No.367852

真・恋姫†無双~恋と共に~ #67

一郎太さん

こいつはくせぇっ!
厨二のニオイがプンプンするぜぇ!!

………やり過ぎた感はある。だが反省はしていない。

2012-01-24 19:33:50 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:8742   閲覧ユーザー数:6237

 

 

 

#67

 

 

 

拠点 沙和

 

今日も今日とて散策の日々。一刀は街へと繰り出し、いつものように散策をする。屋台の店主に声をかけられれば肉まんを購入し、困っている食事処の店主がいれば、新しいレシピを教えたりと、いつもと同じ行動を続けていた。そんな道中――――――

 

「あー!阿蘇阿蘇に乗ってた新作が出てるのー!」

「ん?」

 

とある服屋の前を通りがかったところで、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「えっ、こんなにするのー!?おじさん、少しだけまけてくれない?」

「そうは言いましても、先日入荷したばかりの新作ですので………」

「お願ーい!今月の沙和のお給金、ちょっとやばいのー」

「于禁将軍、困ります……」

 

そしてその声の主の名前を耳にし、一刀は溜息を吐いた。

 

「お願いなのー!沙和、どーしてもこれが欲しいのーっ!」

「そのくらいにしておけ、沙和」

「ふぇ?」

 

店の中に足を踏み入れた一刀は、入り口のすぐ近くにある新作のコーナーで駄々をこねる少女の肩に、ポンと手を置いた。

 

「あー、一刀さんなのー。今日は、風ちゃんと一緒じゃないの?」

「あぁ、風は稟たちと内政に手をつけてるよ」

「ふーん」

 

一刀の姿を認めた沙和は、先ほどの困った顔も忘れて、世間話を始める。が、すぐに件の服を思い出し、今度は店主ではなく、一刀に近づき、そしてその腕にぎゅっとしがみついた。

 

「えへへー、一刀さん。お願いがあるのー」

 

そして上目遣いで―――沙和にとってはだが―――最高のキメ顔で一刀に甘い声をかける。

 

「駄目だ」

「まだ何も言ってないのー!?」

「どうせ買ってくれ、って言いたいんだろう?駄目だよ」

「お願いなの!沙和、この子がいないともう頑張れないのー!」

「はいはい」

 

だが、一刀には通じない。彼は沙和を宥め、店主に一言謝ると、彼女を連れて店を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

「んー、やっぱりここのお菓子は美味しいのー」

「そうか、そりゃよかった」

 

それから、一刀と沙和の姿は大通りに面した茶屋にあった。沙和はお茶菓子に満面の笑みを浮かべ、一刀はそれを見ながら茶を啜る。

 

「でもいいの、御馳走になっちゃって?」

「さっきはもっと高いものを買わせようとしたくせに、よく言うよ」

「えへへー、ありがとー。お礼に、ひと口あげるのー」

 

まったく現金な奴だよと呟きながら、沙和が差し出す、左手を添えられたレンゲに食いつく。

 

「お、確かに美味いな」

「でしょー?このお店も阿蘇阿蘇に載ってたの」

「またそれか……」

 

いわゆる今時の女の子に苦笑しながらも、再び幸せそうな顔でお菓子を頬張る姿を、一刀は微笑ましく思う。

 

 

「それで、一刀さんは今日お休みなの?」

 

お菓子もしっかり食べ終え、お茶を啜りながら沙和は尋ねる。

 

「そうだよ。沙和もか?」

「うん。凪ちゃんと真桜ちゃんと、1日ずつずらしてお休みを貰ってるの」

「警備隊長が3人同時に休むわけにはいかないもんな」

 

確かにと、一刀は頷く。でもなかなか一緒に遊べないのーと、沙和は少し残念そうな顔をするが、そういえばと、再び質問をする。

 

「一刀さんって他の服は持ってないの?」

「服?」

「うん、いつもその恰好なの。連合の時の白い服は、恋ちゃんにあげちゃったんだよね?もっと一刀さんもお洒落した方がいいと思うの」

「そうか?」

 

言われてみれば、一刀の服はあまり変わり映えがしないものばかりだった。フランチェスカの制服の上着を恋に渡している為、それもない。いまの彼の服装は、その制服のズボンに、Tシャツというラフな格好だ。最近買った服といえば、服屋に頼んで仕立ててもらった、数枚のTシャツくらいだ。

