No.392373

全ての終焉 41

ラグエスさん

第41話

2012-03-16 07:05:22 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1630   閲覧ユーザー数:1582

第41話『学園祭編その6 相坂さよの存在』

 

~ネギの部屋~

 

 

学校が終わり、寮に帰った後、僕は3人にこんな事を言った。

 

「メイド喫茶じゃないんですね」

「な、何を突然!?」

「ネギ君はな、メイド好きやねん」

 

いや、違うって!

ただ、好きな人のなら見たいじゃん。

 

「癒しメイドとか、アーニャの場合はツンデレメイドだろう」

「ツンデレ?」

「え? 聞こえてたの?」

「う~ん、癒し系のメイドかぁ~」

 

木乃香さんが人差し指を顎に当てて考えていた。

一体何を考えてるんだ?

 

「そういえば、教室に幽霊が入るんですよ」

「ええ!?」

「そうなんや、全然気づかへんかった」

「修行のやり直し、かな?」

「ネ、ネギ?」

 

幽霊程度の気配も感じないとは2人の修行も強化しなきゃ。

エヴァの修行だけでは駄目なんだ。

 

「でもこれからどうすんの?」

「この部屋の地下別荘で修行を」

「ウチ、用事思い出したわ」

「あ、私も!」

 

いきなり二人が慌てて用事があるとか抜かしてきた。

そう来ると思った。

 

「出口を消しましょう」

 

指をパッチンと弾くとドアが、窓が消えた。

これでただの空間になった。

 

「これは、幻術魔法?」

「違いますよ。文字通り消したんです」

「ええ!? うう、ネギ君から逃げられへんのはわかってたけど」

「魔法だったらドアの所に触れたら無効化できるけど出てこないわ」

 

明日菜さんが出口だった場所にベタベタと触っていた。

これ魔法じゃないから無効化働かないし。

 

「これであきらめましたね? では修行しましょうか」

 

2人の腕を掴み、アーニャにくっ付く。

いきなりの行動でアーニャが慌てる。

 

「ネ、ネギ!?」

「アーニャも来なきゃ」

「え?」

 

極移を使って、この部屋の地下にある別荘の中へ転移した。

 

 

~ネギの別荘~

 

転移した場所は海エリアの上だった。

 

「あ、間違えた」

「間違えたって!? ネギ」

「アーニャちゃんだけ落ちるわね」

 

そう、アーニャには飛ぶ手段がないのだが、僕にへばりついていた。

浮遊術も学んでいないし、杖持ってないから飛べない。

 

「ネギ! 地面のある場所まで移動して」

「わかってるよ、アーニャ」

 

魔力のオーラを包み込み、明日菜さんと木乃香さんの腕をもう一度持ち、森エリアまで飛んだ。

途中で悲鳴が聞こえたけど気にしない。

 

森エリアに着いた瞬間、3人を放り投げた。

投げられた3人は森の中にある池に突っ込んだ。

普通に着地した僕は池を見て

 

「大丈夫だよ。その池は水がきれいだから」

「あ~! 服がびしょびしょ」

「ネギ、あんたねえ」

「とりあえず池からあがったら?」

 

3人の表情を見る。

言いたいことがあるのか、2名は僕を睨み、木乃香さんは冷たいせいで震えていた。

 

「さぶっ!」

「風邪引いたら洒落にならないわ」

「誰のせい何でしょうね」

「今夏に近いんでしょ? 何であんなに冷たいのよ!」

「ここは永遠に秋みたいな感じですよ? 海エリア含む全ての水は1度ぐらいです」

「ネギ、あんた絶対私達を風邪引かせたいわけ?」

「違うよ、アーニャっていうか、魔法で乾かせばいいのに」

 

僕がそう指摘すると、3人は手をポンと合わせた。

本当に気づいていなかったらしい。

一応、木乃香さんもほぼ全属性魔法使えるはずなんだけど、ね。

 

