真・恋姫†無双~赤龍伝~第90話「決断」
貂蝉が現れたその夜、赤斗は貂蝉に今まで気になっていた事を質問した。
赤斗「ところで貂蝉は、司馬懿の目的を知っているんじゃないのか?」
雪蓮「えっ? あいつの目的って、龍脈の掌握じゃなかったの?」
赤斗「僕には龍脈を掌握しようとしているのは、あいつの目的の為の手段なんじゃないかと思うんだ」
雪蓮「他に目的があるって事?」
赤斗「多分…ね」
冥琳「どうなのだ貂蝉?」
貂蝉「…………」
貂蝉は黙ったままで、答えようとする気配がなかった。
雪蓮「ちょっと何黙ってんのよ!」
イラつきを覚えた雪蓮が貂蝉に詰め寄ろうとした時、貂蝉の口がようやく開いた。
貂蝉「…そうね。あなたたちには教えておくべきかもね」
赤斗「やっぱり知っているんだ」
貂蝉「私も仲達ちゃんの本当の目的を知っているわけではないわ。ただ、このまま行けば確実に、あなたたちの居た世界は確実に滅びる事になるわね」
関羽「それは司馬懿に滅ばされるって事か!?」
貂蝉「そうよ。今まで仲達ちゃんは数多くの外史が滅ぼしてきたわ」
赤斗(外史?)
貂蝉「滅ぼされた外史に共通している事は、仲達ちゃんによって龍脈の力を全て奪われてしまった事。そして、龍脈の力を失った世界は次第に枯渇を始め、最後には滅びる事になるわ」
一同「!!」
貂蝉「どうかしら? 少しは分かって貰えたかしら?」
関羽「ふざけるなっ! 世界が滅ぶだと!? そんな事は絶対にさせんぞ!!」
雪蓮「そうね。これは絶対に元の世界に戻って、司馬懿の奴を倒さないとね♪」
冥琳「同感だな。その為にも次元の切れ目とやらを探さなくてはいけないわけだが…いったい何処を探せばよいのだ?」
赤斗「闇雲に探しても見つからないだろうし、それに次元の切れ目ってどういうのなんだ?」
貂蝉「次元の切れ目は普通見えないわ」
雪蓮「なら、どうするの?」
貂蝉「見えないものを見る眼があるじゃない♪」
貂蝉は赤斗の方に振り向く。
赤斗「……龍の眼!」
貂蝉「その龍脈の力が宿った眼なら、きっと切れ目を見つける事ができるはずよ」
赤斗「でも、何処を探すんだ? この眼を使える時間は限られているんだからな」
貂蝉「う~~ん。仲達ちゃんがこの世界からあなたたちが居た世界へ移動した場所が分かればいいのだけれど……」
赤斗「なっ! そんなの砂漠でコンタクトレンズを探すより難しいだろ!!」
冥琳「次元の切れ目とやらは、司馬懿が作ったものでなくてはいけないのか?」
赤斗「えっ?」
貂蝉「どういう意味かしら?」
冥琳「この世界から私たちの世界に来たのは司馬懿だけではないという事だ」
雪蓮「そうか! 赤斗と虎徹のおじさん!」
冥琳「そうだ。この二人が私たちの世界に飛ばされた時には次元の切れ目という物は出来なかったのか?」
貂蝉「確かに、赤斗ちゃんたちが飛ばされた時にも切れ目は出来ているはずだわ!」
赤斗「なら次元の切れ目があるのは……」
一同「道場っ!!」
赤斗たちは居間から道場へと走った。
そして、乱暴に道場の戸を開いて、道場の中へと駆け込んだ。
赤斗「ここに次元の切れ目が…」
道場内を見渡すが、一見そこはいつも通りの道場でしかなかった。
雪蓮「本当にここにあるんでしょうね」
貂蝉「きっとあるはずよ。赤斗ちゃん」
赤斗「分かっているよ」
そう言うと赤斗は右目の眼帯を外して、金色に輝く龍の眼で再び道場の中を見た。
赤斗「こ、これは!」
雪蓮「赤斗?」
冥琳「見つかったのか?」
赤斗「た、多分、これが次元の切れ目…だと思う」
赤斗は龍の眼で確かに見た。
道場の中央の空間が大きく裂けているのを。
まるで獣が大きく口を開けて獲物を待っているかのようで赤斗は恐怖すら覚えた。
関羽「まさか、こんな近くに戻る方法があったとは……だが、これでようやく帰れるな」
冥琳「それで貂蝉よ。次元の切れ目が見つかったのは良いが、これからどうするのだ? まさか見えない我らは帰れないという事はあるまいな?」
貂蝉「心配無用よ。切れ目さえ見つかれば、あとは私が赤斗ちゃんに移動する方法を教えるから任せてちょうだい♪」
関羽「なら早速戻ろうではないか!」
冥琳「待て関羽!」
関羽「周瑜殿? 何故止めるのだ!?」
冥琳「戻る前に色々と準備が必要だろう。どうやら決戦は近いようだからな。それに風見よ」
赤斗「なに?」
眼帯を付け直しながら赤斗は冥琳を見た。
冥琳「お前は色々と考えるのだな。もしかすると、もう二度とこの世界に帰れなくなるかもしれんのだからな」
赤斗「え?」
雪蓮「でもさ冥琳。この次元の切れ目さえあれば、行くのも帰るのも自由なんじゃないの?」
冥琳「そう都合の良いものとも思えんがな。実際にどうなのだ貂蝉。風見はまたこの世界に戻ってくる事ができるのか?」
貂蝉「……」
赤斗「貂蝉?」
