外から聞こえる、小鳥のさえずりで目を覚ました。
「ん……朝か……?」
カーテンから微かにのぞく朝のひかり。
いつも仕事はきっちり外でこなして、家にまで持ち越したりすることは少ない。オンオフの切り替えは必ず行っている。しかし、元来のお人好し――よいこちゃん体質の為か、他の人物の仕事が滞ってしまっているようであれば、手伝うことはやぶさかではない。もちろん、自分のペース配分も理解していたから、能力以上のことは引き受けない。
それなのに――。
数冊積まれたファイルのひとつがどう見誤ったのか、見積もった以上の仕事量であったため、仕方なく持ち帰ることにしたのだ。
どうせ数日間、彼女たちはいないのだ。時間を潰すには丁度いいかもしれない。
普段であれば。リビングに集まって、各々好きに過ごしている。わあわあと騒がしいこともあるが、中学生に上がってからは、随分とおとなしくなったように思う。――あくまで、前に比べて、である。
以前は必ず、『三人いっしょ』であった彼女たちも、それぞれの道を歩みはじめている。
それが寂しく感じ訳ではないが、いいことだとは思っている。そうやって、皆と同じに過ごしていられれば。それはあくまで願い。いや、祈りのようなものかもしれない。
その為に。
いちばん近くにいる大人は自分のだ、しっかりしなければ。いつ何時、彼女たちが自分を必要としてくれたときに、応えられるように……。
そう。書類を整理しながらも、いつの間にか、考えていたのは彼女たちのことだった。小さく笑みが洩れる。局長程ではないが、自分も随分と彼女たちには甘く、それでいて過保護なのだろうと思う。
そんな彼女たちは、中学の行事で林間学舎に出かけているのだ。
こういう行事があるたびに、ひと悶着起きる。今回はそれでも、何とかスムーズに送りだした方だった。
学校に通うようになって、仲のよい友人もできている。力を暴走させることもなく、周囲の人間にもうまく溶け込んでいる。なのに、未だにそれとはなしに参加を拒むところが見え隠れする。普通の学校へやりたい。同年代と同じ感動を与えてやりたい。そんな、ごく普通の願い。望み。それは――同じ場所へ通うことの叶わなかった、自分自身の願いでもあった。叶えることができなかった夢を、重ねている訳ではない。ひとりひとりの人生など、自分が介入したところで変わることではないと、どこか冷めた部分では解っているからだ。過干渉はお互いにとって、よくないことだ。
もちろん、それを今更後悔しているわけではない。過去に紡いできたものは二度と修正がきかない。自分自身、よく解っていることだ。
いつの間にか夜は深くなる。気がつけば、デスクに突っ伏して眠ってしまっていたようだ。
そうやって迎えた、いつも通りの朝。
しんと静かな部屋は、以前それが当たり前だったというにもかかわらず、いやに広く感じる。
……寂しい。
ふと、そんな感情が浮かんだ。
いつも、なんだかんだと手間のかかる子供たち……。だが、世話を焼かせてくれているからこそ、その感情を、今まで実感したことがなかったのかもしれない。
「・・・・・・えーっと」
自分は今日もB.A.B.E.L.へ登庁する予定だ。彼女たちがいようといまいと自分には仕事があるのだ。さっさと用意するに限る。
ぺち、と軽く両頬を叩いて、向かっていたデスクから立ち上がった。
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