「ああ、その手があったなぁ」

「明日菜は火の魔法使えるの?」

「使えるわよ。でも風のほうが速い気がする」

 

どっちもどっちだよ。

確かに風のほうが速いけど、威力が高いと行方不明になる。

 

「ほな、風の魔法やな」

 

子供用杖を持った木乃香さんが風の魔法を使った。

 

 

そして、1時間後。

 

 

風の魔法で乾かした3人を見てそろそろいいだろうと僕は話をする、

 

「それじゃあ、修行を始めましょうか」

「は~い」

「まずは、アーニャ」

「な、何?」

 

僕の雰囲気がいつもと違うことに戸惑う。

 

「う~ん、潜在能力開放させようか。前は邪魔されましたし」

「うっ!」

 

邪魔したツインテールが呻く。

反省はしてるみたいだからいいけど。

 

「アーニャ、動かないでね」

「え?」

 

ぼけっとしている間に、権限の鍵を右手に持ってアーニャのお腹に入れた。

入った瞬間、アーニャの表情が変わった。

 

「くっ! な、何これ……何か前より熱くて、大きい……」

「これだけ聞くとエロエロやなぁ」

「こ、木乃香」

「潜在能力開放」

 

権限の鍵が輝きだすと、赤いオーラがアーニャを覆う。

火を尊重しているみたいだ。

アーニャの得意魔法は火。

 

「な、何これ」

「千雨さんほどきつくはなかったけど、これで強くなるはず」

「そうなんだ」

 

あまり実感が沸かないアーニャは体を動かしていた。

夕映さんやのどかさんにかけたやつと違うからな。

アーニャと千雨さんはこっちのほうが効果大きいし。

遠距離が強くなりやすい、という一点では。

 

「じゃあ、今のうちにアーニャ?」

「な、何を!?」

 

アーニャは瞬動で後ろへ下がった。

僕の断罪の剣を回避したところを見ると接近戦がちょっとだけましになったかな?

 

「やろうか。明日菜さんも木乃香さんも参加してくださいね」

「え?」

「ウチも?」

「ええ」

 

満面の笑みを浮かべた僕は周囲に魔法の射手をばら撒く。

僕が何をするのか感じ取った2人は戦闘モードに入る。

 

「融合の射手 闇と光と雷の80矢 発射」

「嘘ッ!?」

「3属性の魔法の射手!?」

「何でそんなことまでできるのよ~~!!」

 

3人は対抗するかと思ったが後ろに背を向け、逃げて行った。

その後を追うように融合の射手も追尾を開始した。

 

 

結局、逃げられなくて直撃しました。

ダメージが大きいかったため、中級クラスの治癒魔法をかけてあげた。

 

 

別荘の時間で言うと2日が経った。

 

 

「よし、燃える天空も5発なら撃てるようになったわ」

「ネ、ネギ……効果ありすぎじゃない?」

「こんなものですよ? アーニャ、せめて燃える天空10発分は無いと」

「無理よ!!」

 

普通なら無理だろうが、潜在能力開放の効果はまだ残ってる。

今のうちに鍛えたら撃てるようにはなるな。

 

「撃てるようになるんはええけど、ぶっ倒れるんやないん?」

「体力的ね」

「アーニャも瞬動できるんなら虚空瞬動も習おうよ。それで遠距離にして相手をぶっ飛ばす」

「……わ、わかったわ。やればいいんでしょ!!」

 

なぜか僕を悔しそうな表情で見て、勝手に何かを納得して大声で叫んだ。

虚空瞬動はちょっと難しいけど、まあアーニャなら大丈夫か。

 

「虚空瞬動はエヴァンジェリンさんにでも教えてもらいましょうか」

「ええっ!?」

「アーニャちゃん、どっちにしてもエヴァちゃんの所へ行くんでしょ?」

「……うん」

 

 

こうして、現実世界に戻った僕達は学校へ向かった。

 

 

 

 

~教室~

 

 

