No.328623

真・小姫†無双 #10

一郎太さん

今日最後の投稿。
というわけで、ようこそ紳士の諸君。

2011-11-03 00:24:54 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:11134   閲覧ユーザー数:7433

 

 

【CAUTION!】

 

 

この作品を読むかどうかは自己責任です。

 

気分を害しようと、それは自己責任です。

 

お金がないのも自己責任です。

 

彼女がいないのも自己責任です。

 

それでもいいという方は、文頭に

 

『(´;ω;`)ブワッ』

 

と書き込んでからコメントしてください。

 

ではまた後書きにて。

 

 

 

 

 

 

 

#10

 

 

薄暗い部屋。堅い床に敷いた薄っぺらい布団に俺は横になっていた。隙間から吹き込む風が、否応でも布団から温もりを奪っていく。

 

「今年の冬は長いな」

 

誰にともなしの独白だが、それに応える声。

 

「―――そうだね、お兄ちゃん」

「朱里」

 

薄い金色の髪を携えた少女が、椀を持って膝をついていた。

 

「はい、今日のお薬だよ」

「いつも済まないな………ごほっ、ごほっ!」

「だ、大丈夫、お兄ちゃん!?ほら、背中さするね」

「ごほっ、ゴホッ!………あぁ、だいぶ楽になったよ。ありがとうな、朱里」

 

背中を撫でてくれていた妹を振り返り、その小さな頭を撫でる。

 

「うぅん、いいんだよ。私はお兄ちゃんと一緒にいられれば幸せなんだから………でも、やっぱり元気になって欲しいな」

 

俺の腕の中で、朱里が震える。この世でたった1人の肉親だ。彼女を置いて死ぬわけにはいかない。ただ、その意地だけが俺を生き永らえさせていた。

 

「お兄ちゃん、こんな噂知ってる?………遠い遠い関の向こうに、小さなお花が咲いてるんだって」

「花?」

「うん。なんでも、その花びらを乾燥させて煎じて飲めば、どんな病気でも治るっていう、噂………」

 

朱里が、そっと腕から逃れた。

 

「まさか…お前………」

 

そして顔を上げた妹は、力強い瞳で俺を見つめた。

 

「だから、私がその花を摘んでくる。だから……春には、きっとお花見に行こうね、お兄ちゃん――――――」

 

 

 

 

 

 

「――――――だから……春には、きっとお花見に行こうね、お兄ちゃん」

 

少女は歩みを進め、視線を上に向けて口を開いた。

 

「お兄ちゃんが病気なんです!この関を通してはくれませんか!」

 

城壁の上からその小芝居を眺めていた張遼は思わずズッコケる。立てた偃月刀になんとかしがみつきながら、隣の仲間に声をかけた。

 

「なんやねん、あのアホな芝居…ふざけとるにも程があるやろ………」

「………………」

 

だが、返事はない。訝しみながら隣を向けば。

 

「うぅ、うぐっ…可哀相な兄妹だ………張遼よ、関の扉を開こイダッ!?」

 

涙を流す将の頭に、拳骨が落とされた。

 

「なにアホな事抜かしとんねん!あんなんどう考えても嘘に決まっとるわ!………ってか、お前らもなに男泣きしとんのや!」

「で、ですが将軍…故郷の妹の事を思い出してしまい………うぅっ」

 

周囲を見れば、咽び泣く兵の姿。馬鹿ばっかりだ。

 

   *

 

「朱里ー!どうだー?」

 

地面に直に敷いた布団の中から、朱里の後ろ姿に声を掛けた。

 

「やっぱり開きませーーん!こんなバカな小芝居が通じるとは思いませーーーん!そのまま寝転がって、矢に射られるなり馬に踏まれるなり好きに死んでくださーーい!」

 

向こうからは朱里の毒が飛んでくる。だいぶ性格が捻じ曲がってしまったようだ。

 

「謝るから一度戻っておいでー!作戦を変えるぞー!」

「お前が来いですー!このロリコン男ーーー!!」

 

自棄になった少女は恐ろしい。教えてない言葉まで使い出す始末だ。仕方がないなと、俺は布団を畳み、少女の下へと向かった。

 

 

 

 

 

 

てくてくと朱里に近づいていくが、一向に矢が飛んでくる気配もない。

 

「何しにきやがったんですか、この変態ご主人様」

「そんなに言うなら、朱里の(えろ)本に描いてある事を今からこの場で実行するぞ、コラ」

「はわわっ!?………それも、ありかも」

「………………………」

 

予想外に食いつかれた。

 

「まぁいい。どちらにしろ、敵さんを引っ張り出さなければいけないな。ここは正攻法でいくか」

「正攻法ですか?」

「あぁ。開けてくれないなら、無理やり開けばいい」

 

俺と朱里はそのまま扉の傍までやってきた。

 

「どうせ向こう側で閂でも差してんだろ。だったらそれを壊せば済むまでだ」

「ご主人様……まさか………」

「まぁ、見ていろ」

 

俺は腰を落とし、左腰に挿した剣の柄に手を添える。ゴクリと唾を飲む音が背後から聞こえた。

 

「―――はっ!」

 

一閃。居合抜きで扉の隙間に剣を走らせる。手応えはあった。何かが真っ二つになる感触が。

 

「ご主人様…これ………」

「…………」

 

朱里が地面を指す。そこには、折れた刃が落ちていた。俺の手元には、半分ほど長さの縮んだ剣。

 

「ま、所詮は賊から奪った剣だしな。後で新しいのを調達しておこう」

 

何事もなかったかのように、折れた剣を放り投げる。

 

「そうですか……って事は、いまのご主人様は丸腰じゃないですか!敵が来たらどうするんですか!?」

「その時はほら、作戦成功って事で陣まで戻ろう。なに、朱里ひとり抱えたくらいで俺の脚が遅くなるわけでもない」

 

