No.338667

船上に落ちた花束ひとつ

咲香さん

英日前提、露日アリ
海軍VS海賊パロ

2011-11-23 23:31:16 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:7437   閲覧ユーザー数:7433

とりあえず、設定を。

公開する予定はなかったので、ウダウダしてるのはご愛嬌ということでwww

 

 

 

本田菊

日本人。アーサー・カークランド率いる海賊船nightingaleの副船長。

性格は穏やかだが、金の話と食べ物の話、それから萌の話になると急変する。

好きな食べ物は塩じゃけだが、ただ今減塩中につきコックのフランシスは作ってくれない。

ヨーロッパの船に乗っているにも拘らず、洋服は動き難くて嫌いですと言い放ち着物を着ている。

武器は日本刀。普段は1本だが、本気を出すときは2本。それから懐には常にクナイが入っている。体術もかなりのレベル。気配を読むのも消すのも上手く、読まれるのはアーサーにのみ。そして読めないのはイヴァンのみ。

船長であるアーサー・カークランドの恋人。

無自覚バカップルなので、周囲に多大な精神的苦痛を与えているが、気付かない。

剣も銃も使えないことはない(むしろ船内でアーサーに次ぐ腕前)が、やっぱり日本刀大好き。恐らく船で一番強い人。

二つ名は『船上の舞姫』

日本刀での軽い動きが舞に見えるとのことだが、本人は『姫って……』と不服そうである。ちなみにこれを付けたのはアーサーだ、とはもっぱらの噂である。

自分の意見を言うのが本当に苦手だが、実は一番全体を見ているので的確な意見が出せる。

敬語キャラでほぼ全員を「~さん」と呼ぶが、たまに(海賊副船長モード時)呼び捨てになる。

 

 

アーサー・カークランド

イギリス人。海賊船nightingaleの船長。

性格は一言でいうとツンデレで、とてつもなく面倒臭い。

キレて暴れたら菊と紅茶を与えれば静かになる。

武器は基本的に銃と短剣。

『背中を預ける』という表現があるが、菊とアーサーは甲板の上で戦う時は互いに向かい合う。互いを信用しきっているので、二人とも絶対に後ろは振り向かない。

アルフレッドの兄だが、結構負けている。

しかし、アルフレッドも実はアーサーに頭が上がらない。

アルフレッドと菊のこと以外には冷徹だが、二人のことになるともう周りなんか一切見ない。

頭は悪くないのに馬鹿。

 

 

アルフレッド・F・ジョーンズ

アメリカ人。アーサー・カークランド率いる海賊船nightingaleの船員。

性格はハイテンションバカ。兄と同じくとてつもなく面倒臭い。

菊大好きだが、菊にはたまに逃げられる。

疲れてる時は相手にしてもらえない。

寂しいと思うけど、バカだからすぐ忘れる。

バカなのにバカじゃない子。

うるさい時はアイスとハンバーガーを与えておけばいい。

基本的に体術を得意とするが、アーサーと同じく銃と短剣を携帯する。

大食いなため、フランシスの作る食事の量じゃ足りない。

から、なんかいつも釣りをして一人で魚とか食べてる。

自称ヒーローだが、如何せん子供なので正義と悪の線引が自分と敵になっている。

意外と頼りになるが、その場面に出くわせることは少ない。

 

 

フランシス・ボヌフォア

フランス人。アーサー・カークランド率いる海賊船nightingaleの船員。

とてつもない女好きで、ちょっと目を離すとナンパしているが、菊には絶対に手を出さない。

(過去、アーサーに本気で消されかけたことがある)

自称お兄さん。

本当に大人なのだが、普段はその面を出さず、アーサー、アルフレッドと共に騒いでいるためにそれを知るのはほんの一握りの人間だけ。

Nightingaleのコックも務めている。

超料理上手だが、基本フランス料理を作るので盛り付け重視・見た目重視であり、量が少ないとの苦情が(主にアルフレッドから)寄せられている。

塩じゃけを菊から奪い取って泣かれて、アーサーに殴られたことがある。

それでも塩じゃけは与えないあたり、いいコックである。

 

 

Nightingale

海賊船。

西洋だけでなく、東洋にまで名を馳せる。

元々はアーサー・カークランド率いるnightingaleが東洋に入った時に本田菊率いる闇烏を攻め落とそうとして、逆に潰されかけ、なんだかんだで意気投合したっていうかアーサーが菊を落としたっていうかで闇烏がnightingaleに吸収される形で合併。

 

 

イヴァン・ブラギンスキ

ロシア人。海軍中将。

性格は子供。面倒臭い。

一人は寂しい→じゃあ気に入った子を脅して僕のものにすればいいや→嫌われる

というなんか君バカじゃないの?って思考回路&行動で生きている。

不器用さん……の一言で片づけていいんだろうか?

口癖は「うわ~。君、すっごくムカツクよ」

力がすべてだと思っている。

力があれば誰も自分から離れていけないと思っている。

でも、力を得れば得るほど、物理的距離は縮まり、精神的距離は離れていく。

それには気付いているくせに気付かないフリをしている。

本当は優しいくせに、それを表に出さないから二つ名は『氷塊の中将』

ロシア生まれな為に寒いのはもう飽き飽き。

だから自分の二つ名も嫌い。だって寒そうだもん。

 

 

フェリシアーノ・ヴェルガス

イタリア人。海軍……確か少佐。あれ、中佐?

ルートヴィッヒ曰く『怖がりでヘタレで、女好きでパスタとピッツァに目がなくて……まぁ、ともかくヘタレ』らしい。

祖父の強い要望により海軍に入ったが、海の上はあんまり好きじゃない。

だって可愛い子いないし。

それになんかあった時逃げ場ないし。

菊曰く『分かりません。何故フェリシアーノ君はこんなところにいるのでしょう……?権力や称賛など、彼にとってはどうでもいいこと。だというのに、何故こんなにも醜い世界を、生きようとするのでしょう……』らしい。

 

 

ルートヴィッヒ・バイルシュミット

ドイツ人。海軍中佐か大佐あたり。

苗字はギルさんからもらいました。

兄が色々あったために王耀を憎んでいる。その為、その弟である菊に対しても態度が悪かった。

フェリシアーノのことが大切で、ギルベルトが大切で、それを守るために海軍に所属している。

 

 

ギルベルト・バイルシュミット

……ドイツ人?海軍の武術指南役。

足に完治することのない怪我を負っており、前線に出ることはできない。

怪我を負わせたのは王耀だが、ギルベルトが自ら望んだ。

ルートヴィッヒの兄だが、適当な性格で、あまり似ていない。

よく「小鳥のように格好良いぜ!」と喚く。

 

次ページから本編です。

設定読んで無理だと思ったら、逃げてください。

「菊!」

アーサーが鋭い声で叫んだ。

菊は思い切り息を吸い込んで叫んだ。

「フランシスさん、アルフレッドさん! 早くアーサーさんを船内へ! 出血が酷いようなので、急いで病院へ運んでください。……早く!」

「ちょっと待って! 菊ちゃんはどうするのっ?」

「私のことはお気になさらず。大丈夫。……大丈夫です!」

「そんなこと言ったって……」

「放せ! 菊っ! 今、今助けてやるから……!」

アルフレッドとフランシスの手を振りほどいたアーサーに、菊が声を張り上げる。

「アーサー・カークランド! ふざけるのも大概にしなさい! 貴方は船長なのだと……貴方の代わりは存在しないのだと、いい加減に理解なさい! 上が迷えば下も迷います。今の最善の手は、誰の目にも明らかです。撤退なさい!」

「いやだ!」

「いやではありません! みな、副船長命令です! 今すぐにアーサー・カークランドを連れ、この場から離れなさい。……今すぐですっ!」

普段は見せない気迫に、思わず船員たちが硬直する。

「フランシス、アルフレッド! 動きなさいっ!」

名指しされた二人は、ハッと息を呑み、暴れるアーサーを抑えつけた。

「撤退だ!」

船がゆっくりと動きだす。

菊はホッとしたようにそれを見送り、背後から自分を羽交い絞めにしている男を見上げた。

「君も、頑張るね。結局無駄なのに。分かってるでしょ? 僕は、追いかけることだって可能なんだよ?」

「そんなことをしてみなさい。この船に乗る人間のうち、何人の首が堕ちるか分かりませんよ?」

「ふふふ。可愛い顔して、怖いこと言うね。流石、闇烏の船長」

もはや存在しない船の名を投げつけられた菊は、小さく息を吐きだした。

「……皮肉として受けても?」

「頭がいい子は好きだよ」

「何故、私だったんです?」

「なにが?」

「確かに私も賞金首です。しかしながら、我らが船長、アーサー・カークランドの首は私とは比べ物にならない額……。だというのに何故、私を?」

「決まってるでしょ?」

男はさも当然という風に笑った。

それほど寒くもないというのに首に巻き付けられた長いマフラーが、潮風にヒラヒラと舞う。

「面白そうだったから、だよ」

「それは、東洋人だからという意味で? それとも、かの有名なアーサー・カークランドの恋人だ、という意味で?」

男は口の端を軽く釣りあげて笑った。

「両方、かな」

菊は軽い動作で男の腕から抜け出して、ニヤリと笑った。

「貪欲な人は、好きですよ」

「皮肉、かな?」

菊は笑みを崩さずに「さぁ?」と返した。

 