う~ん、明日菜さん達を鍛えたけど、あまり上昇しなかった。

あまりといっても、僕にとってのあまりなので普通の人から見たらパワーアップしてるんだろうね。

これからどう鍛えるかと考えていると、アキラさんが僕に声をかける。

 

「先生!」

「どうかしたんですか?」

「この新聞見てください!」

 

新聞を見てみると、幽霊というか相坂さよさんが写っていた。

後にしようと思ったが早いよ。

まあいっか、予定とは違うけど計画通りに進行させようか。

 

「えと、何々? 幽霊現る?」

「実は昨日の夜、居残りしてて、誰も居ないはずなのに椅子が浮いてたり、机が浮いたりしてたの!」

「はぁ、見た人は?」

「居残りしてた人全員だよ」

 

クラスの半分が居残りしてたらしい。

僕はいなかったって? 面倒だから頼んだ。

 

「ネギ先生がらみですか?」

 

夕映さんが小声で話してきました。

僕も同じく返事をする。

 

「違いますよ」

「でも何であんな現象が?」

「そういえばこのクラスに一人居なかったような」

「そいつは幽霊だからだろ?」

「相坂さよ、ですか」

「あたりだ」

「エヴァちゃんは知ってたの?」

「当然だろ? 真祖を舐めるな」

「う~ん、ウチも全然見えへんけど」

 

人間が見える現象と陣外が見える現象は違う。

僕の場合は切り替え自由だから別に構わない。

今、オフ状態だからさよさんは見えないけど。

 

「現れるのは夜、ですね。それじゃあ夜に」

「そうね」

 

放課後を過ぎても、帰った人はいなかった。

その理由は幽霊という人の心をくすぐる様な話題だったからだ。

 

 

 

 

そして、夜になった。

 

 

 

ん~ん、確かに妙な気配はする。

おっとそろそろONにしとくか。

僕は目に魔力を通す。

 

「ネギ君、怖いよ」

「わわっ!」

「ちょっと、まき絵さん?」

「まあまあ委員長も」

 

裕奈さんが怖い視線を向けるあやかさんを止める。

 

「幽霊だよ!? ネギ君は幽霊って怖くないの?」

 

桜子さんが茶化すように聞いてくる。

 

「怖くないですよ?」

 

そう。僕は幽霊怖くない。

だって、ここにいるのはさよさんだし。

仮契約もしてたし、僕の……だったから怖いとかありえん。

 

「科学部から幽霊退治用の装備もらおう!」

「いやいや、そんな必要ないでしょ?」

 

明日菜さんが僕に知ってるんでしょ?という視線を向けてきた。

 

「そうですね。その幽霊さんはウチのクラスですよ?」

 

「「「「え!?」」」」

 

一部の人以外が唖然とする。

普通は幽霊がクラスメートなんてありえないからな。

証拠として皆に見えるように出席簿の最後のページを見せる。

 

「へえ、相坂さよっていうんだあ。隣の席だから話したいなあ」

 

 わ、私も話したいです!

 

「え?」

「今、何か聞こえませんでしたか?」

 

皆がキョロキョロしてるが、さよさんは黒板のところにいる。

今の教室は不要なモノを後ろのほうに寄せている。

理由は簡単、お化け屋敷、幽霊屋敷どっちでもいいけどそれの準備。

 

「幽霊怖いよお!!」

「ひええ! 黒板になんか書いてある!」

「何々? ごかいデスって怖いよ!」

「5回死ねって事!?」

「本当に幽霊がそんなネタ知ってるのか疑問に思いなさいよ」

 

明日菜さんの言葉は最もだ。

まき絵さん達が有り得ない現象にパニックを起こす。

あれじゃあ誤解されるのも無理ないな。というか何で

魔法を知ってる明日菜さん達は平然としている。

 

「さてと」

 

溜息を吐いた僕はさよさんを全員に見えるようにさせるため、入り口のほうへ移動。

誰にも見えないよう、廊下に手を出す。

権限の鍵を実体化させ、

 

