No.394233

IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・

ISさん

第30話『シュヴァルツェア・レーゲン』

2012-03-19 01:23:07 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7281   閲覧ユーザー数:6979

 

 

 

 楯無の流した噂話によりいつもよりザワザワとした一日も終わりに近づいた放課後。場所はアリーナ。

 そこでは銃声と爆音が響いていた。一般生徒はすでに居ない。

 居るのは専用機持ちのみ。

 ラウラ・ボーデヴィッヒ、セシリア・オルコット、凰鈴音。

 そして彼女たちが操るIS。

 シュヴァルツェア・レーゲン、ブルー・ティアーズ、甲龍

 状況は二対一の模擬戦。

 いわずもがな、組んでいるのはセシリアと鈴音。

 

 そして現状で優勢なのは―――ラウラ。

 

 

「このっ!」

 

 ジャカッ!

 

 甲龍の両肩のアーマーが開き、衝撃砲が発射される。

 

「無駄だ」

 

 が、それにラウラが右手をかざすだけで、ラウラに届くことは無い。

 

 ……とまあ、解説してるのは俺だな。

 現状じゃ、ただ模擬戦をやってるだけで止める理由が無いから俺はアリーナの隅で待機。

 デュナメスで外部迷彩皮膜を使ってる。まあ、ステルス状態だ。下手に動いたりしない限りはISのハイパーセンサーだとしてもばれることも無い。ガンダムの機能舐めるな。

 

 鈴音は衝撃砲を続けて撃つが、右手をかざすだけのラウラに届かない。

 AIC。アクティブ・イナーシャル・キャンセラーの略で、通称『慣性停止結界』。

 空間を圧縮し衝撃を発射する衝撃砲にとって、相性が最悪どころではない。AICの前ではなんの効力も発揮しないのだから。

 

 そうこう言ってる間に、ラウラが攻勢に出る。

 離れて援護射撃を行っているセシリアの射撃をするりするりとかわし、鈴音に接近。近接格闘戦に持ち込む。

 ラウラと鈴音が重なり、セシリアは狙いが定まらず撃てない。

 ラウラは両手首のプラズマ手刀、鈴音は両手の双天牙月で打ち合う。

 

「はっ!」

 

 手刀で青龍刀をはじき、無防備な鈴音にラウラは手刀を叩き込む。

 

「きゃああっ!」

 

 胴、足に次々と斬撃が当たり、アーマーを損失させる。

 

 

 ――拓神、甲龍のダメージレベルがCに達した。

 

 ――了解。

 

 

 さて、準備しておくか。

 

 鈴音は斬撃を何回か受けた後、最後の一発となった一撃でその衝撃を利用、後ろに飛んだ。

 鈴音が離れたことで、FF(フレンドリーファイヤー)の心配が無くなったセシリアは狙撃を再開。ビットも使った攻撃を開始する。

 それでもラウラには届かない。

 AICがエネルギー系の武装に対して効力が薄くても、ラウラには持ち前の高い操縦技能がある。AICに頼りきりなわけではなく、あくまでも使え1つの手とだけ認識しているんだろう。

 BTレーザーをかわしたラウラは、肩の大型レール砲でセシリアを狙撃。

 回避するセシリアだが、二発目を回避先に撃たれ直撃した。

 

 

 ――ブルー・ティアーズのダメージレベルCに突入。

 

 ――……オーライ。なら、狙い撃つとしようか。

 

 ――了解。外部迷彩皮膜解凍、ガンカメラ展開。

 

 

 先ほどまで何もなかった空間に、GNスナイパーライフルを構えたデュナメスが出現する。

 俺はスナイパーライフルを構えた状態で外部迷彩皮膜(ステルス)を使用してた。

 それと同時に頭部のV字アンテナが下がり両目の部分を隠すと、その上にガンカメラが露出した。

 

「狙い撃つぜ?」

 

 ハイパーセンサーに表示されるガンカメラモード用のカメラアイの標準が絞り込まれ、ラウラをロックオンする。

 俺はためらい無く指を屈伸させた。

 

 バシュゥゥン!

