No.357724

キュゥべえの営業日誌 特別(という名の手抜き)お正月編

tkさん

『魔法少女まどか☆マギカ』の二次創作。
 今回のテーマ:キュゥべえと遊ぶお正月

*作中で扱いが悪い子がいても、それは書いている人間のちょっと歪んだ愛情表現だったりします。
 今回は特にキュゥべえさんが酷い目に遭いますが、それも愛情故です。

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2012-01-03 23:37:39 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:653   閲覧ユーザー数:639

「~♪ ~♪」

 新年早々ご機嫌だね、マミ。

「ええ、今年は鹿目さん達と過ごせると思うと楽しみなの」

 そうか、そういえば今までは僕とマミの二人きりだったね。

「キュゥべえと一緒が嫌だったわけじゃないけど、やっぱり友達が多い方が楽しいもの」

 僕にはその新年の楽しみとやらがよく分からないから、今まで余計に無味乾燥としていたしね。

 今年はまどか達と楽しんでくるといいよ。

「駄目よキュゥべえ。私はあなたとも楽しみたいわ」

 そう言われても、僕にはその楽しみとやらが理解できないよ。

「だからこそ皆と色々するのよ。もしかしたらその中からあなたの楽しみが見つかるかもしれないもの」

 やれやれ、仕方ないな。じゃあマミの気が済むまで付き合ってみるよ。

「そうこなくちゃ! 実はもう皆に声をかけてあるの」

 用意周到だなぁ。そういう辺りはキミらしい。

 

 ………ところで、本当に皆は来るのかい?

 まさか一人も来なかったというオチにはならないよね?

「………キュゥべえ、その時は一緒にいてくれる?」

 別に構わないけど。そこは怒るか笑い飛ばすべきじゃないかな。

 

 

 

 キュゥべえの営業日誌 特別(という名の手抜き)お正月編

 

 

 

 イベント1:お雑煮

 

「むぐむぐ。やっぱここの飯はうめーな、お代わり」

「ちょっと杏子。三杯目くらいそっと出しなさいってば」

「余ってるくらいだから別にいーじゃん。さやかこそもう少し食べたらどうだ?」

 ああ、駄目だよ杏子。さやかはおせちの食べ過ぎで体重を気にしているから―ぎゅっぷい。

「うっさい! っていうかなんで知ってんの!?」

「無理なダイエットは駄目よ美樹さん。育ち盛りなんだからちゃんと食べなきゃ」

「うー、でもなぁ…」

 マミも酷な事を言うね。マミみたいに栄養が胸囲に出るならプラスなんだろうけど、そういう例は稀有なんだよ。

 ほら見なよ、ほむらなんて栄養がそこにまったくいかな―ぎゅっぷい。

「こいつ、外に捨ててきていかしら?」

「あ、あはは… 外は寒いから許してあげようよほむらちゃん」

「…まどかがそこまで言うなら仕方ないわね」

 ふう、助かった。ありがとうまどか。ついでに僕と契約しないかい?

「しないよ?(ニッコリ」

 …そうか。キミもあしらい方がうまくなったよね。

「さっきから余計なひと言が多いわよキュゥべえ。そんなに潰されたり、引っ張られたりするのがいいの?」

 違うよマミ。僕はキミ達の言うマゾヒストじゃないよ。

 ただ皆が食べるのに夢中で暇だから、ちょっとした余興をしてみたんだよ。

「あんたの余興って他人をからかう事なんかい…」

 さやかだってまどかや杏子をからかう時があるじゃないか。それと同じだよ?

「む、成程」

「成程じゃねぇよ!?」

 やれやれ。

「…そうだね。このままじゃキュゥべえは暇だよね?」

 僕の体格じゃお餅を食するのは難しいからね。別にまどかは気にしなくていいよ。

「そういう姿勢は良くないわインキュベーター。何事も挑戦するべきよ」

 いや、物理的に無理なものは無理なんじゃないかな。

 というかほむら、キミが僕に協力的だなんて嫌な予感しかしないよ?

「皆、こいつにお餅を食べさせましょう。こいつにだってこの美味しさを理解させるべきだわ」

 いや、だから。

「そうね。キュゥべえもグルメを知れば感情が理解できるかも」

「しゃーねーなー。ちょっとだけだぞ?」

「杏子、それマミさんが作ったお雑煮だから。あんたのじゃないから。ま、それは置いといてあたしも…」

「はいキュゥべえ、あーん」

「さあ、思い切り食べなさいインキュベーター。それこそ喉を詰まらせるほど思うさま食しなさい」

 キミの目的はそこなんだね、ほむら。そんなに僕がまどかと会話するのが嫌なのかい?

