『現代編』
― 黄祖Side ―
なぜだ?
どこで間違ったのだ?
『蜂針の陣!!』
聞き慣れぬ声が耳に届く。
目前に急速に迫ってくる孫呉の軍。
既に兵達は怯え、士気も何もあったものではじゃない。
どうすればいいか?
そう問いかけようと左を向く。
「あんな物に勝てるはずがない!!嫌だ!まだ死にたくない!!」
軍師として傍に置いていた男はそう叫びながら背を向けて走り去っていった。
だが、数十歩走り抜けたところでその背に一本の矢が突き立った。
馬鹿め・・・・・・。
どこに逃げようがこの状況で俺達に逃げ場がない事になぜ気づけない。
俺達は唯の生贄だったのだと何故気づけない。
くそが!!!!!!
全てはあの男の手の内だったのだ!!!
俺が不服に思い反旗を翻す事も孫家が動く事も!!!
あの蔡瑁が荊州の領土に足を踏み入れた孫呉を黙ってみているはずがない。
武陵が俺達に一切手を出してこないのはどう考えてもおかしい。
くそ!!!
俺達は唯の餌だ!!!
孫呉と言う大魚を釣る為の生餌でしかないのだ!!!
くそ!!
くそ!!
くそおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
此処で終わってたまるか!!!
餌は餌でも俺は武将なのだ!!!
どうせ死ぬのであれば大魚に痛手を負わせてから死んでやる!!!!!!
俺は剣を握りなおし視線を前に向ける。
「な・・・・・・」
俺の目に映ったのは跳ね飛ばされる兵達と迫りくる白銀の壁。
俺の眼前には白銀の壁に押しのけられ、そこには一本の道ができていた。
「久しいな黄祖」
白銀の壁によって作られた道を悠々と歩いてくる人物が二人。
二人は俺の目の前でゆっくりと制止すると一方がそう言葉を放つ。
「ば・・・化物め!!」
なんと情けない言葉だ・・・。
俺とした事が・・・なんと情けない言葉だ・・・。
幾度となく苦汁を舐めさせられ、武将としての己を捨ててまで討ち取ったはずの女が目の前にいる。
目の前にいる女・・・武将にしておくには勿体無いほどの美貌を持つ癖に武将としての力量も飛びぬけている女。
突然の生存報告・・・だが、傷を負い武将としての生命を絶たれたと噂に聞いた。
そんな噂を信じていた俺は唯の馬鹿だ。
目の前にいる女はあの頃となんら変わっていないではないか・・・・・・。
『江東の虎』と呼ばれていたあの頃となんら変わっていないではないか。
「・・・・・・覚悟はいいか?黄祖」
女・・・孫堅は殺気の篭らない声でそう問いかけてくる。
ついさっきまで胸の内に抱いていた憎悪がその一言を耳にしただけで霧散した。
無理だ。
敵う筈が無い。
逃げろ。
逃げ切れる筈が無い。
目の前に居る孫堅は格が違う。
かつて抱いたこの劣等感は今尚覆ることが無かった。
手が振るえ・・・足が振るえ・・・その震えはやがて全身を振るわせる。
「っあ・・・ぁぁ・・・ぁぁぁぁ・・・・・・」
孫堅から放たれる静かな重圧に俺は無意識に声を漏らしていた。
どこかに逃げ道が無いか・・・必死で探す。
そして目に付いたのは孫堅の後ろに無言で
手に持つ
ここだ!・・・そう思った。
服装、装備から見るにそれなりの地位に着く将だと予測できる。
だが、どう見てもまだ若い小僧。
将としての威厳など感じられない。
そして最大の要因は手にした
この至近距離でその長大な弓をうまく使うことなどできるはずも無い。
死中に活有りとはまさにこの事。
手にしていた剣を力いっぱい握り直す。
孫堅文台の注意を逸らす為にも先手を打つ。
「今だ!!かかれ!!!!!!」
両軍に一瞬走る戸惑い。
それこそが俺の狙いだ。
好機!!
