No.386480 真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」 序章ノ三2012-03-04 08:21:06 投稿 / 全7ページ 総閲覧数:11251 閲覧ユーザー数:8675 |
「朱里、落ち着いて。大丈夫だから」
「・・・DVDとかでは見てましたので大丈夫だというのは
わかりますが、初めてなのでちょっと怖いでしゅ・・・」
「大丈夫、大丈夫。朱里はじっとしてるだけで後はあっという間だよ」
「・・・ご主人様がそう仰るのであれば・・・あの、手をつないでも
いいですか?」
「朱里がそれで少しでもリラックスできるなら喜んで」
つないだ手を通して朱里の震えが伝わってくる。
「これでもやっぱり怖い?」
「はい・・・だって・・・」
・・・・・・・・・
「飛行機に乗るなんて初めてなんでしゅから~!」
学園は夏休みになり俺と朱里は鹿児島のじいちゃんの家へ遊びに行く
ことになった。というのもじいちゃんから『ばあさんにも朱里の顔を見せて
やってほしい』と頼まれたからだ・・・しかも飛行機のチケット付きで。
(ちなみに前にじいちゃんが朱里と会った時はじいちゃんが一人で俺の家に来た時だ)
朱里もじいちゃんの家に行くことは大賛成だったわけだが・・・初めての飛行機で
こんな状態になっている。まあ、確かに三国志の時代の人間には空を飛ぶなど到底
信じられることではないよね。
・・・結局着陸するまで朱里は震えたままだった。
「・・・少しは落ち着いたか?」
「はい・・・何とか・・・でも、帰りも乗るんですよね?飛行機に・・・」
「一応そのつもりだけど・・・朱里がいやなら帰りは電車にしようか?」
「でも、鹿児島からでは電車じゃ大分時間がかかっちゃいます・・・」
「大丈夫、大丈夫。一日早く出ればいいだけだよ」
「でも・・・『ゆっくり帰るならフェリーもあるぞ?』あっ、おじい様!」
「あれ、じいちゃん迎えに来てくれたの?」
「いや、昔の教え子の孫の結婚式があってな。それに出席したついでじゃよ」
「・・・実の孫に対して『ついで』はないんじゃないか?」
「はっはっは!お前はついでで十分じゃよ。朱里一人で来たのならそれがメインイベント
になるけどな!」
・・・このくそじじいが。
この実の孫を堂々とついで呼ばわりするこのじいさんが俺の祖父「北郷 天刀(たかと)」
である。もう八十代も後半になろうというのに、そこらのおっさん方などよりはるかに
元気なじいさんだ。何でそんなに元気なんだと聞いたら『よく食べ、よく鍛え、よく眠る。
人はそれだけで日々健康になれるのだ!』とか言ってました、はい。
「まあ、ともかく一刀も朱里もよく来たな。ばあさんも昨日から楽しみにしていてな。
今日はご馳走を用意するって張り切っていたぞ」
「張り切るのはいいけど、ばあちゃん身体の具合はいいのか?」
「ここ最近はとても具合がよいそうじゃ。医者も太鼓判を押しとる。やはり孫が嫁を連れてくる
と聞いては病気になっている場合ではないということじゃな」
「ちょっと待て。嫁って・・・」
「何だ?朱里とはそういう約束を交わしたのではないのか?」
「いや別にそれを否定するわけじゃないけど『ならば問題無し!このまま今宵は祝言じゃな』
ちょっと待て!さすがにそれはまだ早いって!俺達まだそんな年じゃないし!」
「何を言っとる?入籍ではないのだから年齢制限などあるはずもなかろう。それに町内の連中にも
わが孫の嫁をお披露目せんとな」
「・・・! まさか町内の人に朱里のことしゃべったのか?」
「ああ。隣のトミばあさんなんか『あの一刀ちゃんも、もうお嫁さんをもらう年になったんだね。
一刀ちゃんの祝言を見れれば、わたしゃもう思い残すことなく死んだおじいさんの元へ逝けるよ』
って喜んどったぞ」
「話が大きくなってる上に微妙に縁起でもないこと混じってるし! 朱里からも何か言ってやって・・朱里?」
「はわわわわ・・・ご主人様と祝言・・・確かこちらでは神父さんの前で三々九度をしてブーケの交換
をして・・・あっ!初夜で身籠らないと三行半を書かなきゃならないんじゃ・・・どうしよう・・・
はわわわわわわ」
「落ち着け、朱里!いろいろ混じっている上に間違っているから!」
「まあ、祝言はさすがに嘘じゃけどな」
「・・・このくそじじい」
「はっはっは!まあ、こちらにいるうちには町内の皆には挨拶はしておけ。皆、楽しみにしているしな」
「ああ、わかってる」
「うむ、では行くぞ。早く帰らないとばあさんに怒られるからな」
~天刀の家~
「さあ、着いたぞ。さあさあ入った、入った」
「ああ。・・・どうした?朱里」
「はわわ~大きなお屋敷ですね~」
「この辺じゃ一番大きい家らしいけどね。敷地の中に道場もあるし」
「道場?・・・あっ、剣道のですね。ご主人様も昔修行していたって言ってたところですよね」
「まあ、修行ってほどじゃないけどね」
