No.347756

真・恋姫†無双 雛里√ 鳳凰一双舞い上がるまで 第三章 15話(前編)

TAPEtさん

2分割になっちゃいました。
後編は倉と結以との出会いについて話すのがメインの話になるだろうと思います。

忙しいからちゃっちゃと上げて修正は後で(オイ

2011-12-15 19:10:49 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2953   閲覧ユーザー数:2623

真理SIDE

 

「…駄目」

「てわわ…一言で駄目って言われたよ」

 

袁術さんを見た後その日の夜私は宿屋で遙火ちゃんに相談をしていました。

内容は、もちろん例の鞄の中から袁術さんを助けられるようなものを出して欲しいということだったのですが……

一言で駄目押しされました。

 

「…今さっちゃん寝てる、邪魔しちゃ駄目」

「でも、普段なら開けたら必要なものが出てくるじゃない」

「……それは一般的なものに限った話」

 

回したら光を出す二輪の装置が一般的なものだって私に吹き込んでるの?

 

「てわわ、でも、やってみなきゃ分からないよ。ね?いいでしょ?」

「………分かった」

 

そう言ってくれて遙火ちゃんは、暫く鞄を触ってました。

そして、私を近づけさせて、

 

「開けて」

「私が?」

「あたしに必要なんじゃないからあたしが開けてもでない」

「そう…」

 

私は鞄の前に座って

 

(袁術さんを直せるようなもの)

 

と心でつぶやきながら鞄を開けました。

 

「……なんですか、コレ?」

 

紙切り?

なんか変な文字で書いてます。

 

「……うーん」

「…なにそれ?」

「てわわ、私もわからないよ」

 

一番上に『処方箋』という三文字がありますが、それ以外には何なのかさっぱり分かりません。

これじゃ何の役にも立ちません。

 

「……」

「……雛里ちゃんに話す?」

「ううん、良いよ。どうせ分からないもん」

「やってみないと解らない」

「……」

 

雛里お姉さんは今向こうの部屋、北郷さんが居た部屋で寝てます。

北郷さんが居なくなったから部屋を返しても良かったのですけど、雛里お姉さんが北郷さんが帰って来た時この部屋がないと困るからって、代わりに自分がそこで寝てるんで

 

す。

 

「……」

 

これも、多分北郷さんの世界の文字なんですよね。北郷さんなら分かるかもしれません。

やっぱ集まってる時じゃないと、何かやろうとしてもうまく行きません。

前の白鮫江賊団の時は、皆で一緒にやってうまく行ったのだと思います。

 

北郷さんが無茶言って、雛里お姉さんがそれを実現出来るように策を建て上げて、更にそれを受けた北郷さんがそれを確実に実行出来るように皆を統率する。

君主と軍師の間の基本的なやりとりのようなものです。

一人でも居ないと、しようとすることを成し遂げません。

 

「北郷さん、早く帰って来ないかな……」

「……」

 

もうなんか色々と限界な気がします。

 

・・・

 

・・

 

 

コンコン

 

「雛里お姉さん、ちょっと相談したいことが……」

 

「…とさんの馬鹿」

 

…?

 

「真理ちゃん?」

「シーッ」

 

私は門に耳を近づけて中で聞こえて来る雛里お姉さんの声に集中しました。

 

「なんで……はやく来ないんですか…」

「…あ」

「私のこと一人にして…いつまで孫策と一緒に居るんですか。もういいじゃないですか。帰って来ても……もしかして、もう帰って来ないんですか?」

「………」

「………うっ……っぐ…」

「…真理ちゃん」

「…帰ろう」

「でも…」

「私たちには何も出来ないよ」

 

一刀さん、早く帰ってきてください。

そろそろ限界です。

雛里お姉さんも、私も。

 

 

 

一刀SIDE

 

「……不味い」

「?何がでしょうか」

 

セツさんの助けもあって、僕は寿春に近くまで来ていた。

馬車の御者台で馬の手綱を握っていたら、大事なことを思い出したのだった。

 

「お土産買ってくるんだった」

 

一週間も居なかったのに手ぶらぶらしながら帰ったら三人に刺されるかも知れない。

いや、というかそもそもお金もろくになかったけどね。

 