貂蝉「……次元の切れ目が、いつまでもあるとは限らないわ。それに今回は私が補助するから大丈夫だけれど、もし一歩でも間違えれば全く違う外史に飛ばされる可能性だってあるわ」
雪蓮「違う外史?」
貂蝉「簡単に言ってしまうと赤斗ちゃんと孫策ちゃんたちが出会わなかった世界や、孫策ちゃんが許貢の残党によって暗殺された世界なんかの事よ」
冥琳「天界でいう所のパラレルワールドという奴か」
貂蝉「その通りよ。だから、赤斗ちゃんが再びこの世界に戻れる可能性は限りなく無い…と言って良いわね」
雪蓮・関羽「……」
冥琳「だから風見よ。今一度よく考えるのだな。それで良いな二人とも?」
雪蓮「私は大丈夫よ。赤斗の事だもん。しっかり考えないとね♪」
関羽「仕方あるまい……」
赤斗「…………一日だけ時間をくれ」
そう言って赤斗は道場をあとにした。
雪蓮「で、どうするの冥琳?」
冥琳「何がだ?」
道場に残った雪蓮が冥琳に話しかけた。
雪蓮「赤斗がこの世界に残るって決めた時の事よ。赤斗がいなきゃ帰れないんでしょ?」
冥琳「きっと大丈夫だろ」
雪蓮「どうして?」
冥琳「さあな。私の勘だ」
雪蓮「勘!?」
冥琳「そうだ。誰かさんが得意とする勘さ♪」
笑みを浮かべながら、自信満々に冥琳は答えるのであった。
翌朝。
朝日が昇り始めて間もなかったが、赤斗は外出準備を済ませ玄関で靴を履いていた。
恋「赤斗。どこか行くの?」
眠たそうな恋が玄関までやってきて赤斗に尋ねた。
赤斗「お寺だよ」
恋「お寺?」
赤斗「そう。墓参りに行くんだ。両親のね。まだ帰ってきてから行っていなかったからね」
恋「……恋も行く」
赤斗「でも、面白いところに行くわけじゃないよ」
恋「恋も行く。恋も連れて行って」
赤斗「……分かったよ。行こう恋」
恋「うん」
真剣な顔で頼む恋に負けて、赤斗は恋も連れて行く事にした。
目的地には歩いて30分ほどで到着した。
朝早い為か他に人は見当たらなかったが、お堂からは住職の念仏が聞こえてくる。
赤斗「何だか本当に久しぶりだね」
手を合わせながら、赤斗はお墓に向かって話しかけた。
赤斗「こっちじゃ、それほど時間は経っていないのにね」
それから暫くの間、眼を閉じて無言のまま赤斗は手を合わせ続けた。
赤斗「さてと…」
そう言って赤斗はようやく口を開いた。
恋「もう終わった?」
黙って赤斗の後ろにいた恋が赤斗に話しかける。
赤斗「うん。終わったよ。待たせたね」
恋に振り向いて赤斗は答えたが、すぐにまたお墓の方へと向き直した。
赤斗「じゃあね。これで、もうここに来る事はないから。何だか可笑しいけど、元気でね」
そう言うと赤斗はお墓に背中を向けて歩き出した。そして二度とお墓には振り向く事はなかった。
恋「赤斗?」
赤斗「最初から答えは決まっていたんだと思う。……迷う必要はなかったんだ」
自分に言い聞かせるように赤斗は言う。
赤斗「……だから帰ろう。みんなが居る世界に」
恋「……うん」
もう二度と戻れないかもしれない。
不安と恐怖で昨晩は殆ど眠れなかった。
だが、みんなが居る世界を見捨てるわけにはいかない。
そして、蓮華との約束を守る為、蓮華たちが居る世界に戻る事を決意したのだった。
赤斗たちがお堂の近くまで戻ると、お経を読み終えてお堂から出てきた住職とばったり会った。
住職「おや。おはようございます」
赤斗「おはようございます。住職様」
赤斗は笑顔で住職に挨拶を返した。
住職「朝早くから、親御さんのお墓参りですかな?」
赤斗「はい。暫く旅に出ようと思うので…その挨拶に…」
住職「旅ですか?」
赤斗「はい。ちょっと長い旅になるので」
住職「そうですか。……お二人がお亡くなりになって今年で何年でしたかな?」
赤斗「え? えっと、今年で八年になります」
住職「もうそんなになりますか。あの事故から」
赤斗「ええ」
赤斗は八年前に起きた事故を思い出した。
当時9歳だった赤斗が、両親を亡くした事故。水や船が苦手になった原因。
赤斗にとって思い出したくない記憶だった。
住職「あの小さかった子供が、よくこんなに立派になられた」
赤斗「住職様?」
住職「さぞかしお二人も喜んでいるでしょう。道中でのご無事をお祈りいたします。」
赤斗「住職様…ありがとうございます」
住職にお礼を言って、その場を立ち去ろうとした時、聞いた事のある声が聞こえてきた。
?「住職様ーー! 朝食の準備が出来ましたーー!」
姿を現したのは、緑色の髪に大きな青いリボンをつけた少女だった。
赤斗「る、流琉!?」
流琉「えっ? 赤斗さん!?」
つづく
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主人公も含めてオリジナルキャラクターが多数出てきます。
未熟なため文章や設定などにおかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。
現在は天界編です。