「ねぇ、ルート! 聞いたぁ? あのね、あのね!」

要領を得ない説明に、ルートヴィッヒは溜息を吐いた。

「おい、フェリシアーノ。一度落ち着いて、頭の中で言いたいことを整理整頓してから喋れ」

「えー。ちょっと、ちょっと待ってぇ……」

情けない声をあげるフェリシアーノにルートヴィッヒは「そんなに難しいことは言っていないはずなんだがな……」と呆れた笑みを浮かべた。

「あ、そーだ。ねぇ、聞いた? あの nightingaleの副船長を捕まえたって話」

「ああ。あれは本当の話なのか……?」

「ヴェ?」

「nightingale といえば、西洋だけでなく東洋にまで名が通る海賊船だろう。その副船長をか?」

「うん。えっとね、ニホンジン、なんだけどね、女の子みたいに可愛いんだぁ」

成程、と言いかけたルートヴィッヒはしかし目を見開いてフェリシアーノを見た。

「会ったのか?」

「うん。すっごくすっごく、可愛かったんだぁ」

ルートヴィッヒは頭を抱えたいのを必死で我慢した。

祖父の夢とやらに付き合わされて海軍に入れられたフェリシアーノは、呆れてしまうほどに軍人という職業が向いていない。

怖がりでヘタレで、女好きでパスタとピッツァに目がなくて……まぁ、ともかくヘタレなのだ。

ヘタレなくせに好奇心旺盛で、事件を引き起こしたことは一度や二度ではない。

その度に巻き込まれるルートヴィッヒは気苦労が絶えない。

「……一人で?」

「うんっ!」

ルートヴィッヒは海より深いであろう溜息を吐きだした。

フェリシアーノは頭が悪いわけではない。

しかし、若干考え方が他者と違う。

よって、ヘタレで怖がりなくせに、捕まえた海賊の副船長に一人で会いに行ったら危険だという常識を持っていないのだ。

溜息を吐かれたことで泣きそうになりながら「ルート、ルート!?」と喚いているフェリシアーノの頭に手を置いて、ルートヴィッヒは「次からは俺に一声かけてからにするように」と告げた。

フェリシアーノからは「はーい」と大変よい返事が返ってきた。

「でもね、菊は危なくないよ」

「……菊?」

うん、とフェリシアーノは頷いた。

「本田菊。nightingale の副船長で、あの王耀の弟」

ルートヴィッヒの表情が固まる。

「王耀の……?」

再び頷いたフェリシアーノに、ルートヴィッヒは首を横に振った。

「危険じゃないだと? あの王耀の弟が? そんなわけないだろう。……カエルの子は、所詮カエルだ」

見た目が違おうが、結局は同じ道を辿るに違いない。ルートヴィッヒはそう言って、深く溜息を吐いた。

フェリシアーノはニッコリと笑って「それはどうかな」と返した。

 

菊は深く息を吐きだした。

連れ込まれたのは牢屋でもなんでもなく、普通の……本当に普通の部屋。

「本当に分からない。あれが海軍中将、イヴァン・ブラギンスキ……」

「呼んだ?」

突然かかった声に、菊は肩を揺らした。

しかし、誰も分からないくらいに小さく。

かの有名なnightingale でも、菊の気配に気付けるのはアーサー・カークランドただ一人だった。

それも別に能力というわけではなく、某弟と某腐れ縁の話では、菊に対する異常なまでのストーカー行為……もとい愛情表現の賜物だという。

逆に、菊に気配を気取られない者は誰ひとりいなかった。

だというのに、だ。

菊はイヴァンをじっと見つめた。

この男は、菊に一切気配を気取られることなく至近距離にいた。

「いえ。貴方の考えが分からない、というヒトリゴトですよ」

「そう?」

イヴァンは微笑んだ。

それでも、その瞳は少しも笑っていない。

(これが、氷塊の中将……)

「その二つ名は、好きじゃないんだ」

思わず菊は肩を揺らした。

今回は自制などできず、イヴァンからも分かるほどに大きく。

「別に、心の中が読めるわけじゃないよ? でも君、顔に出るんだもの」

顔に出る。一度も言われたことがない言葉だった。

菊は無表情と作り物の表情に定評のある『日本人』なのだ。

「さて。本題に入ろうか。僕ね、頑張ったんだぁ」

菊が眉根を寄せる。

(この人は、冷徹な大人の顔をしたと思ったら無邪気な子供の顔をして……)

「君を、海軍に迎え入れるよ」

「……はい?」

この反応は致し方ない。

いくら礼儀礼節を重んじる日本男児でも、これは仕方がない。

「貴方、分かっておられます? 私は、かの nightingaleの副船長なのですよ……?」

「そんなのはたいした問題じゃないよ。僕が君を傍に置きたかったんだ」

菊は開いた口を塞げなかった。

「歓迎するよ、本田菊少将」

「少将……!?」

それは中将のひとつ下。上から数えて六番目の、大幹部だ。

「貴方、ふざけるのも大概に……」

「ふざけてなんかないよ」

分かりました、と菊は静かに呟いた。

「貴方がどうしても引かぬと仰るのならば。私はこの軍を、内側から腐らせてみせましょう」

「ほらね。君はとっても面白いよ。あ、そうだ。君が正式に就任するのは明日からだよ。分からないことは、フェリシアーノ君に聞くといいよ。さっき、ここに来たでしょう?」

菊は頷いた。その瞳に一片の曇りもないのを面白そうに見ながら、イヴァンは笑った。

 

アーサーは壁に体を預けて目を閉じた。

呼吸は荒い。

「アーサー! 君なんで起き上がってきてるんだい!? 少なくとも二週間は絶対安静だって言ってるだろう!」

「決まってんだろ。菊を助けに行く」

アルフレッドは目を見開いて、それから呆れた溜息を吐いた。

「助ける? そんなザマでかい?」

分かってるのかい、とアルフレッドは足元が覚束ない兄の胸倉を掴むような所作でさり気なく支えながら吐き捨てた。

素直でない彼のことだ。乱暴な所作でも入れてやらないと「弟に支えられてたまるか」とかなんとか変な意地を張って逃げてしまうだろう。

「相手は氷塊の中将。そんなボロボロで、本当に勝てるとでも? 菊を、助けられるとでも?」

アーサーとてバカではない。

むしろ頭は良い部類に入るはずだ。

……分かっていないわけではないのだ。

今の自分が菊を助けられないことくらい。

「ふざけるな。あいつは俺のだ。俺が俺のあいつを迎えに行って、何が悪い」

まっすぐな。驚くほどにまっすぐな緑の瞳で射抜かれて、アルフレッドは思わず呆れて溜息を吐いた。

アーサーはもう自分を、自分の世界を信じきった子供のような目をして許される年でもないし、そもそも先程から彼が言っているのはただの子供の駄々だ。

「ふざけてるのは君なんだぞ! そんなに死にたいのかい!?」

「お兄さんもアルに賛成かな。まぁ、お兄さんとしては眉毛が死のうが生きようが、どうでもいいんだけどね」

「ヒゲ、てめぇ……」

「フランシス! 見てたんなら助けてくれよっ! この人、怪我人のくせにチョロチョロ出歩いてくるんだぞ!」

フランシスは溜息を吐いて、アルフレッドに支えられている(見た目的にはあくまでアルフレッドに胸倉を掴まれている)アーサーに近寄って、頭を軽く叩いた。

「おまえなら分かってるだろ。どうして菊ちゃんが大人しく捕まったか」

アーサーはなにも言葉を発しない。

無言を肯定と取ったフランシスは、それでも事実を突きつけるためにあえてそれを声に出した。

「おまえを……アーサー・カークランドを守るためだよ。nightingale 船長で、本田菊の大事な恋人であるおまえを。おまえ一人を守るためだけに、菊ちゃんは大人しくイヴァンに捕まったんだよ」

アーサーの足がふらついて、そのままアルフレッドの胸に倒れ込んだ。

「……熱が出てるじゃないか」

アルフレッドの呆れた声にフランシスも呆れた声で返す。

「今のおまえにできることは、大人しくして怪我を治すことだけだぜ。船もまだ直ってないんだ。菊ちゃんは大丈夫だから、まずは準備を整えよう」

意識を失ったアーサーにフランシスはもう一度溜息を吐いて、アルフレッドを見た。

「悪いが部屋に運んどいてくれるか? お兄さん医者呼んでくるわ」

「分かったんだぞ」

 

