発端
細い腕で、ゆっくりと掘っている。
妖怪に、敬意を込めて、掘っている。
妖怪の断末魔を思い出しながら掘っている。
ふとよぎる、息の根を止める瞬間の、その表情。
いつまで経っても慣れなかった。
赤い月が出ていた。
妖怪の死骸を埋めるため、赤錆の付いたスコップで穴を掘っていた。
御札を用いた結界によって妖怪を強制的に異空間に吹っ飛ばすこともあれば、今夜のように、御幣や陰陽玉を用いた肉体的な破壊によって殲滅することもあった。
死骸が残るのであまり後者を選ばなかったが、中には止むを得なく殲滅手段が限られることもある。
動きの素早い妖怪が相手だと、悠長に結界に封じ込めるよりも、針や弾幕でその体を殺傷する方が早かった。
その後、今のように穴を掘って死骸を埋めるのが、博麗の巫女として拒否することの出来ない重要な仕事だった。
穴が完成すると、大きな死骸を引っ張り、穴に落とし込んだ。
無抵抗な体は、そのまま地中に落下し、奇妙な不自然な格好になる。
一枚の札を妖怪の胸に落とし、手を合わせて黙祷した。
それが終わると、掘り出した土をまた元に戻してゆく。
いつも、顔は最後に見えなくなるようにしていた。
土をそのまま戻すと山になる。
元は無かった死骸があるのと、かぶせる土が空気を含んでいるためだ。
時々、かぶせた土の上に乗り、ゆっくり踏み固める。
同じ動作を繰り返して、ほぼ元通りの平坦な地面が残った。
また札を一枚、その場に置き、再び短い黙祷をした。
全ての仕事が終わり、その場を去ろうとすると、目立つ赤色の何かが目の端に映った。
色は違うが、それは紅魔間に招かれた際によく振舞われるクッキーのように見えた。
拾い上げて調べると、咲夜が作る物より派手な色だが、やはりクッキーにしか見えなかった。
妖怪の食べ物だろうか、と想像する。
鼻を近づけると、干した豆か芋のような匂いがした。
妖怪が携帯食を持っていることにも驚いたが、その携帯食が、持ち主の体に大してこんなに小さいことにも驚いた。
もしかしたら、嗜好品の一種かと考えたが、その場でいくら考えてもどうしようも無さそうだった。
私は少し興味が沸き、そのクッキーを懐に忍ばせてその場を去った。
一日目
翌朝、具の無い味噌汁をすすり、ナスのぬか漬けをぽりぽり齧っていた。
妖怪退治の依頼は、めっきり減った。
スペルカードルールをはじめ、人間を保護する幻想郷のルールは、私の存在によって厳密な執行力を持つようになり、妖怪が里の人間を襲うことは急激に減っていた。
それは私の結界の能力と、異常な戦闘能力によって、恐らくどんな妖怪でも殲滅できるという確実な武力が生み出した秩序だった。
戦うのは好きではないので、仕事が減るのは喜ばしいことだった。
とはいえ、金の入りが少なくなるのは、それはそれで問題だった。
紫に助けを求めれば、日々の食事くらいは何とかしてもらえるだろうが、自分から出向いても彼女はいつも不在か、寝ている。
私が切実に困窮している時ほど、紫は当てにならなかった。
一人で質素な食事をしながら、ふと、昨夜のクッキーのことを思い出し、棚の中から取り出した。
恐らく毒ではないのは、匂いや見た目で分かった。
妖怪の私物だったが、このまま捨てるのも勿体無い。
それに、あの妖怪は、言わば私が食らったようなものだ。
あの妖怪の物を私が有効に利用しても文句はあるまい。
私は、本当に飢えていた。
