No.355323

新作・恋姫無双 その三

瑠璃石さん

久しぶりに投稿します。
何とか2011年にもう一度更新出来てよかったです。

今年も残す所あと一日。
年の瀬に体調など崩されませぬようお気を付けください。

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2011-12-31 00:49:46 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:4139   閲覧ユーザー数:3651

~ 司馬家 ~

 

 

「で、この兄ちゃん誰?」

 

ぶっきらぼうな口調をしているが、眼や雰囲気はいつでも戦えるという素振りを見せている司馬馗。

 

「季達、お客様の前でそのような言葉遣いをしてはいけません。申し訳ありません、私は司馬孚 字を叔達と申します。こちらが双子の妹になる・・・」

 

「司馬馗 字を季達。一応よろしく」

 

叔達の言葉に従い投げやりのような感じで自己紹介を済ませる季達。

 

「私は司馬恂 字を顕達といいます。妹がお世話になったようで申し訳ありません」

 

「いえ、こちらこそお邪魔することになり申し訳ない」

 

「むー!!一刀さんは邪魔なんかじゃありません!!」

 

「・・・」(コクッ

 

頬を膨らませて一刀の言葉に反論する恵達と無言で恵達の言葉に同意する幼達。

 

ここで彼女達が一刀の両脇を押さえていることを気にしてはいけない。

 

腕を組んでいることも気にしてはいけない。

 

「はっはっは、随分と二人に懐かれた様だな」

 

一刀を離さない二人を見ながら豪快に笑う女性。

 

「ワシは司馬朗 字を伯達という。これでも二人を含む七人の姉じゃ」

 

幼達と伯達を見比べるとどう頑張っても親子に見えるのだが、一刀はそのような素振りを一切見せず、

 

「よろしくお願いする」

 

伯達と言葉を交わす。

 

「ほう、ワシを見て親と思わぬ者がおるとはな。中々面白い殿方じゃな」

 

酒を煽り再び豪快に笑い始める伯達。

 

一刀は伯達を切符のいい姉御だと認識した。

 

「それで一刀はどこから来たのじゃ?」

 

「実は・・・」

 

伯達の問いに一刀は自分の身に起きた出来事を説明していく。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・説明中・・・・・・説明中・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「・・・にわかには信じられんが」

 

一刀の説明を聞き終えた伯達はどうも信じられないと言った顔をする。

 

「いきなり信じろといっても無理だろうな。話している俺でさえ信じられないのだから」

 

一刀は自分の身に起きたことを全部、しかもすぐに信用してもらおうとは思っていなかった。

 

なんせ自分でも今ここに居ることが現実かどうか疑わしいのだ。

 

自分でも信じられないことを他人に理解させようなどと考えるはずも無い。

 

「ところでさ、さっきから気になってたんだが・・・北郷は盲目なのか?」

 

 

 

---ピシッ!!

 

 

 

季達の何気ない言葉に部屋の空気が一気に凍りついた。

 

「お前という奴は!!そういうことは思っていても聞かないのが礼儀というものだろうが!!」

 

伯達はデリカシーの無いことを口にした季達を叱り付ける。

 

勿論伯達も気にしていたことだが、この手の話題は障害を持つ本人にとって気に触ることが多い。

 

その為一刀の気を悪くさせないためわざとその話題に触れないようにしていたのだが、良くも悪くも正直な季達の所為で台無しになってしまった。

 

「ごっ、ごめんなさい」

 

シュンッとなって小さくなる季達。

 

「そう怒ってやるな、誰でも俺と会えばその疑問を持つ。確かに俺は盲目だが、それを障害だと思ったことは無い」

 

「・・・一刀がそういうならこれ以上追求はしないが、お前はもう少し遠慮して話すことを知るべきじゃな」

 

伯達は一刀は気にしていない以上季達に対して何かを言うことをやめるが、それでも念を押して注意することはやめない。

 

「ぅぅぅ。だってさ、北郷はまるで眼が見えてるかのようにスイスイとここに入ってきたじゃんか?アレで盲目なんて信じられないよ」

 

「・・・確かに」

 

季達の言葉に伯達をはじめ叔達も同じように疑問を持った。

 

「実はその眼帯見えるんじゃないか?」

 

一刀の眼が見えるとなれば話しは変わる。

 

わざと眼帯を付けて盲目のフリをし、相手の油断を誘い何かをすると考えれば一刀がアレだけ普通に歩けることや、どこに誰が居るのかを認識できるのも頷ける。

 

 

「・・・」

 

 

 

---スッ

 

 

 

一刀は季達の言葉に答えず眼帯を外して季達に手渡す。

 

「・・・??」

 

「付けてみよ、それで全てがハッキリするじゃろ」

 

伯達は一刀の行動の意味を理解し、季達にその眼帯を調べて付けるように促す。

 

「・・・全く光を通さないな」

 

外から入ってくる光や松明の火に近づけても眼帯は透けているような素振りは無い。

 

「付けてみるか」

 

結局外側からは何もわからない以上、季達は眼帯を目に付けて見た。

 

「ッ、おい!!なんだよこれ?!」

 

「どっ、どうしたの?季達ちゃん!!」

 

いきなり声を荒らげて慌てだす季達に声を掛ける叔達。

 

 

 

---バッ!!

