No.386346

恋姫異聞録134  -点睛編ー

絶影さん

大変遅くなりました
ごめんなさい><

なかなか時間が取れず、書くのが進みませんでした
あまりに阿呆らしくなって、仕事を一日だけ休みましたw

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2012-03-04 01:02:33 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:7750   閲覧ユーザー数:6041

 

 

隠者の瞳に映る劉備の姿。脳裏に浮かぶは劉玄徳の産み落とされし瞬間

止めどなく流れ落ちる涙は劉備の生き様を刻んだからか、それとも龍が誕生し、その身を天へと舞い踊らせる姿を見たからか

 

隠者の眼は刻んだ記憶を呼び起こす。龍がいかにして日輪に喰らい付く顎を持ったのかを

雲が無くとも、風が無くとも、その身に風雲を切り裂く武神を乗せ、天を翔ぶ翼を持ったのかを

 

だが、其れを思い起こす時は今に非ず。刮目せよ、劉備の姿を。風雲を持たずとも龍が天に飛翔する姿を

 

そう、己に言い聞かせると、隠者は身を翻し巨木の上から姿を消した

横目に厳顔を抱きしめる劉備の姿を映しながら

 

 

厳顔を抱きしめる劉備の身体から流れだす怒気に当てられた兵達は、皆がそれぞれ口を噤み息を飲み込む

扁風に率いられこの地へときた涼州兵は、身を竦ませ劉備の姿を見ていた

 

しかし、身を竦ませるのは僅か。その怒りは一体どこから来るのか、彼女が自分を変えるほどの怒りに身を染めたのは何故か

 

考えるまでもない、見れば解る。目の前で傷付き、身体も満足に動かぬ将が、それでも武器を持ち

王を守ろうと、王の願いを、王の理想を叶えようと立ちがある姿に王は、劉備は怒っているのだ

 

【よくも、私の大事な人を、家族を傷つけたな】

 

理解すれば理解するほどに、兵は怒りを膨れ上がらせ、雄叫びの様な声を上げて武器を掲げる

貴様らが我等が王を変えたのだ、何故変えた?何故王を怒りに染めた?我等の家族を傷つけたのか?

我等の家族を死に至らしめたのか?我等を想い、我等と共に在る王の命を奪おうとしたのか?

ならば償え、その身を持って。我等の怒りは貴様らの死をもってのみ治められる

 

異様な士気の高揚に扁風は辺りを見回す。此れではまるで義兄のようだと

怒りを仲間に伝染させ、爆発的に士気を上げる。一見、簡単なように見えるが誰にでも出来る事ではない

兵達と心を通わせ、兵達と同じ目線、兵達と同じ傷、同じ怒り、同じ苦しみを分かつからこそ出来る業

 

付き物が落ちた様に表情を落ち着かせた厳顔に、劉備は噛み締めていた手から口を離し

厳顔の肩に手を置くと軽く微笑む

 

「落ち着いた?」

 

暖かく柔らかい声色で厳顔に呟く様に話す劉備に、厳顔は一瞬だけ呆けるが、次に噴出し

くつくつと喉の奥で笑っていた

 

「桃香様。いえ、御館様。醜態をお見せした、申し訳ない」

 

「ううん。其れより傷は?」

 

「ご心配めされるな」

 

そう言うと、厳顔は立ち上がり様に、劉備へと向かって放たれた秋蘭の矢を豪天砲で砕く

とっさに武器を構え、劉備の盾になるよう身体を滑りこませようとした迷当よりも疾く、そして翠が全力で弾いた矢を

一振りで砕いたのだ

 

血まみれで、なお笑を崩さぬ厳顔の姿に兵はますます声を上げ、その身を奮い立たせる

 

「それじゃ、此処で私を守ってくれますか?」

 

「御意」

 

一言、そうこたえると厳顔は流れ落ちる血を乱暴に拭い、払い、仁王立ちで隣に立つ

内蔵をやられ、いまにも膝を着きそうだと誰にでも解る傷を負いながら、精神力だけで身体を支える姿に、五胡の兵も声を上げる

迷当もまた側に立ち、劉備を挟むようにして前方から襲い来る矢を砕き、少しずつ劉備の歩に合わせて前進を開始した

 

 

 

 

様子見の矢を秋蘭に撃たせた詠は、櫓の上で口角を吊り上げ、次に馬鹿にするなと言わんばかりに顔を怒りに染める

 

「フンッ、超える?」

 

「劉備さんが、自分の望む姿は手に入れられたのかはわかりません。今の姿が完成した姿であるなら」

 

「超えたなんて口にして欲しくないっしょ?」

 

勿論だと鳳の言葉に詠と風は頷き、櫓の中心に立つ男の側へと歩み寄る

櫓には秋蘭を始めとする将が集まり、次の指示を待っていた

 

「劉備が来た・・・ってことは統亞達はやられたってことか」

 

一向に現れない統亞達三人の姿が見えない事に、凪達三人は、歯を噛み締め武器を握り締める

詠は、三人の顔を見ながら、次に男へと視線を移す。統亞達がやられた事を聞いて、男はどの様な変化をするのか

確かに先ほどの戦いで冷酷な姿を見せた。だが、仲間の死に関して彼は耐えられるのか?