「はぁ……皆怒ってるだろうな、今頃」

「良くは分かりませんが、ご愁傷様です」

 

絶対怒るだろうな、皆……特に雛里ちゃんがどう出るか想像できない所が怖い。

もしかしたら……

 

「……凄く怯えてますね」

「へ?いや、そこまでは…」

「きっと自分に想像出来る最悪の図を考えたに違いありません」

「セツさんって医者じゃなく他の職業を選んだ方が良かったのでは?」

 

占い師とか。

 

「的確にわたくしは医者ではなく薬師なのですけど……あ、そう。こういうのはどうでしょうか」

 

そう言いながらセツさんは外套の中を探ってある瓶を取り出した。

 

「なんですか、それは」

「熟眠を誘導する香料です。寝る前に蓋を開けて側に置くといいですよ?」

 

……それはあまり役に立ちそうには思えませんけど、取り敢えず、無いよりはマシということで…

 

「ありがとうございます。あの、お代は…」

「いえ、要りません。わたくしからのちょっとしたお礼と思ってください。寿春まで連れていってくださった…」

「はぁ……ところで、セツさんはどうして寿春に行くのですか?」

 

瓶をポケットに入れながら、私はセツさんに尋ねた。

 

「最近街でする噂を聞けば、豫州で良からぬことが起きていると耳にしましたので…」

「良からぬこと…ですか?」

「はい、何も阿片が回っているとか」

「!」

 

もう街の人たちさえ知っているほどになっていたのか……

 

「それで、豫州に向かおうと思ったのですが、来て正解でした。ココからでも匂います。死を誘う匂いが……ひどいものです」

「分かりますか?」

「はい、街が病まれているのが感じられます」

「…しかし、阿片中毒と言ったら、医者、いや薬師と言え、出来ることがあるのですか?」

「己の出来ないことが不可能だと嘆くのは愚かな人の仕事です。ただ自分に出来ることだけをしていけば、自分に出来ないことは出来る人が現れてやってくれる。世はそんな

 

風に出来てますから」

「あ」

 

そうか……

そうだよな。

自分に出来ることを先ずやって、自分に出来ないことは他人に任せる。

至極当然なことだよな。全部一人で出来るわけじゃないし……。

 

……僕、何一人で全部背負おうと思ってたんだろう。馬鹿みたいに。

 

「そろそろ城内に入りますが、セツさん、寿春に誰か知っている人は…いませんよね」

「ええ、良ければ旅館にまで案内していただければ」

「わかりました。自分の連れの娘たちが居る所に案内します」

「ありがとうございます」

 

 

 

 

それで、着きました。

 

「さ、さああ、そ、それじゃあ、ま、まままいります」

「何故そんなに震えているのか良く判りませんが……」

 

怖い!宿屋の中に入ることすら出来ない。

神様仏様雛里様私に勇気を!いや、最後の人は駄目!

 

「…不審者発見」

「…へ」

「排除する」

 

ブーッ!

 

「うぉーっ!」

「…避けるな、当たれ」

「待て、倉、どっから現れ…」

 

いきなり横から突いてきた倉の棒をぎりぎりで避けたが、

 

「問答無用」

 

続けて中段になぎ払い、回避不能!?

 

「っ!」

「…………」

 

……あれ?

 

「倉?」

「ふん!」

「うぐっ!」

 

頭直撃。

 

「これはあたしの分」

「ったーー……」

「……一刀遅い」

「た、大変申し訳ございません」

「………」

 

倉はいつもの平然とした崩さぬまま僕を見つめていた。

が、倉も僕のことを心配してくれていたことに疑問を持つつもりはない。

 

「二人は?」

「…中に居る。雛里ちゃんは一刀のお部屋」

「そうか…怒ってる?」

「……自分で見て」

 

ううん…相当覚悟をしなければならなさそうだな。

と、その前に、

 

「倉、良かったらこの人を旅館の女将さんに連れて行ってくれるか。ここに泊りに来た人なんだ」

「……分かった」

 

そう言いながら倉はその時まで後ろで何か起きたのか分からずに居たセツさんの手を握った。

 