 

「絶対そうなの!一刀さん、街の服屋さんに女の子用の服の意匠は教えるのに、自分のことなんて気にもしてないのー」

「んー…俺は着やすければそれでいいんだけどな」

 

言葉の通り、彼は服装には無頓着だった。今着ているような服以外は、せいぜいが鍛錬用にあつらえた、元の世界でも使っていた道着のようなものくらいだ。

どうしたものかと一刀が悩んでいると、ふいに沙和がパンと両手を打ち鳴らし、彼に告げた。

 

「決めたっ!今日は、一刀さんの服を買いに行くのー!」

「………え?」

 

 

 

 

 

 

「一刀さん、次はこれなのー」

「へーい」

 

沙和に引き摺られ、一刀はさきほどの店に来ていた。やはり先ほどの服を買うのだろうかと店主は思ったが、実際に彼らが向かったのは、男物の服を扱っているコーナーだった。

 

「うーん、なんか違うのー。じゃ、今度はこっち」

「へーい」

 

ハンガーごと胸に当てていた服を奪い取り、沙和は次の服を一刀に渡す。だが、彼女の琴線に触れるようなものはなく、既に20着以上の服を合わせている。

 

「やっぱり違うのー。もー、一刀さんの身体はわがままなのー」

「誤解を招きそうな物言いだな」

 

そうしてさらに30分が過ぎ。

 

「じゃぁ今度は………って、あれ?」

「どうしたんだ?」

「もう服がないのー」

 

見れば、棚に残っているのはすべて試し済みの商品ばかり。本当にすべてを試してしまったようだ。

ようやく解放されるかと一刀は安堵の息を吐く。が、それを許さない者がいた。

 

「どーしよう。ここよりいいお店はないのにー」

「でしたら、北さんがご自分で意匠を考えればよいのでは?」

「は?」

 

店の主人だ。

 

「えぇ。以前からよく新しい衣装を教えてくださるではありませんか。ご自分で考案してみるのも手ではないかと」

「いやいや、俺はそんなに――――――」

「それ、採用!おじさん、紙と筆を用意して、なのー」

「どうぞ」

「はやっ!?」

 

店主の案を沙和が採用し、沙和の要請に店主は即時に応える。彼としては、男ものの意匠を考案して貰い、新たな客層を開拓するつもりだった。

 

「それじゃ、一刀さん。一緒に考えるのー」

「え、沙和も考えるの?」

 

店主には自分でと言われていた為、無難なものを作ろうと思っていた一刀だったが、

 

「だって一刀さんに任せたら、今と同じような服になりそうなの」

 

沙和にはお見通しだった。

 

 

「でも、やっぱり動きやすいのがいいよな」

 

沙和と店主に加え、彼の事を知る店員にすら勧められ、結局一刀は協力をする気になった。店の奥にある作業場を借り、沙和と2人で新しい衣装を考える。

 

「なぁ、沙和。下はこれと同じようなのでいいよな?」

「無地かぁ………うん、色違いなら許すのー」

 

沙和の許しを得て、彼はまず下履きの意匠を紙に描いていく。とはいえ、現物はここにあるのだ。それほど難しい事でもない。まず外側を描き、ベルトを通す部分も描き加える。裏側にはちゃんとポケットを作って貰えるよう、注釈も加えた。

 

「じゃぁ、上着だな。何かいい案はあるか?」

「んー…この服屋さんは、この街で1番お洒落なの品揃えしてるの。男物は少ないけど、他のお店はもっと少ないしー……」

 

沙和は、両手の指を絡ませ、眉尻を下げながら困ったように考える。お洒落好きの彼女が言うのだ。きっとそうなのだろう。彼も困ったように考える。元の世界にいた頃は、服装などまったく気にしていなかった。制服と道着、それからまぁ、無難なデザインの服ばかりを着て、ファッション誌も読まない彼に、お洒落なデザインなど思いつくはずもない。

 

「ねぇねぇ、一刀さん」

「ん?」

 

と、沙和が何かを思いつき、口を開く。

 

「天の国の人って、みんな一刀さんが前に着ていたような服を着てるの?」

「いや、そういう訳じゃないよ。あれは私塾みたいなところだけで着る服だからな」

「じゃぁ、一刀さんが知ってる服ってどんなのがあるの?」

「そうだなぁ……」

 

