第47話『学園祭編その12』
明日菜さん達と別れた僕とリイスは人通りの多い道を歩いています。
あるイベント会場まで歩いてる途中、いきなり後ろから声を掛けられた。
「ネギ君、どこ行くの?」
「あ、ネギ」
「まき絵さん、か」
まき絵さんはお化け屋敷の衣装そのままだった。
その隣に居る人物は無視しても良かろう。
「ちょっと!?」
「何? アーニャ」
「無視するな!」
お化け屋敷の接待してた姿なので、メイドだ。
板についてるというか何というか、何を言っていいのかわからんが似合うな。
人前で来れる事自体に呆れる。
「はぁ……何?」
「これからどこ行くの」
「千雨さんの所です」
「千雨ちゃんのところ?」
まき絵さん、ちゃん付けですか。
「ネギ、早く行かないと肝心な部分が見れなくなりますよ?」
「ごめん、すぐ行くよ」
あやかさんがいないのはどういう事?
魔法知ってしまった影響と考えるのが正しいけど。
そういえば、もう一人いたような気がするけど誰だったっけ?
「ねえ」
「何ですか?」
「そこの人誰?」
まき絵さんがリイスに指を差す。
リイスが何か思いついたかのような仕草をして何か言いやがった。
「私はネギの、恋人です」
「えええええええ!?」
「ちょっと待ちなさい! リイス。嘘つくんじゃないわよ!!」
「嘘なの?」
「当たり前じゃない」
そんな関係になった覚えもない。
権限の鍵と同等の能力を持つ魔導書の人格で僕が覚醒するまでサポートする役目らしい。
「リイスです。よろしくお願いしますね。まき絵さん」
「はう! いきなり名前で呼ばれたよ」
「別にいいんじゃない?」
「それもそっか、ライバルだもんね。よろしくねリイスちゃん」
手を差し伸べるまき絵さんを見て、リイスはそれに答えた。
握手している間、火花が散ってるように見えるのは僕の気のせいにしておこう。
「それはさておき、千雨さんの所へ行きます」
「わかりました。まき絵さん、また」
「私もついて行ってもいい?」
「あ、私も」
アーニャも付いてくるのかよ。
あ、でもアーニャのビプリオンも見たい気がする。
想像しながらアーニャをジーッと見ているとアーニャが
「何かネギが……」
「どうかしたの? 口に出していってみたら?」
「ば、馬鹿!」
アーニャにそっぽを向かれた。
変な想像でもしたのか、顔から耳まで赤くなってる。
「アーニャちゃんとネギ君の雰囲気怪しい」
「そうですよね?」
笑みを浮かべながら僕を見るってリイス知ってるよね。
(未来のアーニャさん達と付き合ってますからね)
(突然念話しないでくれる?)
(私も何か思い出がほしいです)
(わ、わかったよ。それは考えておくから)
(楽しみにしてますね。ご主人様)
……リイス、はぁ~仕方ないなぁ。
武道会で優勝してその賞金で何か買ってあげようか。
リイスの何かを決めた僕はその事を忘れないように記憶しておく。
人通りを歩いてると、愛衣さんと高音さんが周辺を監視していた。
そういえば世界樹の効果範囲の告白防止していた。
ちなみに僕は監視する予定はないというか、面倒だから絶対しない!
「あ、ネギ先生」
「ネギ先生、会いたかったです!」
愛衣さんが人前にも関わらず両手で僕の手を取り、包み込むように握る。
積極的になってるが、この世界は一体どうなってるんだ?
