No.394946

迷子の果てに何を見る 第三十八話

ユキアンさん

初日から胃薬を使う羽目になるとはな。
byレイト

2012-03-20 11:41:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2849   閲覧ユーザー数:2681

主人公来日

 

side レイト

 

時計を確認する。既に予定から1時間が経過している。事前に知っていなければ横で冷や汗をかいている茄子はこの世には居ないだろう。それ位にオレは怒っていた。

態々野菜が乗ってくる飛行機の時間を調べあげ、タカミチを空港まで迎えに行かせたのにも関わらず、タカミチは未だに野菜を発見できていない。おそらく野菜はちゃんと空港に迎えを出していると連絡しているのに勝手に一人でこちらに来ようとしているのだろう。タカミチには一応空港で待機する様に言ってある。そして、原作通りなら、おそらくだがそろそろ。

 

「学園長先生、どういう事なんですか!!」

 

神楽坂さんに引きずられて件の野菜と付き添いで木乃香が学園長室に入ってきた。

 

「神楽坂、すまないが後にしてもらえるか。学園長、彼が件の人物で間違いないですね」

 

「うむ、そうじゃが」

 

「なるほど。君がネギ・スプリングフィールドだね」

 

「はい、ウェールズから来ました、ネギ・スプリングフィールドです。修行の為、先生をしに来ま「帰れ」……はい?」

 

「聞こえなかったのか、オレは帰れと言っているんだ」

 

「えっ!?」

 

「修行だかなんだか知らんがな、君が教師として働く事には日本では色々と問題がある。当初は受け入れる事に反対する者達ばかりだったが学園長が君は将来有望だからなんとか受け入れてくれと言ったからこそこの場に来れる事になっていた。しかし、今のこの時点で君は有望どころか害悪にしかならん。生徒を預かる身として君は邪魔にしかならん。だから国に帰れと言っているんだ」

 

「ちょっと待って下さい。僕が害悪にしかならないってどういう意味ですか」

 

「分からんなら全部説明してやる。まず1つ目、何時までにここに来なければならないかは連絡が行っていたはずだ。オレと学園長はその時間の10分前からここで待っていた。ところが時間になっても君は現れず、1時間以上待ち続ける羽目になった。他にも仕事があるにも関わらずだ。

 

2つ目、初めて訪れる国だから迷われては困るとオレは君の知り合いである高畑先生を空港まで迎えに行く様に指示してあった。もちろん、君の方にも伝えてあったはずだ。だが、どうだ。君は勝手にここまで誰にも連絡する事無く来ている。高畑先生も君を心配して色々と走り回ってくれたみたいで君が入国している事だけは分かった。その時点で何か事件に巻き込まれたのかもとオレの元まで連絡が入ったのだが、とりあえずは保留しにて空港に待機してもらっている。

 

3つ目、何をしたのかは分からないが既に生徒である神楽坂を怒らせる様な行動を起こしている。確かに神楽坂は怒りやすい性格だが理不尽な理由で怒る様な事は絶対にしない。神楽坂、何をされた?」

 

「いきなり人の顔を見て『失恋の相が出ていますよ』と言われました。あと、制服がなぜか吹き飛ばされました」

 

「はぁ、君は何がしたいんだネギ・スプリングフィールド。あと神楽坂、制服が吹き飛ぶとかどういう現象だ。第一、彼が行なったという証拠がないぞ」

 

「知りませんよ!!でもこいつがくしゃみをしたと同時に制服が吹き飛ばされたんだから何か原因があると普通は思いますよ」

 

「分かった、そっちの方も調べてやる。あともうすぐ1時限目が始めるから速く行け。それからいつまでもジャージのままと言う訳にもいかないから保健室で予備の制服に着替えて来い」

 

「……はい」

 

木乃香に付き添われて神楽坂が退出していく。

 

「木乃香、新田先生にはオレからの呼び出しで学園長室に行っていたと言えば良いからな」

 

「わかったえ~」

 

二人が出て行った後、先程までの怒気以外に殺気を交えた上で野菜に向き直る。

 

「4つ目、生徒にあのような思いをさせたのにも関わらず謝罪の一つも無いとは巫山戯るな。貴様の様な奴に生徒を任せる事など悪影響しか無いわ。とっとと国に帰っちまえ」

 

オレの殺意に曝されて涙目になり腰を抜けしているネギを見て、本当にあの2人の息子なのかと疑問に思ってしまう。

 

「天流先生落ち着くのじゃ。(殺気が漏れ過ぎじゃ。このままじゃネギ君が気を失ってしまう)」

 

「……以上だ。何かあるなら聞いてやる。(大丈夫だ、ぎりぎり耐えれる位に調整してある。それより魔法の方をどうにかしろくしゃみで武装解除とかどんだけスケベなんだよ)」

 

「ネギ君よ、さすがに儂もこれは庇い切れん。せめて連絡の一つもあれば少しは違っておるのだが。(分かっておる。直ぐにでも訓練させる)」

 

「あぅあぅ」

 

「これだけ言っても分からないのか。悪い事をしたら謝る。こんな事も知らない奴が教師になどなれるものか。こんな育て方をした親の顔が見てみたいものだな」

 