ギギギ………

 

「「え?」」

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、ご主人様!扉が開いてるじゃないですか!」

「いやぁ、まさか本当に開くとは思ってなかったからなぁ」

「そんな呑気な事を言ってる場合じゃないですよぉ」

 

朱里の襟首を掴んで走る。朱里は猫のように両手両脚をぷらぷらとさせていた。背後からは董卓軍が飛び出してきている。

 

「貴様ら、よくも騙してくれたなぁっ!!本当に病気と心配したではないか!」

「はわわっ、意外といい人です!」

「とりあえずこっちは丸腰だからな。あんな馬鹿でかい斧なんて相手に出来るか」

 

飛び出してきたのは、銀髪の、露出の多い女だった。

 

「待てぇ!私と勝負しろ!!」

「何か言ってますよ、ご主人様!?」

「無視だ、無視。AVの痴女ものは好きだが、リアルはぶっちゃけ怖い。あぁいった手合いは関わらないのが一番だ」

「ご主人様の言葉は難しいです……」

 

呑気に会話をするが、いくら朱里とはいえこっちは1人抱えて走っている。追いつかれるのも時間の問題かもしれない。仕方がないか。

 

「りんりーーーーん!!」

「応なのだ!」

 

いまだ遠くに見える自軍に声をかければ、元気のよい返事が届いた。

 

「受け取れぇええっ!!」

「へ?」

 

走る勢いもそのままに右足を踏み締め、朱里の襟を掴み直すと左足を前に出し、大きく振りかぶった。

 

「おらぁぁぁぁあああっ!!」

「はわわわわわわゎゎゎぁぁぁぁ………―――」

 

朱里の口癖が遠のいていく。

 

「おー、飛んでる飛んでる」

 

綺麗に放物線を描く少女を見送り、俺は振り返った。

 

 

 

 

 

 

「お待たせ」

「潔い男だな。仲間を後方へと送り、自分は丸腰で立ちはだかるとはな」

 

そこには巨大な斧を構えた露出狂。不敵な笑みを浮かべている。既に感じているのだろうか。

 

「貴様は袁術軍の将か」

「まぁね。皆の大好きなお兄さんだ」

「そうか………妹たちには悪いが、こちらもお前を逃がす訳にもいかんのでな。ここで首を落とさせてもらうぞ、萌っ!」

「………………は?」

 

何言ってんだ、コイツ。

 

「………え?あれ?旗もあるし、お前の名前は『萌』ではないのか?」

「ちげぇよ!」

 

誰だよ、萌ちゃん。

 

「………それは失礼な事をした。まぁ、ここで散りゆく命だ。名前など必要ない」

 

そう言って、女は突進してくる。その手に、巨大な斧を携えて。

 

「………………甘いな。俺には可愛い妹たちがいるんだ」

 

次の瞬間、背後からかかる声。

 

「お兄ちゃーーん!これを使うのだーーーっ!」

「兄ちゃーん!これを使ってーー!」

「兄様ぁあ!どうぞーーーーっ!」

 

風を切る音と共に何かが飛来する。俺はそれを受け取ろうと背後に腕を伸ばし――――――

 

「うぐっ!?ぶは!おごぉっ!!?」

 

――――――俺の手をすり抜け、女の爪先に鈴々の蛇矛の石突が、腹に季衣の鉄球が、頭に流琉のヨーヨーが激突した。

 

「………………あれ?」

 

ここはほら、アレじゃん。俺がカッコよく武器を受け取って、それでこの女の斧を防ぐアレじゃん。

 

「ま、いっか………敵将、討ち取ったりぃいぃぃいいっ!!」

 

俺は勝利の雄叫びを上げた。

 

 

 

 

 

 

「張遼将軍!華雄将軍が討ち取られました!」

「なんやとぉっ!?」

 

戦場の別の場所では、敵を斬りながら部下の報告を受けた張遼が汜水関の扉前を振り返った。

 

「あんのドアホっ!」

 

遠くに、見覚えのある女武将が倒れている。

 

「ちっ!ここは退くでぇっ!副隊長はそれぞれの隊を、隊長は華雄隊をまとめて汜水関に戻りぃっ!!」

 

部下に命令を飛ばし、自身も愛馬に乗る。まさかこんなに早く汜水関が落ちるとは――――――。張遼は歯噛みしながらも、愛馬を駆けさせるのだった。

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「ねぇ……」

「なんでしょう、桃香様?」

 

ここは連合軍後方。

 

「………暇だね」

「輜重隊も立派な仕事です。我らは少勢なのですから、仕方のない事です」

「なにか遊戯(げぇむ)でもしよっか」

「おぉ、それは面白そうですな」

「なんでそうなるのですかっ!?」

 

1500と連合軍最少勢力の劉備率いる義勇軍は、関羽と趙雲を将に、輜重の見張りをしていた。

 

「じゃぁ、モノマネ大会ね」

「桃香様!人の話を――――――」

「では某から」

 

趙雲はおもむろに両腕で自分の胸を下から支え、瞳を伏せ、そして低い声で呟いた。

 

「ふぅ…また大きくなってしまったか………武人にはこのようなものは必要ないというのに………」

「 そ れ は 誰 の 真 似 だ ? 」

「天幕でひとり、大きい胸を疎んじる愛紗」

「似てるよ、星ちゃん!」

「………………#」

 

後方は平和だった。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

はわわとあわわがいなければ、劉備軍はこんな感じになると思う。

 

恋共はもう少し待ってくださいorz

 

追伸

いずれかのキャラを否定するような※禁止。

作者の心が痛むから。

 

バイバイ。

 

 

 


 
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