「おお~い、いつまでもそんなところに突っ立ってないでこっちへ来~い」
「ああ、今行くよ。ほら、朱里行くぞ」
「はい♪」
・・・・・・・・・
「お~い、今帰ったぞ」
「お帰りなさい、天刀さん。一刀もよく来たね」
「ばあちゃんも元気そうだね」
「そりゃ一刀のお嫁さんが見れるのだから元気も出て来るってもんだよ・・・そっちの娘が?」
「ああ、ほら朱里」
「ああああああああの、はじめみゃしちぇ、おばあしゃま。朱里と申しましゅ」
「落ち着け、朱里。カミカミになってる」
「はわわ、ごめんなしゃい・・・また、噛んじゃった・・・」
「ふふふ。こちらこそ初めまして。私は一刀の祖母で 北郷 樹里(きさと) です。
よろしくね、朱里」
「はい!こちらこそよろしくお願いします」
「あっ、そうだ朱里。あなた将棋がとても強いのよね。私もちょっと将棋の腕には自信あるの。
一局どうかしら?」
「ばあちゃん、朱里も今日は疲れてるし別に明日でも『わ、私で良ければ喜んで!』・・まあ、いいか」
「ほほう、ばあさんから将棋を誘うとは珍しいことじゃな」
「じいちゃんは最近ばあちゃんとはやってないの?」
「ばあさんが強くなりすぎてな、儂ではもう相手にもならん。ばあさんが6枚落ちでもボロ負けじゃ」
「・・・じいちゃんでもそうだったら俺なんか秒殺されるな」
(ちなみに「6枚落ち」とは飛車、角、香車、桂馬なしで指すことです)
でも、いくらばあちゃんがそこまで強くても名人に勝った朱里相手じゃ・・・
~?????~
「あらぁん?もしかしてあのご婦人って樹里ちゃんかしらん。ということはあのおじいさんは、
ごしゅ・・・天刀様ね。どぅふふ♪これは思ったより早くご主人様と朱里ちゃんの成長が
望めそうねん♪」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
「ま、負けました・・・」
「嘘、朱里が負けた・・・」
「でも朱里もばあさん相手によく戦ったぞ。ここまでばあさんが苦戦したのを見たのは久々じゃ」
「ふう、確かに久々にいい勝負をさせてもらったわ。でもちょっと詰めが甘かったわね」
「俺にはどこがどう甘いのかさっぱりわからない・・・」
「気にするな。儂もわからん」
しかし何故?いくら盤上のこととはいえ、朱里が戦略・戦術で負けるなんて・・だって、朱里は・・
「まあ、精進することね。諸葛孔明殿」
「えっ!?」
「はわわ!何故それをおばあ様が?」
「まあ、儂が言ったんじゃがな」
「ふふふ。まあ、そういうことね。でもこれがまだ盤上のことだからいいけど、本物の戦場では
一瞬の詰めの甘さが命取りになることもあるのよ?軍師としてそれは許されることではないわ。
その戦略・戦術に味方全ての命がかかっているのだから」
「はわわ・・・肝に命じます」
「ぷっ・・・」
「む、天刀さん!何を笑っているのですか?」
「いやな、樹里だって昔は似たようなもんじゃったのにと思ってな」
「わ、私はここまでは・・・」
「そんなことはないぞ?いつも『わわわわわ、秦の軍勢に待ち伏せされちゃいました~』
『わわわわわわわ、項羽さんの軍勢に囲まれちゃいました~』とかだったじゃないか」
「そ、そんな昔の話を今ここでしなくても・・・」
「えっ、じいちゃん、それって・・・」
「もしかしておばあ様も・・・」
「はあ~、もっと格好良く名乗りたかったのだけどね~。・・・そう私も朱里と同じく
外史から来た人間よ」
「「やっぱり」」
「ちなみに外史にいた時の名前は・・・」
・・・・・・・張良、字は子房よ。・・・・・・・・
続く・・・・・・(多分)
あとがき的なもの
mokiti1976-2010です。
初投稿より一週間経ちました。・・・まだ外史へ行けてなくて申し訳ありません。
予定としては後2~3話のうちに序章を終わらせて外史編へと考えています。
さて、一応今回の目玉は一刀のばあちゃんの樹里さんです。
実は投稿にあたってあまり細かく設定を考えてはなかったのですが、
決めていた設定の一つが「樹里=張良」でした。
他の方のssでばあちゃんが項羽だったり始皇帝だったりしてヒロインを導く
といったお話があったので、ヒロインを朱里にする以上、諸葛孔明を導けるのは
張良しかいない・・・というかなり安易な設定です。
さて次回では、じいちゃんが一刀に、ばあちゃんが朱里にそれぞれ覚悟と力を授けていく
という予定です。
それでは次回、序章ノ四にてお会いできるといいなぁと思う今日この頃。
・・・・・今回は追伸はありません・・・・・
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お待たせしました!(多分待ってる人はいないでしょうが)
序章ノ三投稿です。
今回二人にとって重要な出会いがあります。
一人は当然一刀のじいちゃん、そしてもう一人は・・・
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