「老師! 菊さんが海軍に連れて行かれたって本当なんですか!?」

扉を壊しそうな勢いで開けて駆け込んできた妹に、王耀は「はしたないある」と窘めてから頷いた。

「そんな……!」

泣きそうな顔をする妹に、王耀は溜息を吐いた。

「そんな顔するなある。あの菊あるよ。どうせ海軍でも得意の曖昧な笑顔でフワフワ逃げて来るある」

「先生って菊さんのこと一体なんだと思ってるんだろう的な……」

「俺は菊がいなくなって超嬉しいっすよ! ね、兄貴!」

次々と乱入してくる弟たちに王耀は額に手を添えた。

「湾、香、勇洙。こっち来るある」

近寄ってきた二人の弟と妹の頭に拳骨を落として、王耀は「勝手に人の部屋に入るんじゃねぇある」と呟いた。

三人は頭を抱えて蹲っている。

「そんなに心配しなくても、菊を助けなかったらあいつらなんか我が殺してやるある」

振ってきた拳骨は囚われた菊が心配なのに兄として外に出せないという葛藤で追い詰められた王耀の弱さだと知っていた三人は大人しく頷いた。

「該死」

小さく漏れたその言葉は、全員が聞かなかったことにした。

軽いノックの音に、王耀の眉根が寄る。

「フランシス・ボヌフォア」

扉の向こうにいる人間の名を言い当てて、王耀は不機嫌そうに「なんの用あるか」と吐き捨てた。

顎で扉を指すと、湾がすぐに立ち上がって扉を開けに行く。

兄弟ではなく部下のようだな、とは誰が言った言葉だっただろうか。

開いた扉の先にいたフランシスを睨みつけて、王耀は弟妹の名を呼んだ。

意を得たり、とばかりに三人は部屋を出ていく。

「早く用件を言うよろし」

「船は、どうだ……?」

王耀は深く息を吐きだした。

フランシスがビクリと肩を跳ねさせる。

「一体どういう戦い方をしたら船があんなに酷い状態になるか、我には分からねぇある。相当無理をさせたんじゃねぇあるか?」

フランシスは言葉に詰まり、それから「まぁ、結構無理矢理動かしてた節はある」と呟いた。

「二、三週間は確実にかかるある」

そうか、という言葉を聞いてその話題が終わったのを確かめてから、王耀は鋭い目でフランシスを睨んだ。

「何故、我だったあるか」

「なにが……?」

「この港には他にも船の修理くらいできる奴はたくさんいるあるよ。なのに何故、我のところに来たあるか」

「nightingale を造ったのはおまえだろ? だからだ」

王耀の視線が、鋭さを増す。

「ふざけるのも大概にするよろし! 我の弟をイヴァンの野郎に渡して、よくノコノコ帰ってこれたものあるな!」

フランシスは息を呑んだ。

王耀が菊を特別視していることは知っていた。他の兄弟たちよりも手をかけ、可愛がっていることを。

しかし、それを表に出してくるとは思ってもいなかった。

「それは……すまなかった」

「そんな言葉で菊が帰ってくるあるか? 今すぐここに菊が現れるあるか!?」

二人の視線が絡まって、空気が凍った。

王耀が視線を外したのが先だった。

「該死」

口汚く吐き捨てて、それから王耀は「悪かったある」と呟いた。

「分かってるある。あの子のことだから、自分で着いていくと決めてイヴァンの野郎に従ったあるよ。分かってる。……分かってるあるよ」

王耀が大きく息を吸った。

あの時の菊と同じ行動に、フランシスはそんな場合でもないのに「やっぱり兄弟だな」と感心した。

「フランシス・ボヌフォア! 何を措いても我が弟、本田菊を連れ帰れある。これを違えた時は、おまえらの大切な船長様の首が堕ちると、覚えておくよろし」

弟妹には絶対に見せないだろう冷めきった瞳に、フランシスの背をよく分からないものが駆け抜けて行った。

それは恐怖だったのか、歓喜だったのか。

「ああ。俺たちとしても、菊を捨て置く気は一切ない」

王耀はようやく笑った。

「そんなおまえらだから、我は菊を預けたある」

パタパタと手を振ってフランシスに部屋から出て行くように示しながら、王耀は「船の修理が終わったら、宿に使いを送るある」と呟いた。

「それまで、アーサー・カークランドがベッドから抜け出さないよう、しっかり見張っとけある」

フランシスは軽く一礼して部屋から出る。

亜細亜の礼儀作法も、一通りは菊と王耀から叩き込まれている。

王耀に西洋の礼儀は通用しない。

かつて東の海を統べた兄弟の長男だ。

もし礼を欠けば、首が飛んでも文句は言えまい。

「……菊」

扉が閉まる一瞬前、菊の名を呼んだ王耀の声が、フランシスの頭の中で反響する。

「生きててくれよ、菊ちゃん……」

君一人いないだけで腑抜けになる人間が、バカみたいにいるんだから……。

 

「イヴァンが菊捕まえたってホントかぁ?」

肩に乗った小鳥の頭を撫でてやりながら言ったギルベルトに、フェリシアーノは「そーだよぉ」と間延びした声で答えた。

「海軍に迎え入れるんだってさ」

フェリシアーノの言葉に、ギルベルトは目を見開いた。

「そ、れはちょっと難しいんじゃないかぁ……?」

そんなまさか、と笑うギルベルトに、フェリシアーノはケタケタと笑った。

「ギルベルト、分かってないねぇ。あのイヴァンだよ?」

「いや、まぁそうなんだけど……」

その一言で片付いてしまうあたりでイヴァンの性格が窺える。

「ていうか菊ってさぁ……」

「可愛いだろう?」

フェリシアーノに皆まで言わせず、ギルベルトが声をあげる。

「昔から可愛かったぞ。俺の後ろチョコチョコついて来てなぁ……! それを心配そうに見てる耀もこれまた可愛かった!」

フェリシアーノは目を眇めてギルベルトを見た。

「大好きなんだね、ふたりのこと。それなのに、どうしてルートには本当のこと言わないの?」

普段の明るい笑みを潜めたフェリシアーノとギルベルトの視線が絡まる。

フェリシアーノを表す言葉の代表であるヘタレや泣き虫はただのキャラクターだということを知る人間は少ない。

ギルベルトは左足をそっと撫でた。

その足は、日常生活に支障はないものの、軍人として前線に立つことを許されない怪我を負っている。

一生、治ることのない怪我。

一生、治すつもりのない怪我。

「ルートに嫌われたくないから、って言ったらフェリちゃんはどうする?」

ギルベルトの問いかけに、フェリシアーノはニッコリと普段通りの笑みを浮かべた。

「どうもしないよ。二人の問題に口出す気は一切ないしね。そういえば俺、イヴァンから菊に色々教えてやってくれって頼まれてるんだぁ。これから菊の部屋行くけど、ギルベルトも一緒に行く?」

ギルベルトは頷いて意気揚々と立ち上がった。

「あ、一応本田少将って呼んだ方がいいのかな?」

「そうだな、本田少しょ……少将?」

フェリシアーノの言葉を理解すると同時にギルベルトが「はぁあああ!?」と叫び声をあげた。

「えへへ。俺もルートもおんなじ反応だったよぉ」

ギルベルトは暫く沈黙して、それから「マジで?」と独り言のように呟いた。

 

ガタリ、と菊の背が当たった箪笥が音を立てた。

菊の逃げ場を奪うように立ったイヴァンを睨みつけて、菊は「どういうつもりですか」と聞いた。

イヴァンは薄い微笑を崩さず、ただ菊を見つめ続ける。

「なんなんですか、貴方は!」

「二週間から三週間、だってさ」

「は?」

菊の眉が寄る。

「nightingale の船が直るまで、最低でも二週間」

菊が息を呑むのを、イヴァンは面白そうに見ている。

「大砲、当てすぎちゃったかな」

ニコリとイヴァンが笑う。

言葉と表情のギャップに、菊はますます混乱する。

「ねぇ。船が直るよりも先に僕が攻め込んだら……アーサー・カークランドの首が堕ちるかもね」

「その前に貴方の首を私が堕とします」

一瞬の間も開けずに菊がピシャリと言い放つ。

イヴァンは微笑を崩さずに「本当に面白いね、菊くん」と呟いた。

「皮肉として受けさせて頂きます」

「好きにしなよ」

軽く笑って、イヴァンは「あ、でも」と付け足した。

「君はそろそろ理解するべきだよ。nightingale を見逃すも追いかけるも襲うも襲わないも、すべては僕の一存だよ」

「どういう……」

「今僕が進めと言えば、この船はnightingale のいる港へ直行する。きっとまだ怪我も治っていないだろう、アーサー・カークランドの元に」

菊は嫌そうに顔を顰めた。

「私を脅すおつもりですか?」

「それ以外に、どう聞こえたの?」

菊は短く息を吐いて、再びイヴァンを睨みつけた。

「なにがお望みで?」

「簡単なことだよ」

言いながら、イヴァンは菊の横にある壁に左手をついた。

パン、と軽い音がして、菊の肩が軽く跳ねる。

右手が頬に添えられて、菊は肩に力が入るのを感じた。

「君が、僕に逆らわなければいいんだ」

菊はイヴァンを見つめて、見つめて、見つめて。それから諦めたように目を閉じた。

「……上出来」

目を閉じた真っ暗な世界の向こうで、イヴァンが笑ったのを感じ取って……菊の唇に柔らかいものが押し当てられた。

「私はあなたに従いましょう。それでも、私はあなたが大嫌いです」

イヴァンは笑って「知ってるよ」とだけ答えた。

 

「菊~! 入ってもいい?」

柔らかい声に、菊は笑みと共に「どうぞ」と返した。

ドアを開けて(どうやったらそんな乱暴な音が出るのか、菊には分からない)パタパタと駆け寄ってきたフェリシアーノが犬を連想させ、菊は思わず苦笑した。

「どうなさいました、フェリシアーノ君」

「あのね、あのねっ! 今日はね、俺の友達連れてきたんだっ!」

菊がフェリシアーノの視線を追ってドアに目を向けると、ルートヴィッヒが小さく会釈した。

(……敵意しか感じませんがね)

菊は敢えて笑みを崩さずに、フェリシアーノに「どういったお友達です?」と問いかけた。

「ん? 一応上司だよっ!」

え、と菊は言葉に詰まる。

上下関係が厳しいはずの海軍で、上司に対して「一応」を付けるとは中々できたものではない。

「ルートヴィッヒ・バイルシュミットだ」

「ルートヴィッヒ・バイルシュミット……? もしや、ギルベルト師匠の弟さんですか……?」

「知っているのか」

ルートヴィッヒは驚いた。

兄は闇烏の人質となった為に反逆罪の疑いを掛けられ、罪人の人質に意味はない、と撃たれて足を使い物にならなくされたと聞いていた。

自分の存在を知っていたということも解せないが、そもそも、師匠という呼び方からして解せない。

「えぇ。自慢の弟さんだと伺っております」

そうか、とルートヴィッヒは答えた。

そうかとしか言えなかった。

菊は無言で、ただルートヴィッヒを見つめ返した。

彼からは敵意しか感じない。敵は、少ない方が良いに決まっている。

「ルートヴィッヒさんは、何故この部屋にいらしたんです? フェリシアーノ君のように私の世話係を命じられたわけではないのでしょう? このような……海軍の皮を被せられた、所詮は野蛮な海賊である私などのところに、何故?」