「相坂さよ、存在する魂、確認完了。認識を幽霊から人間に再構成。復元魔法第4修正、魂の新生」

 

すると、黒板の前に人型の光が浮かんだ。

光がさらに強くなり、教室全体を包み込んだ。

 

「キャア! 何の光!?」

「わかんない!」

 

数秒後、光が止んだ。

 

「「「「「えええええええええええええ!?」」」」」

 

皆の驚く声がした。

それも当然だ。居なかった人物がその場にいるのだから。

もちろん、幽霊特有の魂は浮いてない。

 

「あ、あの~」

「それよりあなたは誰ですか?」

「え、話しかけられた!? わ、私は相坂さよと言います!」

 

頭を下げるさよさん。

本人は気づいていないようだが、空中に浮いていないし、足も存在する。

権限の鍵を利用して、魂を新しく再生させただけ。

 

「ネギ君の出席簿で見た子だ!」

 

裕奈さんが叫ぶ。

さあ、どうなるのやら。

 

「あれ? わ、私……立ってる!? それに、え? 幽霊じゃない?」

 

まったくわからない状況に戸惑ってるさよさんに僕は近づく。

 

「相坂さよさん、でしたよね?」

「あ、はい! ネギ先生」

 

僕はそんなさよさんに近づき、小声で呟く。

 

「相坂さよさん、後でお話があるので屋上まで来てもらえませんか?」

「はい」

「それでよろしいです」

 

満面の笑顔を浮かべる僕。

用は終わったから明日菜さん達のところに行き、周りに聞こえないように呟く。

 

「明日菜さん達も後で屋上に来てもらえますか?」

「ねえねえ、ネギ君」

「あの子、幽霊だったんでしょ? 何で」

「人間になってるな」

 

エヴァにはわかったか、というか他の人もわかるようにしてるし。

人間だと感知できるならOKだ。

でもな、超さんもいるんだよな。

警戒の視線を感じる、と思ったが

 

「おお! 人間に戻ってるとは興味深いネ」

 

とか言って、科学でも実現できない現象に興味深く見ていた。

まあ、こんな現象は僕がやったとわかるはずもない。

 

「警戒されてないなら良しとしましょう」

 

さよさんのほうへ見ると、朝倉さん達が話しかけていた。

聞かれているさよさんもとても楽しそうだ。

その様子を見ていると、木乃香さんがここは教室なのにも関係なく腕に絡み付いて

 

「ネギ君、幽霊から人間になるって有り得るん?」

「私もそんな事出来るとは聞いた事ないです」

「ネ、ネギ、あんたどんだけ非常識になったの? ナギさんを超えてる?」

「今はその話やめてもらえませんか? 

僕がやったなどバレたらこの学園から消えることになりますよ?」

「うっ……わかったえ」

「どうしてだ?」

 

エヴァや明日菜さん達は納得しない表情だった。

向こうに行ってたはずの夕映さんとのどかさんが僕に話しかけてきた。

 

「ネギ先生、裕奈さん達が歓迎会をやろうって話をしてましたが」

「これはまずいのでは?」

「学園長に聞かれでもしたら」

「関係ないだろ。この学園は非常識の塊でできている」

「どこが非常識なのよ」

 

明日菜さんが自分のことを言ってるのかとエヴァを鋭く睨む。

エヴァは明日菜さんの答えに首を横に振る。

 

「アホか? 弱い結界、変な図書館島、小学生しか見えない双子とかおかしいだろ」

「エヴァちゃん、小学生ってエヴァちゃんもそう見えるんやけど?」

「けんか売ってるのか? 木乃香」

「別に~」

 

揉めているが、僕は全員に大声で叫ぶ。

 

「皆さん、学園祭の準備に戻ってくれますか? 