言われて、一刀は腕を組んで目を閉じる。元の世界の事を考えるのは久しぶりだ。彼はかつての自分の日常を思い出し、そこで見る人々の服装を脳裏に浮かべる。

 

「………こんなのかなぁ」

 

言いながら、彼は紙に服を描いていく。別の高校の制服、祖父の正装、一応自分が持っていた私服――――――。

なんとか記憶を辿りながら筆を走らせ、そして、とある服装を描いたところで、

 

「これなのーっ!!」

 

沙和が目を輝かせて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

――――――1週間後。

 

一刀と沙和は、先日も訪れた服屋に向かっていた。あの時頼んだ意匠の服が出来がるのが、今日だったからだ。

 

「楽しみなのー。きっとすごく、すっごーく似合うと思うのー!」

「ぶっちゃけ恥ずかしいんだがな」

「そんな事ないよー!一刀さんはもっと自信を持った方がいいの!!」

「難しいなぁ……」

 

そんな会話をしながら2人は街を歩き、そして目的地に到着する。

 

「おじさーん、出来てるー?」

 

店に入り、開口一番そんな事を叫ぶ沙和に、店主がにこやかに返した。

 

「えぇ、お待ちしておりました。いやぁ、女性ものの服を作るのも楽しいですが、今回の服はそれ以上の楽しさがありましたよ。北さんも感謝します」

「はぁ……」

 

なんとも言えない表情で返事をしながら、奥から包みを持ってやってくる女性店員に目を遣る。彼女もすでにそれを目にしたようで、ニコニコと彼に包みを渡した。

 

「では、どうぞお召しになってください」

「うん、さっさと行くの!」

「へーい……」

 

沙和に背中を押され、一刀は試着室へと入った。

包みを広げて、備え付けのハンガーに上着を掛ける。

 

「………よくもまぁ、ここまで再現できるものだな」

 

どのような素材を使ったかは分からないが、それでも一刀の知るそれに、その服は合致していた。

腰のところで僅かにくびれの出来るその服には、木を削って作ったボタンがひとつ、ついている。そのボタンの少し上にはしっかりと折り目がつき、折り返された場所から上がるにつれてそれは広がり、襟までつながっている。

別のハンガーに掛けたインナーは真っ白で、こちらは6つほど、上着よりも小さなボタンがついていた。糊でも使っているのか、パリッとしたそれは、思ったよりも着心地が良さそうだ。

下は上着と同じ布を使っており、デザインとしては一刀の制服のそれと似ている。しっかりと上から下まで真っ直ぐに折り目がついていた。

最後に包みに残ったものは、彼に溜息を吐かせる。形で言えば、六角形。だがそれは細長く、一刀には用途がひとつしか思いつかなかった。

 

「………………着るか」

 

閉じられた空間で誰にともなく呟き、一刀は着替えを始めるのだった。

 

 

「で、どうだったのー?お店の新作として売れそう?」

「そうしたいのは山々なのですが、値段が高くなりそうでして」

「そうなんだー」

「まぁ、見本を作って、注文があればその都度制作するという感じになるでしょうね」

 

試着室の外でそんな会話をしていると、一刀の声が届いた。

 

「終わったぞー」

「終わった?じゃぁ、開けるのー」

「いいけど、笑うなよ?」

 

だーいじょうぶと笑顔になりながら、沙和はカーテンを開き、

 

「………………どうだ?」

「………………………………………」

 

絶句した。

 

「えと……沙和?」

 

一刀の目に映る沙和は目を見開き、口をぽかんと開け、ただただ彼の新しい衣装に見入っていた。

 

「きゃぁぁぁあっ!!すっごいの!一刀さん、すっごーーーく、カッコいいのー!!」

 

そして絶叫。きゃぁきゃぁと歓喜の声を上げる沙和は、もはや一刀など見ていなかった。彼女の叫びに振り返った女性客ひとりひとりに声を掛け、似合ってるでしょ?カッコいいでしょ?などと自慢している。

 

「おーい、沙和ー。騒ぎ過ぎだぞー」

「よいではないですか」

 

沙和に声を掛けようとして出来ていない一刀に、店主が歩み寄った。

 