 

風が言った言葉、夏と冬を同時に手に入れた彼は、仲間の死にあっさりと冬を手放し、夏の燃えるような怒りを

見せるのではないかと詠は試すが、見あげれば男の表情は少しも変わること無く、鳳の顔をじっと見ていた

 

「死んでないっ!死んでなんか居ないっ!約束したんだっ、だから死んでなんか居ないんだ!!」

 

詠の言葉に強く反応する鳳。拳を握りしめ、その目は決して統亞達の死を受け入れ無い、生きていることを信じきった瞳

 

「ああ、死んで無い。彼奴等が安々と死ぬ訳がない」

 

「・・・・・・はいっ!」

 

あれほど冷酷な姿を見せた昭からの言葉が意外だったのだろう。鳳は一度、握った拳がゆるみ、呆けた表情を見せた

そして、男の優しい瞳を見ると力強く頷く。この人も、彼らが死んだなどと思っては居ないのだと

 

「フフフッ、好好。心に降り注ぐ剣は雨に、曇天は晴天に、日輪は益荒男を照らす。英雄は尊く死してこそ英雄と呼ばれる

だが、死ぬことを拒む貴方は英雄ではない。人の親よ、何処まで行くのか見せてもらいましょう」

 

いつの間にか、傷だらけの李通に包帯で手当をし膝に乗せ、櫓の階段に腰掛けて劉備の姿を興味深く見つめる司馬徽

膝に乗せられた李通は顔を赤くして、人形の様に司馬徽に大事に抱えられていた

 

まるで男の心の中を見てきた様に口にする司馬徽だが、男は少しも驚かず当然のように受け止め再び劉備へと視線を向けた

櫓の周りでは兵が一斉に動き続け陣形を整えていく。陣形の移り変わりを眺めながら、風はゆっくり男の前へと立つ

 

「稟ちゃんから戦術を授かったと聞いています。風の話は聞きましたか?」

 

「ああ」

 

「では、御使でも無く、英雄でも無く、修羅を率いる舞の王として戦って頂きますですよー」

 

前方を見れば、穴を埋め、今にも此方に襲いかからんばかりに眼をぎらつかせる五胡兵と涼州兵

特に、劉備の言葉を受け、名を、己の戦う意味を天へ掲げた涼州の男達は地を響かせるほどに声を上げ

魏の兵を睨み、見据えていた

 

「えっと、私は何したら良い?雲の兵は、私じゃ動かすのは無理っぽいし」

 

「何言ってるの?敵軍は馬鹿ほど兵が居る。少し多いくらいなら風と僕で十分だけど、少しってわけじゃないらしいからね

賊相手に連環の計なんかやってみせるくらいなんだから、やってもらうわよ。そうでしょう?」

 

合流したものの、動かせるのはせいぜい引き連れた警備兵くらい。魏でも恐ろしいほどに高い士気と連携を持つ雲兵は

自分では手に余ると言う鳳に、詠は謙遜するなと首を振り、風に視線を向ければ風も頷き返す

 

「今から敷く陣の右翼三陣は風が。左翼三陣は詠ちゃんが。後方二陣は鳳ちゃんにお願いしますよー」

 

今組まれている陣の詳細も知らず、何をするのかも解らない鳳は首を振る

いきなり言われても兵をうまく操れない、それに何をするかも解らないのに兵を預かっても死なせて仕舞うと

 

当たり前だ、もともと雲の兵と交流があり、訓練にも参加をしていたなら多少の動きを合わせる程度できるだろうが

何も知らない、参加したこともない。ある程度、軍略も知識として入れているが兵を戦で動かしたことなど無いのだから

 

「お兄さんの指揮に合わせて動いてもらいます」

 

「指揮?昭様の指揮って」

 

鳳が言い終わらぬ内に、男は腰の剣を二振り抜き取り、辺に冷気の様な殺気ではなく、熱く燃え盛る紅蓮の殺気を放ち始めた

 

「凪は詠に、真桜は風に、沙和は鳳に着け」

 

男の言葉に凪達は即座に各陣ヘと走り、風は櫓の右端へ、詠は櫓の左端へと進み、鳳は男から流れ出る殺気に身を竦ませ

訳もわからず櫓の後方へ楽隊の後ろに進む。秋蘭は、まるで言われずとも全てを理解しているかのように櫓の前

階段の手前へと歩を進めた

 

