No.383257

『改訂版』 真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第一部 其の六

雷起さん

大幅加筆+修正となっております。

ついに袁術軍も動き出し
許昌を挟んで北と南で戦端が開かれます。

続きを表示

2012-02-25 22:50:19 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:4278   閲覧ユーザー数:3393

『改訂版』 第一部 其の六

 

 

揚州 寿春

【エクストラturn】

 荊州から引っ越してきた美羽の下に早馬が到着した。

「お嬢さまぁ♪麗羽さまから連絡が届きましたぁ~♪」

 七乃は踊る様な足取りで美羽に早馬が持ってきた手紙を渡す。

「うははー♪これで 豫州(よしゅう )は妾の物なのじゃ~♪」

「一緒に徐州も頂いちゃいましょう~♪」

 幸せいっぱい夢いっぱい♪気分ルンルン♪の二人は、手に手を取って踊りだした。

「それでは早速許昌に向けて出発なのじゃ♪」

「は~い♪お嬢さま~♪」

 美羽がふと我に帰って考える。

「な~んか忘れている様な気がするのじゃが・・・」

「思い出せないってことは大したことじゃないんですよぉ♪」

「そうか?七乃がそう言うんじゃったらそうなのじゃな♪」

 こうして袁術軍六万が寿春を出発した。

 

揚州 曲阿

【赤一刀turn】

「蓮華!細作から袁術軍が寿春を出たって連絡が入ったっ!」

 俺は剣の素振りで鍛錬をしていた蓮華に走って報告に来た。

「遂に動いたわねっ!数は解る!?」

「六万だって話だ!」

「・・・・・それって今の袁術の兵数の殆んどじゃないの?」

 思春と明命が調べてくれた総数は六万五千くらい。

 これは各町や邑に駐屯している部隊も含めた数だ。

「つまり寿春は本当にもぬけの殻って事だな。」

「馬鹿だ馬鹿だと思っていたけど・・・・・・ここまでとは・・・」

「まあまあ、その御陰でこっちは楽に寿春が手に入るんだ。ありがたく貰っておこうよ。」

「それはそうだけど・・・」

 散々無理難題や嫌がらせをされてきたという想いが有る所為だろう。

 釈然としない物があるようだ。

「それより早く出発しよう!一番乗りをして雪蓮を悔しがらせてやろう♪」

「ふふ、そうね♪それに袁術を追いかけて撃破しないと・・・桃香たちは袁術を迎え撃つのに間に合うかしら・・・」

「俺の予想じゃ迎え撃つのは緑のはずだ。兵数は二万って処かな?」

「大丈夫かしら・・・・・いくら我々と挟撃すると言っても、最初に六万を相手にすることになるわよ・・・」

「将は恋と鈴々辺りだろうな。」

「それは・・・・・二人の旗を見た敵兵がその場で逃げ出しそうね・・・・」

 汜水関で猛将華雄を退けた『燕人張飛』の名は知れ渡っている。

 更に、虎牢関で散々にやられた『飛将軍』。

 二人は袁術の兵にとって修羅か羅刹の様に映るに違いない。

「むしろ俺達の方が引き返してきた袁術軍を迎え撃つ事になりそうだぞ。」

「それはそれで願ってもない事よ。この手で袁術を叩き伸めせるのだから♪」

 ニヤリと笑う蓮華を見ると雪蓮の妹だなぁと改めて思う。

 こうして俺達は先ず寿春を目指して出発した。

 