 

 

 

季達はまるで引き剥がすかのように乱暴に眼帯を取り外す。

 

「なんだよコレ!!全く見えないじゃないか!!」

 

一刀の付けていた眼帯は向こう側が透けるどころか、健全な視力を持っている季達が使っても一縷の光を通さない。

 

コレでは仮に眼が見えていたとしても盲目になってしまう。

 

「ふむ・・・少なくともコレで一刀が眼帯をしている間何も見えぬということは証明されたな」

 

同じように眼帯を目に付けて確かめる伯達。

 

「そうですね」

 

「みたいですね」

 

「・・・」(コクッ

 

恵達・幼達・叔達の三人も眼帯を付けて伯達の言葉に同意する。

 

 

「・・・北郷、疑ってすまなかった」

 

「気にするな、当然の疑問なんだからな」(ニコッ

 

「・・・」(ポッ

 

微かに笑みを浮かべ季達を許す一刀。

 

そしてその一刀の素顔による笑顔に当てられて真っ赤になる季達。

 

周りを見れば伯達も叔達も同じように顔を染めており、食事を持ってきて部屋に入ろうとしていた仲達と二人も同じように顔を染めて固まってしまっていた。

 

「・・・??」

 

一刀は何故八人が固まったのか理解できないまま、返してもらった眼帯を再び身に付ける。

 

「仲達?そちらの二人はどなたなんだ?」

 

別れる前に仲達から自己紹介を受けていた一刀だが、後ろにいる二人はこれまた初顔であった。

 

「はっ、すみません。ほら、北郷さんに挨拶をしなさい」

 

一刀に声を掛けられ正気に戻った仲達は二人の妹に自己紹介をするように促す。

 

「ァッ、あたしは司馬恂 字を顕達といいます。あの、お口に合うかわかりませんがご賞味ください」

 

そう言って手に持った食事を一刀に突きつける顕達。

 

「あっ、ありがとう」

 

「顕達、まだ一刀は皿も箸も持っておらんのじゃぞ?手で食えというのか?」

 

「ぁぅぅ、そうでした」

 

伯達の指摘に顔を再び真っ赤にして恥ずかしそうにする顕達。

 

「全く、顕達姉様はおっちょこちょい何だから。私は司馬通 字は雅達。よろしくね、一兄様」

 

雅達は手に持った料理を食卓に置きながら笑顔で一刀に自己紹介をする。

 

「かの有名な司馬八達全員とお目通りできるとは光栄の至りだ」

 

「そうかのぉ?わし等からすればそのように言われることのほうが心外なのじゃがな・・・」

 

一刀の『司馬八達』という言葉になにやら苦い表情をしつつ料理に箸を付けて行く伯達。

 

「『司馬八達』といっても俺の居た国ではそう呼ばれていただけで、俺からすれば皆可愛い女の子に違いはない」

 

「・・・もう、一刀さんたら」(ポッ

 

一刀の真面目な言葉に顔を再び真っ赤にして体をくねらせる恵達。

 

よく見れば全員が照れたように顔を赤くしていた。

 

「・・・全く、お前という奴はどれだけの女を泣かせてきたのじゃ?」

 

口説いているような下心を一切見せず、自分達の心を鷲掴みにしていく一刀にあきれ返る伯達。

 

「生まれてこの方、この容姿も相まってモテた事など無いのだが・・・」

 

 

 

「「「「「「「「絶対嘘だ!!!」」」」」」」」

 

 

 

一刀のモテない発言に八達全員が嘘だと吼える。

 

「嘘じゃないんだが・・・」

 

全員一斉に否定されたため一刀が少々落ち込んでしまう。

 

「じゃぁ、私が一刀さんのお嫁さんになってあげる!!」

 

落ち込みを見せる一刀に恵達が堂々の嫁発言をしてくる。

 

「・・・ふるふる」(ギュッ

 

恵達に反対するかのように反対側では幼達がひっそりと自分の存在を強調してくる。

 