「舞台演出程昱 戦神【八風】」

 

八風と口にするのは風。同時に、男の背後に並ぶ楽隊は楽器を先程よりも激しく掻き鳴らし始めた

 

「本気で舞う。着いて来い」

 

男の呟きは、背後の張三姉妹へと向けられたもの。地和は笑を向け歌声を強め、天和と人和は更に強められる声圧に

最早、着いて行くのは無理だと主旋律を外れ、バックグラウンド・ヴォーカルとして声を重ね始めた

 

櫓には主旋律に声を乗せ、歌を響かせる娘が一人。左右の二人の重ねる声を主旋律でありながら底上げし重低音が響き渡る

櫓を囲む兵士達の身体に文字通り、振動として響き渡る歌は、まるで魂を揺さぶるかのごとく男達の心を高揚させていく

 

雨は止み、晴れ渡る空。最早声を遮るモノは何もなく、戦場を覆い尽くす三姉妹の歌

劉備から声を受けた者たちではない五胡兵は、身体を、魂を震わせる三姉妹の歌声に圧倒され動きが鈍る

 

三姉妹の後方で楽器を掻き鳴らす楽隊も、歌声に圧倒さるが必死で着いて行く。弦を弾く者は指先から血を流し

笛を吹く者は唇を切り、息を切らすがそれでも喰らいつき、音を合わせていく

 

あまりの歌声に鳳は耳を塞ぐ。これ以上、聞いていたら心がやられる。雲兵達は士気を上げるだろうけど、自分は戦場を

彼と走っていない。連れてきた警備兵は大丈夫だろう、何故ならずっと警備兵を率いていたのは彼なのだ

しかも此処は戦場。となれば、歌のままに、舞いに合わせ、戦場を駆け抜ける方が良い

 

あの人はたしか司馬徽。一度だけ見たことがある。あの噂の水鏡先生ならたぶん大丈夫、一番ヤバイのは自分とりっちゃん

 

気が付き、心配し振り向けば、司馬徽の膝の上で耳を塞がれている姿。鳳はホッと安堵の溜息をつく

もし聴き続けていたら、警備兵である彼女は満身創痍にも関わらず、槍を持って敵と戦っていただろう

 

「うッ!?」

 

振り向いた鳳は眼から急に流れだす涙に驚き、心が揺さぶられる。視線の端に映ったのは男の舞う姿

 

同時に、歌を合わせていた張三姉妹の苦痛の表情。なにより、一番に顔を歪めていたのは全体を率いていた地和

 

なに、これが本気!?追いつけない、追いすがることも出来無い。これが舞の王

 

苦悶の表情の地和の目の前で舞い踊る舞王。その表現は恐ろしく、紅蓮の殺気は炎に、舞王の身体は龍そのものに見えてしまう

流れるような足運びから、まるで雷鳴のような地面を叩く独特のステップに切り替わり、手に握る剣は激しく火花を散らす

荒々しく大地を揺るがす龍が炎を纏い、怒り狂う

 

先ほどまでは静と動の動きであったのだが、今は豪雨のように早く激しくなっていく舞王の姿

踏み込む足は、地和の達の響かせる声に合わせまるで櫓を揺らしているかの様に錯覚する

更にそれは大きく、兵の踏み鳴らす足にまで合わせ、地面を響かせ大地を揺るがしているかのように見えてしまう

 

真正面で舞い踊る男の姿に五胡は見ただろう、櫓に胎動する龍の姿を。大地を揺らし、天を響かせる龍の咆哮を

 

穴を埋め、魏の布陣を目の前に、中央の一本道から騎馬を通して横陣を敷き、背後から悪路を馬を捨てて乗り越えた

兵士達が列を作る。その中央で敵の布陣を睨みつける翠は粟立つ肌を撫で、唇を軽く結ぶ

 

「凄いな、あれが本気の舞いなのか?他の奴らにはどう見えてる?」

 

「お姉様、蒲公英達は此処で少しだけ待機するよ」

 

「蒲公英はどう見る?」

 

「日輪。先刻みたいにお兄様自身を舞ってくれれば良いんだけど、羌族の兵にはきっと龍に見えてる」

 

前線で立ち止まり、前を見据える翠の隣に馬を寄せた蒲公英は、翠の隣で覇気に守られながら全体を注意深く見てい行く

後方では、男の舞いに刺激された羌族が、恐怖と不可思議な現象を払拭するため、声を上げて突撃を開始した

 

「くそっ、恐怖に駆られたか」

 

「桃香さまの言葉を聞いた涼州兵が動かないなら、まだ大丈夫」

 

「フェイは?」

 

「蒲公英と同じ、全体を見てる。けど、お兄さまの舞いはキツイみたいだよ。胸のあたりをずっと握りしめてた」

 

後方に眼を移せば、扁風が苦痛の表情で前方を睨みつけ、敵の布陣を見渡す姿

 