冷たい目と冷たい目が真正面からかち合って、それなのに菊は薄く微笑んでいた。

ルートヴィッヒは居心地の悪さを感じて、渇いた唇をペロリと舐める。

「俺は、おまえが嫌いだ」

「えぇ、そうでしょうとも。この船で私などを好きだと笑ってくれるのは、フェリシアーノ君とギルベルト師匠くらいのものでしょうとも。海賊上がりの若造が受け入れらるだなんて、最初から期待すらしておりませんのでご安心ください」

「兄さんも、おまえのことが好きだというのか」

「えぇ。先日、フェリシアーノ君と一緒に来てくださいましたよ。昔と変わらず、格好良くて強くて凛々しくて……私も嬉しかったですよ。……まぁ、身長が変わってないとかいう失言をされましたが、それを許せる程度には」

ルートヴィッヒは混乱した。

王耀のせいで足を怪我したと兄からは聞いている。

その弟のことが好きだというのは、どうも解せない。

「俺は、王耀が嫌いだ」

瞬間、菊の目が剣呑な光を浮かべた。

「ルートヴィッヒさん。私の前で私の兄に対する侮辱と取れる言動は慎んでください。ギルベルト師匠の弟さんだという事実すら忘れて、刀に手が伸びそうになりますので」

冗談でなく腰の刀に手が添えられるのを見て、フェリシアーノが「ひぃっ!」と情けない悲鳴をあげた。

nightingale 副船長の噂は、海軍にも届いている。

高名なnightingale 船長にすら簡単に勝つという、その自在な剣術に、海軍の人間も何人やられたか知れない。

「ここで事件を起こせば、nightingale は確実に最優先討伐対象になるだろう。おまえもただでは済まないぞ」

菊は刀から手を離すことなくクツリと笑った。

「それなら、貴方を殺してそのまま船の乗組員を全滅させましょう。私は私の愛し、尊敬する船長様の元に帰るのです。貴方程度を殺した為に投獄など、されてはなりません」

銃声が響いた。

ルートヴィッヒが撃ったのだ。

フェリシアーノが悲鳴をあげてどこから出したのか白旗を振りはじめる。

「その程度の腕で、よく私に喧嘩を売れたものですね」

菊の前には、六等分に切られた弾丸がパラパラと落ちている。

ルートヴィッヒは言葉を失った。

刀を抜く音すらしなかった。

菊の右手にある日本刀が、ルートヴィッヒの首に添えられる。

「私も、無駄な殺生は嫌いなのですが……仕方がありませんよね」

菊が口許に笑みを浮かべて、口を開いた。

「はじめまして、さようなら」

バン、と大きな音を立てて扉が開いた。

「ギルベルトっ!」

フェリシアーノの泣きそうな声が響く。

菊の意識も扉に逸れた。

慣れ親しんだ気配に気付けないほどにルートヴィッヒに集中していたらしい。

「何やってんだ、おまえら……」

完全に呆れた声音に、それぞれ長さは違うとはいえ、彼に育てられた期間を持つ二人は同時に手にした武器を下ろして項垂れた。

「で? 菊が右手で刀を抜くなんて、相当なことがあったんだろう?」

鞘に刀をしまった菊は、バツが悪そうに、それでもルートヴィッヒを睨みつけた。

「貴方の弟さんが、先代を侮辱したのです」

「先代? 耀をか……?」

「えぇ。ですから、殺してもいいと判断いたしました」

「短絡的すぎるだろう……」

ギルベルトは思わず呆れた声を出した。

本当に、大分時が経つというのに彼は変わっていないらしい。

「だって! 兄さんは闇烏に人質にされていたんだろうっ? 足だって、治せないほど……!」

菊は視線をギルベルトに移した。

「どういうことです……?」

声が低められて、ギルベルトは視線を泳がせた。

先程まで怯えていたはずのフェリシアーノは「あーあ」と小さく肩を竦めた。

「ギルベルトが延ばし延ばしにするから」

「足が治っていないって、どういうことですか! 兄様……王耀は、きちんと治療をすれば治るように加減をしていたはずです!」

「いや、だから……!」

「足をあえて治さないことで、周囲に闇烏の残忍さでもアピールしたかったのですか? 弟さんにまで王耀の責任だと吹きこんで?」

「菊、落ちつけ……」

「落ちつけるわけがないでしょうっ? 殺します。兄様の耳に貴方のことが入るよりも先に、貴方をあの世に送って差し上げます!」

日本刀を再び抜いて振り上げた菊にギルベルトはホルダーから銃を取り出した。

しかし、撃つことはせずに振り下ろされた刀をそれで受け止める。

嫌な音がして、銃にヒビがはいる。

「おまえは普段は冷静なくせに興奮すると剣筋が乱れる。何度も指摘したはずだぜ」

菊が唇を噛みしめる。

「ルートに建前を吹き込んだことは謝る。足を治さなかったこともだ。でも、決して闇烏を貶めるためじゃない」

菊がキッとギルベルトを睨み付ける。

「闇烏なんてどうだっていいんです。そんなもの、もうとっくに消えた船の名。ただ、先代を愚弄されるのだけは我慢なりません」

「もう一度言う。俺は耀を貶めたつもりも、愚弄したつもりもない」

菊のまっすぐな目が、ギルベルトを射抜いて、それから音を立てて日本刀が鞘にしまわれた。

「納得のできる理由を聞きましょう」

ニコリ、と菊が笑う。

その、主に拷問の時に使われるのであろう笑みにギルベルトの背を冷たいものが駆け抜けた。

流石に、威厳は十歳から成長していないことはなかったらしい。

「じゃあ、まず。帰ったら耀に伝えてくれるか?」

「足が治らなかったことに対する罵詈雑言でしたら吐いた時点で排除します」

「この状況でんなもん吐ける勇者いねぇよ」

菊は一瞬ルートヴィッヒとフェリシアーノへと視線を投げて「そのようですね」と笑った。

ゲフン、とギルベルトが咳払いをする。

「今でも好きだぜ」

「……はい?」

菊の反応は妥当だ。

フェリシアーノもルートヴィッヒもポカンと口を開けて硬直している。

「おまえに貰ったものは、足の傷ですら取っておきたくなるほどに」

何度も目を瞬かせて、菊はまるで異星人でも見るような目でギルベルトを見つめた。

見つめて見つめて見つめた。

「ギルベルト師匠、顔真っ赤です」

「うるせぇな。言った俺様の方が恥ずかしいのにおまえも赤いじゃねぇか!」

「とっ、東洋にはそういった文化は存在しませんっ!」

「知ってるぜ! だから俺様、耀に一回も好きだって言ってもらえてねぇんだ……」

「あの、いくら知っていたとはいえ、兄と師匠の恋愛事情なんて知りたくもないので黙ってもらえます?」

ひでぇ、と落ち込むギルベルトには、誰も構わない。

「ルートヴィッヒさん。兄に代わり、心よりお詫び申し上げます。確かにギルベルト師匠が軽率でバカだったせいとはいえ、撃ったのは私の兄です。ギルベルト師匠が勝手に傷を残したとはいえ、治らない怪我を負わせてしまいました。……絶対に治せる傷だったにも関わらず」

諸所に棘があるが、それにルートヴィッヒは突っ込まなかった。

先程のやり取りを聞いていて欠片も呑みこめないほどの朴念仁ではない。

「兄さん、後で詳しい話を聞かせてもらう」

「ふふふ。バレちゃったね」

コロコロと笑うフェリシアーノにルートヴィッヒは「知っていたのか?」と大声をあげた。

「ギルベルトはね、ルートに嫌われたくないからって隠してたんだよ~」

へぇ、と呟いた菊の声は冷たい。

「御自分が嫌われないために、私の兄を嫌われ者に? この部屋に入ってきたルートヴィッヒさんは、私に対しても殺気を飛ばしていましたが……?」

ギルベルトは視線を菊から逃がした。

「まったく。ルートヴィッヒさん。おひとつだけ。兄は、自ら望んで闇烏と行動を共にしていたギルベルトさんの反逆罪の疑いを解くために撃ったのです。恩を売る気はありません。兄も、ギルベルトさんにはもう嫌われているだろう、と言っております。それでも。憎むのだけは、勘弁してくださいませんか? 今現在の貴方たちの敵は、兄ではなくnightingale 副船長の私です」

「今迄嫌って来たんだ、突然やめろというのは無理かもしれない」

「えぇ、それは勿論」

「だが、おまえのその姿勢はとても好ましいと思う」

「恐れ入ります。普通、異国の方々は『はっきりしない』『真面目すぎる』と仰るのですがね」

「……兄さんに、きちんと話を聞いてみようと思う」

ギルベルトが「えっ?」と嫌そうな声をあげたが、もう誰も構わない。

「話してくれるな、兄さん」

「話してくださいますよね、真実を」

ギルベルトが頷いて、やっと菊は薄ら寒い微笑みを収めた。

 