定陶

【紫一刀turn】

 定陶に着いた俺が、華琳の書簡を渡し挨拶する為に指揮官と顔を会わせたのだが・・・。

「君たち二人だったのか。」

「?・・・どこかでお会いしましたっけ?」

 と、戯志才さん。

「なんか見覚えが在るような気が・・・」

 と、程立さん。

「ほら、陳留の近くで盗賊に襲われてる処を助けて貰った・・・」

「すみません・・・そういった状況はほぼ日常だったもので・・・」

 まるで特撮ヒーローみたいな日常だな。

「じゃあ、程立さんの真名をいきなり呼んで怒られた・・・」

「ああっ!思い出しましたっ!」

「おぉ!あの時のお兄さんですかぁ。」

「あの時は本当にゴメン・・・・・俺はあの時この大陸にやってきた直後だったから真名の事知らなくてさ・・・」

 二人は俺の事を眺めた。

「今の言動とその姿・・・あなたが噂の『天の御遣い』なんですね。」

「あの時はビックリして取り乱してしまいましたが、もう気にしてないですからぁ。」

「そう言ってくれると有難いよ。今では趙雲の真名『星』を預からせて貰えるくらいにはなってるからさ。」

「ほう、あの星が真名をあなたに・・・」

「星ちゃんは今劉備軍にいるはずですがぁ・・・なるほどぉ、劉備軍とはやはり同盟を結んだのですねぇ。」

「ああ、正式な発表は今頃華琳が陳留でしているはずだ。この手紙にもその事を含めて今回の作戦の概要が書いてある。」

 二人は手紙を受け取り読み始めた。

「・・・これは・・・・・・・成程・・・」

「ほうほう・・・・・そういう事ですか・・・」

 俺は黙って手紙を読み終わるのを待った。

「了解しました。そう言えばまだ名乗っていませんでしたね。私は郭嘉、字は奉公と申します。」

「こちらも了解しましたぁ。ええと、姓は程、名は昱、字ほ仲徳っていいますぅ。」

 郭嘉に程昱ね、また三国志で有名な名前が出てきたな。

「俺は北郷一刀。よろしく、郭嘉、程昱。」

「よろしくお願いします。北郷殿。」

 

「よろしくなのですよぉ。それで我々は今晩お兄さんのお相手をするんですねぇ。」

 

「そんな事は書いて無いだろ!」

 何を言い出すんだ一体!?

「あれぇ?噂通りの人なら監査官の立場を利用して強要するものかと・・・」

「一体どんな噂だよっ!」

 

「種馬将軍。」

「天から降ってきたチOコ野郎。」

 

「・・・・・・もう直ぐ星もここに来るから、俺のことは彼女から聞いてくれ・・・」

「冗談ですから気になさらずにぃ。曹操様からも真名を許して貰ってるようですし、一応信用してあげましょう。」

 ・・・一応ね・・・。

 それに許して貰っているのは真名以外に、今回俺が提案した特別な策を行う事もだった。

 

陳留

【愛紗turn】

「では陣容は今話した通りよ。」

 華琳殿の話を聞いた曹操軍の武将達が動揺している。

 それはそうだろう。

 いくら同盟相手の武将とはいえ最前線に五千の兵を任せるのだから。

「あのう華琳さまぁ・・・どうして私がここの守りで愛紗が本陣なのでしょう?・・・」

 春蘭の言は最もだ。

 私は敵軍の兵数を聴き、少しでも早く駆け着け、守りの役にでも立てればと思っていたのだ。

 確かに兵の命を玩具の如く見る袁紹に一太刀見舞ってやりたいとも思っていたが・・・。

「春蘭は私と一緒に陳留を守るのは不満なの?」

「いえ!決してそのような・・・・・ただ私も出来れば前線で剣を振るいたいなぁと・・・」

「そう?じゃあ愛紗と交代させてあげましょうか?」

「ちょ、ちょっと待って下さい華琳様っ!?そうなると愛紗が華琳様と一緒に・・・」

「愛紗とはもっとじっくり話がしたいと思っていたのよねぇ・・・特に閨で。」

 な!?何を言い出すのだ華琳殿は!?

「お、お待ちください華琳様っ!!・・・・・(私は戦いたいけど行くと愛紗が華琳様と・・・行かなければ華琳様の事は安心だけど戦えなくて・・・・・・)」

 何かブツブツ言い始めたぞ・・・大丈夫なのか?

