「お帰りなさいませお嬢様、一刀さん」
零陵の首都に入る手前で七乃が頭を下げ、言い放った
「うむ、ただいまなのじゃ」
美羽は七乃を見てすぐに笑顔になる
「ただいま、七乃さん・・・準備の方はどうかな?」
「はい、すべて滞りなく完了してます」
「そうか・・・なら、ここにいた賊たちはどうした?」
「モチロン殲滅しました」
笑顔で答える彼女の頬を力の限りはたく
『バチンッ!』
「なっななの!」
美羽が吹き飛ばされた七乃の元へ行こうとするが
「行くな!」
俺の言葉にビクッリして数歩離れた場所に立ち止まる
「なぜじゃ・・・なぜ七乃に酷いことをする!一刀!」
必死に睨みつけてくる美羽
「いたたた・・・うぅひどいですよ~」
瓦礫の中から七乃がよろよろと出てくるがなぜ殴られたかわかっていないようだ
「もう一度聞く・・・賊はどうしたんだ?」
「だから、さっきも言いましたように殲滅しま」
「お前も結局同じということなのか?んん?」
七乃の頭を持ち、ギリギリと力を込めていく
「いっいたいです・・・やめっ」
手足をばたつかせ抵抗する七乃を再度瓦礫の中へ投げ入れ
美羽を見すえる
「そんなに俺が憎いか?袁術」
「・・・」
答えはない、だがその瞳には憎しみが宿っているようだった
「なぜじゃ」
「何がだ」
「なぜ・・・なぜ七乃を労わぬ!?」
「・・・」
「答えぬか!一刀!!」
俺は答えぬまま、ずたぼろの七乃と睨む美羽をつれ入城する
「あ、おかえりなさい」
彩が俺たちに気が付き、声をかける
「ああ、ただいま・・・亜季はどうした?」
「亜季ちゃんならモウスグ戻ってきますよ・・・お嬢様?」
「・・・」
無言のまま俺を睨み続ける
「ちょっと・・・七乃。一体何があったの?」
「あはは、それが私にもわからないんですよ~」
軽く笑いながら答える七乃
「ただいま戻りました!」
元気よく亜季が扉を開け真っ先に美羽を見つけ挨拶をしている
「・・・・もういいだろう」
「何がいいのじゃ?一刀」
「七乃、ごめんな・・・痛かったろ」
「いえ・・すこし驚いただけで・・・すこし痛いですけど」
「そうか・・・すこし俺の話を聞いてくれないか?」
雰囲気は最悪の中、何を話すというのだ
4人がそんな顔をしていると
「始に言っておく・・・知らないことは大罪」
「意味がわからないのじゃ」
「あの・・・もう少しわかりやすく・・・」
美羽が声を上げ、七乃もわかりにくいと
彩と亜季の二人も同じ様だ
「噛み砕いて言っても同じことだ・・・・知らぬことは大罪」
「たとえ其れが賊だろうと賊だったものだろうと同じこと」
「賊でも賊だった者でも?」
「聞いたよな?ここにいた賊たちはどうしたかと」
「ですから殲滅「なぜだい?」へっ?」
「なぜ殺す必要があった?」
「なぜって・・・そりゃ賊ですから・・・「賊なら何をしてもいいのか?」言ってる意味がわかりません」
「賊だから・・・罪びとだから・・・何をしてもいいの?」
「そっそれは・・・」
「誰も望んで賊になるんじゃないんだよ?賊にならないと生きていけないからしかたがなく・・・自分に言い聞かせて」
「ですが!ならばなぜ賊などになるんですか!?」
「なら聞くが・・・・お前たちは一生懸命集めた金を奪われたらどう思う?」
「そりゃ・・・怒りますよ」
「其れが現実だ」
『はい?』
「国は街、街は村、村は人・・・結局人がいなければ何もできない」
「それはそうですけど・・・」
「人がまともに生きるためにはどうすればいい?」
「あの・・・話が変ですよ」
「衣食住じゃな」
「お嬢様!?」
「そうだ・・・衣類だけ合ってもダメ。食い物だけあってもダメ。住む場所だけあってもダメ。この三つがそろわなければ人は人らしく生きることができない」
「じゃが国が・・・王が・・・州牧がいくらやっても賊はでるのじゃぞ」
「何をしてもだめなのか?そうじゃないだろ」
「どうゆう意味じゃ?」
「与えるだけだと人は腐っていく、奪うだけでもだ」
「均衡が取れてないとダメってことですか?」
「そうだ・・・改めて聞く・・・なぜ賊だった者を受け入れなかった?」
『!!』