孫堅の後ろに控える男目掛け駆けだし、切り付けた。
「っ・・・がふ!?」
全身に衝撃が走る。
俺は男の武器を持つ側とは反対の右肩を狙い斬りつけた。
斬りつけた筈・・・だが、俺の身体・・・左脇腹に
戸惑いつつ痛みによって揺れる視界を男に向ける。
男は何食わぬ顔で俺の一撃を受け流していた。
左手に持っている弓はそのままに・・・否、左手で持っていた弓でいつの間にか俺の剣を受け流していた。
数瞬前まで天に向かって伸びていた男の弓。
だが、今は俺の剣の背を押さえ付けるかのように地へと向いている。
では、脇腹に走るこの衝撃は一体何なのだ!?
かすむ視界を自身の脇腹へと向けた。
其処にあった物に自身の目を疑う。
鈍く光る・・・まるで円月刀のような刃・・・その峰が自身の脇腹に打ち付けられていた。
「・・・ッゲホ・・・・・・ッゴホ・・・一・・・体なにを・・・・・・」
衝撃で息をすることができない中そう問いかける。
この一瞬でこの男は一体何をしたのだ?
「何を?・・・かかった火の粉を振り払っただけだ。峰打ちだから死にはしない」
男は淡々とそう答えた。
違う・・・俺が知りたいのは・・・。
「残念だったな黄祖。・・・私に適わないと見て、すかさず標的を変えたようだが・・・しかし、相手が悪かったな。
その男は私や我等孫呉の将の剣すら弾き返す。お前如き男の剣など何万回打とうが届きはしない。」
痛みで朦朧とする中届いた孫堅の声。
正しくは理解できない。
だが、一つだけ理解する事ができた。
俺は
この男を・・・そして孫堅を。
此処は敵陣の真っ只中なのだ。
そんな中・・・兵が切り開いた道を通ってきたとしても、この俺・・・そして屈強な兵が守る本陣。
其処に、たった二人で護衛も付けずに悠々と歩いて来たその意味に気づけなかった。
「降伏しろ、黄祖」
孫堅の言葉が意識を引き戻す。
いつの間にか地に付いていた膝。
男は既に
僅かに残った力を振り絞り、握っていた剣を杖に立ち上がる。
「・・・情けを・・・かける・・・つもりか?」
息苦しい。
男にやられた痛みか、それとも恐怖からか。
哀れみの目を向ける孫堅を睨み付けながら言葉を吐く。
「勘違いをするな。お前に聞くべき事があるだけだ。今までお前がやってきた事を顧みれば行く末など想像が付くだろう?」
聞くべき事・・・・・・。
全てはお見通しという事か・・・。
どうせ死ぬのであれば、あの男だけにでも一矢報いてやるのも一興・・・。
一人では死なん・・・洗いざらい孫呉の連中にぶちまけて道連れにしてやる!!
俺は手にしていた剣を捨て降伏を受け入れた。
「いいだろう・・・降伏し・・・っ!?」
そう言い掛けた瞬間、遠くに見えた見知った顔と一瞬聞こえた風を切る音。
そして胸に広がる熱。
俺はいつの間にか仰向けに倒れていた。
自らの胸に手をやり、その熱の正体を確かめる。
手に付いた何かを確かめるように視線をやれば、俺の手は真っ赤に染まっていた。
「北郷隊!!周囲を固めろ!!!」
「誰だ!!誰が矢を放った!!!!」
慌しく動く周囲。
俺は唯漠然と思考にふけっていた。
あの男は最初からこうするつもりだったのだ。
何重にも手を打っていたのだ。
俺が殺されればそれで良し・・・もし孫呉に下るようならその場で殺す。
上手く潜り抜けたとしてもその後どこかで命を取られていただろう。
だが、このまま死ぬのも面白くない。
「孫・・・堅」
「・・・なんだ?」
「・・・孫、呉の・・・王・・・気をつけ・・・ろ」
「なんだと?」
呼吸が続かない。
だが、あの男を道連れにしなければ死んでも死にきれん。
「あの、男に・・・とって、孫呉は・・・・・・邪、魔・・・天・・・を従える・・・・・・王、は・・・ッゲホ!!」
くそ・・・・・・。
声が出なくなってきた。
あの男が・・・孫呉を狙っているのは確実。
それを伝えなければ・・・邪魔する事すらできない・・・。
「心配ない。既に手を打ってある」
若い男が横に跪きそう言葉を漏らした。
既に手を打っているだと?