「しゅ、秋蘭!私は一体どうすればいいのだぁ!?」

 遂には妹に泣きついてしまった。

 華琳殿はそんな春蘭を見てニヤニヤしてるし・・・。

「姉者は華琳様の仰る通り、この陳留を守ればいいのだよ。華琳様、姉者の困っている姿は微笑ましいですが、皆も納得が行くようそろそろ説明してあげて貰えませんか?」

 秋蘭には理由に察しが付いているようだな。

「仕方が無いわね、時間も無いし。」

 華琳殿は表情を引き締め説明を始めた。

「まず最初に攻撃してくる敵は、突出して勢いだけで突っ込んでくる連中になるでしょう。」

「それはつまり袁紹の居る本隊の到着を待たずに、勝手に攻撃を開始すると?」

 とても正規の軍隊の動きとは思えず、つい声にしてしまった。

「見込んだ通り察しがいいわね、愛紗。」

「あ~・・・なんか分かって来たで。虎牢関でヤツら相手にした時のこと思い出したわ。」

 そう言えば霞は一度袁紹とは、やりあっていたのだったな。

「もしかしてまたアレか?」

 以前に袁紹が出した『 作戦( ・・・・) 』を思い出した。

「まず間違いなくアレだな。」

 秋蘭も同じ考えだったか。

「そう、どうせまた『華麗に前進』とかしか指示を出していないでしょう。そうなれば官渡だけではなくこちらにもはみ出して来るのが間違いなく居るわね。兵数の少ない陳留に春蘭を配置するのは春蘭なら支えてくれると信じているからよ。」

「か、華琳さまっ♪お任せ下さい!この夏候元譲が一人で陳留を守ってご覧にいれましょうっ!!」

「思う存分暴れてやりなさい、春蘭♪」

「御意っ!!」

 成程、華琳殿は春蘭を信頼しているのだな。

 まあ、手綱を握りやすい場所に置いたというのも有るようだが。

 ふふ、主従愛か・・・私も早く桃香様とご主人様の下に戻れるよう、暴れさせてもらうとしよう。

「皆、よろしく頼む。皆の連携の妨げにならぬよう、そして劉備軍の青龍刀と呼ばれた私の闘いを御覧に入れよう!」

 

白馬

【エクストラturn】

 華琳達が許昌を出発した二日後。

 麗羽は遂に黄河を渡り、白馬へと入った。

「文醜さん、顔良さん。」

「なんですかぁ、姫ぇ?」

「どうかなさいましたか?」

 麗羽の顔が少々不機嫌そうなのに気付き問質すと。

 

「華琳さんの軍どころか先に渡河した兵隊たちまで (なん )でいないんですのっ!?」

 

 確かに先鋒を任せた部隊はどこにも見当たらなかった。

「曹操さんの軍はたぶん防衛線をもっと奥・・・たぶん官渡あたりにしたと思います。」

 

「味方の先鋒は姫が『敵の所まで華麗で、雄々しく、勇ましく、優雅に前進なさいっ!』なんて言うから敵が見えるまで前進を続けてるんですよ。」

 

 本当なら華琳にこの大部隊を見せ付けて驚かせてやろうと考えていたのに予定が狂ってしまったようだ。

「・・・・・・・・まあ、しょうがありませんわね。どうせ先鋒は元盗賊ですし・・・折角ですから文醜さん、あなた指揮を取ってあのクルクル小娘に一泡噴かせておやんなさい。」

「おおっ!いいですねぇ!兵の勢いに乗せてガツンッ!!っての。あたいは好きだなぁ!」

(それじゃあ、今までと変わんないよぅ・・・・・)

 斗詩は嘆きつつも、それで河北四州を手に入れたので反論できなかった。

 

