真・恋姫†無双~赤龍伝~第99話「嶺上」
―――曲阿・劉ヨウの本拠地―――
劉ヨウの部下「申し上げます。張英将軍が破れました。孫策の軍勢は今もなお曲阿に向けて進行中です!」
劉ヨウ「何だと!? 張英の役立たずが!」
劉ヨウの部下「いかが致しますか?」
劉ヨウ「うぅぅぅん。こうなれば…太史慈を呼べ!」
劉ヨウの部下「わ、わかりました!」
嶺上「お呼びですか?」
劉ヨウの前に嶺上が姿を現した。
劉ヨウ「太史慈、よく来たな。実は孫策の軍勢がすぐそこまで迫ってきているのだ」
嶺上(孫策…)
嶺上は一瞬、神亭山での一騎打ちを思い出す。
劉ヨウ「そこでお前にわが軍の指揮権を与える」
嶺上「私に…?」
今まで偵察任務しか与えて貰えていなかった嶺上は思わず聞き返した。
劉ヨウ「そうだ! 見事、孫策を撃退してみせよ!」
嶺上「承知した!」
満面の笑みを嶺上は広間を出て行った。
ようやく自分を認めてくれた劉ヨウの期待に応える為に――。
劉ヨウ(戦バカは扱いやすくて良い…)
劉ヨウ「おい!」
劉ヨウの部下「何でしょうか?」
嶺上が出て行くと劉ヨウは部下に呼んで耳打ちをした。
劉ヨウの部下「えっ! ですが…」
劉ヨウ「ええい! うるさい! お前は言われたとおりにしろ!」
劉ヨウの部下「…わかりました」
嶺上の部下A「劉ヨウ様も、ようやく子義様の力を認めたんですね」
嶺上の部下B「遅すぎだぜ」
嶺上の部下C「でも、これで孫策の奴を止められるぜ!」
嶺上に軍の指揮権が移った事に、嶺上の部下たちは喜ぶ。
嶺上「ふふ…さあ、孫策たちを迎え撃つぞ!」
嶺上の部下たち「「おおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」
孫策を迎え撃ち為に嶺上たちは意気揚々と出陣していった。
兵士「「おおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーっ!!」」
兵士たちの雄叫びが戦場に響き渡る。
孫策軍は張英を倒した勢いで劉ヨウの本拠地である曲阿まで攻め込んでいた。
雪蓮「何だか急に手ごわくなったんじゃない?」
だが、曲阿へと近づくにつれ敵兵の練度や士気が上がっている事に気がつく。
冥琳「どうやら指揮官が変わったようだ」
雪蓮「へぇ~。指揮官が変わっただけでこんなにも変わるんだ」
冥琳「何をのん気な事を言っている。我らにとっては厄介な事なのだぞ」
雪蓮「いいんじゃない♪ 張英の奴は大した事なかったし♪ 少し手ごわくなったぐらいで丁度いいわ♪ で、誰が新しい指揮官になったの?」
藍里「はい。太史慈という武将です」
雪蓮「!!」
祭「あ奴か!」
藍里「御存じなんですか?」
祭「神亭山で策殿と一騎打ちをした奴じゃ」
藍里「あぁ…雪蓮様と殴り合いをしたという」
祭「そうじゃ。あの無礼者じゃ!」
冥琳「とにかく今の状況を覆されるとは思わないが、強敵には違いない。十分に注意しよう」
藍里「はい」
祭「うむ」
雪蓮(意外と早く決着がつけられそうね♪)
嶺上「さすが孫策の軍だな。強い強い♪」
戦場の様子を見ながら嶺上は笑っていた。
嶺上の部下B「余裕をかましている場合じゃないですよ」
嶺上「別に余裕をかましているつもりはないぞ。それよりも孫策は見つかったか?」
嶺上の部下B「すみません。まだ見つかりません」
嶺上「そうか。見つけたらすぐに知らせろ!」
嶺上の部下B「はい!」
嶺上(ふふ…待ってろ孫策。すぐに行くからな♪)
嶺上の部下A「た、大変でーーす!! 子義様、大変です!!」
慌てた様子で嶺上の部下が走ってきた。
嶺上「どうしたんだ? そんなに慌てて」
嶺上の部下A「はぁはぁ、劉ヨウ様が、いや劉ヨウが残っていた兵たちをつれて、曲阿を捨てて逃げました!」
嶺上「…何だと?」
嶺上の部下B「何だよそれ!? どういう事だよ!」
嶺上の部下A「子義様に全てを押し付けて自分たちだけで逃げたんだよ!」
嶺上の部下B「どうすんだよ! 俺たちだけでは孫策の軍には勝てないぞ!」
嶺上の部下A「そんな事わかってる! 嶺上様、このままだと我らは戦場で孤立してしまいます。我々も撤退しましょう」