「そろそろ、行こうかなぁ」

「はい?」

もう何度唇を重ねたか。

もう何度床を共にしたか。

(考えたくもない……)

「ん? いい加減、船の修繕も終わってるでしょ?」

疲れ果てている頭と体では一瞬その言葉を理解し損ねて、菊は幼い子供のように首を傾げた。

「船……?」

「nightingale だよ」

菊は目を瞬かせて、ようやく意味を掴んで目を見開いた。

「行くって、どういう意味です……?」

「決まってるでしょ? アーサー・カークランドと僕の、首取り合戦」

菊が息を呑んだ音が妙に大きく響いて、イヴァンは満足そうに笑った。

「ウソツキって顔してる。……嘘は吐いてないよ。行くか行かないかは君次第だって言ったけど、一生だとは言ってないし。それに、攻められるより攻めた方が安全でしょ?」

「この外道がっ!」

キッと菊はイヴァンを睨みつけたが、当のイヴァンは気にもしていない。

「そうだ、早く制服を用意しなくちゃね。君が僕のものになったって、アーサー・カークランドに教えてあげなくちゃ。……彼は、泣いてくれるかなぁ?」

「泣きません」

菊は即答した。

泣くかもしれない。

だって、意地っ張りなくせに彼は実はとても涙もろい。

それでも、少なくともイヴァンの前で泣くことはない。

そんな、冷酷無慈悲にもなれる彼だからこそ菊は恋情を持ったのだ。

「我らが船長様は、そのような軟弱者ではございません」

「へぇ、面白いね」

いつかと同じような言葉を投げつけられ、それでも菊は反応を返さなかった。

反応を返すことこそが恥だと、いつだったか王耀が言っていた。

 

「俺さ、今度耀に会ったら殺される気がするんだ……」

散々の説得(脅し)の末にようやく真実を知らされたルートヴィッヒは、同時に知った王耀の武勇伝が頭を掠めて顔を逸らすにとどめた。

やる。もしも王耀がギルベルトの言った通りの人物だったなら、この状況でギルベルトが生きていられるとは思えない。

「本田にも悪いことをしてしまった」

「おー? おまえが反省なんて珍しいなっ」

「兄さんの嘘のせいとはいえ、散々敵意を剥き出しにした上に大切な人を侮辱してしまったんだ。……兄さんの嘘のせいとはいえ」

あー、と唸ったギルベルトは反応することを放棄したらしい。

「でも、俺はイヴァンのことも心配なんだよなぁ……」

ルートヴィッヒは思わず溜息を吐きそうになった。

フェリシアーノにしろギルベルトにしろ、どうして自分の周囲には手のかかる人間しかいないのだろう、と悩まずにはいられない。

ギルベルトの世話焼き気質は本物だ。

誰もが近寄りたがらないイヴァン・ブラギンスキ相手にすら、過保護を発揮する。

「本当にいつまで経ってもガキで、好きの伝え方すら知らねぇ」

あれで、必死に伝えてるつもりなんだろうな、とギルベルトは悲しそうに笑った。

「まぁ、いい薬になると信じるとするか。あいつは人間の心は力じゃどうにもならないと知った方が良い」

「なに格好つけてるのよ、気色悪いわね」

言葉と共に頭を殴られて、ギルベルトは「ぎゃっ」と悲鳴をあげた。

「痛ぇだろうが、男女……」

言ってしまってから、背後に立ったエリザベータの笑みが凍るのに気付いたギルベルトは必死で距離を取ろうとしたが、エリザベータの振り上げたフライパンが綺麗に頭に命中する。

「兄さん……頼むからもう少し学習能力を持ってくれ」

ルートヴィッヒの切実な願いが通じるのはいつになるのか分からない。

ちなみに、エリザベータは常にフライパンを持ってはいるが、コックではない。

「あんたが殺されそうになったら、協力してイヴァンを殺した方が早いですよ、って耀さんに言ってあげるわよ」

ギルベルトは床に寝ころんだまま(赤いものが見えるのは気のせいだと信じながら)「ダンケ」と呟いた。

 

「もう平気だ」

アーサーの言葉に、アルフレッドは呆れた顔をした。

「まだそんなこと言ってるのかい、君」

「もう動けるっ!」

「バカなのかい、君はっ!」

馴染みの兄弟喧嘩が勃発しそうになったタイミングで、フランシスが「平気なら早く起きろ」と声をかけた。

「ちょっと、フランシス! 君、なに言ってるんだいっ!?」

「イヴァン・ブラギンスキから分かりやすい挑発を貰ったんでな。その眉毛が寝てたんじゃ、首取り合戦は始まらないだろ?」

「挑発って何……?」

アルフレッドがフランシスに駆け寄って、その手にある紙を覗き込む。

普段はキラキラと輝く大きな青空の瞳が、剣呑に細められるのを見てアーサーは「どうしたんだ?」と声をかけた。

アルフレッドによってベッドに縛り付けられた体は自力では動かせない。

「ただの挑戦状さ。差出人に菊の名前を使ってるってこと以外はね」

アーサーが目を見開く。

「どういう意味だ……?」

「そのまんま。菊ちゃん、いつの間にか海軍の少将様になっちゃってた」

クツリ、とアーサーが笑う。

その完全に狂った笑みに、フランシスは薄ら寒いモノを感じながらも笑った。

「俺の領土に土足で踏みこんで、俺のものを奪った上に我が物顔で使うとは……狂った野郎だな」

「海賊すら上層部に入れられる、それだけの影響力を持ってる、っていう主張かねぇ? うちの船長様怒らせるとは、相当のバカっていうか」

「船は直ったんだな?」

「元通り。……いや、元以上」

「分かった。アルフレッド、解け。行くぞ」

アーサーの気迫に、アルフレッドは大人しく縄を解いた。

「待つよろし」

すぐにでも飛び出して行きそうだった三人を止めたのは、特徴的な話し方の深い声。

「コイツらを連れていくよろし」

王耀が顎で指したのは湾と勇洙だ。

「でも、この子たち船の経験あんまりないんでしょう?」

フランシスの心配そうな声に、湾はクツリと笑って短剣をフランシスの喉にピタリと当てた。

「バカにしないで。絶対に役に立つわ。私は王耀と本田菊に生きる術を学んだのよ」

その笑みはあまりにも菊と同じで、フランシスの背を悪寒が走った。

「あいつのことは嫌いなんだぜ。でも、仕方ないから。弟だから。だからなんだぜ」

勇洙の手には銃が握られている。

「我が一言行けと言えば、我が手を下すまでもなくおまえらの頭と胴は離れるある」

「俺は一緒にはいけないけど、菊さん連れ帰ってこなかったら俺が皆殺し的な?」

香の言葉は、無表情なだけあって真実味がある。

「あいつは俺のだ。おまえらに迷惑はかけない! 俺が助けに行くっ!」

「誰がおまえのものあるか。あれは我の弟ある」

「ただの海軍船じゃないんだぞ。あのイヴァン・ブラギンスキの船だ! それなのにコイツら連れて行けとか、おまえはバカかっ!」

「バカはアート兄さんです。僕らだって、菊さんのこと大好きなんですから!」

突然聞こえた声に、アーサーは肩を跳ねさせた。

「マシュー? いつからそこに……」

「最初からアルフレッドと一緒にいました……」

マシューがガックリと肩を落とす。

「菊さんだけなんです。僕のこと、気付いてくれるのは。僕のこと、アルフレッドと間違えないのは」

行きます、とマシューは強い目でアーサーを見つめた。

「僕も行きます。絶対に、菊さんに戻ってきてほしいから」

アーサーは一言だけ「馬鹿野郎」と吐き捨てて、それから無言で扉へ向かった。

すぐにアルフレッドが扉を開ける。

「さぁ。囚われの姫君でも助けに行くか」

ニヤリ、と笑んで宿を飛び出す。

「菊についていた傷の三倍ずつ痛めつけてやるある」

その背中に呟いた王耀の肩に顎を乗せるようにして抱きついた香が「泣かないでください」と囁いた。

「先生、早く仕事を片付けましょ? そしたら、あのクソ眉毛追いかけたらいいっすよ」

ね? と首を傾げた、本来ならば自分も行きたかっただろうに王耀の傍にいることを選んだ弟を抱きしめ返して、王耀は「そうあるな」と呟いた。

菊が、菊だけが王耀には特別で、三人はそれが面白くなくて、でもすぐにその才覚に気がついて。

でも。

(やっぱり、悔しいっす……)

 