 

 ISとビーム。その二つの反応が急に出現したことと、その後者が自らに向かっていることを知ったラウラは一瞬の動揺を見せる。

 だが、それだけの隙があれば銃弾ほどの速度を持つビームがラウラに到達するのは簡単だ。

 

「くっ!?」

 

 それでもラウラは軍人。一撃目の直撃の後、すぐにそこから飛びのいた。

 俺の放った二発目と三発目は空を切り、アリーナのシールドバリアーに当たって消失する。

 

「さすが軍人だねぇ」

 

「貴様、いつからそこに居た?」

 

「最初っからだよ。流石に二人のISのダメージレベルがCに突入したら、黙ってるわけにもいかないだろ」

 

「今貴様が居るところに反応は無かった。それにいままでアリーナ内に貴様は居なかった……どこから現れた」

 

「ずっとここに居たさ。種は明かせないけどな」

 

 俺は手札をわざわざ見せる馬鹿でもないんでね。と付け加えてその場から飛翔。少し距離を置いてだが、ラウラの目の前に行く。

 

「そうか。……まあいい。貴様は織斑一夏を排除する上で邪魔な存在だ。まず、今ここで貴様から排除させてもらおう」

 

「あーらら、俺まで排除対象入りか。……ま、できるならやってみろよ。その左目も使えばいい」

 

「――っ! ……そうか、遠慮は要らないと見た。本気でつぶしてやろう」

 

 ラウラはそう言いながら、左目の眼帯をむしりとる。

 現れたのは金色の目。『境界の瞳』こと《ウォーダン・オージェ》。

 瞳に移植されるナノマシンによる擬似ハイパーセンサーのソレは、脳への視覚信号の伝達速度の飛躍的な高速化と、超高速戦闘下での動体反射を向上させる。

 つまり、ISでの戦闘力も上昇する。

 

「わ、わたくしたちを忘れておりませんこと?」

 

「そうよ! まだ決着はついてないわ!」

 

 セシリアと鈴音からの抗議。自分の現在状況を理解していねぇなこいつら。

 

「ダメージレベルCの二人は帰れ。ISに悪影響が出てもいいなら止めないけどな」

 

「「うっ……」」

 

「わかったならさっさと修復しに帰れ――」

 

 ズガンッ! ―――ガギンッ!

 

「のわっ!?」

 

 横から砲弾…ラウラか。

 しかも直撃コース。ティエリアのサポートでフルシールドを動かしてもらってなかったら直撃だったな。

 

「いきなりは卑怯なんじゃね?」

 

「防いでおいてよく言う。……もう戦いが始まっていることくらい、貴様にもわかるだろう?」

 

「そうだったな。……なら、狙い撃つぜ!」

 

 チャッ、とGNスナイパーライフルをラウラに向けて発砲。

 放たれたビームをラウラは横に回避。俺はその回避先を予測してトリガーを引き続ける。

 ラウラも大型レール砲で撃ってくるが、それは実体弾とビーム。どちらが勝つのかは目に見えてるから、反応さえできれば撃ち落せる。

 

「ならば!」

 

 ラウラが、狙撃のために動かない俺向けて右手をかざす。

 すると、俺のトリガーを引く指が動かなくなる。それにその場から動くこともできない。

 

「……AICってのは面倒だな」

 

 

 ――ティエリア。

 

 ――わかってる。

 

 

「よくそんな軽口を叩ける」

 

 ガキンッ!

 

 と、ラウラの肩の大型レール砲が俺のほうを向く。

 

「くらえ!」

 

「甘―い、甘ーい、ばぁ――ってか? GNプロトビット!」

 

 俺が叫ぶと同時に大型レール砲はピンクのビームに撃ち抜かれ、その機能を失う。

 流石のラウラでも、これには驚きの声を上げた。

 

「なにっ!?」

 

独立機動兵器(ビット)もってんのはオルコットだけじゃないんだな、これが」

 

 やったと思わせたところでそれを打ち破るのって……正直楽しいよな。

 なんか俺の性格がだんだん悪くなってる気もするが、そんなことはないはずだ。たぶん。

 

 ――君は悪魔か……。

 

 ――なんか言ったか?