この陣形・・・方陣によく似ているけど違う。見たことがない、新しい陣形

風さまの創りだした陣形だろう。見た目は方陣と違って攻めやすそうに見える。中央を囲っているが、敵を受け流す

斜陣の部分が少ない。それどころか、方向を変えれば敵に対して少ない数で横陣を敷いてしまっている

あれでは容易く内部に入り込めてしまう。油断はできないが、迎撃陣形であることは間違いないでしょう

羌族には悪いけれど、突出したのなら好都合。風さまの創りだした陣形を見せてもらいます

 

羌族の攻撃が届く直前、敵の陣形はピタリと止まり、扁風の眼に映るのは美しい八角形の陣形

右前三陣を風が、左前三陣を詠が、後方二陣を鳳が指揮する

 

八卦の陣?黄帝設八陣之形?それとも孫ビン兵法の八陣?ううん、違う。八陣は八陣だけど、形が

まるで蜘蛛の巣の様に兵が網目状に張り巡らされ、配置されている

 

脳内から引き出されるあらゆる陣形。だがどれも当てはまること無く、扁風は風が産み出した陣形を理解できずにいた

 

突撃する羌族の兵。初手に矢を、中央の櫓で舞う男へ向け一斉に放てば、秋蘭の指示で一斉に櫓の周りに居る兵が

集まり盾を構える。中央の秋蘭は、己に迫る矢を雷咆弓で叩き落とし、更に矢を絡めとり、五胡兵へと撃ち返す

 

櫓に矢は効果が薄いと、五胡の前衛が真正面からぶつかる瞬間、櫓の中心で舞い踊る男の双剣が前方に勢い良く振られ

同時に魏の将兵全てが地面を一斉に踏み、地面を響かせた

 

「ナニッ!?」

 

「地面ガッ!!」

 

揺れる地面、そして素早く目の前の陣形が門のように左右に開き、まるで迎え入れるように口を開ける

同時にめまぐるしく指示を始める風と詠

 

開かれ、櫓まで一直線に開いた道へ、恐れるなとばかりに飛び込む羌族の兵士

だが次の瞬間、開かれた場所から聞こえてくるのは羌族の悲鳴

 

開かれた左右の陣形から挟まれる様に、槍を装備した兵士達が挟撃を仕掛け、何度も交差する

入り込んだ兵が後退し、態勢を立て直そうとすれば、外殻に配置された凪が、退路を防ぐようにして手刀で兵を殲滅する

交差した兵は、元の陣には戻らず、そのまま反対側の陣の中へ吸収され、再び蜘蛛の巣の様な陣形を創りだす

 

凪達と詠の練兵、兵を三人の隊全てを経験させ、凪の部隊、真桜の部隊、沙和の部隊のどちらであろうとも全てをこなせる兵士

に育て上げた事により、雲兵の内部ならばどの位置へ、どの陣形へ入ろうとも変わらぬ動きと連携を見せる魏の兵士達

 

「おやおや、正面からとは、よほどお兄さんの舞が怖かったのですねー。八風の正面。利い(うるおい)に入るとは

目先の利益に眩む者は、衰えによって滅ぼされる。左右の槍によって肉体を削られ、退路無く死滅する事になりますよ」

 

櫓の中心で舞い踊る男は更に殺気を強く、今度は凍結してしまうかのような冷気のような殺気を発し始め

左右に展開し、襲い来る敵兵に向かい剣を左右に、まるで羽のように広げると真下へと振り下ろす

 

男の指揮に反応した風と詠は、即座に兵士達に指示を飛ばし始めた

右翼へ回り込んだ敵兵に対し、小型の三角陣を形成し大盾を構えて進軍を抑え、中心の櫓から秋蘭の指揮する弓兵が的確に

高い位置の櫓から射抜いていく。更に左翼の詠は、槍を構えさせ再び敵を内部へ引きずり込むと、大盾で囲み一斉に槍衾を食らわせた

 

男の舞に合わせ、剣の切っ先が振られる毎に陣形は凄まじい速さで移り変わり、敵を吸い込みし殲滅していく

見れば、囲んだ羌族の兵士達がまるで文字通り吸収されるかのように櫓の中心に吸い込まれ、屍の山を築く

 

素早く移り変わる陣形の動きに扁風は目を見開き、歯を噛み締めるしかなかった

 

櫓の中心で舞う御兄様が敵の動きを読取、舞で指揮を。左右にいらっしゃる詠さまと風さまは即座に御兄様の

動きに沿った陣形を形成。蜘蛛の巣のように置かれた兵は雲の兵ならではの布陣

どの位置へ行っても、風さま、詠さまの指揮であろうとも即座に連携をとれるから、陣自体が全て繋がっている

あれは、全てを吸い込む龍巻

 