嶺上「……」
嶺上の部下C「報告します。孫策を見つけました! あれ? どうかしたのか?」
孫策発見の報告にきた嶺上の部下だったが、嶺上たちの様子がおかしいのに気がついた。
嶺上の部下A「劉ヨウが逃げたんだよ」
嶺上の部下C「何だって!?」
嶺上「……孫策はどこにいるんだ?」
嶺上の部下C「え、えっと、右翼の前列側に…」
嶺上「そうか…」
嶺上の部下A「ば、馬鹿!」
嶺上「お前たちはこの場から撤退しろ」
嶺上の部下A「子義様は?」
嶺上「私は……孫策のもとに行く」
嶺上の部下A「そんな無茶な!」
嶺上「この戦の大局は決まった。あとは私に任せてお前たちは退け」
嶺上は馬に飛び乗った。
嶺上の部下B「そんな事できませんよ!」
嶺上の部下C「それに御一人では危険です!」
嶺上の部下たちは馬の前に立ちふさがり、嶺上の行く手を遮る。
嶺上「お前たち……。今まで世話になったな。さらばだ!」
そう言うと嶺上は部下の制止を振り切って馬で駆けだした。
嶺上の部下たち「子義さまーーっ!!」
嶺上「退け退け、退けーー!」
雪蓮のもとに向かって戦場を駆け抜ける。
嶺上「見つけた! 孫さーーく!!」
雪蓮「ん? あれは………あはっ♪ 太史慈♪」
嶺上の姿を確認した雪蓮は、顔から笑みがこぼれた。
その笑みはまるで子供のように無邪気だった。
嶺上「孫策、ひさしぶりだな♪」
馬から降りた嶺上は雪蓮に近づく。
雪蓮「神亭山の時以来ね♪」
冥琳「雪蓮下がれ!」
祭「ここは儂が!」
雪蓮「何言ってんの? 太史慈の相手は私がするに決まっているでしょう♪」
藍里「ですが雪蓮様…」
雪蓮「……黙りなさい。私が相手をするって言ったのよ。あなたたちこそ下がりなさい」
静かに冷たく雪蓮は冥琳たちに言い放つ。
藍里「っ!」
藍里は雪蓮から放たれた殺気とも取れる覇気に気圧される。
祭「これは何を言っても駄目じゃな。藍里、冥琳、儂らは下がるぞ」
冥琳「はあー」
冥琳も諦めて大きな溜息をついた。
藍里「……」
祭「藍里…?」
祭は返事をしない藍里を見ると、藍里は先程の雪蓮の覇気のせいで身体が固まって動けないでいた。
祭「しょうがない奴じゃのぉ」
そう言うと祭は藍里を肩に担いで下がっていった。
嶺上「……」
雪蓮「……」
神亭山の時の激しい戦いとは違い、今回は沈黙が二人を支配した。
二人とも相手の動きを見逃さぬように全神経を研ぎ澄ましていた。
そして――――。
勝負は一瞬にして決まった。
嶺上「…………私の負けか」
雪蓮「そうね。私の勝ちね♪」
嶺上は地に倒れ、雪蓮は嶺上を見下ろしていた。
雪蓮「やっぱりあなた強いわね♪ けっこう危なかったわ♪」
嶺上「ふん。……さっさかと殺せ」
雪蓮「ねえ太史慈。あの時、神亭山で私を捕えていたらどうしてた?」
嶺上「…………さあね。そんな事わからないさ」
雪蓮「私なら分かるわよ♪」
嶺上「おもしろい。どうしていたというんだ?」
雪蓮「こうしてたわよ♪」
そう言って雪蓮は、嶺上に手を差し伸べた。
祭「策殿!?」
嶺上「何のつもりだ?」
雪蓮「見て分からない? 太史慈。私の仲間になりなさい」
嶺上「何だと!?」
冥琳「雪蓮っ!」
雪蓮「冥琳は黙ってて!」
嶺上「何故、私を仲間にしたいんだ?」
雪蓮「まず、あなたが強いから。それに随分と仲間から慕われているようだしね」
嶺上の部下たち「「子義様ーーーっ!!」」
嶺上の部下たちの近づいてくる声が聞こえる。
雪蓮「だから太史慈。あなたが来てくれてたら私は嬉しいわ♪ どうする?」
嶺上「……嶺上だ」
小さな声で嶺上は雪蓮に真名を告げる。
雪蓮「ふふ……私は雪蓮よ。よろしくね嶺上♪」
雪蓮も自分の真名を嶺上に告げて、嶺上の手を取った。
―――虎牢関―――
藍里「嶺上。嶺上」
嶺上「……あぁ、何だ?」
藍里「何だ?じゃありませんよ。何をボーとしているんですか?」
嶺上「悪い悪い。ちょっと昔の事を思い出していた」
藍里「昔の事?」
嶺上「私が雪蓮の仲間になった頃さ」
藍里「劉ヨウとの戦いの時ですね。けど私は嶺上が仲間になった時の事、よく憶えていないんですよね」
嶺上「お前はあの時固まっていたからな♪」
