分が勝てたのは本当に偶然だろう。

 

それほどの実力を有しているのに、そんな事などせずに倒せばいい物を何故そんな事をするのか甚だ疑問だ。

もしかすると初めから倒す気なんてないんじゃないのか?

そんな事を考えていると、歩のある言葉を思い出した。あの戦う直前に言っていたあの言葉だ。

 

“僕が勝ったら頼み(・・)を聞いてもらうよ”

 

頼み…?アイツは一体俺に何をさせるつもりだったんだ?それはアレを倒さない事と何か関係があるのか?

 

「好太郎さん、一ついいですか?」

「……何だ?」

 

歩が一体何を画策しているのか思考を巡らしていると、亜由美が話しかけて来た。

それに対し好太郎は、目を合わせず無愛想に聞き返した。

正確には目を合わせられなかったと言った方が正しいだろう。

何せ自分は彼女を裏切ったんだ。どんな侮蔑の言葉が飛んできても不思議はない。

 

「好太郎さんがワザと『歪み』を目覚めさせたなんて、私は思ってませんよ」

 

しかし好太郎の思っていた事は杞憂に終わり、思わず目を見開いて亜由美を見た。

その表情はとても自分に向けられる事はないだろうと思っていた筈の優しげな表情だった。

 

「好太郎さんだって、誰かを守りたいから章治さんの中の『歪み』を消そうとしたんですよね?今回は偶々悪い方向に行っちゃっただけで、好太郎さんが悪いわけじゃないです。歩もそう思ってる筈ですよ」

「………」

 

好太郎は今までそんな事を言われた事がなかった。

ディジェクトドライバーを手にしたあの日から、人はみんな自分を避ける様になった。

ある物は怯えて逃げ去り、ある者は蔑み、またある物は自分を排除しようとしてくる。

そんな孤独な2年間を過ごしていた中で、こうして面と向かって優しくされたのは初めてだ。

 

歩の話では、世界の脅威や自分達ワールドウォーカーは、ディジェクトドライバーの特殊周波を受け付けないとの事だった。

それなら彼女が怖がらないのは納得いくが、この世界が自分の所為で危機に陥っていると言うのに、こうして励ましてくれる。

好太郎は久しぶりに人の暖かみと言う物を感じた瞬間だった。

 

「……そうか」

 

その励ましにどう返せばいいのか分からずそう無愛想に返してしまったが、亜由美はそれを気にした様子もなく「どういたしまして」と言って微笑んだ。

 

その可愛らしい仕草に思わず顔を赤らめたが、無理矢理眉間に皺を寄せて目を逸らして誤魔化した。

しかし、基本自分は嘘を吐けないタイプだ。恐らくこれが照れ隠しなのはバレバレであろう。

 

「穴があったら入りたい」という言葉はこう言う時に使う物なのかと、この言葉を考えた先人達に思いを馳(は)せていると、そこで嫌な気配を感じ取った。

その気配は間違いなくあのノアオルフェノクの物だった。

だがその気配はやけに小さく、そして何故か無数に分かれている。

 

好太郎はベッドから降りて部屋の隅に置いてあるポールハンガーに掛けられた愛用のロングコートを取って羽織ると、窓へ駆け寄って開いた。

外は既に日が完全に沈んでおり、かなり高い位置から街の夜景を一望する事が出来た。

夜風が好太郎の頬を撫で、こんな非常事態でなければ心地好い物であっただろうが、今はそんな暢気な事は言ってられない。

 

(気配が散らばってる…どうやら手当たり次第に襲ってるようだな……。そして、ここにもいくつかの気配が近づいてる…奴らがここに来るのも時間の問題か……)

「あの、好太郎さん…どうしたんですか?」

「『歪み』だ。アイツが何かしたんだろう、気配が分裂して手当たり次第に街を闊歩してる。ここにもその内来るぞ」

 

そこまで言い切ると、好太郎は窓から身を乗り出した。

ここまで高いと、階段で下りて行くよりも飛び降りた方が早い。

それに、変身すればノーダメージだ。それくらいの耐久力がディジェクトにはある。

 

「お前はここにいろ。奴らをここには絶対に行かせない……」

 

そう言って好太郎は窓から飛び降りた。後ろから亜由美の声が聞こえたが、重力によって落ちていく際に発生する風圧と、それによってバサバサとはためくロングコートによってその声が遮られた。

変身しようとロングコートの内ポケットからディジェクトドライバーを取り出し、腹部に宛がい、右ポケットから取り出した「ディジェクト」のカードをバックルに装填する。

 

[カメンライド……]

 

バックルが認識音声を口にした所で、先程見たあの夢が脳裏を過ぎった。

 

もしかすると、このまま変身し続ければ本当にあんな怪物になってしまうかもしれない。

そして今もそんな怪物になる寸前だから人は自分を避けているのではないだろうか?

だが、それでも勇気を出して変身すると決めた。何故なら……

 

(アイツは、俺を人として見てくれたんだ…だったら俺は人間だ!そして、もう絶対にアイツを裏切ったりはしない!!)

 

「変身!!」

 

[ディジェクト!グオオォォォォ!!]

 

「ガアアァウ!!」

 

空中でその姿をディジェクトへと変化させながら態勢を立て直すと、野獣の様な声を上げながら両足で見事に着地した。

その足元の地面には穴が空いており、相当の重量と衝撃があった事を証明している。

そして前屈みの姿勢から視線を前に移すと、丁度建物の蔭からイモムシ型のオルフェノク・キャタピラーオルフェノクが覚束無い足取りで現れた。

どうやらこれが気配を発しているようだったが、他の方向からも次々と集まって来ている。

 

(まずは手駒を使って様子見をするつもりらしいな……しかもこいつ等は元が人間でも何でもないただの分身か……なら丁度良い)

 

[アタックライド…ファング・アーム!]

 

両腕に備え付けられたライドプレートをブレードに変質させ、前で交差させると、眼前のオルフェノクの群れを睨みつけた。

 

「さぁ、遠慮なく暴れようかぁ…!ガアアアァァァ!!」

 

その言葉を皮切りに、ディジェクトは咆哮を上げながら群れの中心へと向かって行った。


 
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