『ゴキゲンヨう、ゴミレッドくん』
『とつゼンだがキミのイモウト、シラユキくんはアズカった。』
『ゴゴ11時をムカエタとき、カノジョのゲンキなすがたハみれなくナルダロう』
『たすけたケレば、ゼンブルーりょうのハイキョまでムカエにキタマエ』
『ワタシをたおすコトができタラ、かいほウしてアゲよう』
「脅迫状・・・かな?」
「・・・・・・」
「俺の妹、じゃないけど、俺が原因ってことなのかな」
「あるいは私と勘違いしているか・・・」
「えーと、ユキちゃんに電話繋がった?」
「いや・・・」
「てことは、マジで誘拐かもしれないってことかな」
「あぁ・・・」
突然イブキの部屋によくある切り抜き文字の脅迫状らしき謎の手紙が届いたのはつい先ほど、
クロアキの妹であるシラユキが誘拐されたと理解したイブキは、すぐにクロアキへ連絡した。
あっという間に駆けつけたクロアキは手紙を読むとシラユキに電話したりしていたが、
結果的に誘拐の可能性が高くなってしまった。
「それで、どう、しようか?」
「あぁ・・・」
クロアキは何かを考えているようで、先ほどから返事が上の空だった。
イブキはクロアキのそんな様子を見ながら、落ち着かない様子でデッキを弄りながら思う。
(・・・・・・誘拐、ね。・・・ふざけやがって)
ふと時計に目をやると、現在時刻は10時をすこし過ぎたばかり。
タイムリミットが11時だとするとあと1時間もない。
動くならばそろそろ動き出さないと間に合わなくなる、そう考えていたとき、
「よしっ!行くぞっ!イブキ!あいつらを倒して、シロを連れ帰る!」
クロアキは決意を固めたらしく、急に声をあげ立ち上がった。
イブキは突然立ち上がったクロアキに少し驚きつつも、内心ではホッとしていた。
「おぅ!行くか!クロアキ!」
指定された施設へ向かう途中の森で、十数人は居るであろう謎の覆面集団に襲われた。
こんな時間にこんな場所だ、無関係ではなくクロアキ達を妨害するのは明白だった。
(ちっ、あっさりとは誘拐場所へ行かせてくれないか。だが余り時間をかける訳にも――)
時間制限が無ければいくらでも相手にしてやってもいいが、
あの脅迫状の文面が事実ならあと一時間もしないうちに時間切れだ。
(仕方ない。うまくいくか分からないが、ここは一気に全員を――)
そんなことを考えていたクロアキにイブキが声をかける。
「あーいいよ。クロアキ。ココは俺が相手をするから」
「いや、こいつらは私の敵だ。私が――」
クロアキはイブキの言葉に驚きながらも、自分が闘おうとしたのだが、
「ちなみに俺も怒ってる」
「イブキ?」
クロアキが振り向いた先にいたイブキには、普段のちょっと間の抜けたような空気は全く無かった。
「そもそも今回の件は俺のせいかもしれないし、まず人質を取って云々ってのが気に入らない。」
「・・・・・・」
「だから、容赦しない。」
クロアキは何かを決意したイブキの顔を見た後、
「分かった、私は先に行く」
真っ直ぐ妹のところへ向かうことを決めた。時間制限がある以上分担するのは有効かもしれない。
クロアキが駆け抜けようとすると、男達が邪魔しようと囲もうと動いたが、
イブキはそんな男達とクロアキの間に割り込むようにして、デュエルディスクを構える。
「・・・お前らにクロアキの邪魔はさせない。纏めて相手をしてやる」
イブキが告げると周りの男達が一瞬警戒するような目を向けるが、
イブキの赤い制服を確認するととたんに舐めきった目に変わった。
「あ”あ”ん?纏めてだと?クズレッド程度で足止めしようってか?」
「自分の力量を弁えて喋ったほうがいいぜぇ?まぁクズには自分の力量も測れないだろうがなw」
「精々抵抗しな!カスみたいな抵抗ごと踏み潰してやるぜ!」
男達がイブキに向かって暴言を吐くが、イブキは気にせずにデュエルをすることにした。
「とりあえず、そこの三人。いくぞ」
『デュエル!』
~イブキLP4000 vs 敵ALP4000 敵BLP4000 敵CLP4000~
「・・・あー始める前に一つだけいいか?1対多数の変則デュエルは初めてなんだが、
例えば俺がエクゾディアを揃えた場合。俺の全勝でいいのか?」
「は?勝つ?」
「ま、今回は俺も怒ってるからな。今回は勝負するためじゃなく勝つためにきた。」
「勝負じゃなく勝つだと?笑わせてくれるぜ!クズレッドの癖に俺らに勝つつもりかよ?w」
「まぁ確かに勝負にはなんねぇだろうがな、てめぇはただやられるだけなんだからよぉ!」