「ネギ君、知り合い?」
「ええ、まあ」
「ネギ先生、その人は?」
「え、私? 私は佐々木まき絵っていうの。よろしくね」
「はぁ……佐倉愛衣です」
「わたくしは高音・D・グッドマンですわ」
年上だぞ! という威厳の態度を取る。
まき絵さんが微妙な笑みを浮かべ、一歩後ろに下がった。
「う~ん、制服が違うって事は上級生?」
「そうですわ。麻帆良学園聖ウルスラ女子高等学校2年生」
「あ、う~ん」
アーニャが高音さんや愛衣さんを見て、顔を引き攣らせた。
視線は顔とか背の高さではなく胸をみていたが。
「どうしたの? アーニャ」
「何でネギの周りには無駄に胸が大きい人ばかりな訳!?」
「そんなの知らないよ」
「気にしなくていいんじゃないですか? アーニャ」
「そういうリイスも胸大きいわね」
「私は……」
リイスが僕の方を見ていた。
リイスも一応、80はあるかも知れない。あくまで推測だけど。
「何?」
「いえ、それに気にすることはないと思いますよ?」
「そんな話どうでもいいわ」
「僕達は目的地の方へ行きます」
「目的地?」
千雨さんのコスプレ姿を見に行くんだ! とか絶対に言えない。
「愛衣、行ってきてもいいですわよ」
「お姉さま!? ……わかりました。お姉様一人だけで大丈夫ですか?」
「あなたはあなたのしたい事をすればいいですわ。ただし!」
「え?」
「1時間だけですわ。それ以上は誤魔化せない」
「わかりました」
「ネギ先生、私も同行します」
「ええ!? 後で後悔しても知らないわよ?」
「ネギ先生と一緒なら後悔なんて、それに仮契約も」
そういえば、そんな事言ってたっけなぁ。
ぶっちゃけ忘れてたけど、まあいい。
「じゃあ向かいますか」
~なぞのイベント会場~
大きな看板があった。
そこにはコスプレの文字が淡々と書かれている。
コスプレコンテストとかいうタイトルだった気がするが、どうでもいい。
「こ、ここはどこなんですか?」
「気にしないでください。え~と……あ、いた!」
千雨さんの魔力を頼りに周辺を探ってると、ある程度の距離の向こうで目標の人物発見!
さっそく僕はその人の所まで掛けていく。
「千雨さん」
「な、なななな」
「千雨ちゃん、凄い格好だね」
「コスプレ会場、なるほどね。千雨そんな趣味あったのね」
前はあやかさんとまき絵さんだったからな。
今はリイスと愛衣さんとまき絵さんだけ。
「何でネギ先生がここにいるんですか!?」
「千雨さんのHPを毎日見てるからです」
全然見てません。
パソコンはカモ君が占領済み、
僕は権限の鍵でネット世界を自由に見れるから別に、ね。
「どうして見てるんですか!」
「それよりリイス、コスプレしてみない? 思い出作りとして」
「無視しないでください!!」
「わ、私がですか!?」
赤くなってオロオロしだすリイス。
初めての経験ってある程度やっておくべきだよ。
「私がコスプレなんてしてもいいんでしょうか」
「リイスちゃんってスタイルいいから何でも似合いそう」
「羨ましいです」
ホメ言葉に赤くなりながら困惑していた。
その辺がかわいい所なんだろう。
ただ、一つだけ思った。
この姿を元にした世界の人は絶対にこんな恥じらいを持っていない気がする。
「……じゃあ着てみます」
「千雨さん、リイスを」
「はぁ、何を言っても無駄みたいですね。わかりました」
「じゃあ私も!」
「あ、私もお願いします」
残りの2人が千雨さんに言っていた。
「わかったからさっさと来い!」
「待ってください!」
4人はコスプレ更衣室に入った。
その間はとても暇だ。
5分後、ドアの音がした。
「ネ、ネギ、似合いますか?」
もじもじしながらコスプレ姿を見せてきた。
リイス、だんだんと可愛くなってる。
「うん。似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます」
「ネギ君! 私達はどう?」
「この格好、すごく恥ずかしいですがどうですか?」
あやかさんがいないから、かわりにその役目が愛衣さんになってるって感じ。
サイズは天と地の差あるかもしれんが似合うね。
「似合ってますよ。2人とも」
「はぁ~……そろそろ時間みたいだな」
「よし! エントリーしてこようか! 千雨ちゃん」
「いや、私は出ないぞ!」
「せっかくこんなに似合うのにもったいないよ!」
「そうですね」
リイスとまき絵さんが千雨さんを引っ張っている。
ココに留まろうと踏ん張ってるが、リイスの力が強すぎてズルズル引きずられていく。
あの恥じらいの表情をもう一度見る事になるのか。
客が一杯集まっていた。
その中には僕だけポツンといる。
他の4人が参加者なので僕一人だ。
しばらく待っていると、司会者が出てきた。
登場した途端、会場の客が盛り上がった。
「さあさあ始まりました。さっそくですがはじめたいと思います! エントリーナンバー1番からどうぞ!」
周りの人達はテンションが上がっていく。
盛り上がってるのはいいとしよう。
この学園内であの時貼った結界が感知した。
「……この感じは何?」
感じたことのない気配に戸惑った僕はどうしようか考えた。
リイス達の出番までに間に合うか?