藍里「固まる??」
嶺上「さあ、おしゃべりは終わりだ。行くぞ!」
藍里「はい!」
つづく
~あとがき~
呂です。読んでくださって、ありがとうございます。
真・恋姫†無双~赤龍伝~に出てくるオリジナルキャラクターの紹介
オリジナルキャラクター①『風見赤斗』
姓 :風見(かざみ)
名 :赤斗(せきと)
字 :なし
真名:なし
武器:花天と月影……二振りの日本刀(小太刀)。赤色の柄で赤銅の鞘に納まっているのが“花天”で、黒色の柄で黒塗りの鞘に納まっているのが“月影”。
本編主人公の少年。
身長168㌢。体重58㌔。年齢17歳。赤髪。左目は黒色、右目は輝く金色。
放課後に道場で古武術の達人である先生に稽古をつけてもらうのが日課だったが、ある日道場で黒尽くめの男に襲撃される。
その際、赤い光に包まれて恋姫の世界に飛ばされる。
死にかけていた所を、火蓮によって保護され“江東の赤龍”という異名を付けられる。
古武術 無双無限流を学んでおり、その奥義を使えば恋姫の世界の武将とも闘えることができる。
無双無限流には、『全ての奥義を極めしとき、その身に龍の力が宿る。』という伝承がある。
奥義には“疾風”“浮葉”“流水”“月空”“烈火”“絶影”“龍鱗”“狂神”などがある。
奥義の同時発動は可能だが、奥義単体の発動以上に身体に負担がかかる。
現在、奥義“狂神”を発動させて、龍脈の気が流れ込んだ影響で右目は金色に変化している。
龍の眼は、あらゆる情報を視認できる眼。使う事により赤斗の気も増える。しかし、消耗はそれ以上に多い。
好きなもの:肉まん
苦手なもの:海(泳げないから)
能力値:統率3・武力4・知力4・政治2・魅力4
オリジナルキャラクター②『孫堅』
姓 :孫
名 :堅
字 :文台
真名:火蓮(かれん)
武器:南海覇王……やや長めの刀身を持つ、両刃の直刀。派手な装飾はないものの、孫家伝統の宝刀。
孫策(雪蓮)たちの母親。
身長173㌢。腰まで伸びる燃えるような赤い髪の持ち主。
血を見ると雪蓮以上に興奮してしまう。
孫尚香(小蓮)には非常に甘い。周りの人間が呆れるほどに甘い。
この外史“赤龍伝”では孫堅は死んでいない。
好きなもの:娘たち(特に小蓮♪)と酒
能力値:統率5・武力5・知力3・政治4・魅力5
オリジナルキャラクター③『諸葛瑾』
姓 :諸葛
名 :瑾
字 :子瑜
真名:藍里(あいり)
武器:風切羽(かざきりばね)……火蓮から受け取った護身用の短刀。諸葛瑾(藍里)の実力が低いので、あまり役に立っていない。
諸葛亮(朱里)の姉。
諸葛亮(朱里)とは違い、長身で胸も大きい女性。髪は金髪でポニーテール。
温厚で気配りのできる性格で、面倒見も良い。赤斗の世話役として補佐につく。
一時は、自分たちとは違う考え方や知識を持つ赤斗に恐怖心を持っていた。
政治、軍事、外交と様々な仕事をこなすが、諸葛亮(朱里)には僅かに及ばない。
苦手なもの:酒(飲めるが、酔うと周りの人間にからむようになる)
能力値:統率3・武力1・知力4・政治4・魅力4
オリジナルキャラクター④『太史慈』
姓 :太史
名 :慈
字 :子義
真名:嶺上(りんしゃん)
武器:雷電(らいでん)……二本の小型の戟。
非常に勇猛かつ、約束に律儀な武将。銀髪レゲエの女性。
孫策(雪蓮)と一騎打ちして引き分けたことがある。
それ以来、孫策の喧嘩友達になっており、よく喧嘩をしている。
孫尚香(小蓮)や諸葛瑾(藍里)と仲が良く、孫尚香(小蓮)の護衛役をしている事が多い。
子供好きで、よく街の子供たちと遊んでいる。
弓の名手でもあり、その腕は百発百中。
好きなもの:子供
能力値:統率4・武力4・知力3・政治2・魅力3
オリジナルキャラクター⑤『司馬懿』
姓 :司馬
名 :懿
字 :仲達
真名:不明
武器:不明
黒尽くめの衣装を身に纏った、曹操軍の軍師。
曹操軍に属しているが、曹操からの信頼はないといっても良い。
色々と裏で暗躍しており、虎牢関では張遼を捕え、術により自分の傀儡にしている。
魏から姿を消していたが、赤壁の戦いに現れ曹操に反旗を翻した。
能力値:統率5・武力5・知力5・政治5・魅力?
