No.330116

【改訂版】真・恋姫無双 霞√ 俺の智=ウチの矛 二章:話の六

甘露さん

今北産業
・みじ
・かい
・よ!

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2011-11-05 21:57:33 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:5974   閲覧ユーザー数:5409

 

 /霞

 

 

 

 「ん……にゅぁ……かずとぉ……」

 

 優しい夢を見た。

 ウチと一刀が二人で、なんや台所に向かって一緒に作りよる夢。 

 一緒に馬乗って、遠く遠くへ遠乗りしに行く夢。

 んで、ウチが赤ちゃん抱いて、一刀が横で微笑んどる夢。

  

 どれもこれも、皆が幸せそうで、皆が笑顔やった。

 そんな未来がウチにも来るんかな?

 

 そうやったら、ソレは凄い嬉しいことなんやと思う。

 

 ──でも、それは……

 

 「また、“夢”かぁ……」

 

 一人で迎える朝が、こない寂しいもんやとは思わんかった。

 たった半年前までは、それが当たり前やったんに。

 

 

 

 一刀が居らんようなって、もう一月が経った。

 

 

 「……はよ、帰ってこいや……ばか一刀」

 

 

 ウチは、そのままウチのこっちの家にゃ戻らんと、一刀んちで暮らしとった。

 いつ帰ってきても、あのバカに最初にお帰り、っていってやりたかったから。

 

 ……まぁ、十中八九先に一発ブン殴ると思うけど。

 

 「はぁ」

 

 ……溜息増えたなぁ。

 そーいや一刀がいっとったっけ。

 溜息すると幸せが逃げるって。

 

 ウチ逃がしまくりやわぁ……はぁ。

 あ、また一つ逃げた。残量あるんかなぁ……?

 

 と、ウチが一人愚痴っとった時。

 がたっ、と引き戸が揺れた。

 

 「っ、一刀?」

 

 ウチ以外は出入りもせぇへんこの家。他に来るやつと言えば、一刀しか……。

 

 「失礼する」

 「……あんた誰や?」

 

 でも入って来たんは、ウチんとこの甲冑着けたおっさんやった。

 流石に顔見て溜息するんは失礼過ぎるで、なんとかこらえたけど。

 でも、顔にばっちり“期待はずれ”って書いてあるんやろうな。おっさんの口元が若干引きつっとる。

 

 「……おはようございます、文遠様。申し訳ありませんが、張越様から召喚令が下っております」 

 「オトンが? いまさらなんやっちゅうねん」

 

 半年以上もほっといた癖に、ホンマ今更や。

 

 「申し訳ありませんが、私には詳しい事が聞かされておりません故。城まで出頭願います」

 「ちょ、ちょい待ちぃな! 書き置きだけでも」

 

 一刀がどこに居るんか分からんけど、いきなり居らんようなるんは不味い。

 要らん心配なんぞかけたく無いし。

 

 「なりません。火急の用ということなので、その、その聊か汚れて居られる召物でも構いませんので」

 「なっ、離しや! 無礼や!」

 「申し訳ありませんが、お時間がありません」

 

 おっさんは筆を取ろうとしたウチの手を、無理やり引っ張って連れ出しおった。

 なんか、ものっそい鳥肌が立ってまった。

 男ってこないにイヤなモンやったっけ?

 

 「ちょ、離しや! 変態! 触んなバカ!!」

 「……ならば、黙ってさっさと付いてきて下さい」

 「っ、言われんでもわかっとるわ。さっさと案内しぃや」

 「……御意」

 

 外に出るとどこに控えとったんか、兵士が二人、ウチの後ろに付いて目ぇ光らせ始めた。

 ……逃げんっちゅうねん。

 

 「さあ。此方へ」

 「わかっとるわ、だから近づくなや」

 「……ッチ。……では此方へ」

 

 はぁ。帰りたないわ……。

 隙見てまた逃げだしたろっと。

 

 ……そんときには、一刀。

 帰って来とるとええなぁ……。 

 

 

 

 **

 

 /一刀

 

 

 「ヒぃギッ…!! い、言うことを聞く!! 茶、だから茶をっいギィっ!?」

 

 麻黄、もとい白胡の効果は、疲労状態から簡単に回復させ、眠気を覚ます上に、快感の増幅と激しい高揚感。

 しかし、それは初期依存状態までの効能。

 