あの男の企みに気づいているのか?
「貴・・・様は?」
「北郷一刀・・・天の御使いだ」
こいつが・・・・・・。
成る程・・・こいつが・・・この男が・・・・・・。
「どこ・・・まで知って、いる?」
「得体の知れない誰かが裏に居る・・・その程度だ。だけど、この大陸中で何かを仕出かそうとしている事は気づいている。
それが何かはわからない・・・だからこそ孫呉の王を守る手筈は整えている」
「そう・・・か」
わざわざ反乱軍を鎮圧しに来た事もその確証を掴む為・・・といった所か。
・・・・・・胸の痛みが消えいく。
手足の感覚もない。
俺の命も後僅かなのだろう・・・。
であれば・・・。
「あの・・・男・・・は」
「ん?」
「漢・・・う・・・ね・・・ってい・・・ずだ」
「なんだって?」
「か・・・ゅ・・・を・・・・・・るは・・・」
これ・・・で・・・・・・あの・・・男・・・の、じ・・・ま、を・・・・・・。
徐々に暗転していく視界。
ざまぁみろ・・・あの男を笑いながら覚める事のない眠りについた。
― 孫堅Side ―
「色々とありがとう、美蓮」
「いや、私達は己の利に従って動いただけ。それより、本当に行くの?」
「えぇ、璃々を・・・・・・避難させているから」
「よく戦時中に送り出せたものね」
「侍女がちょっと・・・ね」
璃々・・・娘の事がよほど気になるのか紫苑は少し落ち着かない。
反乱軍の鎮圧も終わり、今回の戦で接収した領地の平定もそろそろ終わるかという頃、紫苑は突然益州の桔梗の元へ身を寄せると言い出した。
孫呉に来なさいと何度か誘ってはみたものの、心此処にあらずという感じで断られてしまった。
様子がおかしいとは思うけれど、まだ幼い娘の事が心配なのだろう。
母親の鏡のような紫苑なのだから仕方がない。
「気が向いたら何時でも呉に来なさい」
「・・・えぇ」
「桔梗にも宜しく伝えておいて」
「わかったわ・・・・・・それじゃ、美蓮」
「気をつけて」
「美蓮もね・・・」
紫苑は儚げに微笑むとすっと背を向けて馬の背に乗り西へと駆けていった。
「行っちゃったかぁ・・・・・・」
「残念そうね、一刀」
「そりゃ、あの黄忠漢升だしさ・・・・・・」
心底残念そうにそう呟く一刀。
なんだか面白くないわね・・・・・・。
「私達だけじゃ満足できないのね・・・」
今後もこの方法で色々とからかえそうだ・・・そんな事を考えながら言葉を続ける。
「まぁ、確かに彼女ほどの将を行かせるのは勿体無いけれど娘の事となると無理に引き止めるわけにも・・・ね」
「娘?」
「ええ。璃々という名前の可愛い子がね。侍女に任せて益州の知り合いの所に避難させていたらしいわ」
「へぇー・・・」
生返事を返す一刀の顔が先程とは打って変わって真剣なものになっている。
「どうしたの?一刀」
「ん?いや、ちょっと黄祖の言い残した事を思い返してただけだよ」
一刀は気にしないで・・・と言い残し門を背にして城へと戻っていく。
私はその後姿を唯見つめていた。
― ???Side ―
「・・・報告は以上」
「ふむ。で、その者の動きはどうなっている?」
「つい先程届いた報によれば既に離れたと・・・」
「であれば後は手筈通りにしておけ」
「御意。・・・それとは別に気になる事が一つ」
「申せ」
「実は・・・」
くっくっく・・・。
そうでなくては面白くない。
「よい、捨て置け。幾ら調べようとも必ず行き詰る・・・下手に妨害すれば其処から尻尾が出る可能性のほうが高い」
「では、その様に」
「・・・そういえば他の者はどうしている?」
「特に目立った事は無い・・・との事」
「そうか・・・あの者等はどうだ?」
「其方も特に目立った動きは無い様子」
ふん・・・。
今更幾ら足掻こうとも如何にもならんと理解したか。
だが、不確定要素は排除しておく必要がある。
私の理想の現実を邪魔する者は特に・・・な。
「例の件、事を急がせろ。事が成すと同時に餌を撒き害虫を駆除する」
「・・・・・・仰せのままに」
― 韓遂Side ―
なんだと!?