「わざわざ挑戦状なんて送ってくれたんだ。ちゃんとそこへ行ってやらねぇと、nightingale の名前が泣くだろ」

「流石我らが船長様」

フランシスの完全に茶化す声に、アーサーは怒らなかった。

空気を読んで、敢えてのその態度だと知っていたからだ。

「作戦は? なにかあるのかい?」

アルフレッドの問いにアーサーはニコリと笑った。

パッと見、純真に見えるそれは、しかし狂った者の笑みだった。

「勿論だ。皆、今回の作戦を発表する。……殺せ! 一人残らず斬り裂け、以上っ!」

おぉ! と歓声が上がる。

「向こうも、海の上の人間としてのプライドくらいは持ち合わせてたらしいな」

遠くに見える海軍の紋章の入った旗を掲げる船は一隻だけだ。

レーダーを見ても、なにも映らない。

「船長、病み上がりなんですから無理し過ぎないでくださいよっ?」

船員の言葉に、アーサーは「無理するさ」と笑った。

「なんのために死に物狂いで怪我治したと思ってんだ」

「ベッドから抜け出して怒られ続けたくせによく言いますよ!」

苦笑と共に投げられた言葉にアーサーも苦笑を返す。

「じゃあおまえら、俺はイヴァン・ブラギンスキに直行するから小物は任せたぞ! 俺に楽させてくれ」

「イヴァンに行ったら、それもう楽じゃないでしょうっ!」

咎める声をあげた船員も、本気で止める気はないらしい。

船はゆっくりと前進していく。

甲板に立ったアーサーは、ただ前だけを見つめ続けた。

海軍の船の上、金髪茶髪の中に、愛おしい黒髪を見付けて、アーサーは声をあげた。

「菊っ!」

「アーサーさんっ!」

アーサーに会えたことにか、怪我を感じさせないことにか、はたまた両方にか。

菊の顔が泣きそうに歪んで、それでもすぐに引き締められた。

珍しい、本当に珍しい洋服。

それは海軍の制服だ。

カツン、と靴が甲板を叩く音がして、菊が振り返る。

そこにいたのは、言うまでもない。イヴァン・ブラギンスキだ。

わざと音を立てて気付かせたのであろうという事実が菊には悔しくて堪らない。

アーサーの前で腰に手を回して背後から抱き寄せられて、否が応にも眉根が寄る。

グシャリ、とアーサーの手にあった望遠鏡が潰れる音がして、船員の顔が青くなる。

……それは菊こだわりの一品であった。

「うふふ。よく来たね、アーサー・カークランド。怪我はもう大丈夫なのかな?」

わざわざ拡声器を持ち出してきたイヴァンに対抗するように、アーサーも拡声器を手にした。

「見た目ほど酷い怪我じゃなかったからな。すぐに治ったさ、あのくらい」

「へぇ?」

その時点で、耳を押さえた菊がキッとイヴァンを睨みつけて何事か喚いた。

「なに喚いてんだ、菊ちゃん……」

「とりあえず、この船では見たことないくらいには嫌そうな顔してるんだぞ……」

「えっと……耳が痛いから、近くで拡声器を使わないでください? 話がしたいなら無線飛ばしなさい、バカですか貴方は? あと……そもそも話なんていいからとっととドンパチやったらどうです? どうせ負けるのは貴方ですけど? うん、こんなもんか」

フランシスとアルフレッドだけでなく周囲の船員全員が完全に引いた目でアーサーを見る。

「君、どうして分かるんだい……?」

「なに言ってんだ、決まってんだろ?」

アーサーは清々しいともいえる笑みを浮かべた。

「菊のことで分からないことなんかない」

湾の顔から一瞬で血の気が引く。

「せん、老師っ! アーサー・カークランドは変態ですっ! 帰ったら老師に報告しますっ!」

アルフレッドはアーサーと視線を合わせようとしない。

……言わずもがな、フランシスや他の船員もだ。

「なっ、なんでおまえら引いてるんだっ!?」

そこへ、幸運にも問題の瞬間に居合わせなかった船員が中から駆けだしてきて叫んだ。

「船長! イヴァン・ブラギンスキから無線です!」

そこで告げられた言葉が完全に先程のアーサーの言葉だったことはよかったのか、悪かったのか……。

それは誰にも分からない。

 

「我らが船長様、怪我は大丈夫ですか?」

無線越しではあったが、久方振りの菊の声にアーサーは内心で狂喜乱舞したが、表面上はnightingale の冷酷無慈悲な船長様を気取って「あぁ」とだけ答えた。

フランシスとアルフレッドは顔の見えない二隻の距離に心から感謝した。

声と言葉は取り繕えても、緩みきった顔は繕いようがなかったらしい。

「で? どうしておまえはそちらにいる? 俺を、裏切ったか?」

「もしもそうだ、と言ったら?」

「おまえの首と胴が離れるだろうな」

「まぁ、怖い」

顔は見えなくても、菊がクツリと笑んだのが分かった。

「私のこの格好が、証明にはなりません?」

「裏切りの証明にしか見えないな」

「まぁ。……本気で言っておられます?」

「俺が本気でなかったことが、何度ある?」

「……一度もなかった、と言っても嘘にはならないでしょうね」

流石、有名な海賊船の船長と副船長だ。

殺伐とした空気に慣れているはずの両隻ともに手に汗を握った。

「さぁ。面倒な交渉はもうごめんです。始めましょう? 首取り合戦を」

「ルート、ギル……菊が、怖いよ……?」

「疑わないでやってくれ。普段が……今迄が素だ。これは完全に本気の時にしか見せない……まぁ、半ギレ状態ってヤツだ」

ビリビリと殺気が肌を刺す。

「俺は首取り合戦に来たんじゃねぇよ。俺の大事な、囚われの姫君を攫いにきたんだ」

「は?」

色々なところで声が重なった。

……仕方のないことだと思う。

「ね、菊くん。まさかアーサー・カークランドって、馬鹿なの?」

「貴方に言われるのも癪ですが、相当な」

勿論その声は無線で流れており、フランシスが「認めちゃったよ、菊ちゃん……」と呆然と呟く。

アーサーはそんな反応は予想していなかったらしく、完全に硬直している。

開戦の合図となる笛が鳴る。

懐中時計に目を落とせば、それはもう開戦の時間を指していた。

「さて」

無線機から菊の声が零れ落ちる。

「イヴァン・ブラギンスキ中将。私ごとで申し訳ありませんが、ここに辞表が。受け入れてくださいね」

貴方は約束を破った、と菊は叫んだ。

「契約破棄です。私があなたに従う理由は、もうありませんから」

叩きつけるように辞表を渡し、菊は面倒臭そうに顔をしかめた。

「まったく。何年経っても、洋服にだけは慣れません」

「着物の方が動き難い気がするけどな」

ギルベルトの言葉に、菊は微苦笑を浮かべた。

「慣れの問題でしょう」

言いながら二本の刀を取り出した菊に、ギルベルトは口笛を吹いた。

「おまえの二刀流、久々に見るな」

「このくらいしないと、イヴァンさんはやられてくれないでしょうから。あ、そうそう。イヴァンさん、間違えてますよ?」

「なにが?」

「アーサー・カークランドとイヴァン・ブラギンスキの首取り合戦じゃありません。本田菊とイヴァン・ブラギンスキの首取り合戦、ですよ。貴方には、舌を噛み切ってもいいと思えるほどに侮辱されましたし、ね。……可愛らしい復讐でしょう?」

菊がニコリと笑みを浮かべる。

「やっぱりいつもの方が良いよ、可愛くて。その笑い方、薄ら寒いよ?」

「やはり、褒め言葉として取らせていただきます」

イヴァンは菊を見つめて、溜息を吐いた。

「いいの? 僕に逆らったら……殺しちゃうよ?」

「その台詞、そっくりそのまま返させていただきます。アーサーさんの怪我が治った今、船が向かい合っている今、私は貴方に従う理由がありません。貴方を、生かしておく理由がありません」

私に勝てますか? 菊は静かな声で問いかけた。

「勝つよ。だって、ここには君がいる。nightingale の大切な副船長様が。遠距離攻撃はできないでしょう? 助けは入れない。大砲も使えない。この船に打撃を、与えられるかな……?」

イヴァンの言葉に、菊は鼻で笑った。

「本気で言っています?」

「え?」

「その時点で、貴方はまだまだですね」

イヴァンが目を見開くのと、船に大砲が命中するのは、同時だった。

 

「本気で言ってるのかい? 君ってヤツは本当に馬鹿だね。……まぁ、知ってはいたけどね」

「菊ちゃんに当たったらお兄さん八つ当たりで殺されちゃうんだろうなぁ……」

溜息を吐いたフランシスを、アーサーは鼻で笑った。

「なに言ってる。うちは慢性的な人手不足だぞ。副船長が死んで、その上おまえまで死んだら回らなくなるだろ」

「あー、ありがたいお言葉~。どうしてその戦闘モードをもっと早く出さないかねぇ」

「最初から決まってたら、そんなのアーサーじゃないんだぞ!」

アルフレッドが笑うと、アーサーは剣をアルフレッドに向けて小さく、しかしはっきりと「船長」と呟いた。

「今は交戦中だぞ。船長と呼べ、アルフレッド」

普段の「アル」という愛称ではなく、正式な名前で呼ばれたアルフレッドは「ごめん」と呟いて笑みを消した。

「そうだね。菊に嫌われるかもしれない道を君は選んだんだ。最高の船長様だと思ってるよ」

「思ってねぇだろ。なんだその不貞腐れたような顔は」

「分かってるくせに」

アルフレッドは小さく呟いてアーサーを睨みつけた。

「あの船には菊がいるんだぞ? それなのに大砲をうちこむって、君はバカかい!? 本気で言ってる? 頭は大丈夫かいっ!?」

「アルフレッド。発言を慎め。それ以上俺を侮辱すると、我らが副船長様に殺されるぞ。例えおまえでも、だ」

「構うもんか! 菊が死んだらどうするんだっ!」

「俺も同じ意見なんだぜ。本田菊は王耀が守った海賊船『闇烏』の後継者。現船長なんだぜ。nightingale 副船長なんて、所詮はおまえとの不安定な『戀』が終わったら、すぐ辞める――辞めさせるんだぜ。あれは、闇烏の船長であってnightingale 副船長じゃないんだぜ。俺の弟を殺したりしたら、兄貴はきっと泣くんだぜ。おまえらなんか一瞬で殺せる力を持ちながら、殺すと口にすることもできずに泣き崩れるんだぜ。……俺は知ってるんだぜ」

