No.372322

恋姫無双 ~決別と誓い~ 第一六話

コックさん

誤字脱字指摘お願いします。

2012-02-03 16:14:35 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:3373   閲覧ユーザー数:2953

~警告~

今回も史実とは異なる描写があります。それでいいという方はどうぞ読み進めてください。

 

 

~another view~

 

首脳会談が終わり同盟の内容はさらに濃密となった。

 

特に呉が提示した『新同盟大綱』の意見が大きく反映され、蜀の政策決定能力等が呉と比べて劣っているのが露呈された形となってしまったのだ。

 

中でも同盟でなく蜀、呉による連合国家として包括的な憲法を規定することにより貿易、外交面においても法制度の充実を図る、教育の推進などといった新たな制度が盛り込まれることが決まり、今後蜀では法整備のため社会調査委員会を開くことが正式に決まった。

 

会談が一段落つき、労をねぎらうということで会食がされることととなった。

 

この会食は少々変わっており、座って食べるのでなく立って自分の欲しいものを食べながら皆と会話するといった蓮華さんが提案したもので、最初私たちは何故それをするのかが理解できなかったが私はそれを後悔することとなった

 

今までのような厳かな雰囲気で食事をするのではなく、立って食事をすることで友好的な雰囲気のなかで呉と蜀の首脳陣、文官が誰とでも食事をし、互いに和やか雰囲気の下で意見を言ったり、なんでもない日常的な会話ができている。

 

私はこの会食が終わりに差し掛かったころ蓮華さんと話す機会を得れた。

 

「蓮華さん、このような会食の方法をどうやって思いついたのですか?」

 

私が聞くと蓮華さんは少しバツが悪そうな顔をしてこういった。

 

「これは私が考えたわけではないの」

 

「では冥琳さんですか?」

 

「いいえ・・・・。違うわ、天の御使いと呼ばれていた人間が発案したのもよ。たしか『りっしょくぱぁーてぃー』と彼は言っていたけど・・・・」

 

「そうだったんですか・・・」

 

「彼の故郷では友人や大切な行事などうを行うときによく使われると言っていたけど・・・・」

 

「そういえば今回でもそうでしたが、天の御使いが蓮華さんと同席していませんが何かあったのでしょうか?」

 

そう訪ねたときの蓮華さんの目は一瞬哀しみに包まれたように見えたが直ぐに元の表情に戻る。

 

だが彼女の声はいつものような温厚な態度ではなくどこか無機質で冷たい感じがする態度であった。

 

「・・・・彼は、天の御使いは死んだわ」

 

 

「・・・・ほんとですか?」

 

彼女は何かを押しつぶしているような辛い顔でそう言い頷くだけだった。

 

私も御使いと蓮華さんとの間で何らかの確執が生じているのは容易に判断出来たが、これ以上突っ込むのは無礼だと判断し深入りは避けた。

 

それよりも私はあんな別れかたをした魯粛さんの進捗が気になり、蓮華さんに聞くことにした。

 

彼とはあの会談のあと幾つか会う機会はあったが、あくまでも事務的な応対のみで以前のように私的間での話というのは全く行われなかった。

 

 

彼はそれからというものの私のことを侮蔑をこめた視線で私と接するようになってさえいた。

 

「魯粛はあくまでも代理であるから現職に復帰したわ。今頃は南方方面の基地に向かって馬を走らせているはずよ」

 

「・・・魯粛さんは怒ってはいませんでしたか?」

 

「・・・・憤っていた。珍しいことよ、魯粛があんなにおこるのは。彼が代理を務めた会談が終わった夜、私の部屋にわざわざ来て

 

≪二国間での外交交渉は今後一切関与しませんし、するつもりありません。今後は養成学校での有能な若い人材を使ってくれるよう一考願います≫

 

と開口一番そういったの。私が何かあったのか?と聞くと

 

≪私が一番信頼していた人間が私の嫌いな人間と同じことを考えていたことに動揺し、激しく失望をしたからです≫

 

とこういってそれ以上口を開こうとはしなかったわ。彼が貴方たちとソリが合わないのは分かってはいたけれど・・・・」

 

と申し訳なさそうな顔をしてそう仰っていたのを聞き彼がどれだけ私たちを嫌っているのかを今更ながら理解できたとともに私が彼の信頼をどれくらい踏みにじってしまったのか痛感していた。

 

 

あの時彼が私に向かって放った台詞が私に重くのしかかる。

 

≪貴方たちは袁術とさほど変わらない偽善者の塊だ≫

 

≪その理想に苦しむのは誰なのか貴方は考えたことがありますか?≫

 