「ほら、他の方を見てください。皆さん、北さんに見入っておりますよ」

「そうか?初めて着るから変な感じなんだがな……」

「そのうち慣れますよ」

 

いまだ騒ぐ沙和に溜息を吐きながら、一刀はそんなものだろうかと考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

ようやく落ち着きを取り戻した沙和が最初に行なったのは、一刀の手をとる事だった。

 

「一刀さん、行くの!」

「へ?」

「おじさーん、代金はあとで払うから、今だけ一刀さんを借りてくのー!」

「はい、お待ちしておりますよ」

 

にこやかに笑う店主と店員に見送られ、一刀は沙和に腕を引かれていく。

 

「一刀さんは此処で待ってるの!」

「へ、此処?」

 

城に戻ってきた沙和は、門をくぐろうとする一刀を押し留めた。

 

「ちょっと準備するから、いい子にして待ってるの!そこのウジ虫ども!このいけめん野郎を絶対に入れるな、なのー!!」

「「サー、イエッサー」」

 

どうやら、今日の門番たちは沙和の調練を受けた兵らしい。彼女の罵声に直立不動で返事をし、一刀の胸の前で槍を交差させた。

 

「それじゃ、すぐ戻ってくるのー」

 

言って、沙和は城内に掛けて行った。

 

15分ほど待っただろうか。彼女は両手に荷物を抱えて戻ってくる。

 

「はい、一刀さん!」

「俺の刀?」

 

彼女が持っていたのは、一刀の私室にあるはずの日本刀だった。

 

「じゃぁ、これを挿す!」

「………へーい」

 

何を言っているのだと思いながらも、その真っ直ぐな眼には抗えない。一刀はベルトを穴1つ分緩めると、2本の刀の鞘をベルトに挿した。

 

「うん、やっぱりこれがないと、なのー。じゃぁ行っくよー!」

「お、おいっ!?」

 

そして、沙和は一刀の手を引いて、再び走り出した。

 

「ちょっとだけ、外で待ってて、なの」

「………『ここ』で?」

 

連れてこられたのは、城内の中央にそびえる玉座の間。その入り口で彼は再び押し留められる。彼の問いに返す事無く、沙和は扉の中へと入った。

 

「なんだって言うんだ?」

 

 

玉座の間に入った沙和に声がかかる。

 

「それで、沙和。緊急事態と言っていたけれど、何があったの?」

 

声の主は扉の真正面、荘厳な椅子に腰かけている。

 

「それはもう、凄くすっごーく緊急の事態なの!」

「それを説明しなさいって言ってるんでしょ!」

 

その隣の少女が、目をつり上げて叫ぶ。

 

「もー、桂花ちゃんはせっかちなの。じゃぁ、今から連れてくるけど、みんな、気を失っちゃダメだからねー?」

 

皆が浮かべる疑問の視線を受け流し、沙和は再び扉を開いた。

 

 

「お待たせー」

 

わずかに開かれた扉の隙間から、沙和が顔を出した。

 

「もういいのか?」

「うん!じゃぁ、一刀さん。キメ顔で入って来るのー」

「キメ顔ってなんだよ……」

「真面目でキリっとした顔でいるの。わかった?」

「………………頑張るよ」

 

そして、一刀はようやく最後の扉をくぐる。

 

 

 

 

 

 

「お待たせ、なのー」

「お待たせ………って、え?」

 

建物の中に入り、一刀は絶句する。

正面には城の主である華琳。その右側には筆頭将軍である春秋姉妹。左側には軍師の3人。玉座の少し後ろには親衛隊の長である2人の少女。そして玉座までの道の片側には、沙和の親友が2人立っている。

 

『………………………………………』

 

だが、誰も口を開かない。みなが、先ほど服屋で沙和が見せた表情をしていた。目を丸く見開き、口をぽかんと開けたまま、固まっている。荀彧や、華琳でさえも。

 

「………なぁ、みんなどうしたんだ?」

「えへへー。みんな、一刀さんがカッコ良すぎて見惚れちゃってるのー」

「んな、まさか―――」

 

何をバカな事をと、一刀は一番近くにいた少女に声をかける。

 

「―――なぁ、凪?」

「………………………………」

「あれ?………………真桜?」

「………………………………」

 

その隣の少女も、普段のにぎやかさを失っていた。

 

