建業のとある一室に引きこもっている人物がいた。
名は北郷一刀、天の御遣いたる彼が何故ヒッキーになったのか?
理由は一つ、例の媚薬の一件である。
原因はせておきわずか半月足らずで結果9人の女性と肉体関係を持ってしまってどんな顔で皆と会えばいいか分からず。
結果、自主的自室警備員となっているのである。
「………死のう……」
「なにをくだらん事を言っておる」
こんもりと膨らんでいる布団に拳骨を落として腰に手を当てている祭。
勿論無断入室だ。
「………痛…い…」
「痛い、ではなくさっさと起きんか!!」
今度は思いっきり掛け布団を引っ張る、そこから現れた影がゴロゴロと転がって壁の激突する。
「……だから…痛い…」
立ち上がりもせず呟く一刀に祭の怒りのボルテージはグングン上昇し、爆発した。
「ええい!! いい加減起きんか!!
今は人手が足らんのだぞ!!!」
袁術からの独立を果たした孫呉。
しかしそれにより拡大した領土、袁術の悪政で苦しんでいた民に対する新たな政のため文官は大忙しなのだ。
しかも大都督である冥琳が謎の腰痛で仕事効率が下がっており、穏や亞莎もいつも以上に必死となっている。
「まったく女を抱いただけで何を引きこもっておる。
むしろ策殿との約束を守れて別の役得もあったじゃろうが!!」
「……その通りだよ」
「ん?」
「俺だって男だよ。
その…、好きな女の子とシタんだから嬉しくないはずないさ」
「だったら何を悩んでおる?」
壁に手を当てながら立ち上がろうとする一刀。
「好きな子だったのにあんなふうに力尽くで抱いて……。
会わせる顔が無いよ」
「はぁ~~~。
ホントに何も分かっとらんな」
「え?」
「よいか北郷、お前はとんでもない勘違いをしておる!!
権殿や愛紗が傷ついているのは抱かれたからではないわ!!」
「ええ!?」
それってどういう事?
っと聞く前に部屋から追い出されてしまった。
祭に言われた事が気になり蓮華達を探して城を歩き出した一刀。
久しぶりに部屋から出たため明るい日をとても眩しく感じていた。
そして庭の東屋で探していた人を見つけた。
「ふぅ……」
そこに居た蓮華はお茶を飲みながらも心此処に在らずといった感じであった。
そんな心象を受けた一刀はこっそりと茂みに隠れて近づいた。
「……ふぅ…」
しかし何も変わらないまま時が流れ、何故自分は隠れているんだろう?
そう思って事態を打開すべく声をかけようとするとこちらに近づいてくる影に気付き再び姿を隠した。
「……あら、愛紗」
「これは蓮華殿……。
休憩ですか?」
「ええ…、そう言う貴女も?」
「はい…、出立の準備は星に変わってもらって一刀様を尋ねたのですが……」
「また会えなかった、と」
「はい」
その一刀が後ろの茂みに居るとは思ってもいない2人。
そして話は続いていく。
「………やはり嫌われたのかしら」
ポツリと言葉を零す蓮華。
「だとしたら私もです。
私もきっと………」
同意しつつ答える愛紗。
2人の言葉に疑問を持つ一刀。
嫌われる事をしたのは自分なのに何故?と。
「薬でおかしくなっていた一刀に抱かれてあんなに乱れて……」
「淫乱などとおもわれても仕方ないですし……」
「やはり私なんかとは嫌だったんじゃないかしら……」
「蓮華殿は女性らしくてそんな事はありません…、むしろ私の様な無骨者こそ」
「…あのとき、好きって言ってくれたのも一刀の優しさ。
ただそれだけ、なのではないかしら………」
2人の言葉をただ聞き入っていた一刀。
その後ろに再び祭が現れた。
「どうじゃ北郷?
悩んどるのはお主だけではない、むしろ女の方が心も身体も弱かったりするもんじゃ。
ましてや初めてのうら若き乙女なんじゃからの」
祭の言葉に先程、壁に激突した以上の衝撃が走った。
ただ引きこもっていた自分と違ってそれぞれ必死に仕事を行っている2人。
蓮華は孫呉の姫として内政を、愛紗は劉備軍の将として蜀への行軍準備をしなくてはいけない。
それでも耐え切れずに弱さを出す事はあっても必死に自分の成すべき事を成そうとしている。
本当に自分とはえらい違いだ。
「祭さん、ちょっと話をしてくるから3人だけにしてくれる?」
祭は何も言わずその場を去り、それを確認してから一刀は2人に近づいた。
「蓮華、愛紗」
「「え!!?」」
名を呼ぶだけで体が震えそうになる。
呼ばれた2人はゆっくりとこちらを向いた。
「「一刀(様)…」」
そして俺は、……その場で土下座した。
「……すまなかった」
「「!!??」」
いきなりの俺の行動に驚きの気配を感じる。
そして言うべき事、言いたい事を一気に言ってしまう。
「俺は逃げていた!!
本当に大好きな女の子達から嫌われるのが怖くて逃げていた!!
軽蔑してくれてもいい!!」
「「……………」」
「……俺は何も変わっていない。
欲望のままに傷付けた、だから会う資格が無い。
そんな風に自分で勝手に結論付け、それを正しいと思う事で己の弱さを正当化しようとしただけ…」
言うべき事は言った、あとは言いたい事だ。
「もうこれ以上は逃げない!!
