No.336980

徐晃伝

宇和さん

徐晃を恋姫風に・・ssです。

※しもねたの傾向があります。

2011-11-20 09:31:40 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:4959   閲覧ユーザー数:4333

「結局、君はどうするのかね」

「えっ……」

 

 彼女、徐晃の急な質問に、北郷は気の抜けた返事をする。

 

『徐晃』

 この世界(恋姫無双)を愛する、読者の皆さんなら、一度は耳にした事がある「名」であろう。

 なので、彼女の詳細は某ネット事典やら、なにやらで、勝手にしてもらいたいが。

 一言でいえば、『徐晃』という人物は、曹操の貴下で活躍した「将軍」の一人である。

 

 そして、この世界においては。

 曹操の夫であり、天の使いである、魏の重臣北郷一刀の、同僚を勤めている女性になる。

 

 

「ええとー。どうするってなにが?」

 

 

 そんな、同僚。

 つい数日前。共に、北郷を大将、徐晃が副将の形で、地方叛乱の討伐を成した「戦友」の。その脈絡の無い質問に対し、北郷は説明を求める。

 

 

「結局、私も、君の「雌奴隷」にされるのかね」

 

 

 まあ、返ってきた返事は。

 更なる、説明を求めらざる得ない内容であった。

 

 

 

「……、っ! な、なにを、いってるんだよ、徐晃! もしかして、頭をどこかにぶつけたのか?」

 

 

 徐晃の返事に、思考が一瞬止まった北郷であったが。

 すぐさま気を取り戻して、興奮した様で言葉を出すと共に、徐晃の頭の回路に「とんでもない」不具合が生じたのではないかと疑う。北郷の知る限り、徐晃という人物は、口数こそ少ないが、慎みやかで、冷静な質で。「雌奴隷」等という、「放漫」が過ぎる、言葉を口にするような人物ではない。

 

 

「頭などぶつけていない。なでてみろ、こぶ等無いぞ」

 

 

 だが、そんな興奮と、疑問に満ちた北郷に。

 徐晃は、何時も通りの冷静克つ淡々とした口調のまま。お辞儀の形をして、その頭部を北郷に向ける。

 

 

「えっ、いやっ……」

「どうした、早くなでてみろ。君が言ったんだぞ、頭に異常が無いかを」

「……」

 

 

 北郷は、心の中の躊躇を押し込め、徐晃の頭を撫でる。

 

 ちなみに、なぜ、北郷が躊躇をしたのかというと。

 そのままの意味で、「頭を触る」という行為だけなら、問題ははないのだが。ただ、頭を触る事に、必ず付属する「髪を触る」という行為に、躊躇を感じたからだ。

 人にも寄るであろうが。異性の、特に男が女性の、髪に触るというのは、特別な関係、という、イメージが付きまとう行為である。なので、当然、北郷も徐晃の髪を触るを躊躇したのであるが。

 

 とはいえ、当の徐晃が。

 「確認するまで、許さん」とばかりに、ズイズイと、北郷に頭を向けてくるので。

 北郷も、覚悟を決め。頭を手におき、動かし始める。

 

 

「(き、きれいな髪だな)」

 

 

 こぶの有無の、確認を大義名分に頭を触っているくせに。

 北郷は、そんな事を頭の中で思い浮かべていた。

 

 

「どうだね、こぶは有るかね」

「えっ、うん、確かに、こぶはないよ」

 

 

 だが、徐晃が、確認をしてきた為に。

 若干の動揺を含みながらも、我を戻す。

 

 

「そうだろ、そうだろ……。私の頭は、父上の拳骨を食らっても、逆に父上の拳の骨に罅を入れさせたほど、石頭なのだぞ。だから、頭を打ちつけようと、変にはならぬ」

「あ、ああ……、そ、そうなんだ」

 

 

 そう自慢げに言う。

 徐晃の姿(お辞儀状態で、目が「上目遣い」)に、北郷の動揺は更に増す。

 

 

「それにしても、君の手は柔らかいな。あと、暖かいのも良い……」

「そ、そうかな……」

 

 

 「柔らかい」と評され、男として喜んでイイのやら、悪いのやら、という複雑さもあるが。

 自分の手の「評」に添えられた、徐晃の笑みで。

 気恥ずかしさだけは、直球に北郷に向かい、その顔を赤らませさせた。

 

「あっ……」

「そ、それより、な、なんでいきなりあんな事を」

 