「気のせいよ。さあ」

『あーん♪』

 …皆、待つんだ。五個も一気に口に入れれば誰だって喉を詰まらせるのは明白だ。

 しかも僕の体格を考えれば一個だけでも怪しいんだから、せめて小さく切って順番に―ぎゅっぷい。

 

 

 

*お餅を喉に詰まらせる窒息事故は毎年発生しています。

 食べる時は食べやすい大きさに切り、お茶や水分で喉をうるおして、良く噛んで食べましょう。

 

 

 

 イベント2:羽根つき

 

「どりゃー!」

「んにゃろー!」

 相変わらず張り合うのが好きだね、さやかと杏子は。

「うふふ、仲が良くて良いじゃない」

 ああいうのも仲が良いっていうのかい? やっぱりキミ達の友情ってよくわからないよ。

「ええいっ!」

「ああっ! 凄い剛球だわまどか!(棒読み」

 ………明らかにほむらが手加減しているけど、あれも仲が良いっていうのかな?

「ど、どうかしらね…?」

 さて、ボクは例によって観戦させてもらおうかな。

「駄目よキュゥべえ。あなたは私とするのよ?」

 ボクの体で羽子板は持てないよ。マミは強引にどっちかに混ざるか、いつもどおり一人羽根つきを―

「大丈夫、あなた用のものを準備したわ」

 …これは、尻尾に括りつけるタイプのものかい?

「ええ、鹿目さんと暁美さんが用意してくれたの」

 成程、これなら僕にも形式上は羽根つきが出来るだろうね。でも…

「さあ行くわよ! ティロ―」

 僕の体格じゃあ、マミの打球を撃ち返せないんじゃないかな?

 ねえ聞いてるかいマミ? 全力で振りかぶってるけど、まさかそのまま僕に打ち込むつもりかい?

 

「フィナーレっ!」

 

 ………この羽子板を作ったまどかは100%の厚意だったんだろうね。

 だけど、ほむらは100%の悪意なんだろうな。なんとなく分かるよ。

 

 

 イベント3:凧揚げ

 

 

 ………風が気持ちいいね。

 昔は空を飛びたいという願い事を叶えた事もあったけど、その魔法少女達はこんな感覚を味わっていたのかな。

 

「キュゥべえ~! どう~?」

 

 少し寒いけど割と快適だよ、マミ。

 といっても聞こえていないだろうけど。

 

「なあマミ、もっとぐるぐる回してやろうぜ」

「駄目よ。キュゥべえが目を回しちゃうじゃない」

 

 杏子、マミに余計な事を吹き込まないでくれないかな。

 ただでさえ操作性の悪い凧なんだから、制御不能に陥ったら括りつけられている僕もろとも空の彼方じゃないか。

 

「切りたい… あの紐を切ってやりたい…」

「もう、冗談言っちゃ駄目だよほむらちゃん。………冗談だよね?」

 

 いや、ほむらは本気だと思うよ。頑張って食い止めるんだまどか。

 

「おーい皆ー。差し入れ持って来たよー」

「おせーぞさやか。待ちくたびれて始めちまったぞー」

「ちぇー、ジャンケンで負けたとはいえ不公平だー。マミさん、差し入れです」

「ありがとう、美樹さん。悪いけど手が離せないから食べさせてもらえる?」

「任せてください」

 

 あ、待つんださやか。

 いくら寒いからっておでんは駄目だよ。しかも熱々の大根なんて口に入れたら―

 

「あふっ!」

「ああっ! ごめんなさいマミさん!」

「馬鹿さやか、そこは冷ましてからだろー」

「相変わらず美樹さやかはそそっかしいわね」

「マミさんお水です」

「あ、ありがとう鹿目さん。美樹さんも今後は気をつけてね」

「はい、すみませんでした」

 

 まったく、さやかはドジっ子だね。いや、これ以上ないタイミングでドジを踏むからむしろ策士なのかな。

 さて、益体も無い事を考えた所で―

 

「ってああ! マミさん凧が!」

「えっ!? あ…」

「あー。手離しちまったなー」

「あちゃー、あたしってばやっちゃったんだ…」

「いえ、むしろGJよ美樹さやか」

 

 ―どうやって地上に帰ろうかな。

 もっとも、凧に括りつけられてる時点で僕に出来る事は無いわけだけど。

 

「そうだ! マミさんの魔法で捕まえられませんか!?」

「あんなに遠くまで飛んで行ったら無理だわ! キュゥべえー! なんとかこっちに戻ってきてー!」

「アイツ、身動きできないから無理なんじゃねーか?」

「仕方ないわね。バズーカ砲で撃ち落としましょう」

「駄目だよほむらちゃん!? それじゃキュゥべえまで黒こげになっちゃうよ!?」

 

 ああ、空が青いなぁ。このまま遠くまで飛んで行くというのも有りかもしれないね。

 少なくとも、ほむらに撃ち落とされるよりマシな気がするよ。

 

 

 最終イベント:初詣

 

 

 初詣か。正直な話、いもしない神様に願うより僕らと契約した方がまだ現実味があるんだけどね。

「こら、そういう事言わないの。それにあなた達が契約出来る相手って私達くらいでしょ?」

 まあ、そうなんだけどね。

「…ねえ、なんだかキュゥべえの機嫌悪くないかな?」

「そう? まどかはあいつに気を遣い過ぎよ?」

「そうだよ。キュゥべえだって結構楽しそうだったじゃん。ねえ杏子?」

「………ノーコメント」

 ははは、皆は変な事を言うなぁ。

 あの後も―

 

 ―かるたをしたら 皆で僕を思うさま叩いたり。

 ―福笑いをしたら、僕の顔をモデルにしてリアル福笑いをしたり。

 ―すごろくをしたら、全部の罰ゲームが僕担当になったり。

 ―独楽回しをしたら、僕を回して壁にぶつけてみたり。

 ―けん玉をしたら、僕を狙ったかのように玉が飛んできたり。

 

 色々あったけど、僕は全然気にしていないよ?