櫓の階段で座る司馬徽は「好、好」と魏兵の動きを穏やかな顔で眺め、膝の上の李通は理解できずに、ただ眼を丸くしていた

 

「こ、こんな陣形、初めて見ました」

 

「フフッ、八風と言うそうよ。八門金鎖というのを知っているかしら?」

 

「えっ?!あ、少しだけ。確か、生・景・開・休・傷・驚・死・杜の八門からなる陣」

 

「好。その八門金鎖を面白い形に作り変えた。八風とは、華氏城の方で伝わる教えの中に在るもの。四順と四違。

四順は利い、誉れ、称え、楽しみ。四違は衰え、毀れ、譏り、苦しみ」

 

「え・・・あぅ」

 

「貴女には少し難しかったかしらね。四順は人が求めるもの。四違は人が避けたがるもの。八風は、一見、四順に見えるが

実際は四違である陣と言う陣形。入る場所が吉で在る所など無い、裏には凶が必ず待ち受ける。人生と同じ」

 

「えっと、一見、攻めやすそうに見えて、攻めれば手酷くやられる陣ということでしょうか」

 

歌が入らぬよう自分の耳を抑えていた李通の耳に、口を寄せて囁くように話す司馬徽は李通の言葉に「好」と返す

司馬徽の言うとおり、見た目は崩しやすく、いかにも攻めやすいと言える陣形なのだが

少しでも足を踏み入れれば、攻めやすい外見に惑わされ、奥深くへと足を踏み入れてしまい、気がついた時はもう遅い

退路はなく、外側に配置された強力な将、凪達三人の追撃を受けて滅ぼされていく

 

「八つの陣を二つに分け、左右の外郭に四順ずつ。内部には四違が同じように備えられている」

 

「はい、外側は動かないで兵数も少なくとても攻めやすそうに見えます。

でも内部はみなさんがグルグル回っているように見える」

 

「櫓から、内部からしか陣の詳細はつかめず。外側の外殻に騙される。更に、先程から貴女の愛しい人が此処に居ないことには

気がついているわよね」

 

「は、はい」

 

パタパタと羽扇を優雅に仰ぎ、ゆっくりと陣の外へ向ければ、一馬が的盧と共に鬼人の様な戦働きで敵を蹴散らす姿

八風の外を、遊軍として騎馬兵を引き連れ横撃や背後からの攻撃を繰り返していた

 

一度でも八風で止まってしまえば、即座に一馬の騎兵が横撃をかけ、陣形が崩れた所に秋蘭の的確な一撃が

敵の将の頭を貫き、崩れた陣形を八風をもって凪達が食い散らす

 

「新城で迎撃しなかったのは何故だか解るでしょう?」

 

「はい。新城で籠城していたら、大軍であろう蜀の軍勢に囲まれ数日で落とされていた。でも、此処なら」

 

「はい合格。森の出口と言う場所で敵は大軍を展開できず。さらに隘路を作り出し、舞で士気を下げ、極めつけは八風の陣

舞王殿と、あの軍師二人でしか出来無い迎撃陣の極みの一つでしょうね」

 

二人という言葉に李通は首を傾げた。三人では無いのかと。軍師はこの場に三人居る筈だ

 

「フフフッ、まだ二人しか私は軍師と認めることはできない。この舞の意味を理解出来ぬなら、彼女は死ぬだけ

任せた軍師二人も、私も貴女も、そして舞王殿も死ぬでしょう。だがそれもまた好。此処で死して彼が英雄となるのも面白い。

先を見れないのが少々残念ですけれど」

 

司馬徽の楽しそうな顔に、李通は鳳の事が気になり背後を見れば、地面に膝を付く鳳の姿

舞が眼に入ってしまった鳳は、膝をガクガクと震わせ、全てを震わすこの現象に理解出来ず想像上の生物である龍を見せられ

涙を流し崩れ落ちた

 

「あぁ・・・うあああぁ・・・」

 

至近距離で舞と歌を喰らい、崩れ落ちる鳳。もう戦う事など出来はしない、涙が止まらない

口は閉じることを忘れたかのように開いたまま、唾液をポタポタと落とし続け

心が折られ魂を龍に食われてしまったかのような痛みが心を襲う

 

「大丈夫なのー。立って、鳳ちゃん」

 

崩れ落ちた鳳の腕を掴むのは、先程後方へ走って行った沙和。沙和は鳳の異変を感じ、兵に防御命令を下し

一人櫓へと舞い戻っていた

 

「さ、沙和。だめ、な・・・涙が止まらないの。膝も、震えて立てないよ」

 

「よく見て、怖くなんか無いの。隊長の表面だけ見ちゃうのはダメなのー」

 

「む・・・む、無理。こわ、怖くて見れない」

 

「じゃあ沙和が一緒に見てあげるのー」

 