 重度の中毒になると、その強さは倍々で増してゆく。

 理由は簡単、一度の使用量が多くなるから。

 

 そして、使用量が増えれば当然副作用も強烈になる。

 その中の一つ、快感の増幅の代償が、痛覚の過敏化。

 

 薬が体の中をどんな風にいじくりまわしているかなんて知らないし知りたくもないが。

 白胡の重度中毒者は、薬が切れることでさまざまな副作用の中でも最も辛いとされるこの副作用が起きる。

 

 どれくらい過敏になるか、と言えば。

 

 「ふぅっ」

 「ッ、ぃひぃいいいいい!? ッギ、グギぃ…、や、止めて……」

 

 そよ風程度の刺激が当るだけで、死んだ方がマシと思えるような激痛が走るのだ。

 だから立っていれば足の裏が、寝れば背中が、水中で浮いても冷たい水温が。

 指の関節一つさえ動かせない様な痛みに耐えず襲われ続けることになる。

 

 

 「……よろしい。では貴方は、これからさらに重病人になるのです。

  昨日よりも症状が悪化した、もうマトモに喋れない、筆も取れない、流行病にかかってしまった哀れな老人に」

 「な、なるっ! だから茶を……っ!!」

 

 そして、このザマだ。

 にわか誇りが高い所為で自害することさえできず、芋虫みたいにはいずり回って、

 糞尿をまき散らしながら呻く畜生に成り下がってしまった。  

 

 「良いでしょう。ほら、吸ってください」

 「すぅ……っ、ふぅ……」 

 

 もはやコイツは、薬の為に生きて、薬の為に死ぬだけだ。

 激痛に襲われることさえ忘れ、強烈な多幸感に身をゆだねる様は馬鹿そのもの。

 

 今のこいつなら、快楽欲しさに州牧すら命令されれば殺すだろう。

 

 「落ち着きましたか?」

 「……ああ、幸せだ」

 「では此処に居てくださいね。僕には貴方の代理という仕事があるので」

 「ああ……」

 

 たった一月前まで、えらそうにふんぞり返っていた爺は、今じゃ唯のけだものだ。

 ……そして、俺は、また犠牲者を増やしに行く。

 

 

 

 ** 

 

 

 「……はて、貴様は誰だ?」

 「はっ。私、丁苞様が義子、高順北郷と申します! 

  本日は、床に伏せておられます義父上の代理として参上した次第です」

 

 大広間に通された俺は、手筈通りに張越、霞の父親に接近する。

 あの爺は、かなり高位の人間だったんだと改めて実感した。

 訝しんでいた連中も、爺の名前と、義子である事、そして印を見せれば、ろくすっぽ調べもせず俺を通した。

 もしかして、霞が前言ってた実質支配者の相談役、ってのがあの爺だったのかもしれない。

 

 一応自分でも情報収集してはいたが、流石に女中さんに『実権を握ってるのはどいつですか?』なんて聞けない訳で。

 

 「ふむ、確か流行病だったな。……惜しい人から亡くなってゆくんじゃのう」

 「はい、義父には恩義が計り知れないほどある故、出来る限りの手を尽くしたのですが、病は既に相当進行して……。

  もはや誰かれ構わず怒鳴り散らし、気が狂ったかのような声を上げ出す始末で……」

 「そうか……。して、北郷と言ったか。何をしにきた?」

 「はい、義父がまだ言葉を理解していた頃に頂いた書状がございまして。

  “何かあれば、張越様にこれをお渡ししろ”と命を受けておりましたので」

 「なる程な」

 

 そう言って、俺が渡した書状を読む張越。

 まぁ、アレ本物だしな。書かせただけで全部本物、印まで本人が押してるから。

 

 「……分かった、高順よ、暫くの間頼むとしよう」

 「はっ、御意に」

 

 ……第一関門、突破だ。

 

 

 **

 

 /張越 

 

 

 丁苞が病に倒れた。

 前々から話は聞いていたが、今日、やっと正式な報告と共に儒子を寄越した。

 

 そして、儒子が来た次の日、この目で確認した。

 流行病、ということで直接その姿こそ見えなかったが、戸の外まで響く狂った声は、間違いなく奴のソレだ。

 

 表面上は沈んだ面持ちをしているが、正直喜びの方が大きい。

 なんだかんだと理由を付け、二言目には『お父上の意思』と言ってきたあの小うるさい爺。

 いつまでも、俺はとうの昔に40を過ぎていると言うのに、未だ子供扱いをし、

 其れにかこつけて政治までアイツの想いのままにされて来た。

 

 それももう終わりだ!!

