第8話『図書館島・下』
~図書館島・最深部~
眠っている僕は体を揺らされた。
何だよ、僕を起こすなんて自殺行為だな……。
魔力を高めているが、僕を起こす者が慌てた。
「ちょっと待って!」
この声は……明日菜さんかな?
僕は目を開いた。
開いた先には明日菜さんの顔がドアップだ。
「あ、明日菜さん」
「い、いきなり目を覚まさないで!」
「起きろって言ったの明日菜さんじゃないですか」
明日菜さんは僕の言葉に反論できずに落ち込む。
何で落ち込むんだ?
それはそれとして、ほかの人はどこへ?
「明日菜さん、ほかの人は?」
「木乃香達ならあそこ」
明日菜さんが指を差した場所に教室みたいな環境がってまたか。
何であるんだ? 学園長が仕組んだ可能性が高いな。
教科書もあるけど……どうでもいいか。
「そういえば、汚れてますよ?」
「ええ!?」
僕が指摘した事で明日菜さんが服やスカートなどを見る。
ちょっと待て、スカートの中まで見る事ないって。
スカートの中身はピンクだった。
その言葉を思わず口にする。
「ピンク色ですか」
「な、な!」
僕の目の前と気付かずに見られていた明日菜さんが赤くなり、
スカートでピンク色の下着を慌てて隠す。
本当に何やってんだか……。
「とりあえず、勉強はしておかないと駄目ですよ?」
「うん」
僕と明日菜さんは木乃香さん達がいる所へ向かった。
木乃香さん達は寛いでいた。
「皆、何をしてるんですか? 明日はテストですから勉強でもしましょうか」
「ネギ君、それはひどいんじゃないかな~」
「ワタシもやる気が出ないアル」
「拙者もでござる」
「あははは……」
バカレンジャーの態度にむかっと来た。
あはは、仕方が無い。
「点数が悪い人には春休みを全て補習にしましょう」
「「「「「ええ!?」」」」」
「そんなのひどいよ!って担任先生がそんなことできる訳が」
「大丈夫ですよ。学園長には拷いえ、よく言っておきますから」
残酷な事を言いそうになった僕は言い直して皆に聞かせる。
木乃香さんはため息を吐いているが、念話で話す。
(木乃香さんもですよ? メニューを倍に)
(それはやめてほしいんやけど……)
木乃香さんを見ると顔が青ざめていた。
皆、良い反応だね。よし、先生っぽくなってきたぞ!
黒板があったから、そこまで歩いた。
「授業をしましょうか」
「その前に食料探しをする必要がありますよ?」
夕映さんの言う通りかも知れないが、よし!
「そんな事もあろうかと、おにぎりを持ってきてるんです」
僕は左ポケットの中から小さな丸い袋を出す。
その袋を地面に落とすと、70個のおにぎりがあった。
その現象を見てまき絵さんが変な事を言った。
「これってポイポイカプム~~~」
「その続きはあかん!」
途中で木乃香さんが口を塞く。
口を塞いだ理由って何?と夕映さんに目を向けると、
「漫画にあるネタですよ」
何にも言ってないのに説明をしてくれた。
「すごいあるな~」
「さすがネギ先生でござる」
「そうですか?」
明日菜さんが僕の腕を掴んで皆から少し距離を置く。
「大丈夫なの?」
「何がですか?」
「これって魔法でしょ?」
「そうですけど、大丈夫ですよ?
その気になれば記憶を改竄するくらい訳がありません」
だから、心配しないでください。
そう言う事を含めての表情で表わす。
明日菜さんが何か呆れていた。
もう慣れたのかな……。とか言いながら、ネギも慣れている。
「それよりも気付いてますか? ゴーレムがこの辺にいますよ?」
「何ですって!?」
「ある時間になればすぐにわかると思います」
「ある時間って?」
ポカンとしてる明日菜さんにゴーレムの正体を一部だけ明かした。
それを聞いた明日菜さんが呆れて手を頭に添える。
「木乃香が聞いたら怒りそうね」
「今は駄目ですよ? 僕が木乃香さんに魔法を教えていることがばれちゃいます」
「どうしてばれちゃいけないの?」
その気持ちはよくわかります。
親の方針ってどんなんだよ、その影響で刹那さんとの仲がおかしくなる。
これはネギの見方だが、大筋は合っている。多分……
「いろいろ事情があるから」
「そういうことね」
今の明日菜さんは木乃香さんの実家を知ってるのか?
知ってるような表情している。
どこまでこの世界は歪んでいるんだ?
そんな事は隅っこに置いといて皆の所に戻る。
戻ったら、おにぎりが後15個ぐらいしかなかった。
55個もないってどんなんだ?