この女は一体何を言っている!?
「ふざけるな!!!!!!」
「ふざけてなんか居ません!!」
突如馬騰に面会を申し入れて来たかと思えば自分達と手を組めと抜かしおった。
「追放された分際でよく抜かしおるわ!!貴様が洛陽で何をし何故追放されたのか知らんとでも思ったか!!」
「確かに私達は追放されました・・・・・・だけど、今のままじゃ漢王朝は操り人形のままじゃないですか!!」
この娘は一体何を言っておるのだ?
漢王朝が操り人形だと?
何を馬鹿な事を!!
この女が天の怒りを買った意味が良くわかったわ!!
「馬騰!!こんな奴の話を聞く必要は無い!!今すぐ放り出すか処刑しろ!!」
そう言って馬騰を見る。
馬騰はただ目を伏せ口を紡いでいた。
「聞いてください馬騰さん!!・・・私達がこうやってここに来たのは理由があるんです!!」
「聞こう・・・」
「馬騰!!」
馬騰の態度に驚愕する。
如何してこんな輩の話を聞こうとするのだ?
そう問い掛けようとした時女の後ろに控えてきた文官らしき人物が前に進み出る。
「私から説明いたします・・・私は馬謖幼常と申します。・・・その名の通り、元を辿ればこの涼州の馬家に連なる血筋であります、かなりの遠縁ですがね」
周囲がざわめく。
確かに馬家の縁者だという証拠は無い。
だが、此処涼州では馬の姓ほど影響力を持つ者は無い。
「私は現在荊州にて仕官しております。今回涼州に赴いて此処で口を開く理由・・・それは、洛陽にて軟禁状態にある『現』皇帝劉弁様をお助けしたいが為でございます」
「軟禁だと?っは!誰がそのような事を言ったのだ!!
この涼州にはそんな噂など一切入ってきてはおらん。
他州でそんな噂が流れていればすぐにでも我等の耳にも届いているはずだ。
「果たして嘘でしょうか?現に我等劉家の救援要請にも答えて頂けなかった。近からずとも私がお仕えする劉家は皇帝の血筋・・・。
現王朝にも並々ならぬ忠誠を誓っていたにもかかわらずです」
この男・・・どの口から忠誠という言葉を吐くか!!
話にならん・・・しかし、馬騰にこの話を最後まで聞かせてはならぬ。
漢王朝の事を盾にされれば頷きかねん。
「もうよい!お前の話は何の確証もないではないか!!しかも王朝に救援を求めたとしても所詮は劉家の跡継ぎ争いでしかない・・・自家で跡目争いが起こると言う事はお主達に責任があるという事だ!
その仲裁を王朝に求める事が間違っていると知れ!!」
「ちょっと待ってください!それじゃその所為で苦しむ民はどうするんですか!?」
「それこそ劉家の所為ではないか!」
この女は一体何を言っておるのだ?
自身の治める地が荒れるのは治める者が悪いのだと判らぬのか?