幽霊事件も解決したでしょ?だからもう安心ですので」

「あ、そういえばそんなものがあったっけ~」

「あははは」

 

まき絵さん達は忘れていたのか、それよりもあやかさんに視線を向ける。

こちらの視線に気づいたのか、あやかさんが頷く。

 

「皆さん、ネギ先生の言う通りですわ。

ただでさえ遅れてますのに、これ以上遅らせたらネギ先生に申し訳ないですわ」

「そうだね!」

「そうよそうよ!」

「ようし! 頑張ってみますか!!」

 

皆さんが賛同してくれた。

やはり、今の僕では纏めきれないや。

おっ! さっそく皆さんが協力して学園祭の準備を始める。

 

「あ、それ取って!」

「はいよ!」

「ああ、委員長! これどうすれば」

「それはそちらでお願いしますわ。ああ! あれはああして」

「これはどうするアルカ?」

「超さん、それはあそこにやって調整をお願いしますわ」

 

言葉だけだと訳が分からないね。

それより忙しそうだ。邪魔にならないよう、僕は教室から出た。

 

 

 

~屋上~

 

 

屋上に来た僕は夜空を眺めていた。

夜というのに明るいようにも見える。

星がキラキラと輝いていた。それはまるで僕を歓迎しているような光景だった。

 

「……」

 

綺麗な、懐かしい光景を眺めていたら背後から、屋上の入り口から数人の気配がした。

 

「ネギ先生」

「ふう、抜け出すの大変だったわ」

「そ、そうですか」

「ところでネギ、さよちゃんの事で聞きたいことがあるんだけど」

「答えますよ」

 

僕の答えに驚いたのか、見開いた目で見る。

 

「さよさんは間違いなく人間ですよ。幽霊ではなく、ね」

「どうやって人間にしたの?」

「魂を巻き戻して幽霊から生きていた時代に変えただけです。これは復元魔法第4修正です」

 

復元魔法という言葉を出した瞬間、明日菜さん達があきれた表情で溜息を吐いたが、

ほとんど見ないハルナさんが聞いてきた。

 

「復元魔法?」

「ハルナ、噴水の広場があるじゃないですか」

「あるわね。世界樹のところに」

「本来上なら破壊されていたのです」

「ええ!?」

 

驚くのも無理ないけど、僕が壊して直したから良いが。

 

「それをネギ先生が直したのです。復元魔法で」

「第2、第3かなんてどうでもいいですが、第4修正はそういう関連です」

「そうなんや~」

 

第4修正は、生命や無機物というか動く何かを修復できる。

そうなった理由など僕にも分からないが、いつの間にか使える、ただそれだけだ。

 

「私のチャチャゼロにそれをやったらどうなる?」

「動くでしょうね。復元といってもそれを元にするモノは生み出してますし」

 

ちなみに、第5修正は星規模の再生。ただし、この第5修正は制限だらけ。

そうじゃなければ、この世界に来る前の地球を再生できたはずだ。

試したけどできなかった。

どうやら存在できなくなった空間は修正できない事だった。

まったくの制限だらけといっても過言ではない。

 

 

「動くのか」

 

僕の言葉で顎に手を当てて考えるエヴァ。

とんでもないことを考えているのだろうが、今は気にしない。

 

「さよさんは人間になったって事です。僕がした事は言わないでくださいね。言ったら」

「言ったら……?」

「言ったらどうなるですか?」

 

緊張した声で僕に聞く夕映さん。

僕がこんな事が出来ると知った時、周りはどういう反応を起こす?

もし僕を魔法世界に強制連行等されたら明日菜さん達はどうする?

その間にフェイト達に明日菜さんが攫われる? 木乃香さん達が傷つく?

そうなったら僕はどうなる?

