No.395002

迷子の果てに何を見る 番外その二

ユキアンさん

今回はにじファンに居た時に雨季様と行なったコラボ回です。
もちろん許可はとってあります。

2012-03-20 12:56:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3058   閲覧ユーザー数:2882

コラボ 教授と究極と幻想

 

side レイト

 

あれから数日経ったがデモはまだ続いているらしい。珍しく魔法先生達が説得(魔法)仕切れていないらしく日を追うごとに参加者が増えているらしい。

らしいというのは麻帆良にいると面倒な事になりそうなので九州の方に旅行に出かけているからだ。なぜ九州なのかと聞かれると国内で行った事がないのが九州だけだったからだ。後ついでに殺生石を発掘しに来ている。昔、リーネが産まれる前に偶々旅行先の霊穴に埋まっていた殺生石の欠片が化生して旅行先に被害を齎していたので腹いせに滅した事があるのだ。その欠片なんだがオレとキティの研究者としての血が騒ぐ様な代物だった為、文献を漁ったりして残りも全て集めようとしたのだが妊娠が発覚して、リーネが産まれてから子育てに忙しくて中断していたのをちょうど良い機会だから終わらせてしまおうという事になり大分県豊後高田市に来ている。臨時のバイトと一緒に。

 

「お~い、まだ見つからないのか」

 

「全然だ。本当にここにあるのか」

 

「ある……はず」

 

「いや、あるはずって」

 

「正確に言えばここら一体の何処かには必ずある。だけど完全にサ-チしようにも長年埋まっていた上に近くに霊脈が一切なかったせいで妖気に汚染されちまってるんだよ。だから判別が殆ど付かない。仕方ないから一番妖気が強い場所から掘らせようと思ってな。なんならORTで掘っても良いぞ。人払いはしてあるんだし」

 

「いやいや殺生石が粉々になるぞ」

 

「冗談に決まってるだろうが。まあ一条も頑張って探してくれ。こっちも頑張って探すから」

 

「分かってるよ。だから早い目に探してくれ。妻達に殺されるかもしれないから」

 

 

 

 

目の前でショベルを使い穴を掘っている臨時のアルバイト、一条要は渡り人だ。

出会いは風祭達が去った後に世界樹の根元に現れた。すぐに接触して保護し、話を聞くと一条の所の神がこの世界の管理人(たぶんオレの事だろう)と戦って来て欲しいとかで送られて来たらしいので広大な荒野が広がっているだけのダイオラマ魔法球で戦った。そして、今までとは全く異なる能力を見た。アルティメットワン、星その物の力と表現するのが正しい化け物を見た。それを見て久しぶりに恐怖を感じ、喜びを感じた。久しぶりに自分と身内以外での強者の存在に。今の状態の自分に出来る全ての手札を切り、辛くも勝利する事が出来た。

だが、戦いが終わり傷が癒えた後に一条がある事に気付いた。

 

「どうやって帰るんだ?」

 

それに関して一条は何も聞いてなかったらしい。オレも上位神に連絡を取ろうとしたのだが何故か繋がらなかった。仕方ないのでオレが一条をもとの世界に帰す事にしたのだが、その作業は砂漠で一粒の砂金を見つけるというよりは深海で真珠を探す様なものだ。

不可能ではないがな。

それでもオレの能力を全て探索に使ってしまう為、元からの身体能力以外は無いに等しい状態だ。前回のナギの捜索時は適当に入れば良いなぁ~、程度にしか探していなかった為に時間がかかったが、今回は本気で探している為、春休みが終わる前には探し終わる予定だ。それまでの間は臨時のアルバイト、といってもオレとキティの小間使いみたいな感じで雇った。三食おやつ付きで帰る時に魔法具を一つ譲るという条件で。

そして現在オレの代わりに殺生石の発掘を代わってもらっている。

 

 

 

それはさておき大分県豊後にはそこそこの数の温泉と神社がある。そして、オレとキティは神社みたいな古い建築物などを見て回るのが趣味のひとつで(京都に住み始めた頃はほぼ毎日見て回っていた)あるので朝から色々と見て回り、夜にはあちこちの温泉に行ったりとのんびりとは言えないがそれなりに休暇を楽しんでいた。そして四日目の昼過ぎに一条から連絡が入った。

 

「これが殺生石の最後の欠片か」

 

「見つけた時はちょっと焦ったぞ。どんだけ妖気を溜め込んでやがるんだよ」

 

渡された殺生石の欠片は調べなくても妖気に満ちあふれている事が分かる。普通の人から見ても嫌な感じがする石だと分かる位に。

 

「これならあと一週間も放っておいたら化生するぞ。たぶん殺生石を復元しても化生すると思うからその時は任せるよ」

 

「ちなみにどんなのが現れると思う」

 

「そりゃあ九尾の狐だろうが、伝承によると大きさはそれほど大きくないらしい。ただ火力はかなり凄いらしいな。そこそこの大きさの村を15分程で壊滅させているみたいだ。実際欠片が化生した時に戦ったが中級妖怪クラスだったな」