オリジナルキャラクター⑥『玄武(げんぶ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:魏軍正式採用剣……魏軍に配備されている剣。
司馬懿の部下。
普段は何の変哲もない魏軍の鎧を身に纏い、普通の兵士にしか見えない。
しかし、眼の奥からは異質な気を醸し出している。
鎧の下には黒の衣を纏っており、素顔は司馬懿に似ている。
虎牢関では、鴉と一緒に張遼を捕えた。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力2
オリジナルキャラクター⑦『鴉(からす)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:爆閃(ばくせん)……司馬懿から受け取った回転式拳銃。
司馬懿の部下。
性格は軽く、いつも人を馬鹿にしているような態度をとる。
司馬懿と同じ黒い衣装だが、こちらの方がもっと動きやすい軽装な格好をしている。
寿春城では、孫堅(火蓮)を暗殺しようとした。
能力値:統率2・武力4・知力2・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑧『氷雨(ひさめ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:氷影(ひえい)……氷のように透き通った刃を持つ槍。
司馬懿の部下。
青い忍者服を着た長い白髪の女。
背中には“氷影”を携えている。戦闘時には全身からは氷のように冷たい殺気が滲み出す。
洛陽で董卓(月)と賈駆(詠)を暗殺しようとした所を、赤斗と甘寧(思春)に妨害される。
官渡の戦いでは、呂布の部下を連れ去り、それを止めようとした陳宮を殺害する。
汜水関で、趙雲や甘寧を超スピードで圧倒するも、恋姫の世界に帰ってきた呂布に敗れて死亡。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑨『宮本虎徹』
姓 :宮本(みやもと)
名 :虎徹(こてつ)
字 :なし
真名:なし
武器:虎徹……江戸時代の刀工が作った刀。
赤斗の古武術の師匠。
年齢は50歳。実年齢よりも、肉体年齢は若い。
赤斗と一緒に、恋姫の世界に飛ばされたと思われる。
最初は河北に居て、それからは用心棒をしながら、色々と辺りを転々としている。
赤斗の修行をやり直した後、天の世界に戻ったようだが、詳細は不明。
赤斗曰く、『無双無限流の妙技を見せてやるっ!』が口癖で、その実力は呂布(恋)以上。
能力値:統率?・武力6・知力5・政治?・魅力?
オリジナルキャラクター⑩『兀突骨』
司馬懿の部下。
全身鎧を纏った大男。
許緒や典韋以上の怪力の持ち主で、気を操る事もできる。
赤壁の戦い後、呉蜀同盟の本陣に単独に乗り込み、赤斗との戦い敗れる。
その後、尋問を受けている途中に自爆する。
能力値:統率3・武力4・知力3・政治2・魅力3
オリジナルキャラクター⑪『木鹿大王』
司馬懿の部下。
無精髭を生やし頭から虎の毛皮を纏った大男。
虎や豹などの獣を操る事ができる。
南蛮で兀突骨とともに劉備軍を襲撃するが、失敗に終わる。
関羽たちに殺された獣の復讐をする為、黒い巨獣と化して関羽を襲撃する。
透明になって関羽や赤斗を苦しめるが、二人の連携により倒される。
能力値:統率4・武力4・知力2・政治1・魅力3
※能力値は「5」が最高だが、呂布の武力と劉備の魅力は「6」で規格外。
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前回に引続き回想パートで、太史慈が仲間になるまでの話です。