荊州の騒乱は劉家の跡目争いが原因・・・そこから反乱が起こった。
身内の仲違いに巻き込まれたのは民であり、困っているのは民だ。
皇帝も民からの陳情であれば確率が低かろうが何かしらの手を打ったかもしれん。
しかし、劉家からの要請など答えるはずもない。
現皇帝が劉家跡取りの一方に加担などしたものなら、今後それを笠に着てやりたい放題になる事が目に見えているのだ。
「でも!!」
「劉備様、私からお話しますのでお下がりを・・・。
では、申し上げましょう。・・・今回の騒乱に『呉』が介入して来た事をご存知ですか?」
「「「「「!?」」」」」
なん・・・だと・・・?
あの孫呉が介入してきたというのか?
たしか、孫家と劉家には確執があったと聞いた事あるが・・・・・・。
「それは事実なのか?」
ここに来て馬騰が初めて口を開く。
まずい・・・そう思った。
馬騰にとって孫呉は相容れない存在だ。
方や漢王朝と言う天を頂に抱える馬騰寿成。
逆に天を自身の家臣として従える孫策伯符。
今現状、この二人は決して相容れる事はないだろう。
「事実でございます。・・・呉は長沙に侵攻していた反乱軍を狙い侵攻・・・そのまま長沙を押さえました。
それと同時に別働隊により桂陽も落とされ交州から出陣した旧董卓勢により零稜も占領されたとの報告を受けております」
「・・・そうか」
どういう事だ?
どうして呉がこの時期に荊州を攻めるのだ?
何かしらの理由があるのではないか?
でなければ翠や蒲公英、それに他の者から聞いた話とは似ても似つかない国と言う事になる。
そう思い馬騰の後ろで話を黙って聞いている翠と蒲公英に視線を向ける。
その視線に気づいた二人は小さく首を横に振った。
・・・・・・やはりそうか。
横に振ったということは二人ともこの話に多少なりとも疑問を持っているという事になる。
「少しおかしいのではないか?」
「そうでしょうか?現に荊州は侵攻されているのです」
「それならば漢王朝が動いてもおかしくは無い!!現に幽州を筆頭に袁家が起こした戦には動いているではないか!
呉から侵攻されたと言うのであれば要請を受けた曹孟徳が黙ってはいないだろう!!」
「その曹孟徳は誰が推薦したのかお忘れでは?」
「「「!?」」」
っく・・・ここでそれを引き合いに出してくるか。
このままではこ奴等の企みに乗らざるを得なくなる・・・・・・。
どう考えてもおかしい。
こんな者達の側に付けば厄介事に巻き込まれてしまうのが目に見えておる。
「わかった・・・この馬寿成力に・・・「待った!!」・・・なんだい?翠」
「あたしは賛成できない・・・連合の時に見た天の御遣いが何の理由も無しに荊州に攻め入るなんて思えない!!」
「叔母様には悪いけど私もお姉様と一緒だよ!連合で失敗しちゃってるんだからもっと調べてから動くべきだと思う!!」
ほう・・・まだまだ青いと思っていたこの小娘共が馬騰に意見するようになっているとは・・・。
だが、その成長は大変喜ばしい!!
