「そう言えばさぁ、歩」
「何だい?」
現在、夕食を終えた亜由美は食器を洗いながら後ろで寛(くつろ)いでいる歩に話しかけていた。
因みに歩は真司とババ抜きをしている。ここまで真司の前戦全敗である。
「よし!これだ!ってあぁ!?またババかよ!!」
「歩って2年間も世界を渡ってるんだよね?じゃあお金とかってどうしてるの?」
亜由美の質問も尤もだ。一体歩はどこから収入を得ているのだろうか?
「確かに、それって気になるな。どうしてたんだ?」
この話には真司も喰い付いて来たようで、目の前の歩を凝視している。
やがて歩はその素朴な疑問に、簡潔に答え始める。
「それなら簡単だよ。この世界に最初に来た時に話したよね?“この世界で何らかの役割を与えられる”って」
「うん、それがどうしたの?」
「その時にお金も入って来るんだよ。これくらい」
「どれどれ…って、え゛……」
「どうしたんですか、真司さん?」
亜由美も気になり、一旦食器洗いを中断してそちらを振り向くと、歩の財布を持って固まっている真司が目に入った。
更に近づいてその歩の財布の中を見ると……
「………え゛」
亜由美も固まった。
歩の財布の中にはなんと厚さが2センチはありそうな札束がギッシリと詰まっていたのだ。
「どうしたの、二人とも?」
「……歩、お前亜由美ちゃんと食器洗い代われ」
「え?何で?」
『いいから代われこの死んだ魚あぁぁぁぁ!!』
二人がなぜ怒ったのかも分からず歩は渋々(内面で)食器洗いをする事になったのであった。
因みにその間二人は楽しくババ抜きをしましたとさ♪
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前回の「食卓戦争のち思わぬ協力者」の番外編になります。