官渡

【エクストラturn】

 遂に官渡の砦から敵先鋒の上げる砂煙を確認した。

「予想通りだな、勢いだけで突っ込んでくる。」

 官渡部隊の大将である秋蘭は敵の動きを冷静に見詰ていた。

「なんやねんアレ・・・・・・ホンマに虎牢関の時と変わらんやないか・・・」

 霞が呆れる通り、またしても陣形などまるで無い集団が走ってくる。

「装備があの派手な鎧ではないようだから、新たに加わった元盗賊といったところなのだろう。」

 愛紗が覗く望遠鏡からでもさすがにこの距離ではどんな装備かまでは判らない。

 しかし、袁紹軍のキンピカの鎧は遠目でも判断が着くので判りやすかった。

「よし!では迎え撃つぞっ!!流琉は左翼、愛紗は右翼、霞は遊軍を、私は中央で指揮を取る!真桜、いくら新兵器の組み立てで後衛にいても警戒は怠るなよ。」

「わかってますって秋蘭様、新兵器のお披露目すんのがウチの仕事や!それまでアレには近付けさせませんて。」

 真桜は作業途中でこの場に来たので顔や体のあちこちが油で汚れていた。

「ところで隊長の方もなんかやらかす気ぃらしいですけど?」

「ああ、何でも今の我々にしか無い、もう一つの秘密兵器だという話だ。」

「?ウチそないなもん隊長にこさえた記憶無いけどなぁ・・・・」

「私も説明は受けていないし、華琳様も半信半疑だったな。失敗しても戦況に影響しないからと許可が降りたらしい。」

 秋蘭はその『秘密兵器』の事は考えない方向で作戦を立てていた。

 紫一刀の作戦が上手く行ったならそれに合せ対応すればいいと考えている。

「私はご主人様を信じる!」

 愛紗が力強く断言した。

 その声に全員が驚く。

「どうしたのだ愛紗?言ったのはうちの・・・紫北郷だぞ。」

「ご主人様は『三人とも同じ北郷一刀だ』と仰った。ならば私にとってどのご主人様かなど関係ない!」

 愛紗の瞳は真剣だ。

「ご主人様は定陶に向かわれる時に『場所は離れるけど必ず援護する』と言われたのだ。」

「・・・兄さま・・・・・三人とも同じ・・・」

 流琉は愛紗の言葉を噛み締めている。

「そやな・・・ウチは一刀に会って日が浅いけど三人が同じ人間や言うのはよう解るわ。」

 霞も頷いて愛紗を見た。

 真桜は少し考えてから笑った。

「ウチは他の隊長と話してへんからよう判らんけど、反董卓連合の時のこと考えたら納得やな。きっと今回もオモロイ事してくれるんやろ。」

「さあ、おしゃべりはこの辺でお開きだ。各自配置に着け!」

「「「応っ!」」」「はいっ!」

 秋蘭の号令に全員が走り出した。

 

陳留

【エクストラturn】

「我ら曹操軍の精強さを袁紹軍に見せつけてやれっ!!」

 春蘭の檄に答え兵達が敵軍に襲いかかる。

 春蘭自身も七星餓狼を振るい敵兵を薙ぎ倒していった。

 調子に乗って突出しそうになる度に季衣が連れ戻している。

 いつもなら季衣の言葉が耳に入らないところだろうが、今回は秋蘭が季衣に魔法の言葉を伝授していた。

「春蘭様ぁっ! 華琳様が(・・・・・・・・ )あっちの敵を倒せって言ってますよぉ!!」

「なにぃ!?判った!行くぞ季衣っ!!」

「は~い♪」

 今回は華琳の見ている所で戦っているのが分かっているので、実に素直な春蘭だった。

 こうも頻繁に華琳からの指示が有ることに春蘭は疑問に感じるどころか、自分が常に華琳に注目されていると思い込んでいる。

 こうなると春蘭の勢いは増々加速していき、今や恋の本気モード並のパワーを発揮していた。

 しかし兵の統率が疎かになってしまって、それをフォローする桂花の負担が増大していた。

 遂には華琳も指示を出して桂花を支えたが、余りにも広範囲に敵が分散するので忙しさは半端ではない。

「全く!支えきれない訳では無いけど、面倒くさくてしょうがないわねっ!」

 陳留の城壁の上でボヤく華琳の耳に、戦場には似つかわしく無い音が聞こえてきた。

 戦場全体に何処からともなくその音・・・いや、音楽が響き始めた。

 

『・・・・・希望のそらへと 舞い上がれ 夢 蝶ひらり・・・・』

 

『ホアアアアアアアーーーーーーーーーーッ!!ホアアアア!!ホアアアアアアーーーーーーッ!!!』

 兵士達から突然歓声が上がった。

 この事態に敵兵は動揺した。

 しかしそれは歓声に驚いたからではない。

「・・・・・おい・・・・・この歌って・・・」

「・・・まさか・・・・・曹操に討ち取られたはずじゃ・・・・・」

 そう、青州で麗羽に降った元黄巾党の大部隊。

 それ以外にも盗賊になっていた元黄巾党員などが動きを止めていた。

 

『みんな~!私たちは今、曹操さんの所で活動してるんだよ~』

 

 天和の声が響きわたる。

 

『曹操軍に味方すれば、またちぃ達の舞台が見れちゃうよー!』

『私たちと一緒に戦いましょうっ!』

 

 続いて地和と人和の声も聞こえてくる。

 この声は官渡にも届いていた。

 

『それじゃあみんな!いっくよ~!!』

 

『ホアア!ホアア!ホアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーッ!!!』

 再度曹操軍から歓声が上がる。

 

     *(著者注:コメントにご忠告がございましたので歌詞に伏字を入れてみました)

『OOはだってだって最強!

