No.393777

IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・

ISさん

第22話『休日の一幕』

2012-03-18 13:48:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:8295   閲覧ユーザー数:7877

 

 

 六月頭の休日。

 

 大体の生徒は学園の外に出かけたりして、普段より閑散とした学園。

 それに違わず、一夏も五反田弾(ごたんだだん)という中学時代の友達の家に出かけたらしい。

 

 そして俺は、そんな休日にも関わらずアリーナに居た。

 

 

 

 

「――モード選択(セレクト)『キュリオス』」

 

『了解、モード選択GN-003『キュリオス』』

 

 今まで纏っていた白とモスグリーンの装甲――『デュナメス』――から、白とオレンジの装甲――『キュリオス』――に変わる。

 

 左腕に細身のシールド。

 右手には二連装ビーム砲のGNサブマシンガン。

 両膝には巡航形態での主翼。

 そして背中に巡航形態時の機首となるパーツ。

 

 GN-003『ガンダムキュリオス』

 

 

 人型から巡航形態に変形。

 アリーナの中央を支点にその周囲を巡る。

 中央には自動で攻撃をしてくるタイプの(ターゲット)

 的が撃ってくる弾を、左右のロール・急上下昇で回避。

 そして人型に戻って、的をGNサブマシンガンのビームで撃ち抜く。

 撃ち抜けなかった的が撃ってくる弾を急降下で回避、地面を滑るように的の真下に潜り込んで撃ち抜く。

 

 

 ふぅ、このくらいか。

 

 一応の練習を終えた俺は一度、マイスターズを解除する。

 

 

「『マイスターズ』解除」

 

 装甲がGN粒子になって消え、運動用のジャージに戻る。

 俺の機体の特性上、ISスーツを事前に着る必要は無い。

 

 専用機持ちの特権『パーソナライズ』。

 これはISの展開と同時にISスーツを展開するもので、着替える必要が無いという便利機能。

 ただし、それにはエネルギーを消費するために緊急時以外で使われることはあまり無い。

 が、俺の機体のコアとして扱われている『GNドライヴ』。無限にエネルギーを生産し続けるコレだと、多少のエネルギー消費は気にもならない。

 

 

 

 そういえば、今日なぜ俺がアリーナに居るのかというと、確認のためだ。

 先月あった襲撃事件。あれから俺は第三世代ガンダムを使っての自主訓練を始めた。

 

 今日はその最終確認。

 その四機にもそれぞれ慣れたし、デュナメスでの狙撃精度も十分。

 なぜこんなに早く上達するのかは、父さん(神)が枷を外してくれたからだろうな。

 これまでよりも身体スペックが上昇してる。

 ちなみに『ガンダムラジエル』は元が戦闘用の機体ではないので使ってない。

 

 

 ――どうだった?

 

 ――もう十分だろう。いろいろと、一生懸命努力している者には悪いんだが。

 

 ――そう言うなって、その代わりにこの学園だけは最低でも守るさ。

 

 ――当たり前だ。そうでなければ何のための力だ?

 

 ――分かってるさ、ティエリア。

 

 

 この力は守るための力。

 相手を"破壊する"力だとしても、俺にとっては守るための力だ。

 ―――あの無人機に独白したようにな。

 

 

「あ、終わったんだ。お疲れ様」

 

「ん? ――楯無か。どうしてここに?」

 

 ピットに戻った後、聞こえた声に反応すると、制服姿の楯無。

 

「こっちの事もひと段落ついたから、拓神の様子を見に来たの」

 

「なら、こっちも丁度ひと段落ついたところだ」

 

「残念ねえ、久しぶりに拓神と戦おうと思ったのに」

 

「……いつからお前はバトルマニアになったんだ?」

 

「あら、失礼ね。どのくらい強くなったか気になるだけよ?」

 

「自分で確認しないといけないタイプ、か?」

 

「ええ、出来ることはね」

 

 そうらしい。

 思ってみれば、楯無について知らないことは結構ある。

 

「ま、俺はもう上がるけど?」

 

「それじゃ、私もここに用事は無くなったわね」

 

 

 お互いにアリーナに用は無くなったから、寮に向かって…正確には部屋に向かって歩き出す。

 

「今日も教師陣との会議だったんだろ? 議題は『学年別個人トーナメント』か?」

 

「その通りよ。……結局、タッグマッチになったわ」

 

「ふうん。さて、誰とペアを組もうか……」

 

「私とは、学年が違うから組めないわよ?」

 

「んなことは分かってる」

 

 真面目にどうするか……原作どおりなら、一夏はダメ。

 俺は―――! そうだ、本音(のほほんさん)に頼むとしよう。

 

「というか、それだと『学年別個人トーナメント』じゃなくて『学年別トーナメント』だよな…?」

 

「そうね。でもまあ、生徒への発表はもう少し経ってからでしょうし」

 