「つーか、二度と生意気なことが言えないようにぶっ潰してやるぜ!」
「お前らがテンション上がってるのは分かったから、でどうなんだ?」
質問に対する回答が得られなかったため、もう一度確認しておく。
「あぁ良いぜ。揃ったらてめぇの勝ちで。揃えれるもんならな!オレのターン!ド――」
「・・・ちょっと待ってくれ」
「なんだ?ビビったか?だがいまさら謝ったところで――」
「――悪いな。既に揃ってる。」
手札を公開するイブキ。
「「「な”ッ!!!」」」
《封印されし者の右腕・左腕・右足・左足・封印されしエクゾディア》
手札には5枚のエクゾディアパーツ。つまりエクゾディアが完成していた。
「な”なん・・・だ・・・」
「イ、イカサマだ!てめぇイカサマしやがったな!」
「ハァ・・・お前達も知ってるとおりデュエルディスクはイカサマ出来ない。」
「リ、リストバンドにカードでも入れてたんじゃ?」
「カードをすり替えたんだ!そうに決まってる!」
「そのディスクが改造してあるんじゃないのか?」
「リストバントなんかしてないし、俺はドローしてから何処にも触れていない。まぁディスクは・・・確かめようがないが」
「やっぱりな!改造ディスクなんか使いやがって!そうでもしないと勝てないんだろ?」
「ハッそういうことかよ!クズはどこまでもクズだな!」
イカサマを見抜いたかのように騒ぎ立てる犯人達。
「・・・なら、お前ら誰でも良い。ディスクを取り替えよう。その上でもう一度やってやる。」
「「なっ!?」」
間抜けな顔で固まっていた男達の一人がデュエルディスクを投げてよこす。
受け取ったディスクを付け替えながら、念を押すように言った。
「ただし、先に言っておくが結果は・・・変わらない。」
『デュエル!』
~イブキLP4000 vs 敵ALP4000 敵BLP4000 敵CLP4000~
デュエルが宣言されると、まずディスクにより自動的にデッキはシャッフルされる。
そこからお互い手札を5枚ドローする。
その後先行のプレイヤーがカードをドローすることで本格的にデュエルが始まるのだが・・・、
今回イブキは5枚のカードをゆっくりと引きながら、喋り始めた。
「エクゾディアは――」
1枚目。
「5枚のパーツを全て揃えたとき勝利する――」
2枚目。
「最初に引くのは5枚――」
3枚目。
「さらに自分のターンに1枚ドローする――」
4枚目。
「6枚中5枚引けばいい――」
5枚目。
「揃わないハズがない。」
初期手札5枚引き終わったイブキは表情を変えないままに淡々と告げた。
「手札を公開する。」
イブキの手札は先ほどと全く同じ。エクゾディア一式。
「そ、んな!」
「う、うそだろ!」
「ありえない!」
「・・・事実だ。そして俺の勝ちだ。さて次の相手は誰だ?」
「そんな・・・ゴミレッド相手に何も出来なかっただと・・・っ!?」
愕然と理解できないといった犯人の一人に、イブキは告げた。
「言っただろ。勝負しに来たわけじゃない、ただ勝ちにきた。」
最初のデュエルの終了から数分後。十数人はいた誘拐犯の一味は、一人残らず敗北していた。
戦いの結果は全て同じ、イブキの勝ちだった。
敗北した犯人達は何処かへ逃げ帰ってしまったので、森の中にいるのはイブキだけだった。
「・・・正直、俺もこの理不尽な『ただ勝つ』ってのは好きになれないけどな。」
イブキはイカサマはしていない。ただカードを引いただけである。
彼は昔から自分のデッキに入っているカードであれば、引きたいカードを引くことが出来た。
つまり、彼にとっては5枚揃えれば勝つ『エクゾディア』は、デッキに入ってさえいれば、
毎日太陽が昇るのは当然なように、手札に揃うのは当然なことだった。
そしてそれは――――――。
過去の出来事を思い出しかけていたイブキはふぅ~~~と大きく息を吐き出し、気分を切り替える。
「さ~て、クロアキの方はどうなったかな~?アイツも結構怒ってたからなぁ~」
(クロアキの事だから相手をボコボコにしてそうだけど。まぁ自業自得かな。)
イブキはそんなことを思いながらクロアキの元へ急ぐことにした。
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どうも、海月です。
今回も遊戯王の小説です。
イブキさんの能力はチート級です。
デュエル脳の世界。デュエルの勝さが全ての世界。
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