    世界だってだってOOOの

       ほんとだってだって OOOよ

 OO、愛でOOOOよ!(はいっ☆)』

 

「・・・ほ、本物なのか?」

「ど、どうする?」

「何を言ってるンスかっ!お前らっ!!」

 戸惑う元黄巾を怒鳴ったのは曹操軍の兵だった。

「張三姉妹の歌声が聞き分けられないなんて!それでも追っ掛けっスか!?」

「お、お前は・・・・?」

「俺も元黄巾党っス!曹操軍に来れば、また舞台が見れるンスよっ!!」

 拳を握り締め力説する。

 

『溢れそうなOOO OOっていたい!

   OOOを出したら OOOよ!OOO (はいっはいっはいっ)

      OOOOOな夜は(きゅん) OOOを想う

 そしたら不思議 OOOれるの(天!地!人!和)』

 

「これを見るっス!」

「・・・こ、これはっ!人和ちゃんっ!!」

「なんて精巧な姿絵だっ!!」

 人和の写真に愕然とする二人。

「これは『ぶろまいど』という天の国の力で作り出された姿絵っス!これ以外にも色々な物が手に入る直営店が許昌にはあるんスよっ!!」

 

『天下無双のOOだって

    ヤバイ方がもえるって!

       OOOOなんてしないって!

 キタキタキタキタ OOO

    

OOはだってだって無敵よ!

   OOOだってだってOえるの

      はんぱないってないって OOOよ

 OO、みせてあげるわ(ちゅっ☆)』

 

「俺は曹操軍に鞍替えするぞおおぉっ!!」

「やってくれるぜ曹操様よおぅ!!天和ちゃん達の命を救ってくれるなんてよぅ!!」

「さあ!俺達の追っ掛け魂を見せてやるっスよおおぉっ!!」

 

『みんな大好き~!』

 

『天和ちゃああああああああん!!』

 

『みんなの妹っ!』

 

『地和ちゃあああああああああん!!』

 

『とっても可愛い・・・』

 

『人和ちゃあああああああああああん!!』

 

『わたしたちの歌を聞けええぇぇーーーーーーーーー!!』

 

『ホアアアアアアアアアア!!ホアアアアアアアアア!!ホアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

定陶

【紫一刀turn】

「これぞ天の国で編み出された戦法っ!!名付けて『数え役満☆シスターズ・アタック』だっ!!」

 俺はガッツポーズで声を張り上げていた。

 予想通りの戦果を上げたこの策。

 袁紹軍に黄巾の残党が大量に参加してると知って、急遽コレを実行に移したのだ。

 シスターズの妖術で遠くまで届くようにした音声を、真桜が造った超大型スピーカーが最大ボリュームで増幅している。

 元々ステージ用に使っている機材だが、普段は音量がデカすぎるのでかなり絞って使っていた。

「すごいの~。敵がどんどんこっちに寝返っていくのぉ・・・」

 どうだ紗和! (おとこ )達の熱き魂はそう簡単には冷めないぞっ!!

「定陶では大成功ですが、陳留や官渡まで歌は届いているのでしょうか?」

「ちぃの話では大丈夫って言ってたけど、実験なしのぶっつけ本番だからなぁ。」

 凪の心配にそう答えた。

 一応スピーカーの向きは陳留、官渡を一直線で結ぶように配置したけど・・・。

「官渡と陳留の袁紹軍から見ればこの定陶が後方になります。これだけの騒ぎになれば歌が届いてなくても相当混乱するはずですよ。」

 郭嘉の言葉に少し安心した。

「お兄さんの策を聞いたときは半信半疑でしたけどぉ、これは脱帽ですねぇ。」

 程昱はニコニコしながら戦場・・・いや、ライヴ会場を眺めていた。

「これも郭嘉と程昱が兵の配置や采配をしてくれたおかげだよ。」

 俺がシスターズのステージを造る指揮に集中していた為、その辺が何も出来なかった。

 シスターズの護りに五千を配置して、残りを定陶守備に配置。

 敵を引き付け、戦闘が始まる直前からライヴを開始したため、この定陶では殆んど戦闘行為が行われていない。

 実際、シスターズ守備の部隊は完全に観客と化し、定陶守備の部隊はファンクラブへの勧誘員となっていた。

「申し上げます!劉備軍三万が援軍に到着致しました!!」

 伝令の声に全員が振り返った。

「よおぉし!これで負けは無くなった!」

「後は南の袁術撃破の報が入れば本格的な袁紹撃退戦ですね!隊長!!」

 