自分の親をバカにされた事に怒りを露にしようとするも殺気を更に強く出しただけで折れてしまった。アリスと比べると優秀な部分が全くないと言ってもいい。現実を見ていないバカ共のせいでここまで歪になっちまって。これの矯正は無理だな。全部粉々に砕いた上で頑張って立ち直ってもらうしか無いな。

 

「あぅぅ、すみませんでした」

 

「天流先生、ネギ君も反省しているようじゃからこれ以上は」

 

「……学園長がそうおっしゃるのなら今回はここまでにしておきます。仕切り直しになるが自己紹介から始めよう。オレは天流・M・零斗だ。君の教育指導員として色々と教えていくことになるがこれだけは覚えておいて欲しい。『一人で何でも出来ると思うな』所詮、君は10歳にもならない子供だ。一人で出来るとは思っていない。だからこそ指示を仰ぎ、指示に従う。これは社会人としての常識でもある。君は教師として職に就いた以上、社会人として扱われる。周りは、特に学園長は君が何か失敗をしたとしても子供だからと言って済ませようとするだろうが、オレはそんなことは一切しない。オレは君を勤務中は他の大人の人と同じ扱いをする。無論、勤務外なら子供と同じ扱いをする。公私混同は絶対にしないと言っておこう。オレからは以上だ」

 

「そう言う訳でネギ君、何か有れば彼に相談する様に。無論時間が空いていれば儂でも良いし高畑君でもかまわん。それから天流先生、ネギ君と二人きりで話がしたいのだが」

 

「分かりました。できるだけ手短にお願いしますよ」

 

学園長室を出てそのまま壁に身体を預けてタカミチに念話を飛ばす。

 

(タカミチ、今こっちにネギが到着した。もう戻ってきて良いぞ)

 

(そうですか。やっぱり一人で?)

 

(ああ、色々と常識知らずで、分かりやすく言えば人を不愉快にさせる昔のナギと言った所だろうか)

 

(レイトさんが嫌いなタイプですね)

 

(全くだ。ナギの場合はなんだかんだで自分が起こした事に責任を取る覚悟があるから許せるが、あいつは何も考えて、違うな。周囲に与える影響を考えていない自己中心的な人間なんだ。それなのに正義を目指そうとしている矛盾だらけの存在。さすがにアレは矯正しようが無い。だから、残酷な過程を通してでもあいつの心を粉々に破壊する。でなければ多くの人が悲しむ結果になるだろうからな)

 

(レイトさんがそこまで言うという事はかなり酷いみたいですね。何か手伝える事は?)

 

(お前は甘さが出るから無理だな。変に壊すと更に歪になるから甘さが出るなら手伝わせる事は無い。あるとすればオレたちの邪魔をするな)

 

(……分かりました)

 

念話を切ってから数分後、ネギが学園長室から出てきた。

 

「話は終わったのか」

 

「は、はい。えっとこれからよろしくお願いします」

 

「とりあえずこれから君が住む事になる寮に案内しよう。今日は学園の案内だけだ。この学園はかなり広い、迷子になられるのも困るからな」

 

まず最初に案内するのは教員用の寮だ。といっても利用しているのは独身の教師だけで(稀にそうでない者も居るが)基本的に空きが多い。オレも今までは自宅に住んでいたのだが今学期からこちらに移ってきている。まあ、ただ寝る為だけに来ているだけであまり生活感というものはほとんど無いが、それでも幾らかの私物(新たな魔法や武器製作の為の漫画やラノベ)と仕事で使うノートパソコン、報告書などが入っているファイルが置かれている。

 

「とりあえずオレと相部屋になる。空いている部分は隙に使ってくれて構わない。家具の方はとりあえず用意してあるが、不備があるようなら言ってくれれば用意する」

 

「え~っと、たぶん大丈夫だと思います」

 

「そうか、ならその荷物は全部置いておけ。邪魔になるからな」

 

「分かりました」

 

その後、これからの職場に当たる校舎を案内して食堂棟、商店街、図書館島など利用すると思われる場所を次々と案内していく。

 

「とりあえず一通りの案内は終わったが他に案内して欲しい所はあるか」

 

「いえ、大丈夫です」

 

『Aria』に行きたいとは言わないか。向こうの学園長には出発前にアリスが麻帆良に居る事を伝える様に言っておいたし、わざと案内していないのだがやはりこいつはアリスを避けているな。気に喰わん。家族を求める振りをしながら、目の前に居る家族を無視する。いや、もしかしたらアリスを家族と認めていないのか?

なら、その家族に裏切られて壊れてしまえ。

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ネギ

 

今、僕の隣に居る天流先生は今まで会った事の無い人だ。会って直ぐに僕のことを怒って、一瞬殺されるとも思った。魔法も使えない人に殺されると思うなんて思っても見なかった。公私混同は絶対にしないと言っていたのは本当で色々と丁寧に教えてくれたりしたけどこの人の事は好きになれそうにないや。僕は間違った事をしていないはずなのに。迷惑をかけない様に一人でここまで来たっていうのに、遅れたのだって飛行機の時間とかを考えたら普通なのに。学園長もタカミチも笑って、これからは連絡を入れてくれって言ってくれたのに。どうしてこの人は分かってくれないんだろう。間違ってるのは僕じゃなくてこの人なのに何で分かってくれないんだろう。

 

 

 

side out


 
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