一口目は豆のような味がしたが、二口目は脂身を少し含んだ肉の味がした。
材料は大豆と、魚か鳥のすり身でも含まれているようだった。
触感はクッキーと魚のすり身の中間と言った感じで、指で曲げることが出来た。
思ったよりも食べやすく、手の平ほどの大きさのそれを、あっという間に平らげてしまった。
私は、これがどこで手に入るのか気になった。
境内の掃除を終え、縁側で茶をすすりながら、杜の木々を眺めていた。
一度、木々の合間をツバメの影が通り過ぎた。
まだ正午にもなっていないのに、瞼が重くなった。
私は湯飲みを置いて、後ろ手に襖を開けた。
中の敷きっぱなしの布団を引っ張って、縁側に近づけた。
涼しい風の中、眠りに就くのもいいと思った。
……自然に目が冷めた。
縁側で、誰かが座りながら横になっている。
黒いエプロンの背中をこちらに向けている誰かは、寝息を立てていた。
その腰元には、黒い魔女の帽子と、黒い風呂敷が置いてあった。
いつものように居間に招き、茶を出した。
「差し入れに来たんだが、寝ちまった」
「本当にありがたいわ。食べるものが無くて困ってたの」
「紫は何もしないのか? さすがに悲惨に過ぎると思うぜ」
「きっと寝てるわ。朝方、境内でちょっと意識を失っても反応無かったし」
「ひとまず、霊夢は急いで何か食った方がいいな」
「ほら、愛情込めて握ったんだぜ」
笹の葉に包まれた三つのおにぎりを手渡された。
白い米粒が、信じられないくらいおいしそうに見えた。
「魔理沙大好き!」
「おいおい、泣くほどのことかよ」
言われて、自分の目に涙が溜まっているのに気付いた。
「あら、失礼」
知らない間に欠伸でもしていたのだろうか。
瞼をぱちぱちさせてみた。
溜まっていた涙が、まつげを乗り越えて、一粒ずつ流れた。
私は人差し指で雫を拭いた。
それで終わりだと思ったが、涙はまた一粒流れた。
「あれ?」
止まる所か、涙はどんどん溢れて来た。
悲しくないのに、次から次へと溢れる涙が不思議だった。
とても嬉しいのに、自分の顔が悲しい表情をしているのが分かった。
私は、袖で顔を隠し、魔理沙に背を向けた。
飛び切りの笑顔でお礼を言いたいのに、どうしようもなく泣いてしまう自分に、イライラした。
「大丈夫か?」
「だい、じょぶ」
まともに喋れなかった。
私はしゃっくりをするほど泣いていた。
「ごめん、止まらなそう」
私は諦めて、そのまま背を向けて泣き続けた。
魔理沙はずっと背中に手を当てていてくれた。
……腫れぼったい顔のまま、魔理沙の差し入れを平らげて、ようやく落ち着いた。
「しばらく会っていなかったが、よっぽど大変だったんだな」
「そう言えば、ぬか漬け以外の固形物を食べたのは二週間ぶりくらいね」
「そうなる前に、私とかアリスとかにたかってもいいんだぜ」
「なんか、悪い」
「お前に餓死される方がよっぽど悪いよ」
魔理沙は一つ欠伸をした。
二人で里に出た。
仕事以外の用事で里を歩くのは久しぶりだった。
天気が良いせいか、大通りはそれなりに人の姿が見えた。
私は昨夜の分の報酬を詰め所で受け取り、魔理沙とその辺をぶらぶらしていた。
「なあ霊夢、今夜はウチで鍋でも食わないか?」
とてもいい考えだと思った。
具材を探している内に、見慣れない趣の店を見つけた。
「ねえ魔理沙。これなんだか分かる?」
通りに晒してある木棚には、私が昨日初めて見たクッキーのようなものが置いてあった。
