No.351932

命のクリスマス

初音軍さん

自分の最初のオリジナルキャラの話。本編ここで載せてないのでわかりにくいかも==;一応そういう時期なのでここでも載せておきますね。

2011-12-24 16:56:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:811   閲覧ユーザー数:456

【命視点】

 

「ただいまー」

 

 24日のクリスマス。おもちゃ屋は子供連れが多く、休みが取れないくらい人が

多かったせいもあって、人の波が収まった頃には少し疲れてしまい。それ以降しばらく

お客さんが来なかったから店長が早々と店を閉じて帰れることになった。

 

 そして、仕事中に親子の会話の端々に気になる単語が出ていたけど、それは家に

戻ってゆっくりしてから考えようと思い、口元を覆うくらいに巻いていたマフラーから

白い息が見えていた。最近になって急に寒くなったかのように冷える。

 早く帰りたいと考え、早足で家に戻って呟くと3人が玄関まで迎えに来てくれた。

 

『おかえり~』

 

 返事をくれたのは2人でマナカちゃんだけは照れくさそうにしていたけど、

姿を見せてくれただけで私は嬉しかった。そして、私は笑顔で改めて言葉を返した。

 

「ただいま」

 

 この間のある出来事で家族が二人増えました。二人とも少しクセがあるけど、

とても優しくて素敵な家族です。スーツ系が似合う瞳魅さんと、ラフな服装が好きな

マナカちゃん。マナカちゃんは最近私が上げたクマさんの髪留めがお気に入りなのか

毎日つけていて、なんだか嬉しい。

 

 思えば今日という日を私が来たときからごたごたしていたために、二人とも

会社を早く終わらせて私の代わりに準備をしていたらしい、というのを二人の後ろを

歩いていたマナカちゃんからこっそりと聞き出したのだった。

 

 二人はあまり仲がよくないが、こういう時や、行動の仕方が。私から見ると似てる

所があるように思えるのだけど、それを言うとすごい勢いで否定するのだ。

それって、素敵なことだと思うんだけどな。

 

「じゃーん、飾りつけも完璧だよ」

「立派なツリーとかも用意しておいたよ。あまり見たことないんじゃないかと

思ってね。作り物だけど」

「わぁ、綺麗ですね」

 

 天井にぶつかりそうな勢いで伸びるクリスマスツリー。周りについてる豆電球と装飾品

がとてもきらきらしていて綺麗で溜息が漏れそうだった。

 そして、目の前には真っ白なテーブルクロスがかけられた上に豪華な手料理が

並べられていた。昔、絵本で見たような光景が広がっていたのだ。

 

「これをみんなで? ありがとうございます」

「命ちゃんの驚く顔が見たくて張り切っちゃった」

 

 萌黄の無邪気な笑顔を見て、冷え切っていた私の頬も少し紅潮して温かい気持ちに

満たされていった。食事が冷めるといけないのでみんなで食卓を囲んで話に華を

咲かせていた際。仕事で聞いた話の単語が萌黄の口から発しようとしていた。

 

「ところでさぁ、みんなはサンタクロースっていくつくらいまで信じてた?」

「何よ、そんな子供っぽいのいるわけないでしょ」

「・・・」

 

 萌黄に次いで、マナカちゃんもその話に食いついて反論をしていた。楽しそうに

眺めている瞳魅さんを見ていると、誰でも知っているかのようで、取り残された気分の

私はキョトンとしていると、その様子にすぐに気づいた瞳魅さんが隣にいる萌黄に肘で

小突く。

 

「ちょっと、命が呆然としてるじゃない。信じてたらどうするの」

「え・・・あっ・・・」

「まさか・・・そんな・・・」

 

 私の考えとは別の方向で気を遣われてしまったような空気が漂ったのを感じて

我に返った私は慌てて首を横に振って答えた。

 

「あっ、私が言いたかったのはそうではなくて・・・」

『何?』

 

 気にしている3人は身を乗り出すような形でほぼ同時にハモって私に聞いてきた。

 

「あの・・・サンタクロースって何ですか?」

 

 私の聞き方がまずかったのか、3人は固まるように黙り込んでしまった。

 

「え、命ちゃん。サンタ知らないの?」

「えっと・・・人ですか?」

 

 私の呼んでいた絵本はほんとに綺麗な話ばかりが載っていただけでその単語があった

ことが記憶内に留まっていないのだ。

 

 もしかしたら、ただ忘れているだけかもしれないけど。

 

 そんな私に3人はわかりやすく交代しながら説明してくれた。

その中で一番ポピュラーな一般のクリスマスで教えてくれた。その中に良い子には

サンタクロースという白いお髭を蓄えたお爺さんが赤い鼻をしたトナカイが引くソリに

乗ってやってくるというもの。

 

 初めて聞くそのロマンチックな話に耳を傾けていると、まるで子供を見ているかの

ように暖かい眼差しを向けてきたのを見て、少し複雑な気分にさせられた。

 

「つまりはそういうお祭りみたいな行事なんですね・・・!」

 

 でもそういう夢のある話はとても好きである。以前、萌黄と二人になったときに

行ったことのない某テーマパークでの演出は涙が出るくらい感動したものである。

でも、その人物らしい方は今では雰囲気を味わうための要素の一つだと言う事で

いないということは教わった。そのことについては少し残念な気もした。

 

「わかりました・・・」

「でも、残念そうな命ちゃんに朗報が」

 

「え・・・?」

「実はサンタクロースのコスチュームを用意してあるのです・・・!」

 

 ジャーン!と楽しそうに服を披露してきた萌黄。でも本人がいないんじゃあと

思っていると、萌黄はわかってないなぁと苦笑していた。

 

「これを着れば誰でもサンタ気分でいられる優れものだよ?ちょっと待っててよ」

 