「僕たちの分も残してくださいよ」
「ごめんね~、お腹空かしてたから、どうしても」
「一番食べたのってクーちゃんだよ?」
「へえ~」
食った犯人を僕は制裁するために魔力を開放する。
人前? 何それ……食い物の恨みは晴らす。
「クーフェイさん、反省してくださいね」
魔法の矢を作ろうとしたその時、後ろから木乃香さんが抱きついてきた。
後ろからなので、背中に密着しているこの感触が……。
駄目だ、完全に怒りが消えていく。
木乃香さんが僕の耳元でこう言った。
「ネギ君、駄目」
「でも、僕のおにぎりが」
「しゃ~ないな~、テストが終わったら二人でデートせえへん?」
ここでですか!?確か、明日菜さんの誕生日で誘われるはずのアレが
だが、時期が全然違うし、どうなって……
抱き付く木乃香さんがさらに言葉を続ける。
「聞きたい事とやりたい事があるから」
と言って、木乃香さんが離れた。
その言葉が気になるけど、今を考えよう。
冷静になったネギは全員にこう告げる。
「今から勉強してビリから抜けましょう!
そうすれば、僕も3-Aの担任になれます。僕は皆さんと数カ月だけなんて嫌です」
ネギの真剣な言葉を聞いた全員のテンションが上がる。
でも、この言葉はネギのために頑張れって言う事を誰も気づいていない。
全員の様子を見る僕は密かに笑みを浮かべていた。
「たまには真面目に勉強しますか。のどかに悪いですし」
「ネギくんがここから出て行くのは見たくないよ!」
「ネギ先生の言葉には感動したでござる」
「皆、がんばろ~!」
「「「「「「おおおおおお!!」」」」」」
皆の心が一つになった。
さすがの僕も感動しているぞ。
なら、僕が出来る限り皆の助けに今回は、協力します。
「授業を始めましょう!」
木箱ではなく机と椅子があった。
それを見た僕は素直な感想を口にする。
「何であるの? ここって地下なはずなんだけど」
まあいいか、机と椅子を並べる。
明日菜さん達も全員の協力で全部並べきれた。
以前は本当に木箱だったよ。
僕が授業を始めて120分経過した所だった。
「では、この問題はわかりますか?」
黒板に書かれている問題を誰かわかるか聞く。
すると、木乃香さんが手を挙げた。
「は~い!」
「じゃあ、木乃香さん」
「いつ、ここから出られるん?」
当てられた木乃香さんが答えと違う事を呟く。
ある意味正しい事にこの場が凍る。
空気ぐらい読んでください、木乃香さん…。
「でも、ここって誰も入ったら出た事無い場所なんでしょ?」
「一生、このままアルか?」
「それは嫌ですね」
「地上に帰りたいよ~」
全員が弱気になった。
誰が見ても、木乃香さんのせいだ。
うん、修行の時はきつくしてあげよう。
そう誓ったが、なんか音がした。
「ん?」
僕は教科書を放り捨てて水の中に沈めた後、耳をすませる。
これは、ゴーレムか。と言う事は学園長か。
その事を明日菜さん達に言う。
「みなさん、あのゴーレムがここにいるようです」
「もう来たの?」
「同時に落っこちたのかな~」
違う、僕が原子崩壊で消したはず。
スペアぐらいあるけど、そこまではしないだろう。と思ったが、
そうでもなかったみたいだ、あの妖怪爺め。
呼び名が段々と変化させてるネギ。
「本当にいたああ~!?」
「うおおおおおおおお!!」
巨大になって帰って来たゴーレムさんだった。
学園長いや、妖怪爺、後で覚えておいてくださいね。と口パクする。
ゴーレムに恐れて皆が逃げ出す。
「明日菜さん、木乃香さんも逃げましょう」
「でも、余裕で足止めできるけど」
「そうやで」
「ここにはまき絵さんとかいるんですよ?」
「「あ……」」
2人揃ってドジっこになるんじゃないか?って一瞬だけ思った。
とりあえず、2人を連れて逃げる。
「あっちに階段があるでござる!」
楓さんが見つけたみたいだ。
小さくだが、エレベーター直通階段と書かれている。
皆はそんな文字を気にしないで登っていく。
「ゴーレムも追って来てるみたいなのです」
「「「「ええ?」」」」
「待つんだ~!」
「ノリノリね……」
「そうですね」
明日菜さんと僕は正体を知ってるから笑うしかないが、
木乃香さん達は慌てていた。
その時、行き止まりだった。
「何なのですか?これは……」
「問題アルよ」
答える意味もないから、僕はバレない様に光速版魔法の射矢1を打ち込む。
当然、射矢の力が強すぎて先にある問題がある門も砕けた。
そんな事とつい知らず、楓さんがうんうんと頷いた。
「これはラッキーでござる」
「そう、そうですね」
夕映さんが僕の方をチラっと視線を向けたが元の方向に戻した。