青や橙、緑、白といった色とりどりのクッキーがきれいに並んでいる。
「赤いやつ以外にも色々あるのね」
「最近流行ってるらしいぜ、私はあんま好きじゃないけど」
「『ソイレント』って言うのね。初めて知ったわ」
店の藍染めの布には、ソイレント、と大きく白抜きの文字で示してあった。
「知ってる奴はみんな『ソイ』って略してるけどな。欲しいのか?」
「いいえ全然」
興味はあったが、貴重な資金を得体の知れない物に使う気にはならなかった。
夜は魔理沙の家で鍋をつつき、そのまま泊まった。
二日目
里の警備から依頼が来た。
これで少しは魔理沙に心配をかけずに済むという好都合があったが、それでも諸手を挙げて歓迎する気にはならない気だるい仕事なのは、相変わらずだった。
詰め所にて話を聞くと、墓場に妖怪が出るので退治して欲しい、というのがその内容だった。
妖怪が墓場に何の用があるのか気になった。
まさかあまりにも人間を食べたいので、墓の下の腐乱しているであろう死者を掘り起こして食べる、とも思えなかった。
ともかく依頼は全て受けるのが博麗の巫女だった。
私は準備をし、陽が落ちると、その墓場に向かった。
里から伸びる細くて目立たない道を長いこと歩くと、その場所に出る。
墓標は無く、ただ、どこまで続くか分からない大きな深い穴があるだけの、殺風景な場所だった。
誰も手入れなんてしないから、雑草が好き勝手に伸び、獣道すら覆い隠している。
墓というには、あまりにも寂しい場所だ。
何度も来たことがあるが、私はこの場所が苦手だった。
夜が深くなった。
昨夜と同じ赤い月が出てきた。
穴の近くにしゃがんで隠れていると、妖怪と一目で分かる図体のでかい影が、草を掻き分けながら現われた。
「悪いけど、ここまでよ」
こちらに気付いて目を剥いた妖怪は、驚きとも威嚇とも分からない顔だった。
「やりすぎじゃないかあ。俺達はずっと我慢してたあ」
裂けた口で、やけに落ち着いた話し方だった。
「大人しくするなら、痛みも苦しみも、全く感じないわ」
「ああ、人間、食いてえなあ」
妖怪は、諦めたように上を向いて、両手を挙げた。
「さようなら」
私は用意しておいた結界を発動した。
妖怪の周囲に札を飛ばすと、札は妖怪の周囲を取り囲み、輪になって激しく回転する。
その輪は徐々に小さくなり、中に取り込んだ妖怪ごと、この世から消えた。
妖怪は全く抵抗しなかった。
それを見届けた後、ふと、妖怪がなぜこんな場所に用があるのか、と昼間の疑問を思い出した。
やはり死体を食べに来たのだろうか。
聞き出してからの方が良かっただろうか。
つまり、『聞きだしてから殺した方が良かっただろうか?』
……自分に嫌気が差した。
三日目
「ソイってにとりが作ってるんだとよ」
ちゃぶ台を囲んで、魔理沙とアリスと紅茶を飲んでいた。
紅茶はアリスが持ってきた物だ。
「それをどこで?」
と、アリス。
「店主に聞いたんだぜ」
「魔理沙ってあれ嫌いじゃなかったっけ」
「いや、一昨日霊夢が見てたからさ。手土産にしようかと思って」
「その割には持ってないじゃない」
「財布を忘れてたんだ」
「なるほど」
二人の仲の良い会話の中に、私は気になる所があった。
「にとりがねえ……」
何かが引っかかった。
私は少し考えてみることにした。
ソイは、人間の里で売られている。
ソイは、私が退治した妖怪が持っていた。
あの妖怪は里の店でソイを買ったのだろうか?