「ごめん! 本当にごめんね!」

「わ、悪気は無いのよ!? ただ事故が重なっただけっていうか…!」

 うん、まどかとマミはいいんだ。二人に悪意は無いって良く分かってるから。

「そうそう、全部事故なんだから気にしちゃ駄目だって」

「気にしても何も変わんねーんだし、諦めろって。な?」

 さやかと杏子に悪意が無い事も理解してるよ。…善意も感じないけど。

「ここまでやってもスペアのボディに代わらなかったんだから、しぶとくなったわよね。忌々しいわ」

 ………うん。キミが悪意100%だって事は最初から分かってたよ、ほむら。

 

「そ、それよりも初詣しましょう? 皆も願い事しましょ?」

 そうだね。気を遣わせちゃってごめんよマミ。

「願い事かぁ…」

 僕と契約した方が確実だよ、まどか。

「あはは… これは願をかけるって感じだから…」

「要するに恒例行事みたいなものよ。おまえの出番は無いわ」

 実現しない願い事をわざわざするなんて、効率が悪いと思うんだけどね。

「いいんだってば、こういうのは気分の問題なの」

「気分で惚れた男は振りむかねーけどなー」

「う、うっさいなぁ! っていうかなんで杏子はあたしの願い事が分かるの!?」

「他に何があるってんだ。さやかは分かりやす過ぎるんだよ」

「…? 杏子、あんたなんか不機嫌じゃない?」

「…知らねーよ」

 さやかは本当にさやかだなぁ。杏子も大変だよね。

「はいはいごちそうさま。巴マミはどんな願掛けをするの?」

「そうねぇ… もう少しお菓子作りがうまくなりたいかな」

「ええ!? もう十分に美味しいですよ!?」

 マミは向上心が高いからね。次はサーターアンダギーに挑戦するんだっけ?

「ええ。キュゥべえは何をお願いするの?」

 え? 僕かい?

「そうよ。せっかくなんだからお願いしてみたら?」

 うーん、そうだね…

「無駄な事よ。どうせこいつの事だから、まどかと契約できますようにとか言うに決まってるわ」

 何を言うんだほむら。僕はそんな願掛けはしないよ?

「な、なんですって!?」

 まどかとの契約は僕の仕事であり、目標とするべきノルマだ。

 それを誰とも知らない神様とやらに委ねる気は無いよ。そんなものはただの逃避だ。

 自分が本当に求めるものなら、自分の行動によって手にいれるべきだよ。

「きゅ、キュゥべえがまともな事言ってる…!?」

「ありえねぇ。明日は雨か? いや世界滅亡か!?」

 さやかに杏子、キミらも大概失礼だね。

 そうだね。願うとしたらそれは自分の思慮が及ばない、もっと漠然としたものでいいんじゃないかな?

 ほむらが言うには元々そういう恒例行事なんだろう?

「ええ、そうね。じゃあおまえの願いは?」

 まどかと契約できるまでこの星が僕の担当でありますように、かな?

 こればっかりは僕より上の本星の意思によるからね。

「結局私が目的なんだ…」

 そりゃそうさ。それが僕の使命だからね。

 という訳で。これからもよろしくね、まどか。

「あはは、お手柔らかにね」

 む、今一僕の真剣さが伝わっていないね。僕は本気だよ?

「そっかな。なんか、今のキュゥべえって楽しそうだよ?」

「そうね、少しはお正月を楽しめたかしら?」

 あの内容でお正月を満喫できたと思うまどかとマミも少しおかしいと思うよ?

「………まどかがおかしいですって?」

 あ、しまった。

 違うんだほむら。まどか自身がおかしいんじゃなくて、今の考え方が―

「黙りなさい。生意気な口をきいた上にまどかへの暴言なんて、これは死罪しかないわね」

 ―駄目だ、今度こそボディをスペアに交換する事態になるかもしれないね。

 

 

 さて、これを見ている君はどうだった?

 少しでも楽しめてもらえたなら、僕も苦労した甲斐があったというものだ。

 それじゃあ、また次の機会があれば会うとしよう。

 

死になさい(ザ・ワールド)ッ!」

 さて、全力で逃げるとしようか。九分九厘の割合で逃げられないだろうけど。

 

 

 

   ~了~   


 
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