 何を思ったか、こんな子供を後継者に指名して、アイツは引っ込んでしまった。

 いくら俺でも、こんな子供一人に意のままに操られたしはしないさ。

 

 やっと、やっと俺が実権を握れる。

 今まで散々コケにされお飾りだのなんだのと囃したてられてきたが……。

 それが、漸く終わる!!

 

 「張越様?」

 「……ん、いや、何でもないぞ」

 

 声の主を見る。

 

 まだ子供らしさが残る儒子だ。

 コレが、あの爺が後釜の後釜……儒子が爺に認められる程厄介な男なのか、それともあの爺の気が狂っていたのか。

 真実は俺には分からない。

 

 だが、昨日今日とコイツを見ていたところで判断するならば……。

 唯の頭の少し良いガキ、だろう。

 まだ駆け引きも、騙し合い誑かし合いも知らなそうな顔だ。

 言動や発言にも、所々幼さが見え隠れする。

 

 大方、あの爺が孫でも出来た気分にさせられて、つい……、と言ったところだろう。

 義子にした所を見ると、あながち間違ってるとも思えない。

 

 「そうですか。それで、あの……自分は何故呼ばれたのでしょうか?」

 「ん……ああ、そうだったな。高順、お前は私の補佐になった訳だが、まだ何も分からない。違うか?」

 「いいえ、まだ義父が正常だった頃には仕事を一通り補佐させて頂いていましたので、大体の感覚は掴めてますが……」

 

 ……さて困ったぞ。このまま適当に文官仕事を見せ、適当な人物の元へ左遷してしまおうと思っていたのだが……。

 呼び出した理由が無くなってしまった。

 実際のところは儒子が腹に一物抱えてないかを確かめたかっただけ、などと馬鹿正直に言うのも不味い。

 

 「そ、そうか。では早速仕事を任せても良いのだな?」

 「はい、何時でも申し付けください」

 

 うむむ……いっそ無理難題を押し付けてしまおうか。

 その罰という事なら、左遷もしやすいだろう。

 しかし、そこまで露骨にすると反発があるやもしれぬ……どうしたものか。

 

 「あ、あの……その、自分はお邪魔なのでしょうか?」

 「は? っい、いや、そんな事は無いぞ、うむ」

 「ほっ……なら良かったです。張越様の御気に障る様な事をしたのかと、少し心配でして……」

 

 しまった、言質をとられた。

 ……いや、待てよ。見たところ、この儒子は良くも悪くも純真な様だ。

 

 ならばいっそ、俺が手駒にしてしまえばよいのではないか?

 ……そうだ、俺が頂点で、俺が政治を行うんだ。ならばその手となり足となる者が要る。

 それを、コイツにしよう。

 

 「なに、気にすることは無い。して高順よ、明日、いや今日から丁苞の執務室から私の執務室へ仕事場を移せ」

 「御意……しかし、何故にでしょうか?」

 「なに、簡単なことよ。たんに政務を効率化したいだけだ」

 「畏まりました。では早作業をやらせましょう」

 「ああ、手早く頼む」

 「御意」

 

 俺が、政治を行うのだ。

 他のだれにも邪魔させない。

 

 

**

 

 

あとがき

 

こんばんわ。おっぱいおっぱいでもっふるな甘露です。

つまり真桜ちゃんは可愛くて思春さんは愛らしくて霞ちゃんがおっぱいなんです。

 

・・・多分僕疲れてるんです。気にしないで上げてください。

 

 

 

 

ソレはともかく。

 

今回はアンケがあります。

今後の展開についてです。

そして、このアンケで一票でも多かった方を、採用します。

 

Q.どっちが先に読みたいですか?

1、馬賊なり上がり編(メイン恋姫:霞、甘寧、顔良、文醜、恋?)

2、士官、そして反董卓編(メイン恋姫:霞、田豊(オリキャラ。くふくふの人です)、陳宮、甘寧)

 

オリキャラの詳細は

→http://www.tinami.com/view/215702

 

よろしくお願いしますです

 

 


 
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