沙和に優しく、うしろから抱えられながら、恐ろしさで震える心を鼓舞し涙が溢れるままに瞼をゆっくり開けて再度男を

恐る恐る、少しずつ視線を向けると、沙和が優しく頬を付けて視線を真っ直ぐ男へと合わせた

すると、何故か聞こえてくる子供たちの笑い声。いや、聞こえてくるのではない。心に子供たちの笑い声が響いてくるのだ

そして温かいモノが流れこんでくる。暖かな日差し、青々とした若葉、生い茂る大地を何処までも突き抜ける蒼天に

高く登る日輪が優しく照らしているのだ

 

「魏・・・だ。華琳様だ」

 

だが、それだけではない。華琳を表す舞は、破壊と創造を。武をもって全てを滅ぼし、新たな秩序を立てる

炎のような熱を持った舞。舞王の舞う武王の舞。優しさだけではなく、厳しさと強さを併せ持つ

 

「うん、隊長は魏を舞ってるのー!華琳様に仕えて、魏にいる人なら隊長の舞いをきっと理解出来るはずなの」

 

流れだす涙を其のままに、鳳は眩しものを見るように男の舞いを見続ける。

櫓を響かせる男の舞いに、男の踏み込む足の一歩一歩に桂花の事が思い出され

折れたはずの心が強く鋼のように、まるで千年の時を経た大木のように太い物に変わっていく

 

そうか・・・理解した。コレは大事なものを、戦う意味を思い出させてくれる。私達の心を鼓舞する舞いだ

 

瞳から流れ落ちる涙を乱暴に拭うと、鳳は沙和に「ありがとう」と一言

両足で力強く踏みしめ身体を支えると、舞い踊る男の動きと両翼の動きを頭へ叩きこんでいく

 

「大丈夫?」

 

「うん。持ち場に戻って大丈夫だよ、よく解った。振り下ろす切っ先は敵の動き、足捌きは敵の攻撃法と兵科を表してるのかな

両翼の動きと昭様の足の動きから・・・なるほど」

 

「え?そ、そうなのー?」

 

「小刻みな剣の切っ先は全て敵の挙動、足捌きは・・・一、三、ニ、一、四、一。把握した

歩兵が弓を装備で二射後、抜刀、突撃。沙和、前衛の兵に盾をっ!」

 

前方の両翼を攻略するのは難しい、ならば迎撃陣形の背後に少数で回りこめばどうだと八風の後方へと兵が一斉に動き出す

 

弾けるように振り向き、後方二陣。自分の任された陣に眼を向け指示を飛ばす鳳

即座に沙和は、兵に大盾を持たせ矢に備え。二射を耐えた後、即座に前衛の盾を持つ兵が左右に開き、後方の兵が槍を持って

抜刀し、剣で突撃を開始する羌族の歩兵へ一斉に槍を突き立てていく

 

矢を防ぎ、近距離戦を挑むため、抜刀して剣を持ち、斬りかかる兵に長距離の槍を一斉に食らわせ迎撃

敵を圧倒する指揮に兵達は声を上げた

 

「私に向けて真直ぐ一歩は歩兵、続く右に三歩は弓、それで左にニ歩は攻撃回数。さらに真直ぐ一は歩兵が再度攻撃

右に四つは抜刀、もう一つ右へ一歩は突撃。これは強すぎるよ。敵の動き、全て解ってるんだから、やりたい放題さ」

 

「・・・」

 

「歩数が多くなるから舞が激しくなるのも頷けるねーって、本当にもう大丈夫だよ?後方だからってじっとしてたら殺られるよ

外側、沙和が居なきゃ引き込んだ敵を逃しちゃう」

 

一転してまるで手足の様に雲兵を操る鳳に沙和は驚く。

自分が見ても、男の舞は激しく、熱を持った魏を表す舞であるとだけしか解らない

だが鳳は、男の舞と全体の兵の動き、軍師の指揮を見て即座に理解してしまったのだ

舞に込められたもう一つの意味を

 

「うんっ!」

 

嬉しそうに、大きく頷く沙和は、そのまま自分の配置へと櫓を飛び降りて戻っていく

振り返り、様子を見ていた司馬徽は口元をゆるめ、腕の中の李通は耳を塞いではいたが、友人の瞳の輝きが増した事に気が付き

司馬徽と顔を見合わせていた

 

 

 

 

「さて、軍師は三人に。どうやら英雄になるにはまだ早いらいしい。時はまだ貴方を必要としているよう」

 

司馬徽は妖艶な瞳を前方へ、敵陣中央で歩を進める劉備と扁風に移し、「好」と一言

 

「もう一人の舞王。貴女の道は日輪へと、天へと続いているのか。ひらひらと桃の実を揺らす風は、雲をかき消す程の

風になるのか。新翠の芽吹き、生える小さき華は、その場に留まり何を見るのか」

 

