No.369371

STEINS;GATE-After Days Les Préludes- 4

4回目の更新です。
話の区切りの関係で今回は短いです。

本来のスタンスとは逆に、製本版からこちらに加筆になってます。

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2012-01-28 10:50:15 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:984   閲覧ユーザー数:960

 

 *         *

 

「あ~、紅莉栖ちゃんだぁ!」

 

ホテルから出たところで、駅の方面からそんな声が聞こえてきた。

 

駅のほうを見ると、まゆりと橋田が駅の方からこちらに歩いてくるところだった。

 

 

「まゆり! お久しぶり。元気だった?」

 

久しぶりに出会った友人と再会の握手を交わす。

 

「まゆしぃはいつだって元気なのです♪ 紅莉栖ちゃんも元気だった? オカリンがいなくて寂しくなかった?」

 

まゆりは何気ない挨拶のつもりで聞いたのだろうが、さっきの今である。非常に反応に困る質問だ。

 

思わず顔が紅潮するのがわかる。

 

気まずいのは岡部も同様らしく、わざとらしく何度も咳払いをしている。

 

「ええっとね、岡部にというか、まゆりも含めて皆に会えなかったのはとても寂しかったわ」

 

傍から見ると非常に言い訳苦しい回答だが、それでもまゆりは「そっかぁ。えへへ」と、特に気にした様子もなかった。

 

「牧瀬氏、牧瀬氏」

 

すると今度はまゆりの隣りにいた橋田が話しかけてくる。

 

「橋田もお久しぶり。あなたも変わりないようで何よりだわ」

 

「いやぁそれほどでも。牧瀬氏の方はずいぶんと大胆になったようですなぁ」

 

橋田が突然おかしなことを言い出す。

 

いや、橋田は昔からおかしなことを突然言い出すようなヤツではあるのだが、今回のは意味が全然わからない。

 

「どういう意味?」

 

「どうもこうもないお。こんな秋葉原のど真ん中で堂々と手繋いじゃって。しかも今二人でそこのホテルから出てきたっしょ?」

 

げ……なんということだろう……どうやら全部見られていたらしい。

 

というか、今なお手を繋いでいる状態だというのをすっかりと忘れていた。

 

橋田のツッコミで慌てて手を離す。

 

「ち、違うのよ! これは……」

 

「たった今聖戦を終えてきたばかりの僕にはこの現実は辛すぎる件。手繋いでホテルから出てくるとか何ていうリア充? もう死ね! 氏ねじゃなくて死ね! ……オカリンがあと十数年後には、一緒に魔法使いにクラスチェンジできる日が来ると信じてた時が僕にもありますた」

 

橋田は完全に勘違いしている。

 

隣りにいるまゆりも「えぇ~! そうなんだぁ」と意味がわかっているのかわかっていないのか微妙な反応をしている。

 

「だから違うって言ってるだろうが! 人の話をちゃんと聞けこのHENTAI! まゆりも! 変な勘違いしないでよね!?」

 

駄目だ。この状況で何を言っても言い訳に聞こえてしまう。

 

すると、岡部が私の肩をポンと叩き、親指をグッっと突き出す。

 

「クリスティーナよ、ここは俺に任せるがいい。聞けダル! それにまゆりよ!」

 

二人の視線が一斉に岡部に集まる。

 

「お前たちは大きな勘違いをしている。このホテルはセレブ・セブンティーンである助手が、日本での活動拠点に選んだ場所でな。わざわざお前たちをここで出迎えるために、この秋葉原駅を見渡せるホテルで待機していたのだ!」

 

「つまり、牧瀬氏とホテルで全裸待機してたわけですね。わかります」

 

「だから違うと言ってるだろうが! 人の話をちゃんと聞け! 大体俺とクリスティーナはそういう関係では……」

 

「二人して同じ台詞を発して、何を今更言ってるんだおまいは。なぁまゆ氏?」

 

「そうだよぉ。紅莉栖ちゃんとオカリンがリア充さんなのは、みんな知ってるのです♪」

 

「ぐ……まゆりまで。しかし仮に……仮にだぞ!? 百歩譲ってリア充であったとしてもだ! お前たちの想像しているような下賎な行為は一切行なっていないぞ!」

 

いや、岡部。お前たちというか、HENTAI妄想してるのは橋田だけだと思う。

 