ここまで話てようやくわかったようだな
「俺の案でここに来たのはいい・・・だが、今までどおりの生活ができると思わないことだ・・・ここにはもう何もない・・・」
「まったく何もない状態から自分たちが生きるためにやらないといけないことが山ほどある・・・もう一度聞く」
「賊は完全にいなくなったのか?」
「・・・街に篭っていた賊・・・2千は殲滅しましたが・・・逃げた賊はまだ周辺にいると思います」
「よろしい、ならば美羽」
「なっなんじゃ・・・」
「頼みたいことがある」
「難しいことなのじゃ?」
「簡単だ・・・軍を解体するといえばいいんだからな」
「へ!?一刀さん。何をいって・・・」
「今まで美羽についてきた兵たちは皆、袁家という後ろ盾があるからついてきたんだろ?」
「それは・・・まぁそうですが」
「あの土地から離れた時点で袁家には見放されたも同然、さらに給金を与えられるはずもなく、暴動なんて起こされたらたまったものじゃない」
「ダカラその鎧武器を退職金として故郷に帰ってもらう」
「そんなことしたら私たち5人だけになってしまいますよ!」
「何も俺たち5人だけではないさ・・・そうだろ?」
彼女たちが俺の視線の先にいる人たちを見て仰天する
「へへへ・・・アニキ!あっしはどこまでも着いていきやすぜ!」とトウモが言えば
『これからもお慕い申します!北郷様』と侍女十数名
「ここが我らの新しい故郷となるんですね!」と代表して言う文官とその言葉に頷く仲間たち
「貴方たち一体・・・」
「俺が有能だと思いつれてきた・・・無給キンだが大丈夫か?」
『はい!』
その後は言わなくてもわかるよな?
優先して居住区の整理、畑の整備、人員の確保
整理、整備の約五割が完了したら次は人員の確保だ
人員と言っても賊を受け入れるだけ。始は罠じゃないかと疑っていた賊もちらほらと下ってくれる人が増えていく
その要因は・・・美羽の歌にあるかも知れないな
「ほら、お嬢様!皆さん集まってますよ~」と七乃が焚きつければ
「うむ!皆わらわの歌を聞くのじゃ~!」とご機嫌で謳う
そんなことを二日に一回行っている
なぜ二日に一回というと・・・
「うおおおおお!北郷様ぁぁぁぁぁぁ!」
「アニキぃぃぃぃ!」
なにやら野太い声で呼ばれている俺が居る・・・
「てめぇら!毎度よく集まるな!それほど暇なのか!?」
「そーでーす!」
「ならその根性俺がたたき直してやる!いくぜ!」
『うおぉぉぉぉぉ!』
とまぁ七乃が原因なんだがな・・・
[「いやぁ・・・一刀さんにそんな才能があったなんて・・・驚きです」]
[「そうか?美羽、その調子」]
[「うむ・・・しかし一刀?」]
[「なんだ?」]
[「なぜわらわと七乃だけが謳うのじゃ?」]
[「え?」]
[「そうですよ、こんなに歌がうまい人がいるのに」]
[「えっと・・・何を言ってるのかな?」]
[「それは・・・私たちの目の前にいるじゃないですか」]
[「いや・・・俺は教える専門で・・・」]
[「・・・(うるっ)」]
[「みっ美羽!?」]
[「あらら・・・お嬢様を泣かせちゃった(棒読み)」]
[「い・・いや・・・その・・・」]
[「一度でいいのじゃ・・・だめかの?」]
[「ここは素直に謳わないと・・・・ずっとお嬢様に泣かれますよ」]
[「うっ・・・・・わかった」]
[「では、明日謳ってもらいましょう」]
[「あっ明日!?」]
ってな具合で謳うハメに・・・はぁ・・・
なんか謳うたびに人が増えてるような気がするんだけど・・・
熱気があるのはいいけど・・・一部発狂してるし
「あっあにき?」
トウモが心配しているな・・・しかたがない
「大丈夫だ・・・いくぞ!」
「へい!」
一方裏では・・・
『北郷一刀様の歌、次回2日後です』と書かれた旗を大量に持った侍女たちが各地を回っていた
実はこの侍女たち皆、一刀の声を聞きたく仕えてるとの噂
その中に一人少年が混ざっていた話はまた後日
『蒼天已死 闇天當立』
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話はどんどんおかしなほうへ
孫呉に属するだけが道じゃない!