第三話 魔法習得
side レイト
教会を占拠して一晩経った早朝、オレとエヴァ達はここから離れる準備をしていた。
エヴァが言うには昨日の騒ぎで立派な魔法使いが討伐しにやってくる可能性があるかららしい。
名前からして胡散臭いが立派な魔法使いというのは世間一般で魔法使いが目指すべきものらしいが、話を聞く限り魔法協会の体のいい駒扱いにしか聞こえない。中には本当に賞賛される者もいるらしいがそんなにいないみたいだ。
「これからどっちに行くんだエヴァ」
「とりあえずは東に向かう。西には魔法使いが大量にいるからな」
「了解」
教会の中にあった使えそうな物と金目の物を担ぎ、東に向かって旅に出た。
教会から旅だって三日目の夜。
「プラクテ・ピギナル 火よ灯れ」
エヴァから貰った魔法の杖の先に火が灯る。
「ふむ、二回目にして魔力の放出量の調整も完了したか。レイトの世界の魔法とこちらの世界の魔法は大して変わらんようだな」
「みたいだな、だが魔力の種類は違うみたいだ。これなら片方の魔力が切れてもまだ使えるみたいだな」
「ほう、なかなか便利だな。基本を教えた後は私にも教えてもらおうか」
「かまわないよ、これでも向こうの世界じゃ教師をやっていたんでね」
「魔法学院みたいな物か」
「どっちかって言うと何でもだな。なんせ学園国家だからな」
「学園国家?」
エヴァが意味が分からないと言った風に聞き返す。
「昔、魔物が大量発生及び大量進化するという事件があってね。数は十倍から二十倍、今までの生態から確実に成長して侵攻してくるという未曾有の危機に陥ったんだ。その際、人類の存亡のために次世代の戦力を生み出すという名目で世界で一番大きかった学園を各国々が土地や資金、資材や人材を派遣して改装、学園都市を作ったんだ。それが発展して学園国家となった。元の学園は魔法以外にも政治や商業、工業なんかも教えていたからそこから回り回って今じゃ世界最強国家になってるけど。まあそこで学園長をやってるんだよ」
「大丈夫なのか、お前が不在で」
「大丈夫だ、副学園長もいるし、オレも自分の研究しか最近してないし、国家っていうけど基本は学園だし、どっかが攻め込んだら世界中を敵に回すことになるからどこも攻めてこないし」
「なかなか楽しそうな所だな」
「なんならエヴァも来るか?」
「考えさせてもらおうか」
「その時は歓迎するさ」
更に三日後
「メル・ウォン・レイス・ラーメルス。氷の精霊17頭、集い来りて敵を切り裂け。魔法の射手、【連弾・氷の17矢】!」
氷の矢が十七本飛び、的である木を切り裂いてへし折った。
「よし、今日はこんなものだろう。それにしても習得が早いな、この分だと後ひと月もあればそこいらの立派な魔法使いよりも強くなれるだろう」
「そりゃいいな。それより気になったんだが。肉体強化の魔法ってある?」
「あるぞ、それがどうした」
「いや、オレの世界って肉体強化の仕方が薬か気でしかなくてな。魔法と気を同時に使って肉体強化をすればなかなか楽しそうなことになると思わないか」
「ああ、そんなことか。悪いがそれは無理だ。魔力と気は反発し合うものだから今まで誰一人としてそんなことが出来たやつはいない」
「なら、オレがそれを完成させてやるさ」
「確かにレイトなら出来そうだが、まあいい。教えてやるよ」
エヴァから簡単な肉体強化の魔法を習い試しに使ってみる。
「メル・ウォン・レイス・ラーメルス。戦いの歌」
軽く体を動かしてみる。気で強化するよりも動きが鈍いが初歩なので仕方ないのだろうと思う。
次にこのまま気で強化しようとする。途端両者が反発し合い爆発する。
「のわっ!」
エヴァは最初からこうなると知っていたのか障壁で防御していた。
「ハハハハハ、無様だなレイト」
「痛たたた。思ってた以上に効いた」
「それでどうなんだ。まだ続けるつもりか」
「当たり前だ。もう解決案も浮かんだしな」
「何!早すぎるぞ」
「見てろよ。左手に魔力、右手に気。合成」
左手と右手に同等の魔力と気を集めて混ぜ合わせそれを羽織る形で体に纏わせる。
「成功」
「一体何をしたんだ」
「未完成だけど簡単だよ、魔力と気を同等に集めて体内から強化するんじゃなくて纏う感じで体外から強化してるだけ。今度はこれを体内から強化できる様にすれば完成かな」
「お前には心底驚かされるよ」
「お褒めに預かり恐悦至極」
その後二時間程でこの技術は完成し咸卦法と名付けた。
side out
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切れる手札が増えるのは良いことだ。
扱いきれればだがな。
byレイト