次に視線を翠と蒲公英へ移し、瞼を閉じる

 

「あ、あの、どういう意味でしょうか?」

 

「ふふっ、見てご覧なさい。既に策が纏まったのでしょう、ひらひらとした風が動いている。劉備殿が歩を前へ進めるのは

下がりきった指揮を、王が前線へ進むことで回復させようとしているから。無駄だと解っていても、攻撃の手を休めないのは

此方の機を見ているから。揺らぎを見つけて動こうとしている」

 

説明され、羽扇で差された場所を注意深く見なければ解らない。確かに、扁風は指を先ほどから人差し指だけ立てたり

三本指を立てて横に振ったりと、腕を下げたままで繰り返す。櫓の上からでしかわからない、そして彼女だけを見なければ

解らない事を、司馬徽は見破っていたのだ

 

「何か指示をしている。司馬徽様、直ぐに皆さんに」

 

「・・・皆になんと?」

 

「えっ!?えっと、あの、その・・・」

 

「魚を釣る時、慌てて引き上げては餌だけを取られる。釣るならば、魚に合わせ、一息に針を喰い込ませ釣り上げる

焦っては、魚は逃げてしまうわ。知恵を持った大魚であるなら尚更」

 

動いている、と言うだけで何をしているのかはっきりしない。そんな不確定の情報など、皆を惑わすだけ

動くならば、敵を見極めてから動くのだと、司馬徽の言葉に理解し、李通は敵の動きを少しも漏らさぬよう視線を向けた

 

李通の懸命な様子を見て、司馬徽は何かを思い出したかのように微笑み

 

「あの子たちとの手合わせが出来そうね」

 

そう呟き、瞳を鋭く、細くすると「来る」と一言

 

次の瞬間、注視していた李通の視線が大勢の兵に一瞬だけ覆われる。一斉に、敵の兵士が劉備の回りを覆うが

覆うのは一瞬だけ。通り過ぎるように、兵が元の位置に戻れば、その場に居たはずの扁風の姿が消えていた

 

「司馬徽様っ!」

 

見上げる李通に司馬徽は何も語らず、表情を変えず、羽扇で優雅に扇ぐだけ。本当に手を貸すつもりは無いのだろう

ならば自分が敵の動きを伝えようと、膝から立ち上がろうとすれば、司馬徽は李通の身体を強く抱きしめ

羽扇で口を塞ぐと笑をこぼす

 

「邪魔しちゃダメよ」

 

司馬徽の行動に理解が出来無い李通は、力まかせに振り払おうとするが、血を流し過ぎたのだろう

身体に力が入らず、彼女のなされるがままになってしまっていた

 

このままでは皆が危ない、消えた扁風は一体、何を企んでいるのか。敵の心を見ぬく男の眼であっても、風を真名に持つ

扁風では意味がない。ならば、扁風の動きは男には解っていないはず。兵の中に消えてしまえば此方は追うことが出来ない

 

次々に兵を送り込み、無理に攻めず、囲む様に兵を広げる敵軍に、李通の心は危険だと叫び声を上げる

幾ら遊軍で一馬が暴れまわっているとはいえ、あのように兵を広げられていたら全てに手が回らない

迎撃陣形の極みだからといっても、敵が途切れない。それに、扁風は必ず広げた兵の影に隠れて動いているはずだと

 

李通の眼に映るのは、一馬が的盧と共に敵兵士を踏みつぶし、撫で斬りにする姿。だが、徐々に覆うようにして

敵兵が囲み、動けなくなっていく。力の入らぬ身体を無理やり動かし、羽扇をどけ、一馬の名を叫ぶ

 

だが、耳に聞こえてくるのは一馬の勇猛な声ではなく、背後から聞こえる兵達の叫び声

唯の叫び声ではない、悲鳴。それも絶命の、命を奪われた叫び声

 

振り向けば鳳の指揮する方向。沙和が受け持つ後方の陣から血煙が上がる

背後に回り込んだ、劉備の声を聞いた涼州兵を率いる扁風が、開いた八風の陣形を無理やり兵を次々に押し込んで広げていく

 

男の眼が扁風の心を読み取れない事を利用し、兵を引き連れ経験の浅い鳳の指揮する背後へと回り込んだのだ

しかも、唯、回り込んだのではない。少数を率いて突入。門が開いたのと同時に更に兵を呼び寄せ門を開けたまま固定

男からの指示が出ない事、でなければ軍師は動かない事

 

そして、門は開かれれば櫓までの道を真っ直ぐに開け放つと言う事

 

扁風の指揮によって八風の陣を築く兵は固定され、敵を迎え入れるために空けた道は、舞王への道を創りだす

 