豫州 許昌南方百里(約40km)

【エクストラturn】

 一本の川に架かる橋が有った。

 東西に流れる川はそれなりの幅と深さがあり、普通ならば渡し船が必要な場所である。

 比較的川幅が狭い場所に架けられたこの橋は、袁術軍が許昌を目指す場合必ず通過する場所だった。

「は~やく来い来い!敵のヤツ~♪」

 鈴々は丈八蛇矛を担いで、 暢気(のんき )に歌っていた。

「・・・・・・来たよ。鈴々。」

 恋も方天画戟を担ぎ、南を見つめている。

 二人は川の南岸、橋の入口近くに立っていた。

 橋の左右の柱、その天辺には深緑の張旗と深紅の呂旗が風にたなびき翻っている。

 二人の姿はまるで門を守る阿吽の様・・・というには多々緊張感がなかったが、その力は万夫不当。

 初めは砂煙、徐々に行軍してくる袁術軍の姿がはっきりしてくる。

 しかし袁術軍は二人まで後一里(約400m)の所で止まってしまった。

 

「なぁんで止まるのじゃ!?さっさと進むのじゃ!」

「そ、それが・・・橋に深緑の張旗と深紅の呂旗が・・・橋の入口には張飛と呂布と思しき人影も・・・・・」

 伝令の兵は明らかに怯えていた。

「りょ、呂布さんっ!?」

「や、ヤツは劉備軍に降ったハズじゃろう!?なんでこんな所におるんじゃ??」

 豫州の後は徐州に攻め込むつもりだったのに、まるで恋の事を考えていなかった美羽と七乃だった。

「そうだ!弓!矢を 射掛(いか )けましょうっ!!」

「そ、そうじゃ!直ぐに矢を放つのじゃっ!!」

「りょ、了解しましたっ!!」

 命令は即座に実行された。

 一里(約400m)離れた場所から・・・。

 秋蘭や祭、そして漢中に居る紫苑、桔梗ならいざ知らず、袁術軍の一般兵にこの距離では当てるどころか届きさえしなかった。

 しかし恐怖に駆られた彼らにそんな事は関係なく、ひたすら矢を射ち続けた。

 かくして、鈴々と恋の前には矢が大量に降り積もっていく。

「・・・・・・あいつらは何がしたいのだ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・わかんない。」

 そのまま待つこと四半刻、遂に矢を射ち尽くした袁術軍の前には自らが作り出した矢の草原が出現していた。その数約二十万本。

 望遠鏡で覗いていた美羽は無傷の二人を見て驚愕した。

 片目で覗く望遠鏡では遠近感が掴めないので、美羽には降り注ぐ矢の中に居る二人が無傷で立っているとしか思えなかったのだ。

「な、七乃・・・・・・や、ヤツらは本当に化け物なのかや・・・・?」

「そ、そんな・・・そんな・・・・」

 動揺する袁術軍を無視して恋が落ちている矢を一本拾い上げた。

 その矢を振り被って素手で投擲すると。

 

ぷす!

 

 美羽の冠を見事に貫いた。

「にょわあああああああああああぁぁぁぁっ!!」

「お、お、お嬢さまああああああああああぁぁぁぁっ!!!」

 美羽の頭には刺さらなかったが、矢は銀の冠を突き抜け ()(矢の棒の部分)の中心で止まっていた。

 まるで新たな髪飾りの様に美羽の頭の上で自己主張する矢。

 

「・・・・・・・残念。外れた。」

 

 次の瞬間袁術軍六万は蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した。

 本来まとめなければならない美羽と七乃が率先して泣き叫びながら逃げ出していく。

 