慧音のように里に溶け込んで生活する妖怪もいて、そういう妖怪のことは立場上、全て把握しているが、最初に倒した妖怪は、里に住む妖怪ではなかった。
つまり最初の妖怪は、ソイを里で購入せずに手に入れたことになる。
魔理沙の言うように、にとりがソイを作っているとする。
それなら、『あの妖怪はにとりからソイを手に入れた』と考えるのが自然だ。
つまり『にとりは人間にも妖怪にもソイを売っている』。
妖怪でも人間でも商売するのは自由だから、その点は問題無い。
奇妙に感じたのは、『妖怪が好む物を人間に売っている』という点らしかった。
案外、妖怪と人間の嗜好は似ているのかも知れない。
実際私はソイを食べておいしいと感じた。
だからにとりがソイを人間に売るのも、何もおかしいことは無い。
でも、はっきりとは分からないが、確かに何かが引っかかった。
私は何か重要なことにまだ気付いていないような、言い知れない不安を感じた。
「私、ちょっとにとりの所に行って来るわ」
静かな焦燥を感じながら、私は立ち上がった。
「霊夢が自分から出かけるなんて珍しいな。私も付いて行っていいか?」
「じゃあ私も」
結局三人で行くことになった。
霧の深い湖のほとりにある、水車の付いた小屋。
にとりはその小屋に住んでいて、色んな作業や商売をしている。
たしかその地下には、相当大きな空間があった。
そこでにとりはソイを作っているのだろうか。
「やあ霊夢。久しぶりだね。魔理沙とアリスもよく来たね」
にとりに特に変わった様子は無い。
「ソイを作ってるって本当?」
私はまずは確認をした。
「そうだよ。里での売れ行きも好調みたいで嬉しいよ」
にとりはあっさり認めた。
そのにとりの顔を見て、私はうすうす感じていた不安の正体が、ようやく分かった。
「ソイの原料って、人間の死体よね?」
「は?」
「霊夢何言ってるの?」
と、魔理沙とアリス。
「そうだよ」
にとりはあっさり答えた。
「はあ!?」
後ろの二人が同時に声を上げた。
「言ってなかったっけ? てっきりみんな知ってるものだと」
にとりは調子を崩さず言う。
私は、眩暈のような感覚がして、つい自分の額を押さえた。
「あれ、原料って言ってなかったかな? そういや店主には『豆っぽいのでソイレントという名前です』としか言ってなかったかも知れないね。いやあ、失敬失敬」
にとりは屈託無い笑顔で失敗を詫びた。
私が感じた不安はこれだった。
原料が人間だということは、実はかなり前から分かっていた。
けれど、それがどういう経緯で人間の里に出回ったかが分からなかった。
それはにとりの手違いという、単純な話だけでは済まないのだ。
妖怪と人間の価値観の違いが、こんな形で現われるなんて、皮肉な話だと思った。
「おいにとり! ひでえじゃねえか!」
魔理沙がにとりの襟元に掴みかかった。
「え? なんで怒ってるの? 変なこと言ったのなら謝るよ」
にとりは皆目見当が付かないといった様子で、魔理沙に怯えている。
「お前、私達に人間を食わせてたんだろ! そういうことだろ? これが怒らずにいられるか!」
「それで、なんで怒るのか分からないよ」
にとりは、全く心外そうな顔をした。
魔理沙は襟を掴む手を、ぴたりと止めた。
「死んだ者を水に流したり、地面に埋めたり、灰にするのは、私達の世界から死んだ者を隠そうとしているみたいで可哀想じゃないか。死んだ者を食べて、私達の体の中で栄養になってもらう方がよっぽど優しくて自然だよ」
私達は小屋の中で、にとりの言葉を聞いていた。
「だから私は、死者をみんなで食べることは、とても良いことなんだと思っていたんだ」
にとりは肩を落とした。
「でも、人間にとってはタブーだったんだね。本当に申し訳ない。ソイレントはもう作らないよ。今ある分も、全て火葬にするよ」
……私達三人は、いつものちゃぶ台に戻ってきた。
誰もなかなか口を開けなかった。
せっかく淹れ直した紅茶が、冷めそうだった。
「アリスは?」
紅茶を口元に持ちながら、魔理沙が呟いた。
「正直、にとりの言うことも分かる。でも、私はまだ人間に近いと自分では思うわ」
アリスは、いつ聞かれるのかと、待っていたようだった。