「あ」

「…こっち」

 

そして、そのままセツさんを連れて中に入った。

その瞬時にセツさんの事情を把握している所、流石というべきなのかもしれない。

 

 

二階への階段を昇りながら僕はちょっと欄干を握る手に汗をかいていた。

 

「……真理ちゃんが中ボスで、雛里ちゃんがラスボスって感じ?」

 

ただでは済まないだろうな。

せめて両方まとめて来たらまだ良いかもしれないが…

 

「てわっ、私が中ボス扱いなんですね」

「なっ」

 

思いの外後ろからする声に階段から振り向くと真理ちゃんが真後ろに立っていた。

 

「い、いつから居たんだ?」

「割りと最初からかもしれませんよ」

「そんな馬鹿な…」

 

僕が居ない間真理ちゃんのステルス技がアップグレードされてるよ。

 

「浮気ですか?」

「え」

「さっきの方、結構美人でしたね」

「なっ!違うよ!セツさんは医者…いや、薬師…とにかく豫州に用事があるというからたまたま一緒に上がって来ただけだ」

「へー」

 

………あれ?中ボス強いよ?

 

「セツさんって言うんですね。実は自分で案内したかったのでは??」

「真理ちゃん、やめて、そういうの。僕そういう言い方されるの弱いって知ってやってるよね」

「当たり前です。私は遙火ちゃんみたいに肉体的攻撃は出来ませんから」

 

だから精神的ダメージを与えると。

病んでる。僕が居ない間皆病んでるよ。

まだ中ボスなのに土下座しないと許されそうにないよ?

 

「僕は雛里ちゃんしか無いって真理ちゃんも知ってるでしょ?」

「…………はい、わかってます。身に痺れるほどに」

 

あれ?なんか声が低くなってる。逆効果だった?

 

「雛里お姉さん、泣いてましたよ?」

「!?」

「確か前に北郷さんが雛里お姉さんに怒ったことありましたね。その時、北郷さんは雛里ちゃんに裏切られたかのように感じたかと思います。でも、今回のこともまた、雛里

 

お姉さんの側から見たら、北郷さんに裏切られたようなものです」

「………」

「真理ちゃんたちのことを心配してくれることはいいんです。でも、ここ豫州まで来るときだって、北郷さんは必要以上に私たちのことを庇おうとしていました。今回だって

 

一緒です。私たちが鳥籠の中の鳥のように周りの環境から完全に守られるようにしたかったならこんな旅に出ないで水鏡先生の塾にいたら良かったんです。私たちが今ここに

 

居るのは、安全であるためではないじゃないですか」

「………ごめん」

 

確かに、今回の僕の行動は度が過ぎていたかも知れない。

以前雛里ちゃんが攫われたこともあって、色々過敏に動いていた。

おかげで自分がやろうとしたこともろくにできず、皆に心配をかける有様。口がいくつあっても話す言葉がない。

 

「謝るのは、雛里お姉さんにして欲しいです。雛里お姉さんも、自分なりに北郷さんのために頑張りましたから。私たちも…私たちに出来ることがあるとすれば、いつまでも

 

守られてばかりにはいません」

「……そうだよな」

 

僕は守る側に立ってるわけじゃないんだ。

互いに助けあってこそ、この旅がこれからも続けられるというもの。それを忘れていた。

 

「ごめんな、真理ちゃん」

「……口だけですか?」

「ん?」

 

そう言った真理ちゃんは階段を昇って僕より2段ほど上に上がった。

そしたらやっと目線が彼女と一致するぐらい。

 

「ちょっとそのままこっちに見てください」

「へ?何?」

 

そして、次の瞬間

 

ちゅっ

 

「……」

「………あ?」

 

今、何された。

 

「て、てわわ…こ、コレで中ボスは下がりますから、早く雛里お姉さんの所に行ってあげてくださいね…じ、じゃあ!」

 

真理ちゃんはそう言ってぽかーんとなった僕を独りにして階段を降りていってしまった。

僕は真理ちゃんの唇が当たった頬に手を当てて、暫く動けないまま居た。

 

…え、今何された?

