No.34593

いじわるな月とお人よしな蛙

とかげ。さん

シンプルな童話のような話。
あるところに意地悪な月がいて、それを美しいと眺める蛙がいました。

2008-10-07 00:07:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:739   閲覧ユーザー数:709

意地悪な月がいた。

 

意地悪な月は星たちに言います。

 

どうして君たちは

 

僕の周りをいつでも照らして。

 

僕は太陽の変わりなのに。

 

君たちが僕の周りであんまりに輝くから。

 

僕は全然目立たないじゃないか。

 

どこかに行ってくれないか。

 

星たちは悲しそうにその光を弱めます。

 

何かを言いたそうに

 

チカチカと光らせては

 

やはり寂しそうに月から遠ざかっていきました。

 

月はそれでやっと満足して

 

夜の空にひとつだけ

 

輝きました。

 

真っ暗な夜の空

 

そこには月がひとつだけ。

 

しばらくは満足気に光を輝かせていた月ですが

 

ふと、気分が沈んでいることに気づきました。

 

光らせて

 

満足しているはずなのに

 

なんだか光が弱まってきているように感じたのです。

 

ああ、

 

馬鹿なことをした。

 

何が太陽の変わりだろう。

 

太陽は昼間

 

たくさんの生き物たちが暮らす空の中

 

皆に好かれて輝いている。

 

その点自分はどうだろう、

 

意地悪で威張って。

 

ほら、

 

もうひとりぼっちではないか。

 

そんな月に

 

一匹の蛙が声をかけた。

 

お月様、どうして悲しんでいるのです?

 

どうして光を弱めるのです。

 

月は話した。

 

自分は意地悪で、星を追い出してしまった

 

そうしたらほら。

 

ひとりぼっちだ。

 

泣いている月に蛙は言います。

 

それではお月様。

 

私が傍に参ります。

 

私はお月様が綺麗に輝くお空が大好きです。

 

あなたが綺麗に光っているのはとても美しい。

 

いじわるな月、うれしかったのに。

 

本当はすごく嬉しくて

 

傍に来てほしかったのに。

 

つい、こんなことを言った。

 

それでは、蛙よ聞いてくれ

 

その湖に映る私。

 

そのずっと奥の奥

 

きっと蛙のお前だって死んでしまうかもしれない

 

その奥に空へとつながる道がある。

 

そこからここへ来ておくれ

 

蛙は疑うこともなく

 

喜んで、と湖に勢いよく飛び込んだ。

 

綺麗に映る月をめがけて

 

ぐんぐんぐんぐん奥へと進む。

 

息が苦しくなり

 

それでも着かない月への道。

 

蛙はいつしか死んでしまった。

 

湖から上がってこない蛙を眺めて

 

月は泣いた。

 

ごめんなさい

 

ごめんなさいと

 

泣き続けた。

 

信じられなかった。

 

だって自分は意地悪で

 

きっと今度は自分を懲らしめようとしてるんだと

 

疑ってしまった。

 

ああ、蛙。

 

傍に来ておくれ。

 

こぼれた涙の中でも一番大きな

 

涙のしずく。

 

蛙の死んだ湖に落ちた。

 

涙のしずくは死んだ蛙の体をそっと包み。

 

月の一番近くで星となった。

 

泣いて泣いて

 

ようやくそっと輝くその星に

 

月は驚き

 

そして喜んだ。

 

泣き虫な月、嬉しくて嬉しくて泣いた。

 

嬉しくてこぼれた涙のしずく。

 

今度は去った星たちに届いた。

 

そうして戻った星たちと共に

 

夜空は美しく輝いた。

 

 

end


 
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