「ま、アリスは妖怪というよりも、魔法使いだからな」
私は先ほどから、別な者の気配を感じていた。
「紫、見てるんでしょ」
「あら、相変わらず鋭いわね」
ちゃぶ台の上の空間が裂け、中からスキマ妖怪が顔を出した。
「悪趣味だと思う?」
紫は空中から腕を伸ばして、私の紅茶を勝手に飲んだ。
「いいえ、紫も悩んでるんだろうなって思うわ」
「そう、悩ましいのよ。このままじゃ我慢の出来ない子達を皆殺しにしなくちゃならなかったから。それは霊夢にも分かってたわよね?」
「ええ」
妖怪の中には時々、人間を無闇に食べようとする者がいる。
私はそんな妖怪を退治する。
その仕事は最近めっきり減った。
それの意味するところは、決して妖怪が人間を食べたくなくなった、ということではない。
妖怪達は、人間に手を出すと私に殺されるから、迂闊に手出しできなくなった。
彼らはずっと、単純に我慢していたのだ。
その我慢が出来なくなった時は、やはり私は彼らを殺さなければならなかった。
「もう気付いていると思うけど、ソイレントを考え出したのは私よ。あの河童にはその大量生産を依頼したの」
紫は、冷静な口調で説明を始めた。
「要するに、妖怪達が人間を襲うことなく人間を食べることが出来れば全てが上手くいくじゃない? だから妖怪達の為に、手軽に食べられるお菓子を配ることにしたのよ。人間の死体から作ったお菓子をね。味は人間そのままだから、効果はあったわよ。にとりがそれを人間に売り始めたのはちょっとした計算違いだったけどねえ」
「死者の尊厳はどうなる? 生きてる間に一生懸命頑張って! せっかく墓に入って永遠の安らぎを得た人間を! また墓から引っ張り出してその辺の妖怪に食わせるなんて、あんまりだぜ!」
魔理沙は立ち上がっていた。
「そういうことも一応考えたわ。だから死体はあそこからしか調達していない」
「あそこってどこだよ?」
アリスはピンと来たようだが、魔理沙は本当に知らないようだった。
魔理沙が知らなくても無理は無かった。
あれは、墓とも呼べない、ただの黒くて深い穴。
人々が忘れたいものを捨てる場所。
望まれぬ子供や、伝染病でどうしようもなくなった者、あるいは食べさせられなくなった老人を捨てる場所だった。
だから普通は誰も近づかない。
近づくのは、里の警備の者か、私か、そこに用事のある者だけだった。
「あそこに捨てられた命は、一体何の為に生まれたのか。理由が、少しだけ出来るじゃない? 幻想郷の未来の為に、有効に利用させてもらう予定だったわ」
「何のことだか分かんないぜ」
「魔理沙はまだ知らなくてもいいわ」
紫は紅茶を一口飲んだ。
「でも、ソイレントはやっぱり止めることにするわ。どうも人間は難しい。また違う方法を考えなきゃねえ。それじゃあ話すことも話したから、そろそろおいとまするわ。紅茶おいしかったわよ」
紫はスキマから長い白手袋の腕を出して、それをひらひら振った。
私はその手を掴んだ。
「ねえ紫。最近ずっと姿を隠してたのは、私に後ろめたさがあったから?」
紫にしては珍しく、返事に時間がかかった。
「半分はそうね。でもそれより、あんたは人間のくせに平等で、きっとまた訳の分からない悩み方をするから、上手くいくかどうか分かるまで、何も話したくなかったわ」
「そう」
私は紫の手を離した。
手はスキマに飲み込まれ、やがてスキマも音も無く消えた。
三人とも紅茶を淹れ直した。
「つい忘れそうになるけど、紫も妖怪なんだよな」
魔理沙が言う。
「紫も食べたくなるのかしら」
と、アリス。
「そう言えば、紫もソイを食べたみたいね。『効果はあった』って言ってたから」
私は先ほどの会話を思い出した。
「つまり、ソイを食べる必要があったってことだな」
「最近私の前に姿を現さなかったのは、紫自身が大変だったからなのかもね」
日が暮れて、二人は帰った。
見送って居間に戻ると、ちゃぶ台の上に多少のお金が置いてあった。
「ありがとう、紫」
長い付き合いの中で、初めて紫が可愛く思えた。
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霊夢が心配シリーズのみっつめ。多分ソイレントは腹持ちのいい未来のお菓子です。