2人にどう思われていたとしてもそこから逃げない!!
煮るなり焼くなり好きにしろ!!」
言った後は何も言わない、これから2人が投げてきた物をしっかりキャッチして真っ直ぐ返すだけだ。
「………だったら、1ついい?」
先に投げかけてきたのは蓮華だった。
「あの時も今も言っていた『大好き』と言ってくれたのは本心? -///-」
頭を上げて蓮華の顔を見るとすごく赤くなっている。
一見とても可愛らしく見えるが瞳からは不安の色が見えた。
俺はそんな不安を消し飛ばさんとハッキリ答える。
「本当だ!! おれは蓮華も愛紗も女として愛してるんだ!!」
「「 -////////- 」」
今まで以上に顔が真っ赤になった2人。
大きな深呼吸をして今度は愛紗が聞いてきた。
「で、でしたら、あの……。
わ、私と蓮華殿ではその……、ど、どちらが好きなのでしょうか?」
少しづつ小さくなる声で聞いてくる愛紗。
それにもハッキリと自分の偽りない心を言葉にする。
「どちらも同じぐらい好きだ!!」
「「え!!」」
さすがに2人共目をパチクリさせている。
俺はそのまま続ける、本来なら言わないほうが良いだろう男の本音も交えて。
「その…、2人共心身そろって魅力的な女の子だよ。
真っ直ぐな心も、そ、その、抱いた時の体の柔らかさも気持ち良かったし…」
「「 -/////- 」」
「もちろん愛紗も蓮華も違う人間だし良い所もそれぞれ違うよ。
だからこそ俺は2人に限っては順位を付けられない、これが俺の正直な気持ちだ」
「良かった嫌われてなくて……」
ポツリと呟いたのはどちらだったのだろう?
それから俺達は3人でお茶を飲みながら色々話した。
今後、愛紗は桃香達と共に蜀に向かう。
それまでの間は蓮華と愛紗、出来る限り同じくらい一緒に関わる事。
最初蓮華は愛紗との時間を多くしたらいいと言っていたのだが愛紗が俺の言った、
『どちらも同じぐらい好き』の言葉を尊重してくれての事らしい。
そしてこれから新しい女を作る時は2人の許可がいる。
新しい女は2番目以降なら許すが私達を差し置いての1番は許さない、というか私達が絶対にさせないなど。
冗談なのか分かりづらい事、いやおそらくは本気であろう事を言っていた。
結果、俺は平等に2人の物、2人は俺の物という男女関係で決着が着いた。
それから1週間後愛紗達劉備軍は益州へ向けて旅立った。
「必ずまた…」そう言って雪蓮と桃香が握手を交わして一時の別れとなった。
これかれ孫呉はいずれ来るであろう曹操に対する備えのため富国強兵を目指し。
桃香達も同じく曹操に対抗するため蜀の地を手に入れるために。
おまけ其の一・別れの前
建業の中でも滅多に人の寄らない部屋の中。
そこには8人の少女が集まっていた。
名を上げていくと、
孫尚香・大喬・小喬・周泰・呂蒙・張飛・諸葛亮・鳳統、以上である。
姫に軍師に武将、まるで一国でも作れそうな彼女達は何をしようとこんな所に集まったのであろうか?
眠るかの様に静寂であった部屋がゆっくりと目覚めていく。
「巨乳は我等の敵である!!!」
「「「「「「敵である!!!」」」」」」
先日その巨乳の許に嫁いだ小蓮号令の下、復唱する残りの人達(除く亞莎)。
「この間の大乱交の結果、やっぱり男って巨乳が好きだってわかったわ!!」
「そうなのだ、そうなのだ!!
お兄ちゃんはお姉ちゃん達のおっぱいばかり相手にしていて鈴々に失礼なのだ!!」
「私達の時だってそうよ!
冥琳様の胸ばっか愛撫して!!」
「その…、私の時も雪蓮様ばかりで……」
あの媚薬事件のおり、一刀がまぐわった回数で少ない者達が集まって何故なのかを考えている時、だれかが言った。
『我等が貧乳である!!』と。
その考えは何故か関係無かった明命と劉備軍の二大軍師にも鈴々経由で伝わり。
そしてもっと何故なのか明命が亞莎を引っ張ってきてこの面子が集まった。
「故にシャオ達は今!! 此処に!! 〝貧乳血盟軍〟の結成を宣言する!!!」
それはまるで戦前に兵を鼓舞する雪蓮や蓮華が居るようであったと唯一の被害し…、ではなく亞莎は感じたと言う。
しかしそんな1人冷静、というかこの場について行けない亞莎を余所にヒートアップする7人。
「貧乳に幸あれ!! 巨乳に脂肪あれ!!」
そんな熱くなり過ぎている彼女達は気付かなかった、冥琳も回数は二喬と同じという事に……。
おまけ其の二・別れの後
劉備軍が出立して3日後。
城に桃香を尋ねてきた者がいて一刀がそれを取り次いだ。
その人の名は公孫賛といった。
結論から言って桃香はもう居ない、すでに出立したと言うと「私をおいてくな~~~!!」と言って白馬に乗って西へと走り出した。
その馬の速き事呉軍にも居ないぐらい優秀な馬であったと覚え、早速騎馬隊についての提案書を作るべく自分の執務室を戻る一刀であった。
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遅くなって申し訳ありません。
タイトルの意味は今回に最後でわかります。