確信をつかれギクリと胸が踊った。

 

私は水鏡先生の下で勉学にひたすら励んだ。

 

不安定な世の中を変えるためという大義名分があった。

 

しかし体の小さな私では武器をもって戦うことは難しかったし、人殺しになりたくはないという甘い考えがあったのかもしれない。

 

しかし私にしか持てない『武器』を持ってみせるとそう意気込んでひたすら塾にある本を全て暗記するほど読みあさった。

 

その結果、塾で一番の秀才と呼ばれ今では列強のひとつである蜀の政治での最高責任者までのし上がった。

 

ただ戦闘で私が作戦を同じ塾にいた同僚で仲間である雛里ちゃんと作戦を立案するが、釈然としない何かが私のなかにあるというか心の中がポッカリ穴が空いたというかそんな奇妙な感覚に囚われることが私にはあった。

 

自分の作戦で人が殺し合い、そして死んでいく。

 

私にはそれが今迄実感できていなかったんだと思う。

 

いや、正確に言うならば桃香様の掲げる理想に同調することでその罪悪感、恐怖から私は無意識のうちに顔を背け逃げていただけだったのかもしれない。

 

偽善者という言葉はあたっているといえる。

 

 

私は今のままでいいのだろうか?

 

蜀と呉の明らかな差。

 

統治、政治、教育、経済全ての制度が遅れていたのが明らかとなったとき、そんな疑問というか焦りというかそういったものに支配されるのは時間が掛からないことだった。

 

≪朱里。人というのは常に前を向いて進まなければならない生き物なの。現状に満足することなく探究心と向上心をもって物事にあたらなければならない。

 

現状に満足しきっている人間の行く末は破滅しか残されていない。あなたにはそういった人になって欲しくないの≫

 

塾を出ていくとき水鏡先生のそういったのを覚えている。

 

このままでは私は現状に満足し精進することを忘れ、そのままこの国と共に朽ち果てていくだろう。

 

私はそれに耐えられるのだろうか?

 

以前ならそれでいいと答えていたかもしれない。

 

曲がりなりにも国を任される程にまで上り詰め、呉に遅れているにせよ国民に安息を与えているではないかと。

 

しかし私は変わってしまった。彼の放った、たった一言で。

 

 

「蓮華さんお願いがあります」

 

「なにかしら?」

 

もう偽善者にはなりたくない。

 

魯粛さんに自分の成長した姿をもう一度見て欲しいという切実な願いからきた台詞であった。

 

「私と数名の文官を共に建業まで連れていってもらえませんか?」

 

「それは貴方が私の下に寝返るというふうに受け取ってもいいのかしら?」

 

「正確に言うとそうではありません。私は今回の会談で改革が必要だと痛感しました。ですが我々にはまずどのようなことから変えていけばいいのかが残念ながら見えてきません。

 

よって呉に長期で滞在することで諸制度を学び我が国に持ち帰っていきたいと考えているんです。厚顔なのは承知の上です。どうか我々に力を貸して下さい・・・」

 

「何を・・・・!?」

 

蓮華さんが驚きと困惑を表していた。

 

それもそうだ。私は今、彼女の前で土下座をしているのだから。

 

天下の諸葛亮が土下座をするという行動が辺にどよめきを起こさせる。

 

「どうしたの?一体何が・・・・、朱里ちゃんなにを・・・・?!」

 

騒ぎを不振に思いやってきた桃香様は驚きを隠せないでた。

 

自慢ではないが私は主君の桃香様にさえ土下座をしたことがない。

 

それぐらい私は本気だった。

 

「お願いします!どうか私を建業に・・・・」

 

蓮華さんは暫く困惑していたが、ため息をつく。

 

「貴方をそうさせているのは魯粛ね?」

 

「・・・はい!」

 

「では貴方は彼がいるから建業に行きたいのかしら?」

 

「違います。

 

私は彼に何も知らない偽善者であると言われました。

 

彼は言いました。私の事を理想に目が眩み現実が見えていない愚かな人間であると。

 

彼の言うとおりです。この国では私の意見に誰も反対してくれない。どんな案を出してもさすがは諸葛孔明だのとお世辞を言うだけで誰も私の考えに疑問を持って当たってくれる人がこの国にはいないのです。

 

しかし呉は違う。私の地位を考えることなく率直に意見、疑問を提示しそして多義多論へと発展させてくれます。

 

私は呉に行って制度も学び、蜀に取り入れこの国を新たに発展させたいという考えはあります。ですが私や文官たちの成長に不可欠なのが貴方の国なのです。

 

お願いします。どうか我々を建業に・・・・」

 

地面に頭をつけ懇願する私を桃香様はどのような心境で見ているのだろうか?

