No.390128

真・恋姫†無双~天兵伝~ 第6話

マーチさん


はじめに、前作にコメントしていただいた方々にお礼を。

もう一人オリキャラ出すかどうかで迷ってる今日このごろです。
マジどーしよっかな。

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2012-03-11 13:27:35 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3202   閲覧ユーザー数:2884

 

 

 

 

 

「この者が、『天の御使い』・・・・でございますか?」

 

「なんというか、想像していたのと違いますな」

 

「あ・・・・あの・・・・」

 

 

荊州、襄陽近郊。宣城にて。

 

城内の玉座の間にて、劉表は文官・武官から冷たい視線を向けられていた。

 

ビクビクと怯える劉表の隣には、気まずそうな顔の徐福と、呆れ顔の一刀が並んでいた。

 

 

「徐元直殿は「あの」水鏡女学院の学生だったと聞きますので、我々文官としては元直殿の仕官を歓迎します」

 

「軍師としても期待できる元直殿の士官は、我ら武官としても嬉しい限りであります」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

徐福はペコリと頭を下げる。が、素直に喜べる状況ではなかった。

 

彼女へ向けられる視線は喜びと期待を込めたものであったが、その隣に立つ一刀への視線は疑惑だけだった。

 

 

「劉表様、正直に言います。 この男が『天の御使い』だとは思えません」

 

「自分もそう思います。 こんな汚らしい男が『御使い』というのは信じられない」

 

「で、でも・・・・」

 

 

劉表は何も言えず、顔を俯かせるだけだった。

 

 

「劉表様!! どうしてこのような輩を『御使い』だと判断したのですか!?」

 

「ひっ・・・・!」

 

 

一人の武官の怒声に、劉表はブルブルと震えだした。

 

 

徐福はただ唖然としていた。

 

 

反論。

 

非難。

 

批判。

 

 

言いたい放題の家臣に、何もできずにいる主。

 

これが荊州の内政なのか。

 

 

「劉表様は何を考えておられるのですか!!」

 

「一目見ればこの男が『天の御使い』かどうか、わかるではないですか!!」

 

「ぐすっ・・・・えぐっ・・・・・ご、ごめ―――――」

 

 

ポロポロと涙を流す劉表が、か細い声で言いかけた時。

 

 

「劉表」

 

 

堂々とした一刀の声が、凛と響き渡った。

 

 

「うっ・・・・えぅ・・・・ほ、北郷様・・・・?」

 

「お前は、俺のことを『天の御使い』だって思ったんだろう? だから俺を連れてきたんだろう?」

 

 

一刀の言葉に、劉表は大きく頷いた。

 

 

「だったら謝ろうとするな」

 

「なんだ貴様!! おとなしく黙っておれ!!」

 

 

一人の武官が、一刀へ怒鳴り声をあげる。それに乗じて、何人もの文官と武官が一刀へ罵声を浴びせはじめた。

 

 

「薄汚い輩が!」「金目当ての畜生め!」「消え失せろ!!」などと言われ続ける一刀。

 

まさに暴言の嵐だ。

 

隣にいた徐福もカチンときたのか、目つきが鋭くなっていく。

 

もう我慢の限界だ。

 

いよいよ腰に差してある短剣に手を伸ばそうとしたその時。

 

 

 

 

「るっせぇぞ!!!!!!」

 

 

 

 

その場の人間全員を黙らせる轟声。

 

声の主は、北郷一刀だった。

 

 

「テメェらいい加減にしろよ」

 

「貴様、何様のつもりで―――――――」

 

「御使い様のつもりだよ」

 

 

そう言うと、一刀は眼前の武官へ向かって歩き出した。

 

ゴツ。ゴツ。と、一刀の軍靴の音が響き渡る。

 

 

「な、なんだ・・・!」

 

 

精一杯の睨みをぶつけてくる武官に、一刀は嘲笑で返す。

 