「……まだ先月の襲撃事件のこと色々やってるもんな」

 

「おかげで、生徒会(こっち)にも仕事が多く回ってきてるわよ?」

 

「うわ、面倒だ」

 

 ちくせう。あの無人機め……いや、送り込んだ本人知ってるけどさ。

 

「ねえ、拓神」

 

「なに?」

 

「あの力について聞きたいんだけど?」

 

「答えられる範囲なら答える」

 

「最近、身体能力が上がってる気がするんだけど……これって神力の影響?」

 

「合ってて合ってないな。俺と同じ存在になったってことは、体のリミッターが少し外れてるってこと。それがデフォルトでさらに神力を使って強化が出来る……って具合だな」

 

「そっか」

 

「だから普段は力をセーブしとかないと、人が出来ないことも出来るから……」

 

「人外よね?」

 

「ストレートに言いすぎ――っと、着いた」

 

 話をしながら歩いていたら、部屋に辿りついていた。

 最近じゃ、部屋への道のりを体が覚えてる。

 

 さっさと部屋に入って、話の続き。

 俺らは、ベッドに隣同士で腰掛ける。

 

「てか、半神なんだから人外なのは当たり前だ」

 

「あ、開き直った」

 

「事実だからな。人の姿でも人じゃない存在、ってとこだ」

 

「まあ、それはどうでもいいわ。拓神と居られるなら、ね♪」

 

「……どうして、そんな(はず)い台詞をサラッと言えるんだ?」

 

 今更でも、流石に気恥ずかしい。

 

「いいじゃない、二人っきりなんだし」

 

「そうだけどなぁ……こっちが恥ずかしい」

 

「あら、私もよ。それより、どうしたら拓神と一緒になれるか考えてるんだけど?」

 

「……おい、なんか卑猥な方に聞こえたぞ」

 

「だってそうだもの。……ね、私とキモチイイ事、しない?」

 

「今はまだやらない。急ぎすぎだ。別に、俺はお前といつまでも一緒に居る」

 

「嬉しいこと言ってくれるわね。でも、その台詞も十分、恥ずかしいと思うけど?」

 

「いいんだよ。二人っきりだろ?」

 

「もう、仕方ないなあ」

 

「何がだよ」

 

 ゾクッ、という嫌な予感……また何をする気だコイツは。

 

「ふふっ、それはしてからのお楽しみ♪」

 

「するってなにを、っと」

 

 するっとベッドの上に行った楯無に、後ろから抱きしめられる。

 

「――ありがとう。本当に嬉しいわ」

 

「……当たり前だ。俺もお前と居たいからその力を渡したんだからさ」

 

「今は、本当の名前で呼んで?」

 

「ああ、わかったよ――結」

 

「うん」

 

 嬉しそうに頬を赤くした楯無。

 それにいつもとのギャップがあって、可愛くて……俺はいつの間にか、楯無にキスをしていた。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 楯無とある程度……まあ、察してくれ。

 

 その後で、俺は今月の予定表に目を向けていた。

『学年別個人トーナメント』。いや、『学年別トーナメント』か。

 一週間かけて行われるこの行事――といってもすぐにアレが起きるだろうけど。

 これで確認するのは、一年・浅い訓練段階での先天的な技能。二年・そこから訓練した成長能力。三年・具体的な実戦能力の評価……こんな感じの説明だったはずだ。

 それで、特に三年の試合には企業からのスカウトをはじめ、多くの注目が集まる。

 もちろん一年・二年も見られるわけで、才能・実力が十分あるとなれば声をかけられるくらいにはなる。

 

 ちなみに前回、クラス対抗戦での襲撃事件。

 あれについては緘口令(かんこうれい)が敷かれ、直接関わった者には誓約書を書かせていた。もちろん俺と楯無も書いた。

 

 

「拓神、食堂に行きましょう? もう夕食の時間だわ」

 

「おう、行くか」

 

 時間が進むのはやっぱり早い。もうこんな時間になってたのか……イチャつきすぎたか?

 まあ、そんなことはともかく、部屋から出て食堂に向かった俺と楯無。

 

 料理を受け取って空いてる席に座った。

 と、ここで。

 

「ふふっ、ちゃんと広がったようね」

 

 楯無の目線の先は、スクラムを組むようにして集まっている女子。

 その話の話題は『学年別個人トーナメント』で優勝すれば一夏と付き合える、という話。

 

「もう手回ししたのか」

 

「ええ。何事も迅速に、よ?」

 

「余計なことまで迅速にやらなくても……。でもま、面白そうだから賛成だ」

 

「なら、良かったじゃない? あ、噂をすればなんとやら、かしら?」

 

「ああ、そうだな」

 

 食堂の入り口からたった今入ってきた一夏と鈴。

 それぞれ食事を受け取った後、俺たちを見つけた一夏と鈴がこっちに来た。

 


 
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