ああ、頭がぐちゃぐちゃになってきた。考えがおかしくなる。

そういうイライラも纏いながらつい呟く。

 

「記憶を崩壊させる」

「「「「「ッ!?」」」」」

「僕の考えを否定するなら消してやる。

俺の全てを否定するなら記憶も精神も存在も消滅させてやる!!」

 

10歳の子供とは思えないほどの殺気を込めて叫ぶ。

 

「ネ、ネギ、先生……」

「あ……」

 

震えながら僕を見るのどかさんを見てハッと我に返る。

正気に戻った僕はぐちゃぐちゃに考えていた過程を心の奥に置く。

 

「っていうのは冗談ですよ?」

「え?」

「冗談だったら普通の人が死ぬような殺気立てるの止めて。マジ怖いわ」

「そ、そやな」

「ごめんなさい。話が変わりますがさよさん」

「は、はい!?」

「僕と仮契約しませんか?」

「「「「「ハア?」」」」」

「ネネネ、ネギ!?」

 

皆が間抜けの声を出した。

そんなに驚くことかなぁと思いながら理由を説明する。

 

「だって魔法なんですから誤魔化し聞かないじゃないですか」

「それはそうですが、大丈夫なんですか?」

「刹那さん、幽霊が人間になったら悪霊になることはないんですよ?」

「そ、そうですね」

 

刹那さんは一瞬ためらったような表情を浮かべたが、納得してくれた。

 

「ここにいる皆さんに言いますが、この事を言ったら」

「わかったわ」

「ネギ先生、私も賛成です」

「はいは~い」

 

ふう、これでいいか。

さよさんが足音を立てながら僕の前まで来る。

 

「仮契約ってどうするんですか?」

「それは僕に任せてください。仮契約魔法陣展開」

 

カモが居ないため、僕が仮契約魔法陣を作らなきゃいけない。

手を地面に向けると、魔法陣が描かれていった。

紫色の魔法陣が完成したと光りだす。

 

「中に入って」

「あ、はい」

 

オロオロしてるさよさんだったが、決心した表情になって中に入った。

すると、制服のスカートがふわっと浮く。

その際、中身を見ようとしたが、やはり無理だった。

 

「……後はキスだけです」

「え、ええ!? あ、でも」

 

キョロキョロと周りを見渡すが、

明日菜さんは溜息を吐き、木乃香さんはちょっと上目遣いで僕を見てる。

夕映さんとのどかさんは興味深そうに僕とさよさんをじっと直視する。

エヴァは何か腕を組んで指をトントンとさせている。

アーニャはというと後ろを向いていた。あまり見たくないのだろう。

 

「ネギ君の仲間になるんなら別にいいんよ?」

「とか言いながら焼き餅やいてる木乃香でした」

「明日菜だってスカートの裾をギュッと掴んでるで」

「そんな事より時間がないんだ。さっさとやれ」

 

今、頬を膨らましたエヴァの胃袋も限界だろう。

明日菜さん達も限界になったらたまったものじゃない。

だから僕はさよさんの肩を掴み、唇を合わせた。

 

「んっ!」

「……(さよさんの所にアレを入れておきますか)」

 

人間にしてしまったため、狙われるだろうと思った僕は対策を立てる。

僕の中にあるエヴァのアレをさよさんの中に入れる。

急に入れられた影響でさよさんの表情が変わるが、そのまま受け入れてくれた。

仮契約の魔法陣が輝いた後、当たり前のように仮契約カードが出現する。

確認した僕はさよさんから離れてカードを見る。

 

「これは」

「どうしたんですか?」

 

さよさんが僕の横からカードを見てくる。

う~ん、確か胸77あるんだっけ?

うう、何かやばい! あの時を思い出しそうだ、と思ったが、さよさんがいきなり離れて謝ってくる。

 

「ご、ごめんなさい! 私つい」

「何がついなん?」

 

変なオーラを覆っていた木乃香さんがさよさんの手を握る。

何かする気なの? 木乃香さん

 

「ネギ君の感触どやった?」

「え、ええっ!?」

 

両手を左右に振りながら慌てている。

友達感覚でからかってるんだ。

 

「これでさよ……ちゃんでええね?」

「はい。木乃香さん」

「さよちゃん、ウチが一番やからな?」

「誰が一番だ? 木乃香」

 

なぜか木乃香さんとエヴァが睨み合っていた。

というか、魔力開放するのは良いが、ここは学園だぞ?

