第七話「祝・原作キャラとの出会い!」
年5%。この魔力量成長が想像以上に恐ろしいことがようやく分かったのだからな。
分からぬのなら、電卓を片手に計算してみよ。1.05の90乗は、およそ80だ。さて、これで何を言いたいか分かったか?
む、分からぬか? 想像以上に頭が固いな。すなわち、
(最近は魔力のコントロールに魔力を使い続けたからな……最大成長率に常に達するのも仕方あるまい)
「おい」
本当に参ったものだ。
複利法、恐るべし。……まだ分からぬ愚か共がいるな。今の
ありえん。どこかで魔力を完全制御できるようにならねば、チート云々の前に、魔力漏れで世界崩壊が起きかねん。
(どうすればよいのか……)
(外部から魔力を吸い出すようにするか?)
(否、それならば魔力の還元方法が必要となる。)
(やはり
「おい!」
これしかあるまい。しかし時とともに魔力量は増大するばかり。すぐにでも魔力を制御できなければ……。
「聞いているのか!!」
「む? 何かいたのか?」
しまった。集中しすぎて周囲の言葉が聞こえていなかった。
「すまぬ、
気がつけば、
仕方ないので右隣で同じように磔にされている金髪幼女に聞いてみるが、答えは返ってこない。代わりに、別に聞いてもいない正面のむさ苦しい男から返事が来る。
「魔女どもめ!
魔女狩り、か。最近活発になっているとは聞いたが、このようなものであったか。村を出てから魔女狩りなど経験したことなど無かったのでな。ふむ、思考に耽っている
結論。死ぬことはないので思考を再開する。さて、どこまで考えていたのか……
(魔力制御をどうするか、だ。オリジナル)
(この程度で忘れるとは、それでも
(並行思考1号、すまぬ。そして3号、黙れ)
不死であることをいいことに無理のある咒式を扱い続けた結果、
おそらくディーに知られたら、自分の脳内で完結するなら意味ないじゃねーかとか言われそうだが、そんなことはない。言葉に出したり何かに書いたりすると自分でも考えていなかったことに気付くことがあるように、並行思考の考察で思いつくこともあるのだ。
(さて、脳内会議を再開する。現在判明している魔力制御方法を提示せよ)
(負荷をかけなければ魔力は成長せぬ。故に外部から魔力を吸収。それをバッテリーとして使用する。これならば魔力を減らし、なおかつ負荷をかけずに魔法を使用できる)
(2号。それは制御とは関係ない。故に却下する)
(いや、2号の案もありではあるな。魔力が減れば制御は容易になる。これは確かに真理だ)
(オリジナルの言う通り、制御は容易になろう。しかし吸収する魔力量がシャレになるまい)
(……ならば、魔力封印を行うか? 数日おきに封印をかけ続ければ、魔力成長は起こらぬ)
(しかし、完全魔力封印中は不死が適用されん。相当平和であるか、巻き込まれても対処できる体術がなければ話にならん)
(ではどうする?
(先に体術を学び、気を使えるようにする。それから魔力制御しても遅くはあるまい。ただ漫然と日々を過ごすよりましであろう)
(1号の案を採用する。異議はあるか?)
(((異議なし)))
(ならば以上で本日の脳内会議を閉幕する)
(それは構わんがオリジナル。すでに火をつけられているぞ?)
(……熱いと思ってはいたが、まさか本当に火をつけられていたか)
3号の思考を受けて体に意識を移せば、確かに左にいる四人は既に火に包まれており、
しかし……ぬるい。実に手ぬるい。苦しめるためであろうが、この程度の熱であれば、恒常咒式で耐えることは可能だぞ? そして耐えている間に真祖の生命力で再生する。
(つまらん。逆魔女狩りを行おうと思うが、意義はあるか?)
(((異議なし)))
(賛成3、反対0。よってこれより逆魔女狩りを開始する)
煙で声帯がやられたか、すでに声が出せん。声が出せぬ以上呪文が唱えられず、魔法が使用できない。時間制御は現状を変えるには無意味。体術は使用できないでもないが、この状況を打破できるほどできるわけでもない。
結論。現状で対応可能なものは咒式のみ。火に巻かれている状況からの脱出に必要な咒式を選択。
(消火、冷却、攻撃の三つを行える<
(<
(<
(
咒式は決まった。第四階位となると少々発動に時間がかかるが……ふむ、五秒で十分か。
化学練成系咒式第四階位<
「な、まさか、魔女の業か!?」
「の、呪われる!?」
呪いとは心外な。れっきとした技術だぞ?