 

しかし私はそんな事を気にすることなくなんども頭を地面に擦りつける。

 

「朱里。頭を上げなさい」

 

「いいえ。私は蓮華さんが良しと言うまでは・・・・」

 

「呉の文官試験は難しいぞ?貴方はともかく他の文官はついていけるのかしら?」

 

私の言葉を遮って出てきた台詞は思考を一時停止させてしまうものであった

 

「え?」

 

「貴方の心意気十分伝わったわ。貴方がそう考えているなら付いてくる者も同じ考えなのでしょう」

 

「あ、ありがとうございます!!!」

 

「ちょっと蓮華さん!!私たちの軍師をそんな勝手に!!そもそも朱里ちゃんがいなくなったら私たちが・・・・」

 

「劉玄徳!!!」

 

不満を言う桃香様にいつもとは違う雰囲気をまとった蓮華さんが大声を張り上げた。

 

「!!!!」

 

「今回お前の側近がこのような行動を起こした原因がお前にあるというのに、そのような戯言をまだ言うか!!」

 

「わ、私が・・・?」

 

「そうだ。お前は朱里に苦言を呈するぐらい能力がある人材を育ててこなかった。我々はいずれ年をとり死んでゆく。そのとき残された若い世代が道を切り開いていく。

 

お前はそれをしなかったばかりか有能な部下を持つばかりに現状に満足しこの有様だ。お前はこの現状を打開する事を考えようとはしなかったのか!?」

 

「・・・・・・」

 

桃香様の顔がサッと青ざめる。孫伯符に匹敵する風格を持った孫仲謀が劉備をいや会場全体を完全に飲み込んでいた。

 

「次の会談で国ではなくお前自身の成長の兆しがないのなら朱里は正式に私たちの傘下に入ってもらい、この同盟は破棄させてもらう」

 

涙ぐむ桃香様に誰も声をかけられない。今迄指摘できなかったことを指摘された主要な文官たちはただただ頭を垂れうなだれるしかなかった。

 

翌日、私を含む一五人ほどの有志たちが帰還する孫権たちと共に建業へと向かっていくことになった。

 

~another view end~

 

 

俺たちの部隊は孫権の護衛任務に就く人間をある程度選抜すると、魯粛と共に転属先の南方基地へと向かった。

 

魯粛三佐は冥琳の代理を見事務めた功績で二佐に昇進していたが彼曰く階級が上がれば仕事が増えると嫌そうな顔をしていた。

 

出世欲が無く、部下と同じ目線で仕事ができるのが二佐が多くの部下から慕われる所以となっている。

 

転属先の南方基地はかなり大規模な基地で異民族の山越を警戒してか要塞などの拠点も普通の地方基地と比べるとかなり多い。

 

独立部隊が全て合併して出来た精鋭部隊である第三連隊は山越の警戒と戦力の増強のためだろう。

 

だが俺はそんなことよりも久々に会える友人のことで心踊らせていた。

 

徐盛。仕官学校で知り合った無邪気な青年は今どうしているだろうか?

 

なに基地につけばいくらでも話せる機会があるんだ。

 

楽しみはそれまでとっておいても良いだろう。

 

「というわけで一六ある部隊がひとつにされたのには実は意味がある」

 

長官となった魯粛二佐が一六ある部隊の隊長たちに招集をかけ話しかけている。

 

その一六人のなかに周泰の姿が当然あった。

 

「山越との和平交渉の件だが、実は状況は芳しくない。困ったことに頭の固い連中でな・・・・。いくら譲歩しても譲る気配が全く見られん」

 

はははと笑う二佐に皆苦笑する。山越とは以前から敵対していた民族でそれは孫権の母であった時代以前から続いている。

 

戦術の天才であった孫子も山越を仮想敵国としていたぐらいだ。それほど呉と山越も溝は深い。

 

が孫権が即位するとその方針を一転。

 

山越と和議を結び新たに通商関係を築く方針を新たに打ち出していた。

 

これは孫権は北方といずれ戦うであろう大国である魏との決戦に備え南方の安全を確保すると共に、異民族と和議を結ぶことで貿易面での発展と拡大を狙っているらしい。

 

 

孫文台、孫伯符、そして孫仲謀と三代にわたり山越との戦争はなく、また好戦的な雪蓮とは正反対な穏健な孫権が即位したことで山越内でも呉の認識が変化しておりその実現性が高いと判断した。

 

魯粛はその交渉に当たっていたのだが、山越は頑なに許否の一点張りらしい。

 