 

「ウチが1番や。エヴァちゃんは明日菜の次や」

「ほう? ならばその1番の実力見せてもらおうか」

「ええで?」

 

だから魔力開放すんなって!

明日菜さんからも何か言ってくださいよ。と視線を向けると、

 

「ごめん無理!」

 

諦めていたのです。

フフフ……だったら仕方がない。

 

「木乃香さん、エヴァンジェリンさん?」

「ネギ君?」

「ネギ?」

 

僕に対して反応する2人に悪魔的な笑みを浮かべ、こう呟く。

 

「ここで暴れるなら、もうアレはしてあげませんよ?」

「「っ!?」」

 

2人の表情が青ざめ、開放していた魔力を体内に戻した。

夕映さんが首を傾げながら僕に聞いてきた。

 

「ネ、ネギ先生?」

「何ですか?」

「ア、アレとは?」

「アレはアレです。気にしないでください」

「いえ、気になるのですが」

 

気になるとか言われるが、僕はあっさり無視する。

今はそんなことをやってる場合じゃない。

それに権限の鍵を使ったから眠いのだ。

 

「アーニャ、さよさんに適当な説明を頼むよ」

「え? 適当でいいの?」

「はい。僕は眠いのでこれで」

 

居残りしてるあやかさん達がいるけど、ここは皆に任せよう。

僕は勝手な思いつきとあまりの眠たさで面倒になり、極移で部屋に戻った。

 

 

~ネギの部屋~

 

 

極移で戻ってきた僕は赤いソファーで横になる。

向こうの方で何か光ってるな、と思ったらカモがパソコンを操作していた。

 

「兄貴。借りてるッスよ」

「別に構わないよ」

「何か元気がないッスね」

「なんでもないよ。眠りたいから静かにね」

「わかりやした」

 

そう言うと、カモがパソコンの画面に視線を戻す。

 

カモの気楽な態度に溜息を吐いた僕は自分の手を見てハッと気づいた。

魔力が限界魔力が膨れ上がっている。

なぜそんなことが分かるのって? 権限の鍵で常に計算してるからだ。

 

「時期が近づくごとに僕の魔力が戻ってきてる気がする」

「なんじゃこりゃ~!?」

 

カモの小さいくせに馬鹿でかい声で目が覚める。

一体どうしたというんだろう。

 

「どうしたの?」

「これッスよ」

「ん? ……真・やてんのまどうしょって書いてあるね」

「こんな魔導書見たことないッスよ?」

 

画面には次のように記載されていた。

 

真・やてんのまどうしょ 1500オコジョ

ある遺跡から発見された古代魔導書

中身は我々の分からない文字で記されているため価値がない。

ただタイトルだけは分かった。

コレクターとしてなら必須アイテムだ。

 

「兄貴、どうするッスか?」

「ん? ああ……」

 

分からない文字の魔導書というのなら欲しいかも。

どうするか? 決まっている。

 

「いるに決まってるじゃないか。興味がある」

「そうッスか」

 

1500オコジョってやけに安いな。

なぜ買う気になったかって?

権限の鍵が求めているような気がした。

アレは助けになるから、と聞こえたような感じ。

アレの正体は届いたら意味が分かるでしょっというわけで僕はソファーで横になる。

 

「真・やてんのまどうしょ、前に無かったイレギュラーアイテム、か」

 

そのまま目を瞑る。

 

 

眠る際、権限の鍵と同一ぐらいの■■書がある。

 

それと■■することにより、■■者の■■が■■する。という言葉が聞こえた気がした。

 

それが何なんだ、と心の中で呟き、今度こそ眠りに着いた。

 

 

 

 

第42話『学園祭編その6・逃げる超とネギの接触』


 
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