液体窒素で酸素を遮断され消火。さらに藁束は冷やされ、酸素が流入しても再点火の心配はなくなった。そして残された大半の液体窒素が、魔女狩りを行っていた愚か者どもを飲み込んでゆく。
「む、これは計算外であった」
急激に冷やされた木製の十字が劣化、
(よく言う。ある程度は考えてい――)
(並行思考、停止)
五月蝿い思考を停止する。さて……
「うわああぁぁぁっぁぁぁぁ!?」
「たす、けてくれ! 頼む!」
「寒、い、冷、たい」
「む? まだ生きておったか」
どうやら直撃を避けた数人が生き残ったようだ。運が良かったようだな。
しかし、いい加減煩わしくなってきた。寒いだのなんだと言うやつもいることだ、御望み通り温めてやろう。指輪をはめた右腕を掲げ、呪文を唱える。短縮詠唱でな。
「『魔法の射手改 連弾 火の三十三矢』――」
ニイ、と悪魔のような笑みを浮かべる。それに誰一人として気付かなかったのはつまらんが、死にゆく者には必要ないか。
「――せいぜい逃げ回れ。
号令とともに火の玉が三つずつ、いたぶるように撃ちこまれていく。疑似
「ごふっ」
「あぁぁ、ぁ」
「ふはははは! どうした、雑種ども! 逃げることすらできないか!」
寒さでまともに動けなかったか、二十七矢を撃ちこんだところで、生きている人間がいなくなってしまった。魔力配給をカットし、残り六矢を消し去る。
「さて、町に帰るか」
「たす……けて……」
「む、まだ生き残りがいたか?」
後ろから声がするので振り返ってみれば、磔にされた金髪幼女。そうか、まだこれが残っていたか。そう納得する一方、どこかで見た顔だが、会ったことがあるか? と疑問に思う
「おい、そこの幼女。名をなんという」
「エヴァ……エヴァンジェリン・マクダウェル」
「ほう」
驚いた。あのエヴァンジェリンがこんな低俗な魔女狩りに遭うとは……否、
ずい、とエヴァの顔を覗き込む。唇からは八重歯と言うには少し長い牙が見え隠れしている。ふむ、真祖かどうかは知らんが、吸血鬼ではあるな。
「貴様、吸血鬼か?」
「……!」
エヴァは相当驚いたのか、目を見開いてうろたえる。確かに吸血鬼だとばれれば、それも凄腕の魔法使いの前でなら、死を覚悟してもおかしくはあるまい。
「安心するがよい。
唇を指で持ち上げ、牙を見せる。そのことにさらに驚いたエヴァを観察し、気付いたことを述べていく。
「陽光に肌がやられているな。通常の吸血鬼であれば死してもおかしくない以上、真祖。しかし見た目に現れるダメージがあるのなら、真祖化してから長く見ても1~2年か」
「す、ごい」
「理解できて当然だ。
エヴァを十字から解放しつつ、解説してやる。英雄王の口調は真似しているだけであり、全てを見下すような真似はさすがにせん。この村にいた魔女狩り推進派のような、害のない存在を害する
「私を殺すの?」
「死にたいのか? ならば殺してもよいぞ」
「ううん」
エヴァは横に首を振る。それもそうか。死を望むのはよっぽど追い詰められているか、精神がいかれているかだ。
「生きる術はあるか? ないのであれば、
「私は、生きていてもいいの?」
「生物には生きる権利がある」
そう言って、エヴァを闇で包む。日光を遮るために散々練習した魔法だ。魔法の才能に乏しかった
「私は、生きたい。まだ死にたくない」
「ならば、生きろ」
「だから、魔法とか教えてちょうだい」
目を潤ませて懇願するエヴァ。ふむ、この顔をした子供を裏切るのは精神衛生上良くないな。
「その気があるのなら、教えてやってもよい」
それだけ言って、
ネギまの物語に、ようやくかかわったと実感した一日であった。
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生まれ育った村を出てから90年。とうとう最初の原作キャラに出会った。
磔にされているという状況で。