「季衣、流琉……?」

「「………」」

「春蘭、秋蘭?」

「「………」」

「風、稟?」

「「………」」

「華琳、助けてくれ………」

「………」

「荀彧はそんな事ない…よな?」

「………」

 

あろうことか、華琳も応えない。荀彧もしばし自失していたが、元来の男嫌いが彼女の意識を呼び戻す。

 

「………はっ!?あ、あぁ、北郷ね。どうでもいいわ。というか沙和っ!いったいどういうつもりよ!?」

 

ようやく動き出した状況に、他の者たちも己を取り戻した。

 

「アンタが緊急事態って言うから、こうやって皆集めたのに」

「1着しか作れなかったけど、よく出来てるの。それに、凄くかっこいいの!これはもう、凄い緊急事態なのー!」

「なに馬鹿な事を言ってるの!北郷如きの服装に、この忙しいなか緊急事態だなんて嘘を言って………華琳様も何か言ってやってください!」

 

まったく悪びれない沙和に、桂花は助けを求める。

 

「その通りよっ!」

 

そして華琳も叫ぶ。ほら見たことかと、荀彧はほくそ笑んだ。

 

「沙和…貴女はなんて愚かなの………」

「う、うぅ………」

 

荀彧の望み通り、華琳は沙和を叱咤する。だが、愚かとは言い過ぎだ。堪らず一刀が止めに入ろうとする。

 

「おい、華琳!それは言い過ぎ――――――」

「なんで1着しかないのよっ!」

「「………は?」」

 

だが、入ろうとしただけだ。予想外の言葉に思わず呆けた声が出た。初めて、一刀と荀彧の思考が心の底から一致する。

 

「一刀っ!」

「は、はいっ!」

 

そして呼びかけられ、声が上擦った。

 

「それは貴方の国の服なのかしら?」

「あ、あぁ。スーツって言うんだが………」

 

そう、彼の新しい服はスーツだった。シングルのツーピース。袖口には、沙和の質問に答えることよって作る事となったカフス、ネクタイはジャケットやスラックスと揃いの黒だった。

 

「その『すぅつ』というのは、意匠はそれだけなの?」

「いや、部分部分によって、色々と変えられるけど………」

 

その言葉を聞き、華琳はばっと立ち上がる。その余りの勢いに、皆が何事かと彼女に視線を向けた。そして、彼女は告げる。

 

「桂花、稟、風!」

「はいっ!?」 「はい」 「はいー」

「私はこれより1週間の休暇を取るわ!緊急の時を除いて、貴女達がそれぞれの裁量で政を行ないなさい」

「えぇっ!?」 「御意」 「了解ですー」

「凪、真桜!」

「「はいっ!」」

「沙和を1週間借りるわよ。警備隊は貴女達2人で回しなさい」

「はいっ!」 「んなっ!?」

「沙和、一刀!」

「はいなのー!」 「………」

「貴方たち2人は、私と共に1週間休みを取り、『すぅつ』の制作にとりかかるわよ。一刀は知り得る限りの意匠を描き出し、沙和はそれを見て、可能な限りの工夫を凝らしなさい。華美になり過ぎては駄目よ。いまの彼の雰囲気を壊すようなものを作ってはいけないからね」

「任せるのー!」 「………」

「秋蘭!」

「はっ」

「1週間城を預けるわ。貴女にまで休めとは言えないけれど、休みの時は私のところに来なさい。共に『すぅつ』を縫い上げるわよ。目標は5着。一刀が日替わりで着るには、それくらいの数が必要だわ」

「御意」

 

それはあっという間の発令だった。すべてを告げ終えると華琳は歩み出し、一刀の手を取って玉座の間を出て行く。沙和はスキップをしながらついていく。その後ろ姿を見ながら、ある者は一刀が入ってきた時と同じ表情をし、ある者は溜息を吐き、ある者は絶望感を醸し出す。

 

1週間の後、一刀はスーツの常時着用を義務付けられる。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

反省はしていない。後悔もしていない。

 

という訳で、沙和拠点でした。前回よりは若干短いけど、投稿。

 

拠点書こうと思ったけど、あんましネタが思いつかないので本編と並行して進めていきます。

交互に投稿するかも?………まぁ、未定で。

 

ではまた次回。

 

バイバイ。

 

 

 


 
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