【緑一刀turn】

 川の北岸で隠れて待機していた俺とねね、詠が率いる二万八千の軍は慌てて追撃を開始した。

「なんなのあいつら!?一体何しにここまできたわけ!?」

 詠の言うことも最もだが、ここまで恋の存在が袁術軍のトラウマになっているとは・・・。

「恋殿が相手をするならば、この状況は充分想定済なのです。」

 偉そうにふんぞり返っているが、当然ハッタリだな。

「ご主人様、あの矢は私が輜重隊を使って回収させておきますから急いでください。」

「頼むよ月。」

「はい♪」

 俺達は急いで橋を渡るがこの人数が橋だけで渡り切るには相当時間が掛かってしまう。

 隠してあった船や ( はしけ)を使い対岸への兵の輸送も開始した。

 俺が橋を渡りきった時には、鈴々と恋は既に兵を引連れ追撃に向かっていた。

「雪蓮達がどこまで来てるかで勝負が決まるな、こりゃ。」

 

官渡

【エクストラturn】

「なんだこの歌!?」

 猪々子は何処から聞こえてくるのか分らない歌と、それを聞いた兵が次々と寝返っていくのに混乱していた。

「あぁ~!こりゃもう撤退するしかないかぁ。」

「そこに居るのは敵将文醜と見たっ!!」

 猪々子が諦めた処に愛紗が一騎で突っ込んでくる。

「我が名は関雲長っ!かつては幽州の青龍刀と呼ばれた我が名を知らぬとは言わさんぞっ!!」

「げぇっ!関羽!?なんで関羽がこんな所にいるんだよっ!?」

「いざ尋常に勝負っ!!」

「おもしれぇっ!!やってやろうじゃねぇかぁっ!!」

 猪々子は斬山刀を力任せに振り下ろす。

 対する愛紗は拠けずに青龍偃月刀を下段から一気に振り抜いた。

 

カキーーーーーーーーン!

 

 まるで金属バットの様な音が響いたかと思うと、猪々子の姿は馬の上から消えていた。

「・・・え?ぶ、文醜!何処へ行ったっ!!」

「愛紗さん!文醜さんなら今の一撃で空に飛んで行っちゃいましたよ・・・」

 流琉が空を指差し苦笑いをしていた。

 

烏巣

【エクストラturn】

「あら?・・・ねぇ顔良さん、あれは何かしら?」

 麗羽が空を指差すと、そこには金色の物体がこちらに向かって飛んで来ていた。

「何でしょうねぇ、いったい・・・」

 

ヒュルルルルルル・ドゴオオオォォォン!!

 

 斗詩が眺めていると、それは自分たちの前に派手な音と共に落っこちた。

「・・・イテテ・・・チクショウ関羽のやつ!この次は負けねぇぞっ!!」

「文ちゃんっ!?」

 落っこちてきた猪々子は、直ぐに立ち上がって汚れを払っている。

「文醜さんじゃありませんの。どうしたんですの?飛んで帰って来るなんて。」

「・・・麗羽様・・・・・もっと驚きましょうよ・・・」

「いやあ、それがですね。最前線の官渡はもうダメなんで戻ってきたんですよ。」

「そうですの。ではこの烏巣に陣を張って明日の戦いの準備をしましょう。」

「は~い。」

「・・・・・・・・・・・・・」

「どうしたんですの顔良さん?お返事が聞こえませんわよ!」

「は、はい・・・・・わかりましたぁ・・・」

(私がおかしいわけじゃないよね!私はまともだよね!)

 斗詩は涙目になりながら自分に言い聞かせていた。

 

 

あとがき

 

 

数え役満☆シスターズ野外ライヴ会場から

お送りいたしましたw

元版では出番の無かった

張三姉妹が大活躍

使用した曲はアニメ版キャラソン

「YUME 蝶ひらり」

「あいはだってだって最強!」

お持ちの方はBGMに聴きながら読むと

より楽しめると思います

元ネタは当然

マクロスですw

 

稟&風

次回に星との再会シーンを

予定しています。

 

愛紗参戦

正史や演義で有名なエピソード

猪々子との一騎討ちも

やって貰いました

 

鈴々&恋

長坂橋の代わりになる話

だったはずなんですが

袁術軍では役者不足だったようですw

書き始めるまでは鈴々の

格好いいシーンも考えていたというのに・・・。

気がつくと

本来朱里がやるべき

矢を手に入れるエピソードに

変わってしまいました。

 

距離の単位

一里=約400mは

三国志の時代の物を

採用しています

 

袁家の人たち

ギャグキャラ体質を手に入れたようです

今後はもうそう簡単には

死ぬことは無いでしょうw

 

貧乳党の活躍は

まだ少し先になりそうです

もう少々お待ちくださいw

 

 


 
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