 「話を逸らす」。

 というより、自分の穏やかじゃない心内を、他のことで忘れてしまおうと。

 北郷は、頭から手を離し、話を振る。

 

 対して、突然、離れた手に、声を洩らし。

 若干、名残惜しそうな顔をしつつも、背筋を戻して、徐晃は北郷と真っ直ぐ向かい合う。

 

 

「あんな事?……、ああ、私が君の雌奴」

「あっ、まった、もうそれ以上言わなくていいから」

「我儘だな。君が、私に疑問を振ってきたのに、それに答える途中で止めるとは」

「ご、ごめん」

 

 

 女性であり、親友である。徐晃に。

 「雌奴隷」等という、卑猥な単語を、北郷は「良心」から、言わせたくなかっただけなのだが。

 逆に、北郷が、謝る嵌めとなった。

 

 

「と、とにかく、なんで、俺が、徐晃に、そんな破廉恥な事をすると……」

「破廉恥ではないぞ、男女のむつ見合いというのは、生物として純粋な行為であって」

「そんな原理主義はいいから。大体、徐晃の言う、えー、その、ふにゃふにゃ、奴隷ていうのは。「愛欲」とか「堕落」とかそういう意味合いの言葉でしょうが」

「男女のむつ見合いは、愛欲と堕落の果てに、境地があると聞くぞ。まあ、私は、男を知らぬので、あくまで、聞いた話だが」

 

 

 徐晃の話で、頭が痛くなってきたのか。

 北郷は、頭を押さえる。

 

 

「まあ、ともかくだ。君は、女と見れば見境の無く、無理矢理にでも「モノ」にする、「性豪悪辣」の徒と聞く。私にも、その欲望に満ちた牙を向けるのであろう?」

「……徐晃が、俺をどういう目でみているのか、今、ハッキリ分ったよ」

 

 

 同僚に、自分が「性豪悪辣」と、認識されている事によるショックで。

 溜息を混ぜながら、北郷は、そう答える。

 

 

「なんだ、違うのか? 溜息等吐いて」

「違うよ! 俺は、た、確かに、関係のある娘は多いけど、でも、皆とは合意の上で、そーいう事をしてます」

「だが、桂花殿は。お前の子を宿した時すら、「無理矢理に孕まされたと」、怒っていたぞ」

「あれも一応、合意の上です!!」

 

 

「布団の中では、逆に、俺が桂花に襲われるんだぞ!」

っと、北郷は、洩らしそうになったが。ぎりぎり常識が止めてくれた、

 

 

「なら、蜀の紫苑殿の娘はどうだ。あのような幼子に手をだすのは正直、鬼畜の所業、性欲の権化だと思うが」

「璃々とは、まだ、そういう関係ではありません!」

「そうなのか? 幼子にこそ、我が子を宿そうと、その欲情を湯水の如く注ぎ込んでると聞いたが」

「だから、ちがうって……」

 

 

 余にも酷い噂に。

 突っ込む、気力も無くなってきたようで。

 北郷は、力なさげに否定する。

 

 

「じゃあ、あの貂蝉とかはどうだ。あれは、見た目からしても犯罪というか、人道を外れた」

「ちょ、ちょとまって! なぜ、貂蝉の名がここに出てくるんだ」

 

 

 とはいえ、貂蝉の名前が出てくると話が違う。

 「すわっ!」と、言わんばかりね目を見開いて、北郷は大声を挙げる。

 

 

「うん? いやっ、あれもお前の手が付いてるとの噂が。まあ、正確にはお前が、あの筋肉に、注がれてるという・・」

「やめてくれ! なに、その話! 気色悪すぎるでしょ! 誰が、得するの、その話! しかも、注がれるって何を!」

「う、うむ。私にいわせるのかそれを。私もこれでも女なのでな、あまり具体的に言いたくないのだが。仕方ない、君の願いだ。これも俗に言う「言葉攻め」だと思って、口にしよう。……ごほん! あの筋肉から君に注がれるのは、せい」

「言わなくていいよ! 聞いた俺が悪かった!」

 

 

 聞いたら、破裂せんとばかりに、北郷がのけぞりのたうち廻る。

 噂とはいえ、周囲から、アレ(筋肉)と自分が、そういう認識を受けていることに、死にたくなる感情が、 溢れ出してくる。

 まあ、……読者と、作者の負担も考えて、筋肉ネタはそろそろ仕舞いにしておこう。

 

 

「と、とにかく、俺は、むやみやたらに女性に手を出すような破廉恥なヤツじゃありません」

「……そうなのか」

 

 

