Scene6:榛奈駅前広場 PM00:20
「うひーっでやんす!」
飛んで来た戦闘員を受け止め、後じさるレミィ。
「だあっ、ちょこまかとっ!」
抱えた戦闘員を転がすように脇へ逃すと、後頭部を狙いすましたかのようなブルーの横殴りのパンチを上体をかがめてかわす。
その姿勢のまま横へ転がりレッドの下段蹴りを避けると、バネを活かしてダッシュ。
乱戦から距離を取り体勢を立て直すと、胸を張る。
「けーっけっけ、そう簡単にはやられないでやんすー!」
高笑いするレミィに、すすっと近寄ってきた戦闘員の一人が携帯電話を差し出す。
「ん?なんでやんすか?」
携帯の受信番号を見たレミィのテンションが、面白いくらいがっくーと下がる。
「はい、かわったでやんす……はい……わかってるでやんす……」
ぱたんと携帯を閉じて戦闘員に渡すと、はああああっと、深いため息を吐いてうずくまる。
「……」
そのあまりの落ち込みように、双方思わず手が止まる。
「……」
「……」
「……」
「……うんっ!」
数秒後、両手をぐっと握りしめ、思いっきり伸び上がって叫ぶレミィ。
ぐじじっと涙と鼻水を拳で拭い。
「ええいっ、こっちにだって奥の手の用意くらいあるんでやんすよっ!」
もうやけ以外の何者でもない虚勢を張る。
「いや、お前、それはちょっと……」
さすがになんだか不安になっておずおずと声をかけたブルーをきっと睨み付ける。
「奥の手ったら奥の手でやんす!」
腕を大きく振り上げ
「行け、怪人!」
絶叫と共に振り下ろす。
「……怪人?」
ハルナレンジャーと野次馬一同が首をかしげる。
確かに怪人は戦隊物のお約束と言えばお約束なのだが。
そんなもんがいるなら最初から出しておけ、と。
その場にいる誰もがそう思った。
「ギーッ!」
そんなどこか白けた空気の中、物陰から現れたのは。
鋭いハサミに小さなとげの浮いた甲羅。飛び出た単眼に泡を吹く口。
蟹を擬人化したような、大柄な鎧の怪人だった。
そのリアルな迫力に、野次馬がおおっと歓声を上げる。
「くそ、こんな隠し球がっ!」
慌てて構え直すハルナレンジャーの面々。
一方。
出てきた怪人を見て、再度ため息を吐いているレミィ。
「ギィ?」
首をかしげる怪人。
「いいでやんす。わかってるでやんすよ。お前が悪いわけじゃないんでやんす……」
ぽんぽんと怪人の肩を叩くレミィ。
再度うん、と気合いを入れ直し。
「さあ、行くでやんす、怪人カニバブラー!お前の力を見せてやれでやんす!」
びしいっとハルナレンジャーにタイして見得を切る。
「ギー!」
「イー!」
ハルナレンジャーに一斉に躍りかかる怪人と戦闘員達。
数分後。
「おーぼえーてろーでやんすー」
目を回しているらしい怪人に肩を貸しながら、ばたばたと逃げ去るレミィ。
戦闘員達もお互いに支え合いながら逃げていき。
気が付けば。
ハルナレンジャー達だけが取り残されていた。
「勝った……のか?」
呆然と呟くブルー。
そこへ、背後の巨大モニターから。
「あ、はいはい。これね。あー、コホン」
――見事ダルク=マグナの陰謀を阻止したハルナレンジャー!
だが、奴らはいつまた襲ってくるか分からない。
榛奈市に真の平和が訪れるまで!
頑張れハルナレンジャー!
戦えハルナレンジャー!
「この番組は『愛と力と知恵の』ヘルメス製薬の提供でお送り致しました」
滝本アナの気合いの入ったナレーションと、水谷さんの提供コールが割り込む。
「……ふっざけやがってえええええ!」
ブルーの絶叫が空しくこだました。
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
B-2続き