 

 

 

 

コンコン

 

「雛里ちゃん?」

 

………

 

僕が独りで泊まって居た一人用の部屋の門を叩いたが、中では何も聞こえなかった。

そのまま門を開けてみると、閉ざされてはなかったのか軽く音を立てながら門が開いた。

 

「……雛里ちゃん?」

 

ベッドにもっこりと膨らんでいるものがある。雛里ちゃんで間違いないだろう。

僕はそのベッドに腰をかけて布団を少し退けてみた。

 

「………すー……ふ……」

 

小さく息を立てながら眠っている雛里ちゃんの顔が見えた。

目に真理ちゃんが言ったように泣いていたのか、涙の跡が残っているのを見て、一瞬僕は胸が裂けるように覚えた。

何やっていたんだろう。僕。

人助けることや、戦争を止めること。

そんなことよりもお前にはもっと大事なことがあっただろう。

この娘が泣かないようにすること。

なのに、今までこの娘が泣くことを見た場面の大体、いやほぼ全部は、僕のせいだった。

今回もまた、僕は雛里ちゃんを泣かしてしまった。

 

「……かずと……さん…」

「…雛里ちゃん」

 

こんなに好きなのに、何でいつも泣かしてばかりいるんだろう。

どうして……もっと幸せに満ちた顔を見ることが……

 

「……う…」

「?」

「……ぅn……ん?」

 

あ、起きた?

 

「……え」

「こ、こんばんわ、雛里ちゃん」

「あ」

「あ……」

 

 

 

 

 

「あわわーーーー!!!!!!!!!!!!!」

 

ガチャーん!

ドカーン!!

ダダダダダーーー

 

 

※夫婦喧嘩が終わるまでしばしお待ちください※

 

 

 

 

 

 

 

「何やってたんでしゅか!何で帰ってきたばっかりで顔があんな近くにいりゅんでしゅか!?////////」

「いえ…泣いていたにも関わらず、寝顔があまりにも可愛かったものでつい……ね?」

「馬鹿ー!!」

 

 

※もうちょっとお待ちください※

 

 

 

「せー…せぇ……はぁ…」

「…………」

 

いつもより増し増しの愛情表現が痛い。

 

「………ひうん」

「雛里ちゃん」

「黙って居てください」

「……」

 

布団の上に座り込んでまた泣きそうな顔をする雛里ちゃんを見て、大惨事である床で倒れていた僕はゆっくりと立ち上がった。

 

「もうしないよ」

「………」

「もう何も言わずに消えたりしないから」

「もう……思ってました」

「…?」

「もう……帰って来ないと思ってました」

「……僕が雛里ちゃんを置いて消えちゃうわけないじゃないか」

「だって…」

 

豫州から孫策の所に、雛里ちゃんに何も言わず消えた僕の当時の心と言うと、恐らく、僕が言わずとも雛里ちゃんがきっと理解してくれるだろうと思っていたに違いない。

僕が雛里ちゃんに何も言わずに行ったとしても、雛里ちゃんは僕が何故そんなことをしたのかわかってくれるだろうと、というか、わかって欲しかったのだろう。

でも、例えそうだとしても、雛里ちゃんが傷つかないだろうと思った過去の僕は、きっと利己的で、どうしようもない馬鹿だ。今でも変わらないと思うけど。

 

「雛里ちゃん、今僕はここに居るよ」

「……」

「これからもずっと、あなたの側に居る。だから、もう不安にならなくても大丈夫」

「………あう」

「まだ怒ってる?」

「……怒ったことなんて、ありません」

「じゃあ、許してくれる?」

「…はい……っん」

 

許された途端、僕は待ちかねていた雛里ちゃんの唇を僕の唇を重ねた。

 

「んう……ぅ……はぁ…」

「……あぅ…」

 

久しぶり…と言っても一週間ぐらいだが、僕も雛里ちゃんも、離れて互いの顔が赤くなったことを確認して、少し照れくさくなってきた。

でも、実際考えてみると、離れていた間、雛里ちゃんばかり寂しい思いをしていたと言うと、それは嘘になるわけで…

 

「…もっとする?」

「………」

 

答えは口で返ってきた。

 

 

 


 
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