 

「後はメスだったな。私のレイトを横取りしようとしていたから滅したが」

 

「へぇ~、じゃあエヴァがいるなら俺入らないんじゃないのか?」

 

「強い男を欲しがっていたからお前に押し付けるのよ」

 

「今のオレは力の大半を失っている。つまり押し付ける条件はクリアしている」

 

「計ったなレイト」

 

「君は良いバイトだったが君が来たタイミングが悪いのだよ。恨むのなら君の担当の神を恨みたまえ」

 

殺生石を元の形に揃えると全ての欠片の妖気が集まり、一つの石としての姿を取り戻す。そして周囲からどんどん妖気を集め化生する。

 

「「「は?」」」

 

殺生石が化粧するのは良い。

だが現れた九尾は九尾でもこいつは人型だった。それはまだ良い。高位の妖怪は基本的に人型を取り強い程人間に近い姿を取る。

気を失っているのもまだ良い。討伐されてバラバラに砕かれていたのだから仕方ないとも言える。

そして裸なのも、セーフなのか?

それよりも重要なのがオレとキティ(たぶん一条も)はこいつを知っている。

こいつの名前は八雲藍。

東方と呼ばれるシューティングゲームに出てくるキャラクターだ。何故いるのかはさっぱり分からないがこれだけは言わせて欲しい。

 

「紫は真面目に働いているのか!!」

 

「驚く所そこなのか」

 

いや、あいつの事だからきっと他の式を手に入れているはず。それに藍って大陸の方の九尾じゃなかったっけ?どうでもいいか。

 

「とりあえずエヴァ、藍に服を着せてやってくれ」

 

「分かっていると思うが」

 

「「絶対に見ません」」

 

なぜか一条も答えていたが仕方ないだろう。急いで後ろを向いて大人しく待つ。

 

「いいわよ」

 

しばらくすると許可が出たので振り返る。そこには原作通りの服を着た藍が寝かされていた。何故そんな物を持ってるかって?コスプレに使ったからに決まってるだろう。それはともかくこれからの行動について思案する。だが、それをすぐに中止する。なにせ情報が全くないのだから。

 

「とりあえず彼女を『理解』するしかないな」

 

複数ある並列思考の第2思考から第1思考へと切り替え、他の思考を全てカットする。第2思考は私生活においての思考、第3思考は教師、第4思考は『教授』、第5思考から第58思考は主に戦闘用となっている。そして第1思考、それは『理解』する為だけの思考。

目の前にいる藍に視線を向ける。それだけ。

ただそれだけで膨大な情報が頭の中に入ってくる。

時間にして数秒とかかっていないだろうが全ての『理解』を終え、第2思考に切り替える。

 

「あ~、結論から言うとやっぱり藍みたいだな。ただし紫と会う事無く大陸の方から日本に渡って来て滅されたみたいだな。性格は極めて凶暴、姿以外は別人だと思った方が良いな」

 

「そんな事より感情面の方はどうなんだ」

 

キティからの殺気が怖いです。一条は既に逃走してるし、正直に答えるしかないのだろう。藍、閻魔様によろしく。

 

「欠片と変わらず「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック。契約に従い我に従え氷の女王、来れとこしえのやみ、えいえんのひょうが。全ての命ある物に等しき死を。其は安らぎ也“おわるせかい”」

 

速攻で滅されました。いつもより威力も高いな。なんだ?呪符なんか取り出して。あれ?その呪符って確か。

 

「完全に滅してくれるわ」

 

対象から魂を消滅させる呪符を躊躇いも無く殺生石に張り付け魂を消滅させてしまった。容赦ないな、だけどオレを独占したいという気持ちからの行動だから嬉しく思う。

 

「終わったか?」

 

殺生石を探す際に掘った穴の一つから一条が顔を出した。

 

「終わった、掘り返した土を戻したら後は好きにしていいよ。三日後に麻帆良に戻る予定だから」

 

「はいよ。ならとっとと片付けて休ませて貰うとするか」

 

ショベルを担ぎ穴を埋め始める。それは良いとしてキティが魂を滅した後の殺生石を興味深く観察しているのが気になりました。

 

「何か面白い事でも分かったのか?」

 

「ああ、とりあえず今まで見た事もない鉱石に変化している」

 

「本当だな。この感じからすると魔法媒体としてはナギの杖より凄いかもしれん」

 

「一部を指輪に加工するとしよう。残りは詳しく研究してからだな」

 

「そうだな、とりあえず倉庫に入れておこう」

 

オレの影に殺生石を入れて旅館に戻りゆっくりとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして早いもので麻帆良に帰って来たのだがデモに関しては昨日やっと収束したらしい。ここまでの出来事になるとは思わなかったな。後でタカミチにどうなったか聞いてみるか。一条は店の倉庫にある魔法具を見に行き、キティは留守を任せていたシスターズに報告を聞きに行ってしまい一人で休憩用のケーキを焼いている。