「このままだと交渉は決裂。宣戦布告し戦争になる故に最悪の自体に備えお前たち精鋭をここに配置した」

 

戦争という二文字に部屋に緊張が走る。

 

「俺もそうならないよう懸命に努力はする。しかしこのまま山越が譲らなければ、痺れを切らしたあちら側から攻めてくる可能性が高い。そうなった場合は専守防衛を心掛けてあたって欲しい」

 

「つまりは我々から攻撃するのでなく、敵の攻撃に応じて反撃するだけと・・・・?」

 

集まった一人がいう。

 

「大本営からの命令だ。異論はあるか?」

 

「・・・・・・・」

 

当然ない。俺たちは意見を言うのが仕事ではないのだから。

 

「よろしい。この江東は治安の悪化が著しい。軍政を敷くとはいえ俺だけでは流石に手におえん。よって後に専属の軍師が来ることとなる。そいつと連携を密にとりながら治安維持に当分は務めるように。では解散」

 

解散し持ち場に戻るが俺は連隊長の周泰に声をかけた。

 

「周泰隊長」

 

「はい?わぁ!一刀さんではないですか!!久しぶりですね。どうしたのですか?」

 

彼女は俺の顔を見るなりパァと花が咲くような笑顔をみせてくれたことに苦笑する。

 

「周泰二佐。俺は貴方の部下なのですよ?敬語は不要です」

 

「ご、ゴメンナサイ!うぅ・・・まだ癖が抜けなくて・・・」

 

泣きそうな顔でしょぼんとする彼女をみて慌ててフォローする。

 

「い、いいんじゃないですか?ほら個性があるんですし・・・」

 

「は、はい!ありがとうございます一刀さん」

 

再び笑顔になる彼女をみてホッとする。なるほど元気があり、そして謙虚な人柄が評価されているのはわかる。

 

「それより、徐盛の奴何処にいるか知りませんか?久々なので積もる話もあるので・・・」

 

「じょ、徐盛さんですか?!」

 

「どうかしたのですか?」

 

「その・・・・」

 

彼女から話を聞くとやはりというか彼とはあまり上手くいっていないらしく彼女は真剣に悩んでいるようであった。

 

「う~ん。分かりました。それとなく彼に聞いてみることにします」

 

「そんな・・・、悪いですよ・・・。一刀さんに迷惑は・・・・」

 

「いいんです。頼ってくれるのは嬉しいので・・・・」

 

≪私は幸せになってもいいのだろうか・・・・?≫

 

そう言って涙した彼女の姿がふと瞼の裏に呼び起こされる。

 

彼女は大丈夫だろうか?

 

また一人で抱え込んではいないだろうか?

 

「一刀さん・・・・?」

 

「いえ何でもありません。では吉報を楽しみにしておいてください」

 

そういって周泰に彼の居場所を教えてもらい別れた。

 

親友にようやくあえるという喜びから歩きから思わず小走りなりに皆に不振がられていたのはまた別の話。

 

 

どうもコックです。

 

今回は異常に早く書けました。蜀視点だと話が書きやすいのかな(汗)

 

劉備が説教されるシーンというのは最初の方から決まっていたので書きやすかったというのもありますが・・・。

 

この劉備の説教シーン、実は最初一刀にやらせるつもりでした。

 

しかしお分かりいただけると思いますが、一刀は呉の一軍人。

 

なので王様にそんなこという一般兵は現実的に有り得ないという考えが浮上いたしまして・・・。

 

余談ですが一刀の代理を見事果たしているのが交渉人魯粛さんと蓮華さんです。

 

設定では一刀と魯粛さんの桃香の見方は一緒にしていますからね・・・。一刀も彼女を嫌っているという描写はいずれかくのでそのつもりで・・・。

 

今回活躍しましたねぇ~三国一のお尻こと蓮華さんが(笑)

 

雪蓮の妹なんだから覇王スキルは意外と高いんじゃないか?と相変わらずですが勝手に判断いたしまして・・・はい。

 

しかし朱里がこうなっちゃたのは予想外でした。やっている自分も驚きです。

 

側近抜けて大丈夫かな?と思いますが、なに大丈夫です(汗)

 

朱里さんは大きくなって帰ってきます!!そのとき蜀が変わる時だと思います。

 

へ?何が大きくなるかって?

 

そんなこと言わせないでくださいよ///

 

ついでに描写で一刀が周瑜のことを冥琳と読んでいます。

 

一体なにがあったのでしょうか?楽しみにしてくれたらなと思います。

 

次は再会、そして戦編です。懐かしのキャラが出てきます。徐盛と朱然はどうなるのか?

おたのしみに!!

 

では再見!!


 
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