 と言われて、瞳魅さんと一緒に奥へ引っ込んだ萌黄はしばらく待ってと言い残す

くらいの時間をかけて、登場してくる。それは、話に出てくるようなサンタとは違う。

露出の多いちっちゃい女の子のサンタとイケメンのようなかっこのサンタクロースが

紙吹雪を撒き散らしながら陽気に歩いてきた。

 

 

「メリークリスマース!」

「何で私がこんなかっこを・・・」

 

「もっと露出のある服がよかった?」

「命のためじゃなかったら、着ること自体なかったけどな」

 

「ふ、ふふふ」

 

 イメージとは違うけど、すごく二人の格好が可愛らしくて、意味がわからない笑みが

止まらなくなってしまい、口から笑いがぽろぽろと零れていく。

 

 あぁ、いろんなことを理由付けてかなり自由にできるお祭りなんだなって認識した。

テレビでも色んな演出も見て取れたし、みんなで賑やかに楽しむパーティーになんだ。

 

「二人とも素敵です」

「えへへ、ありがとう」

「ま、悪くはないかな・・・」

 

「あっ、でも子供のお祭りでもあるし。ねぇ、マナカちゃん。この中だったら

誰からプレゼントが欲しいかな?」

 

 私が喜んで二人を見ている中で、思いついたように萌黄がマナカちゃんに

聞いてきた。すると、マナカちゃんは視線を私に向けてきて、私はビクッと

した。嫌な予感がすると思ったら案の定・・・。

 

「あの・・・命・・・で」

「え、えぇぇ?」

「はい、マナカちゃんのご指名入りました~。命ちゃん、わかってるよね」

 

「な、何のことでしょうか・・・」

「もう、命ちゃんの衣装は用意してあるんだよ~」

 

 何も知らないとばかりにとぼけたが、こうなってしまっては萌黄のペースにハマって

しまうのは目に見えていた。しかし、私も嫌じゃないからか、萌黄に連れられて

着替えるのはどこか胸がドキドキするのを感じていた。

 

「じゃーん、命ちゃんサンタでーす!」

『おぉ~』

 

 待たされていた瞳魅さんとマナカちゃんの目は驚きに満ちていた。それはそうだ。

これまでに見たことがないくらいブカブカのサンタ服を纏っているのだ。

 

 身長は高いのにこれだけブカブカなのは幅が広いせいだろう。私は悲しいくらい

スレンダーなので、逆にブカブカな感じが萌黄のツボに入ったのだろう。

 

 

「命ちゃん可愛いでしょう!」

「うむ、これはこれで味わいのある・・・」

「大きいのに、ちっちゃい子みたいに見える・・・」

 

 マナカちゃんに至っては少し笑いを堪えるかのような表情をしているので

私は少し拗ねたような表情をしてがっくりしていると、横から萌黄サンタから

プレゼント用のラッピングがされている箱を手渡してきた。

 

 それはどこかで見たことあるような箱と包装。良く見るとそれは私が働いている

お店と同じもので、いつの間にこれがあるのかと驚いていた。

 

 聞くと、私が少し休憩に入ったのを見計らって萌黄が買いに来ていたというものだった。

道理でそこの記憶が存在しないと思っていた。でもそれって・・・。

 

「萌黄、会社さぼりましたね・・・?」

「これが有給の力なり~」

 

 悪戯めいた言葉使いに私は呆れもしたが、それと同時に笑みもこみ上げてきた。

そうだ、萌黄は困ったことや大事なことがあったら、何よりもそのことに対して

真摯に取り組むんだった。

 

 優しい気持ちが溢れそうで、プレゼントを持った私は笑顔でプレゼントを

待っているマナカちゃんに手渡した。そして一言、それはこれから先も一緒に

いたい気持ちを込めた言葉をマナカちゃんに放つ。

 

「メリークリスマス、マナカちゃん。これからもよろしくね。良い子にプレゼントだよ」

 

 本当に、まるでサンタになったような気持ちでプレゼントを渡すと。

それを少し照れつつも素直に受け取れないマナカちゃんは。仕方ないなぁと呟いて

受け取ってくれた。

 

 それだけで私の胸にはこみ上げるように嬉しい気持ちでいっぱいだった。

プレゼントを受け取ったことを「OK」のサインと受け取って私は微笑んで

マナカちゃんにお礼を言った。

 

「ありがとう」

「~~~~~」

 

 何か言いたそうに、でも言葉にできないもどかしい表情を浮かべるマナカちゃんの

背中を瞳魅さんが強めに叩くと、その衝撃で言葉が零れたように飛び出してきた。

 

「あ、ありがとう」

「どーいたしまして」

「さぁ、今日はじゃんじゃん騒いでじゃんじゃん呑むよ!」

「あんたはいつも騒いでるじゃない・・・!」

 

 暖かい気持ちの静かな時間は、再び賑やかな状況に戻って私達はこの夜を目一杯

楽しむことにした。それは夜を迎えて、マナカちゃんが眠ってからも盛大に

続いたのであった。

 

 私はマナカちゃんをベッドに寝かしつけてから、その愛らしい寝顔を見て

笑顔を浮かべて、いることのないサンタさんに対して願い事をした。

 

「この幸せな時がずっと続きますように。マナカちゃん、メリークリスマス」

 

 この子が悲しむことのない生活が続けばいいと、心の底から願っていた。それは、

この子だけじゃなく、私の幸せにも繋がることなのだ。

 

「じゃあ、行ってくるね」

 

 囁くように寝ているマナカちゃんに言うと私はそっと扉を閉めて、残った時間を

気が済むほどまで楽しむことに決めた。そして、私の足は再び賑やかな場所へと

向かっていくのであった。

 


 
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