バレないように撃ったはず……。
考えているとゴーレムが襲いかかってきていた。
それを見た明日菜さんが僕に大声を出してこちらに来る。
「ネギ!!」
「ウオオオオオオオオオオオ!」
襲いかかってくるゴーレムを明日菜さんが魔力と気の同化使って下に落とす。
落とされたゴーレムは悲鳴を叫んで落ちていった。
「明日菜さん」
「ネギ、行こ!」
明日菜さんが嬉しそうに僕の手を握ってエレベータへ目指す。
明日菜さん、すごいですね。
ネギにとっては誤算だった。
本来上、あそこで思いっきり原子崩壊を打ち込み、
消滅させてやろうと考えていたのにそれを明日菜さんが……、
じーっと明日菜さんを目を細めて見る。
視線を感じた明日菜さんがゴメンと小声でつぶやく。
「まあいっか……」
目的の本は回収したから、もう用はない。
明日菜さんの手をギュッと握りしめる。
その事に気付いた明日菜さんが僕を見て目を丸くした。
「ネギ……皆に追いつくわよ!」
その答えとして僕は頷く。
僕と明日菜さんが先行にいる楓さんとクーフェイさんの所まで追いついた。
そろそろ直通エレベーターか、と気分よく走る。
ようやくエレベーターを見つけた。
「やった~、エレベーターだ!」
「これで帰宅できます」
「やっと休めるアル」
「拙者は足りないでござるが」
「ようやくね」
「ウチも疲れたわ~」
エレベーターの扉が開き全員が入ると
重量オーバーの警報が鳴った。
ああ、木乃香さんがいるからか、理由はなんとなくわかった。
「どうすれば……」
皆を戻すのが先ですね。
そう決めた僕はエレベーターから出た。
警報音が消えた。やっぱりか……
「皆さんは先に行っててください」
まるで遺言の様に言い聞かせる。
あのゴーレムに用があるだけだ。ククク……
笑みを浮かべて皆に見せる。
「わ、わかったわ……ネギも気をつけて」
「ネギ君、気を付けてな~」
僕の真意に気付いた明日菜さんと木乃香さんから激励をくれた。
まき絵さん達が何か言う前に扉が閉じてエレベーターが上に動いた。
完全に上へ行った後、安堵を漏らす。
「良かった~。さてと、覚悟はいいですか?」
誰もいなくなり、遠慮が無くなった。
目の前にいるゴーレムに死刑申告を言う。
もちろん、拒否権はない。
ネギ自身には年寄りにやさしくって言葉が存在しなくなった。
「魔法の射手50、発射!」
無詠唱による魔法の射手・無属性を放った。
一本一本の射手が早すぎて、相手は抵抗すらできないまま、粉砕された。
おじいちゃん(学園長)の悲鳴とか聞こえたが無視して、
下へ降りてきたエレベーターに乗り、上に向かった。
~図書館島・地上~
エレベーターで上に着いたら、皆がいた。
「ネギ君、無事だったんだね」
「ええ、破か……逃げてきました」
「今、何か妙な事を聞いた気が」
「気のせいですよ、夕映さん」
夕映さんに笑顔で見る。
僕から視線を逸らした。何故?
「そろそろ、戻らないと時間が無いのです!」
夕映さんは僕から背を向けて歩いていった。
そして、木乃香さんと明日菜さん以外はこの場から姿を消した。
「疲れた……」
「そりゃ、疲れるやろ」
「あのゴーレムって木乃香さんのおじいちゃんですよ?」
それを聞いた木乃香さんの態度が急に変わる。
目を細めて黒いオーラの様な幻覚を見る。
いや、そんなもの見えない! 見えちゃいけない!
「ふ~ん、そうなんや……」
「木乃香さんが怖く見えるのは気のせいですか?」
「幻覚じゃないわ、私もよ」
明日菜さんも同じように感じているのか。
あはは、木乃香さんが黒くなるのはちょっといや、大分嫌だな~。
「木乃香さん」
「はいな!」
明るく返事をする木乃香さん。
「そろそろ、戻りましょうか」
「そうやな、後でおじいちゃんには言っとかないと」
「それは駄目ですよ」
僕は木乃香さんの説教を反対する。
これだと、木乃香さんが魔法を知ってる事が!
今はまだ駄目、マスターにも筒抜けになる。
「どうしてなん?」
首を傾げている木乃香さんに事情を話した。
不満そうな表情をしていたが、なんとかわかってくれた。
「わかったえ」
「良かった。戻りましょうか」
僕達は部屋に戻っていった。
その後、僕の別荘で明日菜さんの勉強に付き合った。
木乃香さんが途中で入ってきて修行もした。
ついに、その日がやってきた。
期末テストで順位がビリなら3-Aの担任になれない!
一体、どうなる?
もし、ビリになっても、その後のネギがやる事は予想がつくだろう。
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