アルフレッドすら言葉を失っている中、勇洙は続けた。

「菊なんかどうなったって構わないんだぜ。菊が死んだら、闇烏は俺がもらうんだぜ。でも、ひとつだけ許せないことがあるんだぜ。……兄貴を泣かせたら、この船沈ませるくらいじゃ気が済まないんだぜ」

船上が水を打ったように静まる。

「死なない」

アーサーの声は小さかった。

しかし、静まり返っていた船上には大きく響いた。

「あいつが死ぬわけがない。あいつを殺していいのは俺だけだ。俺以外の人間が打った大砲で、菊が死ぬわけがない」

「そんなことっ!」

「おまえは!」

アルフレッドの言葉を自分の言葉でとめ、アーサーは笑った。

「俺の選んだパートナーが、こんなことで死ぬと本気で思っているのか? 上に立つものに必要なのは強さだけではない。……おまえたちは知っているはずだ。強さ、賢さ、時の運。絶対に必要なのはその三つ。菊は……副船長はそのすべてを持ているはずだ。ここで死んだら、俺に部下を見る目がなかった。それだけだ」

撃て、と静かな声が言った。

大きな音がした。

火薬の匂いが充満した。

遠くで悲鳴が聞こえた。

「菊……」

アーサーの声は、轟音に紛れて誰にも届かなかった。

 

「ヴェー! ルート、撃った! 撃ったよぉ~! 菊が、菊がいるのにぃー!」

「海の男を、あまり軽んじないことですね。海の上で死ねるのでしたら、それが敵の手だろうと仲間の手だろうと、あるいは己自身だろうと同じこと。仲間の足を引くくらいでしたら、この場で舌を噛み切りましょう。もしも、船長様の足枷になるようでしたら、と覚悟していたのですが……いらぬ覚悟だったようです」

信じられない、とイヴァンは唸いた。

「君たち恋人同士じゃないの? 自分の恋人がいるのに撃つなんて……」

「えぇ、恋人ですよ。私がいるのに大砲を撃つ、そんなあの方ですからお慕いしているのです」

菊はニヤリ、と笑った。

「気が、乱れました」

菊が振り上げた日本刀を、蛇口(何故か常に持っている。まさか武器になるとは菊も予想できなかった)で受け止めた。

「おや、私の刀を受け止めますか……残念、不正解ですよ」

イヴァンが声を発するよりも速く、菊の日本刀が蛇口を切り裂く。

「避ける、が正解でした」

「相変わらず、破壊力半端ねぇ」

ギルベルトが口笛を吹く。

直属の上司の危機だというのに呑気なものである。

「さぁ! はたしてどちらの首が落ちるのが早いか……勝負ですねっ!」

勝負もなにも、イヴァンはもう丸腰だ。

 

「船を前へっ!」

「えぇっ!? ここはもっとこう……睨み合いの緊張感を出すところじゃないの!?」

「なに言ってんだ、よく見ろ!」

アーサーに示されてフランシスが海軍船を見遣る。

「菊がイヴァン・ブラギンスキに刀向けてるだろうが! 俺の獲物が取られる! いつも言ってんだろ、いくら菊でも俺の獲物取られるのは我慢ならねぇ!」

アーサーの言葉に忠実に、船が前へ進みだす。

進みだす、だと語弊があるかもしれない。

アーサーの言葉に忠実に、船が前へ……全速力でぶっ飛んだ。

「な、なんっ!?」

よろめいたアーサーを咄嗟に支えて「なにこれ、なにこのスピード、ってか坊ちゃん細すぎだよ、今日から食事のノルマ増やすからティータイムにお腹膨らませちゃ駄目だからね!」と喚いたフランシスを取り敢えず、という風に殴ったアーサーに、余裕の表情で甲板に立っている(荒波に慣れている船員たちも立っていられない状況でだ)湾がツカツカと歩み寄った。

「老師ですよ。……イヴァンの野郎のことだから、わざわざ挑戦状から送りつけてくるはずある。睨み合いの間を詰めるには、スピード勝負あるよ~って言ってました」

「え、これって今の技術で出せるスピードなの!? ってか湾ちゃんはどうしてそんな余裕なのっ!?」

フランシスの叫びに湾は遠い目をして笑った。

「皆さんは菊さんに舵を取らせたこと、ないんですね……。菊さん、すっごく運転荒いんですよ」

これより酷いです、という湾に、フランシスとアーサーが頬をひきつらせる。

「いいこと聞いた。絶対に菊には運転させない」

イヴァンの船の横をすり抜ける瞬間(あまりのスピードに最初は混乱したらしいが、しっかり避ける辺り、アーサーは心中で自らの船員を讃えた)アーサーは舳先からイヴァンの船に飛び移った。

「うわー、無茶する~。流石は菊さんの王子様」

感心して呟いた湾に、フランシスは「本人に言ってやって、喜ぶから」と返した。

 

菊の刀が振りあげられて、イヴァンは目を閉じた。

「抵抗しないんですか?」

「分かんないや。でも、疲れた。君になら……殺されてもいいかなって」

菊は薄く笑って刀を振り下ろした。

「なに、してるんですか……」

刀は止められた。

金属同士が触れ合う甲高い音に、菊が眉根を寄せる。

菊の刀を止めたアーサーは冷たい声で「本田菊」と名を呼んだ。

「イヴァン・ブラギンスキは俺の獲物だ。いくらおまえでも、譲るわけにはいかないな」

「今のこの状況が分からないんですか、アーサー・カークランド。どう見ても、これは私の獲物です」

睨み合うだけでなく、互いに武器を向け合った二人に、フェリシアーノが再び特有の鳴き声をあげる。

「ルートっ! どう見ても恋人同士の久し振りの再開じゃないよっ!」

「恋人以前に船長と副船長だからな」

「つってもまだ若いのになぁ。ケセセっ!」

敢えて言おう。

ルートヴィッヒ・フェリシアーノ・ギルベルトとアーサー・菊は敵同士だ。

この和やかな会話は、絶対におかしい。

「僕は……どうせなら菊くんに殺されたいなぁ」

イヴァンが菊の左手を取ってその手に頬を寄せる。

アーサーがイヴァンを打ち抜こうと銃を向けようとするが、菊の右手の刀で身動きが取れない。

「ね、もう嫌だよ。君はアーサー・カークランドのところに帰っちゃうんでしょ? それなら、楽にしてよ。僕のことを、殺していって?」

菊がイヴァンを見つめて、そのまっすぐで純粋な目を見つめて、見つめながら右手の刀を払ってアーサーを跳ね飛ばした。

「お断りします」

「へ?」

ニコリ、と笑みを浮かべて、菊は「さぁ、帰りますよ」とアーサーに手を差し伸べた。

「あぁ。おまえ殺しても、楽しくない」

アーサーの言葉に、菊も頷く。

「私たちは犯罪者です。殺してほしいと願う人を殺して差し上げるほど、お優しくないのですよ」

ひとつだけ教えて差し上げます、と菊はイヴァンの頭を撫でた。

「好きな人には、好きだと言うんです。力で抑えつけようとなんてしないで。気付いているでしょう? 物理的距離は縮まっても、精神的距離は離れていくこと」

ギルベルトは満足そうに笑って頷いた。

イヴァンは菊を見遣ってコテン、と首を傾げた。

「好きだよ、菊くん」

「えぇ、存じておりますよ。何度も言いますが、私は貴方が嫌いです。でも、周りを見てください。貴方を想ってくれる人が、いるんですよ?」

アーサーが用事は終わったとばかりにnightingale に乗り移る。

菊もそれを追って飛んだ。

「菊くん!」

イヴァンの呼び掛けに、菊がnightingale の上で振り返る。

海賊船の上で海賊たちに囲まれた海軍の制服。

……異様な光景であった。

「追いかけっこの始まりだよ。ずっとずっと追いかけるから、ね?」

菊は先程薄ら寒いと言われた笑みを浮かべて「どうぞご勝手に」と返した。

「鬼さんから逃げるだけの可愛い羊さんだと思っちゃ駄目ですよ。貴方が鬼なら、私は獣になってみせましょう」

では、と菊が言うと同時に船が進みだし……いや、ぶっ飛んだ。

「わ~、すごーい」

イヴァンの言葉は棒読みだった。

それもそうだろう。

一体いつの間に。

イヴァンの船の上で生きていたのは、四人だけだった。

 

「俺、今日一人も殺してねぇよ」

頬を膨らませるアーサーに、菊はクツリと笑った。

「そんなことで拗ねるなんて子供ですねぇ」

「菊は充分やったから良いだろうけどな」

「おや。気付いておいででしたか」

「一応周囲くらい見れるよ」

「ざっと二百人、ですかね。でも、大した手応えもありませんでしたよ?」

「最強の海軍船によく言えたもんだよ」

菊とアーサーの会話が一段落したのを見てとって、アルフレッドが菊に飛びつく。

「菊ー! おかえりなんだぞ! 菊がいないとアーサーがウザくて大変だったんだぞ!」

「アル、抱きつくなっ!」

「アルフレッドさん、船長様を侮辱された場合、それが貴方でも殺さねばなりません」

本気で刀に手をかけた菊に、アルフレッドは慌てて「冗談なんだぞ!」と叫んだ。

「おかえり、菊ちゃん。怪我なんかない? 傷一つでもあったらお兄さんたち王耀に殺されちゃうからね?」

「おや、でしたら二、三個傷でも付けておきましょうか」

「え、ちょっ、やめてね!?」

慌てたフランシスに「冗談ですよ」と言って菊は抱きついているアルフレッドを剥がした。

同時にアルフレッドは床にしがみつく。

……船は今、最高速でぶっ飛んでいる。

「アーサーさん」

名を呼ばれて、アーサーが菊を見る。

「洋服は勝手が分からなくて困ります。……着替え、手伝ってくださいね?」

アーサーは「言われなくても」と返して、菊の手を取った。

「おまえから俺以外のニオイがするのも我慢ならないのに、洋服を着ていることなんか許せるはずもないだろう?」

フランシスが「うわー、久々アーサーの口説きモード」と呻いたのは聞こえないフリをして、アーサーは取った菊の手に口付けた。

「おまえ全部、俺が染め直してやるよ」

菊は笑って「私は私以外のナニモノにも染まりません」と返した。

「アーサー・カークランドは変態です……。老師に報告しなくちゃ。……それにしても菊さん格好良い……!」

去っていく後ろ姿を見送って、湾が小さく呟いた。

 