うん、すばしっこい奴なら時間かかるな。
「……どっかで感じたことのある気配だなぁ。よし、後にしよう」
というわけで、僕は気配を感知しながらも無視した。
イベントはトラブルもなく順調に進んでいく。
15番、16番は愛衣さんとまき絵さんで同じような感じだった。
ただ、愛衣さんがノリノリでやっていたのが印象的に残った。
権限の鍵で記録しておこう。
「エントリーナンバー17番 匿名希望さんです!」
司会者がそう叫んだ瞬間、リイスが出てきて、どこから知ったのかビブリオンの台詞?を言い出した。
「世界の本の平和を守るため――」
初めは恥ずかしそうにしてたのに、リイスはノリノリだった。
僕の言った言葉が原因だろうけど、これはこれで思い出にはなるね。
ここでは写真だけOKらしい。
あれ? 前は録画もOKだった気がするが、それはともかく権限の鍵で録画しておこう。
そして、ようやく出番が来た。
「エントリーナンバー18番 ちうちう キャラクターはビブリオン敵幹部 ビブリオルーランルージュです!」
「ちうちうだってよ!」
「おおおおおおおおおおおお!!」
会場に出てきた千雨さんは赤くなりながら名乗る。
「わ、私はビブリオルーランルージュ、です」
恥ずかしそうにポーズを取って限界が来たのか、地面にひざを着き、顔を隠した。
「あ、あの……わ、私は、えと……」
芝居がかかった様な演技のように見えるが、本当だからこそ可愛い。
観客がシーンとなったが、訳の分からない盛り上がりが沸いて出た。
それを聞いた千雨さんが顔を上げて目を見開いていた。
「ああ……ありがとうございます」
お礼を言うと、またもや観客が盛り上がる。
今度はかなりのボリュームが上昇した。
超音波でも出すのか、という勢いで周りが騒ぐ。
その後、結果発表が出た。
「優勝はエントリーナンバー18番 ちうちうで決定だぜ! こんちくしょーう!!」
司会者も周りに感化されたのかテンションが狂っていた。
テンションでかすぎだよ。ここの人たちは。
「さてと、リイス聞こえる?」
周りを気にせずリイスに繋ぐ。
『何ですか?』
「ココを抜けた休憩所で待ってるから」
『わかりました。愛衣さん達に言っておきます』
「うん。ところでアーニャはどこ?」
『入り口前で待ってます。無理って一言で抜けたようです』
「はぁ……アーニャを拾ってから休憩所に向かうよ」
『はい、ではまた』
僕はリイスの返事で接続を切り、出口へ向かった。
入り口前にアーニャが腕を組んで待っていた。
そりゃあ何時間も待ってたら怒るよね。
「何時間待たせんのよ!」
「参加すればよかったじゃないか」
「私は別にいいわよ! 私も別の意味でコスプレだしね」
「メイド姿、まあね。じゃあ休憩所に行こうか」
「リイスたちは放置してもいいの?」
「休憩所で待ち合わせだからいいの」
待ち合わせ先の方へ向かう。
~休憩所~
人はあまり居なかった。
スカスカで空しい空気を漂わせている。
歩きで10分のところにある休憩所のベンチに座り、アーニャが隣に座る。
「はぁ、疲れたわ」
「そうだね。さて今後の予定はどうするか」
「それじゃあ、私と一緒に――」
「ネギ先生!」
手を振りながらこちらに向かって走る愛衣さん。