「じゃあ何か? オカリンはまだ魔法使いにクラスチェンジできる余地が残っていると?」

 

「無論だ! 何を隠そう俺はまだ童貞だからな! フゥーハハハ! ……ハハハ……ハハ」

 

秋葉原の中心で童貞を叫んだ狂気のマッドサイエンティストは、自分で叫んでおきながらそのままガックシと肩を落とす。

 

「オカリン……無茶しやがって」

 

橋田が岡部の肩にそっと手を置く。岡部の尊い犠牲の下、どうやら誤解は解けたようだ。

 

しかし犠牲になったのが岡部でよかった。

 

私があのまま弁明を続けていたら、危うく私が秋葉原の中心で処女を叫ぶハメに――

 

 

――秋葉原ノ中心で処女ヲ叫ブ?

 

まただ。またさっきと同じフラッシュバック。

 

私は岡部と二人でタイムリープマシンを使ってまゆりを……まゆりをどうするんだっけ? 

 

そもそもタイムリープマシンって何? そんな単語に聞き覚えは―― 

 

 

「――ティーナ! おい、クリスティーナ!」

 

岡部の呼び声で現実へと呼び戻される。

 

「……え?」

 

「おい、大丈夫か? まるで白昼夢でも見ているかのようだったが……」

 

白昼夢。そうかもしれない。さっきの妙なフラッシュバックは、きっと長旅で疲れているせいでボーッとしてしまっていたのだろう。

 

「なんでもないわよ。さっきの岡部の叫びがあまりに面白すぎてちょっとポカーンとしてただけよ」

 

「な……心配して損をしたではないか!」

 

これでいい。余計な心配はかけたくない。

 

ここで疲れているなどと言ったら、今日はホテルで休めとか言われかねない。

 

「牧瀬氏もなんともないようだし、何はともあれラボに移動しね? 僕としては一刻も早く今日の戦利品の確認をしたいわけだが」

 

「そうね。日も暮れてきて寒くなってきたし、そろそろラボに行きましょうか」

 

橋田の一言をきっかけに、ようやく一路ラボへと向かうこととなった。

 

道中まゆりが、「今日の晩御飯はお鍋だよぉ♪」と教えてくれた。

 

海外では一つの鍋を大勢で食べるという習慣はあまりないため、ある意味日本を感じることのできる食事だ。

 

「……温かいな」

 

やはりここには温もりがある。

 

ここに私の居場所ができて、本当に良かった。

 

「いや、どちらかというと寒いだろう……何を言ってるんだ助手は……」

 

岡部はどうやら意味の捉え違いをしてるらしい。

 

「別に、独り言よ」

 

私は皆より、少しだけ早足でラボへの道のりを歩きだした。

 

 

その夜。

 

年の瀬で忙しい中、フェイリスさん、漆原さん、桐生さんら他のラボメンの皆も集まってくれて、私の帰国会と称して鍋を囲んだ。

 

岡部一人が闇鍋を進言していたが、反対多数(というか賛成は岡部のみ)で勿論否決。

 

普通の美味しい鍋の状態で食べることができた。

 

さすがに岡部、橋田、まゆり以外のラボメンは長居できないらしく、鍋を食べ終えて少し雑談に興じると、二十一時を過ぎる頃には自然とお開きとなった。

 

こうして大晦日の夜は更けていく。

 

岡部や私にとって激動の年となった2010年も、もうすぐ終わりを告げようとしていた。

 

悲しいことも沢山あった。でもそれ以上に嬉しいことが数えきれないくらいにあった。

 

来年は一体どんな年になるのかな……

 

そんな事を考えながら、眠たそうにテレビを見ている岡部を見る。

 

 

 

 

――ありがとうね岡部

 

――私に居場所をくれて

 

――これからもずっと

 

――こうしていられたらいいな

 

 

 

 

 

この時、携帯が何度か鳴っていた事に気がついたのは、翌年を迎えた朝のことだった。

 

 

 

 

 

 

Date 12/31 22:45

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 思い出しなさい

 

 

 

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 そして岡部倫太郎を

 

 

 

Date 12/31 22:47

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 ―――――――――――

 ――助けて

 

 

 

 

                

 

 

 

Chapter.1 破鏡重円のアセスメント...end

 

 

 
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