ベッドに座った菊を思い切り抱きしめて、アーサーは「あいつのニオイがする」と鼻を鳴らした。

「えぇ。貴方と同じことしてましたから」

菊の言葉にアーサーが驚いて体を離す。

青葉色の目に見つめられて、菊は黒の目を細めた。

「船を降ろされても構いません。……そのくらい、覚悟しておりました」

「馬鹿野郎」

短く言って、アーサーは菊を抱きしめ直した。

かけられた体重が支えきれず、菊の体がベッドに沈む。

「おまえって本当不器用だな」

「アーサーさんに言われたくありませんよ」

羽のように軽く唇が振ってきて、菊はそっと目を閉じた。

「……ごめんな」

「何故、謝るのですか?」

「おまえを、傷付けた……」

「迎えに来てくれたじゃないですか」

「遅かった」

「私は生きていますよ?」

「でも、泣いただろう?」

「……なんで貴方は分かるんですか……」

「おまえが望むなら、俺は殺されてやってもいいし、殺してやってもいいぞ」

「望みませんよ、そんなこと」

小さな声で交わされる言葉たち。

言葉と言葉の間には、アーサーが唇を降らせている。

「じゃあ、取り敢えず脱げ、そんなもん」

アーサーの手がボタンにかかって、菊は「脱がせてくださいよ」と笑った。

「私全部、貴方色に染めてくださるんでしょう?」

アーサーは小さく笑って「上等だ」と噛みつくように口付けた。

 

「ただいま帰りました」

恭しく頭を下げる菊を興味なさげに一瞥して、王耀は口を開いた。

「なにを措いても守らなければならない船長様に怪我を負わせた挙句、海軍の手に落ち、船長様の手を煩わせるとは……副船長が聞いて呆れるある」

その静かな声を、菊は頭を上げることなく聞いた。

菊、と名を呼ばれ、ようやく菊が顔を上げる。

瞬間、懐かしい、力強く暖かな腕に包まれた。

「無事でよかったある」

確かめるように腕の力が強くなり、菊は淡く微笑んで抱きつく力を強くした。

「御心配、お掛け致しました……」

兄様、と菊が小さな声で呼ぶ。

その声が、幼き日の甘えた声に聞こえて、王耀は苦笑しながら「どうしたあるか」と聞き返した。

その声は甘い。

「老師! アーサー・カークランドは変態ですっ!」

「兄貴、あいつ菊が向こうにいるのに大砲撃ったんだぜ!」

菊と王耀はそのままの姿勢で硬直した。

空気が読めないのは、一体どうやったら治るのだろう?

「あー、もう! おまえら同時に喋ったら聞きとれねぇあるよっ!」

聞きとれないと言いながら、王耀は鋭い目でアーサーを睨みつけた。

「先生絶対聞きとれてますよね。俺にも聞きとれたッすよ」

「空耳も聞こえたあるよ。菊を取り返さなきゃいけねぇ気もしたあるよ」

「大丈夫ッす。俺にも同じ言葉が聞こえてるッす」

「みなさん、あまりアーサーさんを苛めないでくださいね?」

菊が苦笑しながら、そっと王耀の腕から抜け出して、扉へ向かおうとしたその袖をアーサーがすかさず掴んだ。

「ちょっ、どこか行くのか!?」

「えぇ。私がいない間、仕事が停滞していたでしょう? 早く始めないと」

「いや、だからってこの状況に俺を置いていくのかっ?」

この状況? と菊は首を傾げた。

「兄様方もおりますし、フランシスさんにアルフレッドさん、マシューさんがおられますから命の心配はありませんし……」

「いやいやいやいや! 四人ほど、本気で俺の命狙ってる奴がいるから!」

面白い冗談を仰いますね、と菊は取り合わない。

「では兄様。失礼致します」

バタン、と扉が閉まった。

それが地獄の始まりの音に、アーサーには聞こえた。

「さぁ。詳しく話すある、湾、勇洙」

同時に口を開いた二人に、すかさず王耀が「順番あるよ」と釘を刺した。

「大変なんです! アーサー・カークランドは変態なんですっ! すっごい離れた船から菊さんの言葉だけ聞きとれるんですよッ!?」

うわぁ、ある。と王耀は完全に引いた目でアーサーを……見なかった。

「それくらい普通はできるあるよ」

「え!? あ、そうか、老師は兄馬鹿を越える馬鹿兄ですもんね!」

「失礼あるよっ!」

「あいつ、菊がいるのに大砲撃ったんだぜ! 死んじゃうところだったんだぜっ?」

王耀はアーサーを睨み付け……なかった。

「当然あるよ。大砲撃たなきゃ、始まらねぇある」

え、とその場にいた全員が拍子抜けした。

「私も同じあるよ。菊が敵の船にいようが、勇洙や香、湾が向こうにいようが、遠慮なく撃つあるよ。……死なないと、信じてるあるよ。もし死んだら、馬鹿みたいに泣くある。でも、後悔は絶対しねぇある。その時の最善の手を取った結果あるよ」

王耀の言葉に、誰も何も言わなかった。

大砲を撃たれても菊がアーサーに噛みつかなかった理由。

それは恋情とかいう不安定なものなどではなく、船長としての「信頼」だった。

「その状況で撃たねぇ奴に、菊は預けられねぇあるよ」

王耀が笑う。

「あ、そういえば!」

空気を読めない(本人曰くAKY)アルフレッドが声を上げる。

「菊がいない間、お仕事はみんなで手分けしてやったんだぞ! だから菊にはお仕事なんか残ってないんだぞ!」

「おまえ、なんでそれ先に言わねぇんだよ……」

アーサーの言葉にアルフレッドはあっけらかんと笑って「アーサーがくたばってくれるかと思ったんだぞ!」と喚いた。

「なのに丸く収まっちゃって……お兄さんも面白くなぁい」

アーサーが叫ぼうとした瞬間、コンコン、と控えめなノックが響いた。

「入るある、菊」

扉を開けて入ってきた菊は困惑の表情でアルフレッドたちを見た。

「仕事が残ってないようなんですが、皆さんが……?」

「そうなんだぞ! やろうと思えばできるんだぞ。俺はヒーローだからね!」

「おまえは駄目過ぎて一個もやらせて貰えなかったでしょうが」

「余計なこと言わなくていいんだぞ!」

菊は笑って「ありがとうございます」と返した。

「わー、菊ちゃん可愛いなぁ……」

フランシスの言葉に、全員から冷たい視線が突き刺さる。

「お兄さんも眉毛に殺されたくないし……ねぇ、王耀。お兄さんと遊ばない?」

フランシスが一歩歩みを進めた瞬間に、菊の日本刀が喉元につきつけられ、湾は小刀を構え、香と勇洙の銃口が額に向けられた。

「冗談にした方がおまえの為あるよ」

当の王耀は、腕を組んだまま微動だにしない。

「我の一言で、こいつらは同時に動くある」

「すみません! 冗談! 冗談ですっ!」

フランシスが身動きも取れないままに喚いた。

思わず敬語になっている。

「おまえら、それを仕舞うある」

同時に刀が引かれ、銃口が逸れた。

「おまえらも、こんなもんで武器出すんじゃねぇある」

「なにを仰ってるんですか」

「こんなもん、じゃないんだぜ!」

「老師が、私たちの世界なんです」

「髭に取られるなんて我慢ならないっすよ」

「おまえら、本当に我好きあるなぁ……」

「しみじみ言わないでくださいよ……」

 

「菊……」

名前を呼ぶ声と一緒に降ってくる唇に、菊は嫌そうに身を捩った。

「昼間、したじゃないですか……」

「あんなのじゃ足りない」

「足りてください。私の体がもちません」

むー、と唸って、アーサーは菊を抱きしめ直した。

「じゃあ、キスだけ」

「それ以上しようとしたら、斬り殺しますからね」

「……約束はできないけど、頑張る」

菊は溜息を吐いて「約束してくださいよ……」と呟いた。

しかし、すぐに諦めたように目を閉じる。

「おかえり、菊……」

柔らかな声が心地よく、菊は大きな背中に腕を回した。

ナイチンゲールは歌う、歌う、歌う。

綺麗な綺麗な綺麗な声で。

灰色の体を震わせて、歌う、歌う、歌う。

金色の体を震わせて、歌う、歌う、歌う。

くるくる舞って、ふわふわ飛んで。

歌う、歌う、歌う。

一生を、歌い続ける。

まだ見ぬ誰かの為に。

傍で笑う誰かの為に。

最後の方、なんかおかしいのも仕様です(´・ω・`)

どうしてこうなったのかは、私自身わかってません。

いつか直そうと思って、そのまま……wwww


 
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