中軍で様子を見ていた蒲公英は「此処だ」と声を殺し、翠に目線を送り、扁風が回り込んだ方向とは逆の方向から

機を合わせてしまえば義兄の眼に捕らえられ、策が見破られると、機をずらして扁風の空けた道を翠と共に飛び込んだ

 

狙いは陣を司る舞王の首。台風の眼さえ潰してしまえばこの陣形は跡形も無く崩れ去る

そう睨んだ扁風は、更に兵に身振り手振りで指示を飛ばし、開いた道を命を賭けて維持せよと命じた

 

「やらせないのーっ!」

 

開かれた道の真中へ、沙和が武器を握りしめ翠達の進撃を防ごうと

騎馬を走らせる二人の前へ出れば手綱を叩き、前へ出る蒲公英

 

槍を構え沙和へ連続の突きを放ち態勢を崩すと、翠は二人を横目に一直線に櫓へと騎馬を走らせた

 

舞王へと槍を構え、突貫する翠。雲兵達は、男へ迫る翠の足を止めようと、身体を無理やり前へと進めるが

扁風の指揮により入り込んだ羌族の兵達が其れを阻む

 

兵達の必死の形相を置き去りに翠は櫓へと近づくと、騎馬の背に立ち

櫓と直撃するという所で騎馬を足場に宙へ舞い上がり、勢いのまま櫓の中央で舞い踊る舞王へと槍を突き出した

 

幾ら櫓が低いとはいえ人一人の身長よりも高い櫓

翠は空中へ身を踊らせ、軍を指揮する鳳の頭上を超えて音もなく、まるで槍の名の通り

 

銀色に鈍く光る閃光の如く、槍を一直線に男の頭蓋に向け放つ

 

「チィッ!」

 

迫る槍に激しいステップで舞い踊る男が脚をゆるめ、ゆっくり振り向けば額の先にピタリと止まる銀閃

軽く押せば男の額に吸い込まれ、脳髄をかき回すであろう穂先

 

しかし切っ先は額を貫く事無く止まり、男はちらりと翠に燃え盛る紅蓮の瞳を向けて一瞥すると

再び足を、雷鳴の如く打ち鳴らし舞い踊る

 

あと一歩の所で槍が届かない、全力で、回転を加えた必殺の槍

たとえ空中で有ろうとも、腰のバネを使った最高の一撃が届かない

 

しくじり、歯の根を噛み締め睨みつける翠の瞳に映るのは、自分の十字槍の穂先

横へ伸びる槍の穂に、男の手から渡された宝剣【青紅の剣】を弦の前に挟み、弓の間を通して受け止める秋蘭の姿

 

槍に押され引き絞られる弓を、秋蘭は夫とは正反対の極寒の殺気を放ち一歩前へ大きく踏み出す

弓を握り締める手を、思い切り自分の身体の移動に合わせて前へと振りきれば

 

弦の反動に押され、銀閃ごと後方に飛ばされる翠

 

「ふぅ・・・」

 

鳳の直ぐ隣に飛ばされた翠は、地面に着地するとゆっくり息を吐き出し、心を即座に落ち着かせると

腰を落とし、槍を中ほどに構え、凄まじい覇気を身の内に蓄えるように抑えこむ

 

最早側に居る軍師の事など翠の頭にはない。至近距離であるにもかかわらず、翠の心は落ち着き放ち

耳から聞こえてくるはずの歌すら遮断する。聞こえるのは、ただ、戦場の息遣い

 

肌に感じる戦場の空気。眼前で舞い踊る男の圧倒されるような表現ですら受け流し

隣で殺気を放つ秋蘭のみに集中し始めた

 

【以前と違う。変わったのはお義兄様だけじゃない】

 

「油断するな、先刻の三人より強い。何より後ろにお義兄さまが居る」翠はそう、自分に言い聞かせると

先ほどまで凪達の機先を制していたのとは打って変わって穂先を微動だにせず、秋蘭の心臓へと切っ先を合わせた

 

どっしりと、地に根を張るかのように構える翠に、秋蘭は雷咆弓を持ち、剣を舞い踊る男へと投げ渡せば

矢筒から一本の矢を取り出し指先で回し始める

 

指先で弄ぶようにくるくると回る弓矢は、次第に加速し風切り音を立て始め、速度を増すたびに秋蘭の殺気が増し

集中力が研ぎ澄まされ、瞳は鷹のように細く、鋭くなる

 

「・・・・・・」

 

槍を構える翠は、耳に聞こえてくる風切り音に集中しはじめる。音が止んだ時、其れが勝負の時だと

 

交差する視線

 

次第に呼吸を小刻みに、絞りながら整えていく翠

 

揺らめく陽炎のような冷たい殺気を放ち、表情を変えない秋蘭

 

神経のすり減るような緊張が走る中、回転する矢が不意にピタリと止まり

 

瞬間、戦場に二つの閃光が交差した

 

 


 
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