馬騰が間違っているとは思っては居ない。
だが、時代は変わりつつあるのだ。
漢と言う天に対して盲目的に忠誠を誓っているだけでは駄目なのだ。
「馬騰よ。先の戦での失態を忘れたわけではないだろうな?」
「・・・・・・忘れるはずもない。だが、どうするつもりなのだ?」
「簡単な事だろうよ。我等涼州の人間で事の成り行きを調べれば良い。我等涼州の人間の目と耳でな。
それからこ奴等の言う事が嘘か真かの判断をすれば良いだけの事!!」
「だけどそれじゃ手遅れになるかもしれないんですよ!!」
「黙れ小娘!!!!!!洛陽にて『天』から追放されたお前の言葉など信じれる筈もなかろう!!!!!!」
「っ!?」
「後ろで殺気を放っている小娘もだ!!!!!!お前達が物を頼みに来ておいて殺気を放つなど礼儀すらなっておらぬではないか!!」
まったくもって信用できる所などないのだ。
こんな者達の口車に乗ればこの涼州は駄目に成るのが目に見えている。
「もうよい・・・して韓遂、今回の件誰に向かわせるのだ?」
「・・・・・・我が行く。我がこの目、この耳で事の真相を調べて来よう。心配なのであればお主の部下も幾人か付ければよかろう」
「わかった。お主に任せる」
そう告げた馬騰は玉座から立ち娘達を連れ玉間から出て行った。
とりあえずはこれで良い。
後は我が調べ上げ、事の全貌を暴けば良い。
「そう言う事だ!お前達も早々に此処から去るがよい!」
そう言い放ち、我は玉間を出る。
まず向かうは洛陽・・・その後は呉に向かい真相を確かめる。
今回の事・・・どう考えても非があるのはあの者達だ。
全てを調べ上げても尚あのような戯言を抜かすのであれば我自ら切り捨ててやろうぞ!!
『太史慈編』
― 凌統Side ―
「・・・・・・これがあの洛陽とはねぇ」
あの頃の洛陽の栄華はもう見て取れない。
今の洛陽は戦の傷から今だ立ち直ってはいないようだ。
「馬鹿な事をしたもんだ・・・あのまま曹孟徳が治めていたらもっと栄えていた筈だ」
太史慈がそう言葉を漏らす。
司州を抜け、補給をかねて立ち寄ってみた洛陽。
洛陽で見たものは、かつて十常侍が悪政を布いていた頃と変わらない様相を醸し出していた。
「月が立て直し、曹孟徳が善政を敷きやっと正しき都と成って来ていたんだがな」
太史慈は顔を少し
「何もかも奴の思惑通り・・・と言った所か」
「・・・かもな」
小さくそう答えた太史慈は足早に歩き出した。
その背中は時間がない・・・そう言っているような気がした。
そう、もう時間はあまり無い。
馬車で待つ子を幽州に連れて行かなければ成らない。
既に一刀様が言っていた戦が今か今かと始まりの音を待っている。
もし間に合わなければ、これまで二人で大陸を行脚した事が無駄に終わってしまうのだ。
孫呉の為にも・・・自らの身体を張った一刀様の為にも必ず幽州まで間に合わせてみせる。
この任務の完遂こそ『天の御使い北郷一刀』様から承った最後の任務なのだから・・・。
あとがきっぽいもの
あけましておめでとうございます 獅子丸です。
明けてからだいぶ経っていますね・・・・・・。
年が明けての初投稿でございます。
読者の皆様方もいろいろあると思いますが、今年もよろしくお願いいたします。
さて、本文に関してですが・・・。
今回『赤壁編』はお休みさせて頂いてます。
『赤壁編』は実の所後3回で終わるのです(ぁ
HDDクラッシュ事件の後、プロット製作において話数的に『現代編』と『太史慈編』が無駄に増えてしまったのが原因ですorz
ですので、次回以降も当分お休みになるかと思います。
『赤壁編』が復活すれば最後の舞台『赤壁の戦い』へと三篇が収束していく前触れだと思っていてくださいw
んで、現代編ですが・・・今回に関しては、メインキャラの登場数がほぼありませんw
でも、重要な点が多かったりする話です。
黄祖に始まり、初登場の誰か・・・そしてある意味キーマンである韓遂。
相変わらずお馬鹿な人も悪臭漂う人も満載です(ぇ
馬騰さんはキャラがまとまらなくて微妙ですけどorz
まぁ、モブキャラなんで見逃してください・・・。
太史慈編は・・・・・・。
うん、はしょります!
ってな感じで今回はこの辺で。
次回も
生温い目でお読みいただければ幸いです。
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第57話。
明けましておめでとう御座います(遅
待っていてくれた人も待ってない人もお待たせしました(ぇ
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