 

「で、顔を見せたらどうなんだスキマ妖怪」

 

「あら、気付かれてたの」

 

背後でスキマが開き、そこから八雲紫が出てくる。

藍を滅してからオレの感知領域ぎりぎり位から見ているのは分かっていた。

まさかこんなに早く遭遇するとは思ってなかったけど。

 

「とりあえず何のようだ」

 

「せっかちねぇ」

 

「エヴァに滅されたくなかったら早く用件を話して帰れ」

 

「なら聞かせてもらうわ。楽園に興味は「無い」……最後まで話させてくれないかしら」

 

「オレは楽園を目指すつもりは全くない。なぜならオレはどこにいようとそこを楽園として暮らしていくからだ」

 

「住めば都と言いたいの?」

 

「どっちかというと鳴かぬなら作ってやろうホトトギスかな」

 

「……無茶苦茶ね」

 

「それを成せる力があるからな。お前だってそうだろ、消え行く幻想を保護する世界を作って管理する。並大抵の事ではないな」

 

「それでも当初予定していたほど保護できた訳ではないわ。ほとんどがこちらで隠れながら住む事を望んでしまった。精々妖精しか住んでいないわ」

 

疲れた様に紫が愚痴をこぼす。この世界の幻想郷はそんな感じなのか。そう言えば鬼とか烏天狗とかも隠れ里に住んでるものな。苦労してるんだな紫。やりたくはないが少しだけ力を貸すか。懐からカードを取り出し呪文を唱える。

 

「アデアット」

 

創造するのは藍、『理解』した情報を元に形作っていく。肉体を作り、それに記憶と経験を与え、最後に魂を作り出す。言葉にするだけなら簡単だが知的生命体を作るのはこれが初めての事で若干気を使いすぎてしまった。

 

「……生命の創造。あなた、一体何者なの?」

 

紫が驚愕しながら出来るだけいつも通り振る舞おうとしているのが滑稽に映る。

 

「オレがしてやれるのは彼女を預ける事だけだ。後はお前の仕事だ」

 

「この娘って先日の」

 

「九尾だよ。力に関してはオレが保証してやる。それと早く帰れ。エヴァが戻ってくる。エヴァは容赦ないから滅されても知らんぞ」

 

「それは困るわね。とりあえず彼女は預からせてもらうわ」

 

藍が倒れている場所にスキマが開く。同時に第1思考に切り替えスキマを『理解』する。その瞬間意識が飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは、オレの部屋か」

 

ベットから身体を起こし周りを見る。携帯を見ると紫と会ってから6時間程経過しているのを確認する。何があったのかを思い返してみる。

 

「確か藍を回収しようとしていたスキマを『理解』しようとして」

 

そうか、『理解』する途中の膨大な情報を処理し切れなかったのか。だが、あの情報は。

 

「起きたのか」

 

「キティか」

 

ドアを開けてキティが傍に来る。

 

「一体何があった」

 

「思ったより一条の世界を探すのが大変でな。少し気を抜いたらこの有様だ」

 

正直に話せば幻想郷に攻め入りそうで咄嗟に嘘をついた。

 

「そうか、まだ見つからないのか」

 

「おおよそは見当がついている。明日には見つかるだろう」

 

「分かった、一条には伝えておこう」

 

「ついでに報酬の魔法具を渡しておいてくれ。オレはもう一眠りする」

 

「ああ、お休み。レイト」

 

キティが出て行った後、スキマを『理解』した時に手に入れた情報を吟味する為に第2思考に情報を入れ、残りをずらし、それから第2思考に切り替える。

これは、凄いな。ある意味で『根源』に近い情報量だ。これを一瞬で頭の中に叩き込まれたら気絶もするはずだな。それにしても境界を操る程度の力というのは確かに強力な能力だ。これを昇華させれば対抗手段になるな。とりあえず一条を送り返したら練習するか。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の昼前に一条の世界が判明した事を伝えるとすぐにでも帰してくれというので昼食を作るのをシスターズに任せ、世界樹の根元に移動する。

 

「世話になった」

 

「何、オレの都合に付き合わせてしまったんだこれ位はさせてもらわないとな」

 

お土産としてジークの時と同様に漫画と報酬の魔法具、ついでに昨日倒れた為に製作途中だったケーキを渡した。これで少しでも妻達の機嫌が良くなる事を祈っているぞ。

 

「さて、魔力をかき集めてっと」

 

世界樹から魔力をかき集め詠唱に入る。そして詠唱が終わると一条の前に鏡が現れる。

 

「これを潜れば向こうのこの場所に出れる」

 

「おう、それじゃあまたな」

 

「またがあるとは思わないけどな」

 

「だけどゼロではない。だからまたな、だ」

 

「そうかもな。じゃあまたな」

 

一条が鏡を潜ると鏡は消え去った。

 

「これでまた一歩あいつらの計画が進むのか」

 

空をひとにらみしてから店に戻る。

中断していた修行を再開するか。

 

 

side out


 
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