 徐晃は。

 「驚きだ」と、言わんばかり顔をする。

 

 

「残念だ……、私も、君の、止め処ない欲望の果てに、汚されるとばかり思っていた。この討伐中、君の傍に居る女は、私だけだからな」

「いやっ、残念って。そういうのは大切にしなよ。……こういう時代だからさ。性にも緩いかも知れけど。俺、みたいな、ただの同僚相手にする事じゃないよ。そういうのは好きな人としたらいいよ。なんなら、良い人を紹介し様か?」

 

 

 「純潔」等という、言葉がさほど重宝されない時代。

 そういう、時代であるが、ゆえに、徐晃の発言も、さしたる悪意も善意も無く、ただただ、流れに任せ(「噂の中の北郷」という「悪逆な痴漢男」の傍に長時間居る)ようとの思いの果てであろうが、数千年前に飛ばされ様が平和ボケの現代人(腐っても鯛的な)、北郷にとっては、もう少し、徐晃に、自分というものを大切にしてもらいたかった。

 

 だから、北郷は、徐晃に、他の男を紹介しようとも言い出したのだが。

 

 

「ただの同僚……。なんと驚愕の事実だ」

 

 

 徐晃が「同僚」との言葉に、「唖然」といった、感じになる。

 そして、次には。

 

 

「君が、そこまで愚鈍とは」

 

 

「呆れ」が、顔一杯に広がる。

 

 

「この叛乱討伐中、私が、君に仕掛けた『ウハウハ、胸とお尻の脂肪で、オオカミさん怖い怖い』誘惑作戦が、一切、効いていなかったというわけか」

「な、なに、その作戦」

 

 

 その頭が痛くなるタイトルで。

 北郷の中で辛うじて残っていた。『クールビューティ徐晃』のイメージが全面的に崩壊した。

 

 

「先ほども言ったとおり。私は男を知らぬし、知る必要もなかろうとう思っていた。私には、華琳様という、最高の主君が居られる。武人として、よき主君さえ得られれば、それ以上を望むのは業が深すぎる」

 

 

 史実において。

 徐晃という人は。徒党(=政治権力)を組まず。死ぬまで、一武将として過ごした。

 『愚かな自分が、曹操様という良き主君に仕えられただけで、満足である』

 そう、言葉にしながら。

 

 ……だが。

 

 

「とはいえ、人間等という物は、どこまでも浅ましいようで。実際、私にも新たな、欲が生まれた。だからこそ、『ウハウハ、胸とお尻の脂肪で、オオカミさん怖い怖い』、略して『北郷を獣に』作戦を実行に移したのだが、君の反応を見るに無駄だったようだ」

「い、いやっ、略してないから。てか、どういうわけで、そんな作戦を。そもそも、欲望ってなんの事?」

 

 

 徐晃は、ほんとに呆れた様に。

 「ここまで、女に言わせてまだ気付かぬか、この男は」と、言わんばかりに、北郷を見詰ながら、眉を顰める。

 

 

「ふむ、こうなれば、『北郷を獣に』作戦のような婉曲な手段(胸を押付けたり)では、どうにもならぬ。恥ずかしいものが、あるが、もっと直接的な手段を実行する。覚悟しろ、北郷!」

「覚悟しろって?……って!」

 

 

 北郷が、悲鳴を挙げる。

 徐晃が、急に抱きついてきたからだ。

 

「ちょ、ちょっと、徐晃! 変な冗談はやめてくれ」

「冗談? 君は、ほんとに酷いな。男も、恋も、なにもしらなかった、私に、こんな、恥かしい事をさせて置いて。自分だけ、知らぬ存ぜんとは」

 

「お、俺だけ、し、知らないって、な、なにを?」

「どこまで、愚鈍なのだ、君は。まあ、いい、なら、無理矢理にでも教えてやろう。……好きだ」

「へっ……?」

 

 

「いやっ、愛しているぞ・・一刀。私をお前の「モノ」にしてくれ」

 

あとがき

 

 本ssは、「需要」と「配給」をメインに据えて作っています。

 

 人気のあるキャラ(需要がある)設定(例 ツンデレ、ヤンデレ)に、三国武将を乗せてssを作る(配給)、という感じです。

 まあ、悪く言えば、有り触れたキャラに、名前だけ「武将」のを付けるという形です。

 

 ちなみに、今回のは、「素直クール」に『徐晃』を乗せてみました。

 ストーリも、稚拙な文章を除けば、有り触れた(分りやすい)内容となってます。

 


 
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