邪魔をされたアーニャは舌打ちして愛衣を睨む。
睨まれた愛衣さんは疑問で首を傾げた。
「そういえばまき絵さんと千雨さんは?」
「向こうに残るって言ってました」
あと一人忘れているような気がするけど気のせいだね。
「ネギ先生、私と仮契約してください。約束ですから」
「……その前に結界晴らして」
「人払いですね」
「幻想世界・天蓋」
冷たく呟くと、周りが白くなる。
色が変わってるわけじゃない。
だって、これは白い空間を作り出しただけ。
「すごい」
「真っ白ね」
「それじゃあ今のうちに」
地面に契約魔法陣を展開する。
僕と愛衣さんが中に入り、いつも通りの手順で仮契約を発動させた。
役目が終わった魔法陣が消え、幻想世界も解除し、元の空間に戻る。
「これが、私とネギ先生の」
「でもネギと行動できないわよ!」
嬉しそうに仮契約カードを見る愛衣さんをじーっと睨むアーニャが挑発する。
そういわれた愛衣さんがムッと表情を変え
「どうしてですか?」
「クラス違うじゃない」
「まあまあ」
「ネギは黙ってて!」
「黙る気はない。愛衣さん」
「何ですか?」
「そのカードは使用しないでくださいね?」
「どうしてですか?」
「理由は内緒ですが、お願いします」
イレギュラーが来るかもしれない。
現にあやかさんに魔法バレした影響で妙な存在が出たな。
あいつは魔法世界まで現れる事はないだろうけど。
「わかりました」
「使ったら、仮契約解除しますね」
「……わ、わかりました」
嫌そうな表情で頷く愛衣さん。
実際、仮契約を解除する事は簡単に出来る。
「それより時間はいいの?」
「え? 1時間とっくに過ぎてます!!」
「コスプレ会場の段階で2時間ぐらい」
「お姉様の所に行きます。ネギ先生、ありがとうございました」
僕に頭を下げた後、猛スピードで掛けていった。
高音さんって怒ると怖いって訳じゃないんだけど愛衣さんにとっては怖いのか。
僕とアーニャだけになった。
「どうする?」
「適当に行こうか、ネギ!」
何か嬉しそうな表情をしながら僕の手を掴んで走り出した。
あれ? 何か忘れてるようなぁ~……気のせいか。
人通りの多い街中に着いたら、さっき感じた気配が近づいてきた。
アーニャは先に行かせた方がいいかもしれない。
そう決断した僕は、アーニャに申し訳なく謝る。
「ごめん、アーニャ」
「え?」
「極移」
「ちょ――」
アーニャの言葉は最後まで言う事が出来ずにどっかへ転移された。
無事に転移されたことを確認した僕は気配のある場所まで歩く。
気配の感じる場所は喫茶店だった。
喫茶店の中に入ると「いらっしゃいませ」が聞こえるが、それを無視して奥へ行くと
銀色の髪をした制服姿で僕と同じぐらいの身長の少年いや、
「っ!? フェイト=アーウェルンクス、何で君がここに!」
椅子に座ってコーヒーを飲んでいるフェイトがいた。
フェイトはコーヒーカップをテーブルに置き、僕を見た。
「……久しぶりだね。ネギ君」
僕を見る視線は懐かしいと思わせるような目の色をしていた。
まるで僕の事を知り尽くしてるような感覚だった。
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