「…いつつ、ここはどこだ…」
気が付いたらそこは見渡す限り荒野だった。
「へへっ、よう兄ちゃん。いい格好してるじゃないか?」
黄色の布を頭に巻いた、盗賊三人組が現れた。
のっぽ、太っちょ、おちび。なぜかデジャブ。なんでだ。
「とりあえず、ここは日本じゃないのはハッキリした。俺、ベッドで寝てたはずなんだがなぁ。
おまけに制服姿に、宝石が埋め込まれた杖も持ってるし」
うん、俺の手には木製のしっかりした杖。先端のくぼみには、紫色の宝石。これはアメジストかな?
「おい、てめぇ。無視してんじゃねぇよ!!」
振り下ろされる剣は、空中でなにか壁にぶつかったように弾かれる。
あー。悪夢だと思いこみたかったが、あの暗闇の世界みたいな所で、筋肉達磨に出会ったことや、この杖が手にあるってことは現実だったのか。
『本来は30歳まで魔法使…妖術使いにはなれないんだけど、外史に降り立つ特例ってことよん♪』
それって、高齢童貞がなれるっていう都市伝説じゃ…。
ただ、明らかにあのおっさんの攻撃が、この杖が自動展開してる障壁のせいで弾かれてるし、
障壁が展開してるのが実際に見えるようになってるってことはそういうことなのか。
「ルーラ! リレミト! テレポ! デジョン!…あー、全部無効化されとる」
元の世界に戻るという意図で使う転移系とか脱出系の呪文は全部使えないようで。ま、駄目だって言われてたけど、一応ね。
「…てっ、てめぇ! 妖術使いなのかっ! 剣が空中で弾かれるなんて…」
「どうもそうみたい。…試してみるか。バインドっ!」
拘束の意志を込めて、杖を突き出すと…おお、三人組が金縛りみたいに全く動かなくなった。
唇がわなわなしてるから、あれか、顔から上だけ術を解けるんかな。
えいえい。杖を軽く振ってみる。
「ぶはっ! て、てめぇっ! 窒息するだろがっ! おまけに身体が動かねぇだろ! 離しやがれっ!」
「ごめんごめん、加減が効かないからさぁ?」
わざと怖がらせる意味で厭らしく笑うようにしてみる。あ、おっさん達の顔が引きつった。成功成功。
「お、大人しく降参した方が良さそうなんだな」
太っちょさんいいことを言う。
さて、どうしようかなと思ったところに、それは来た。
「その者達を離せーっ!」
叫び声と共に突き出された槍が障壁に当たり、ヒビが入ったように見えたものの、壊れはしなかったが…。
「…この世界の女性って化け物?」
障壁ごと俺は宙を飛んでいた。どんな怪力なんだよ! 障壁無かったら確実に死んでるぞおい!
「フライト」
とりあえず空中にそのまま浮きました。ちなみにフライといったけど、術の発動にはやりたい意志を込めて、言葉を発すればいいみたい。
だけど、さすがに空に浮くのに、クエイクとか言うつもりは無いけど…。
しかし、童貞魔法使いってすげー。というか、こんなチート能力無いと死んでる。
『その力を使って、大陸に平和をもたらして欲しいのよん♪』などとアイツは言ってたけど…。
むしろ、この力があっても無理ゲーなんじゃないかとすら思えるんだが。
あ、そうだ。相手の能力見れたりするんだろうか。情報は大事。
「アナライズ」
●探知結果
名前:趙雲(子龍)
真名:星
統率:88
武力:96
知力:78
政治:72(注:やる気を出せば)
得意:槍術、ちょっかい、悪だくみ
備考:メンマは至高
「・・・・・・」
おい。なんで、この女性があの一身全て胆の趙子龍なんだよ。それに真名ってなんだ。
あの木陰に隠れてる…上空からは丸見えなんだが、女性の二人組も探知してみればハッキリするか?
「アナライズ」
●眼鏡をかけた理知的な女性の探知結果
名前:郭嘉(奉孝)…今は戯子才と名乗っている
真名:稟
統率:58
武力:10
知力:98
政治:81
得意:妄想、鼻血、騎馬運用
備考:華琳さまは最高です!
…なん…だと…。
あの郭奉孝!?…ここって魏呉蜀の三国時代のパラレルみたいな世界なのか…。
それに、備考欄…おかしいだろ色々と! 華琳さまって誰だ!
…あれ? 早く思い出さないと、首ちょンぱになる悪寒しかしない…え、でも何も俺は忘れてないぞ!
あれ、アラートが鳴り響いてる!? 魔力による危険察知が最高潮!?
ドS、鎌、貧ny…頭に浮かぶキーワードが危険過ぎる。
ふぅ、落ち着け。まずは賢者モードになるんだ。
…よし、もう一人のお嬢さんの最終確認だ。
●鮮やかな栗色の髪の飴を持ったお嬢さん
名前:程昱(仲徳)
真名:風
統率:70+2/お兄さんの愛情次第
武力:8
知力:95+お兄さんの愛情次第
政治:95+お兄さんの愛情次第
得意:寝たふり、日向ぼっこ、腹話術。あ、交渉事は得意ですよ?
備考:さっさと思い出すがいいのですよお兄さん~? あ、でも思い出すのは風だけで十分なのですよ~。二回目ですから、知略や政治力は上昇補正がかかっているのですよ、ふふふ~。
備考が既に俺へのメッセージ化しとるぅうううう!!!!
…混乱した俺はひとまず、真名に風とあるお嬢さんの身体を掻っ攫って、再び宙に逃げるのだった。
魔力チート化したはずなのに無双出来ないイメージの一刀さん。
魏の嫁である華琳さまと風は贔屓せざるを得ない。
あ、続きませんよ? 所詮は思いつきだし。
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小説家になろう、で読んでいる転生物を読んでいて
触発されたので思わず書きました。
恋姫の世界だと妖術使いなんだろうね。