そして彼の額にパチン!と軽いデコピンをした。

 

 

「何をした!?」

 

「『呪い』をかけてやった」

 

「な・・・・ッ!」

 

 

驚愕する武官に対して、一刀はただニッを笑うばかり。

 

 

「なんの呪いを・・・・・!」

 

「死んだときに地獄に落ちる呪い」

 

「な、なんだと!? う、嘘をつくな!!!」

 

「だったら試してやるよ」

 

 

そう言って、一刀はコンバットナイフを抜く。

 

みるみるうちに顔が青ざめる武官。

 

殺気に満ちた一刀の睨みが、深く突き刺さる。

 

 

「永遠に苦しめ」

 

「ま、待て!!」

 

「待たない」

 

「すまない! 私が悪かった!! ごめんなさい!!」

 

「・・・・抵抗すらしねぇ、か」

 

 

ハァ。と、一刀はため息をつく。

 

ブルブルと震える武官に、「この腰抜けが」と言い放ってナイフをしまった。

 

 

「で、他に文句言った奴は誰だ?」

 

 

一刀の言葉に、他の文官武官は気まずそうに顔を俯かせる。

 

徐福の隣という最初の立ち位置へと戻っていった一刀は、腕を組んでニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「俺は北郷一刀。 劉表サマの言うとおり、天の御使いだ」

 

 

 

この一言以降、劉表の家臣は何も言わなくなった。

 

 

 

 

 

「申し訳ありませんでした・・・・」

 

「気にすんな。悪口にゃ慣れてる」

 

 

一刀はこれ以上は何も言わなかった。申し訳なさそうに頭を下げる劉表を叱りつけるようなことはせず、呆れた顔でため息を吐くだけだった。

 

そんな中、徐福は目をキラキラさせて一刀を見つめていた。

 

 

「北郷殿って呪術にも心得があったんですねっ! スゴイですっ!!」

 

「ありゃ嘘だ」

 

「・・・・へ?」

 

「『天の御使い』を信じている連中なら、地獄やらなんやらでも信じるもんだと思ったんだが・・・・。あそこまで本気にされるとは思ってなかった」

 

 

カハハ。と一刀は笑う。

 

一瞬で羨望を打ち砕かれた徐福は、露骨にがっかりする。

 

 

「気迫と自身がありゃ、嘘でもなんでも通るんだよ」

 

 

そう言って、劉表に目をやる。

 

 

「だから、何がどうあっても堂々としてろ。 絶対に自信を失うな」

 

 

一刀の言葉を、劉表はどのように受け取ったのだろう。

 

それは彼女にしかわからない。

 

だが、劉表は一刀に対して初めて柔らかな笑顔をむけた。

 

 

「はいっ!」

 

 

この日以降、一刀は城内の誰からも『天の御使い』と認識されるようになった。

 

 

 

 

 

後日。

 

 

 

「例の『呪い』を受けた武官なんですが、結局どうなったんですか?」

 

「あぁ、呪いは解いてやったよ。 半泣きで頼まれて気持ち悪かった」

 

「・・・・ヒドイこと言いますね。 どうやって解いたんですか?」

 

「金的」

 

 

 

 

 

 

 

 

荊州、夏江。

 

 

 

「敵襲!! 敵襲!!」

 

「賊か!?」

 

「いや―――――」

 

 

平穏を打ち砕く、血死の嵐。

 

轟号と共に押し寄せる、幾万もの侵略者。

 

 

「牙門旗を確認!!」

 

「なんだと!?」

 

 

「嘘だろ・・・・! 『孫』の牙門旗だ!!」

 

 

襲い来るは『江東の虎』。

 

 

「迎え撃つぞ!! 死んでも守り抜くんだ!!」

 

「劉表様に知らせろ!! 急げ!!」

 

 

 

 

 

「孫堅が攻め込んできた!!」

 

 

 


 
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