「ぷっ、はっはっはっは!!そうじゃな、なんならわしら全員を一刀に娶ってもらうとしようかの」

 

妹の二人がここまで一刀にご執着な事が嬉しいのか、伯達はなんとも大胆な爆弾発言をしてきた。

 

「えぇっ?!八人全員でですか?!?!」

 

「・・・本気かよ」

 

「それも面白いかもしれないね」

 

多種多様な反応を示す八達一同。

 

そんな騒がしい中、司馬家の夜は更けていく・・・・

 

 

 

 

 

 

~ 翌日 ~

 

 

「・・・朝か」

 

見渡してみればまるで屍のように眠っている季達・顕達・叔達・雅達・伯達。

 

そして自分の横で幸せそうに眠っている恵達と幼達。

 

この七人を見て一刀はつくづく信じられない世界に来たのだと実感していた。

 

服を握っている二人を起こさないようにはなして部屋から出て行く一刀。

 

 

 

---グッ・・・グッ・・・グッ・・・

 

 

 

軽い準備運動をして体を解していく。

 

一日に決まった分の運動や訓練をするのが彼の日課なのである。

 

 

 

 

 

一刀が鍛錬を始めて半刻は経ったであろうか?

 

不意に一刀が動きを止める。

 

「どうかしたのか?仲達」

 

するとそこには木の影に身体を隠し一刀の邪魔をしないように気を配りながらもこちらの様子を覗っている仲達が居た。

 

「いえ、食事の準備が出来たので皆を起こそうと部屋に戻りましたら、北郷さんのお姿が見えませんでしたので・・・」

 

一刀がいなくなったため仲達はわざわざ探しに来てくれたのだろう。

 

淡々としているようだが、仲達はコレでかなり気配りが出来る上優しい。

 

たった一日しか経っていない一刀でも居ないと心配になって探してくれるのだから。

 

「・・・そうか、もう少しだけ待って欲しい」

 

そう言って一刀は再び身体を動かし始める。

 

 

 

---シャンッ・・・・シャンッ・・・・・・シャッーーー

 

 

 

一刀が身体を動かすたびに汗が星屑のようにキラキラと輝いてみえる。

 

その幻想とも思える光景に仲達は声を失って見入っていた。

 

 

 

そして静かに一刀が動きを止めた。

 

 

 

「ふぅ、見苦しいものを見せてしまったな」

 

岩の上に置いておいたタオルで汗を拭いながら仲達に話しかける一刀。

 

「・・・いえ。美しい演舞を見せて頂きました」

 

仲達も眼を奪われ言葉も無いということが本当にあるのだと始めて実感した。

 

そしてそれは心までも奪われていたと、まもなく気づくことになる。

 

「さぁ、恵達や幼達がベソを掻く前に戻りましょう」

 

顔が火照っているのをごまかしつつ自宅に戻るように催促する仲達。

 

勿論眼で見ていない一刀にとってその内面など当に感じ取っているのだが、

 

「そうだな。お世話になっているんだ、居なくなるなんて礼儀に欠けるな」

 

あえてそれに気づかないフリをして仲達と共に帰路に着く。

 

 

 

 

「あぁーーー!!!一刀さん、どこに行ってたんですかッ!!??」

 

 

 

 

司馬家に戻ると同時に一刀に向かって怒鳴りつける恵達。

 

目を覚ました途端、隣に居たはずの一刀が居なかったのだから気持はわからなくは無いが。

 

「・・・心配したの」(うるうるっ

 

幼達に至っては既に泣き出しそうな雰囲気だ。

 

「悪かった」

 

流石に『日課のため身体を動かしてました』何て言ってもこの二人には通用しそうも無い。

 

「仲達姉から聞きましたが、身体を動かすななんて言いません。次からは私もちゃんと同行させてくださいね」

 

「・・・幼達も」

 

二人して『拒否は許さない』といった真剣な表情で一刀に念を押す。

 

「わかったよ、お世話になっている間は言うとおりにする」

 

幼達と恵達の勢いに負け約束をする一刀。

 

まさかコレが長く続く約束になるなどこの時誰が想像しただろうか。

 

 

 

あとがき

 

行く年、来る年。

早いものでもう一年が過ぎました。

今年はいろんな意味で色々ありましたが、無事に新年を迎えられそうで一安心です。

 

なぜか年末になって遊戯王カードの熱が甦り、いい歳して再びカードを買い始めてます。

でも対戦してくれる友人はもう居ないんですよね~~。

来年は共に趣味の合う友人をもっと増やして行きたいと思います。

 

皆様も、良いお年をお迎えください。

(〃 ´  ▽  `  )ノ"▽~~

 

 


 
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