 

 ――いや、なんでもない。

 

 ちなみにGNプロトビット。最初から展開済みで、ラウラの気が向かないように移動させてここまで待機させておいた。

『セファーデュナメス』意味的には『力天使の書』ってところだな。もちろん俺の背中のコーンスラスターにはGNセファーのコアブロックが装備されてる。

 

「さて、こっちの手の内もある程度出たところだし、第二ラウンドと行こうぜ!」

 

 左手でビームサーベルを抜き放ってラウラに突進する。

 スナイパーライフルを使うほどだ。完全な遠距離仕様と思っていただろうが、近接戦も十分できるぜ?

 

「おらよっ!」

 

 ビームサーベルを右から左に振り抜く。

 ラウラは左手のプラズマ手刀で受け止めた。

 山田先生のときとは違って鍔迫り合いに発展する。

 

「がら空きだぞ!」

 

 そういったラウラは、残った右手の手刀を俺に叩き込もうと振り上げる。

 

「だから甘めぇ!」

 

 さっきは一基だけの展開だったプロトビットを今は六基に増やしてある。

 その六条のビームがラウラを六方向から狙う。

 

「くそっ」

 

 悪態をつきながらも、ラウラはバックステップでそれを回避。

 六条のビームは、先ほどまでラウラの中心があった場所で見事に交差した。

 

「これでどうだよ!」

 

 膝アーマーと腰のフロントアーマーが展開。内蔵された二四基のGNミサイルを全弾発射する。

 

「それは無駄だ!」

 

 ラウラが両手を別の方向にかざす。

 右手は前方のミサイル。左手は後方のビットに。

 二四のミサイルはその場で停止。両肩から飛び出してきた二つのワイヤーブレードに切り刻まれ、誘爆して全て落とされる。

 ビットもすぐに撃てた一基の動きを止められ、ミサイルを撃破するだけの時間を作られた。

 

「……流石だな、ボーデヴィッヒ」

 

「貴様に賞賛されても何も感じないなっ!」

 

 ラウラが身をわずかにかがめ加速しながら、俺に突っ込んでくる。このスピード―――瞬時加速(イグニッション・ブースト)か!

 両手首のプラズマ手刀を構えたラウラに対し、俺はGNスナイパーライフルを投げ捨て、右手でもビームサーベルを引き抜いて迎撃の態勢に。

 

 ガギンッ!

 

 しかし、ラウラの加速は突然割り込んできた黒い影に止められる。

 黒い影の正体は―――織斑先生。

 

「やれやれ、これだからガキの相手は疲れる」

 

「織斑先生!?」

 

 割り込んできた織斑先生は、ISどころかいつもどおりのスーツで、一七〇センチはある刀身のIS用近接ブレードを持ちラウラのプラズマ手刀を受け止めていた。……この人本当に人間なんだろうか?

 織斑先生は近接ブレードを肩に担ぎながら口を開く。

 

「模擬戦をやるのはかまわん―――が、他の生徒のアリーナ使用の邪魔はするな。それは教師として黙認しかねる。この戦いの決着は学年別トーナメントで付けてもらおうか」

 

 改めて回りを見渡すと、さきほどまでと同じく一般生徒はこのアリーナ内にいない。

 居るのは、俺、ラウラ、あの二人と一夏とシャルル。

 一夏とシャルル、お前ら来てたのかよ。

 

「教官がそう仰るなら」

 

 素直にうなずいたラウラはISを解除。アーマーは光の粒子となって、待機状態の黒いレッグバンドに戻る。

 

「玖蘭、お前もそれでいいな」

 

「了解です」

 

 俺もデュナメスを解除。デュナメスだったGN粒子は、俺の首に待機状態のネックレスとなって再構築された。

 

「貴様らも聞こえていたな?」

 

「「わかりました」」

 

「では、学年別トーナメントまで一切の私闘を禁止する。わかったな?」

 

「はい」「了解」

 

 俺とラウラが同時に言う。

 ラウラは一瞬忌々しそうな顔でこちらを見ると、背を向けて歩いていった。

 


 
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