No.328489 【まどか☆マギカ】贋作・罪と罰【ほむあん】2011-11-02 20:33:04 投稿 / 全6ページ 総閲覧数:829 閲覧ユーザー数:825 |
「なあ、ほむら」
「……何?」
「暇なんだけど」
「ふうん」
「友達がいのないヤツ」
「散歩でもしてきたら?」
「寒い」
「そう」
「金もない」
「そう」
「夢も希望もない」
「そう」
「……聞いてねえだろ」
「聞いてる」
「じゃああたしに何がないか言ってみろよ」
「あなたの故郷には電車もテレビもカラオケもなくてバスが一日一本来るところまで聞いたわ。ついでに胸もない」
「んなこと言ってねーっての。ついでに同類相憐れむなっつーの」
「なあ」
「……何?」
「お前、本読むときはメガネなのな」
「癖みたいなものよ。そんなに度は入ってない」
「ふーん」
「それで、何の用?」
「暇」
「さっき聞いた」
「暇」
「大事じゃないことを何度も言わないで」
「暇なんだから仕方ないじゃん」
「トレーニングでもしたら?」
「めんどくさい」
「でもあなた、最近少し動きにキレがないわよ。食べすぎなんじゃない?」
「そ、そんなことは」
「思いあたってるじゃない」
「ぐぬぬ……分かったよ。明日からダイエットする。トレーニングもする」
「ええ、明日からね」
「なあ」
「……」
「何読んでるんだよ」
「ドストエフスキー」
「なにそれ。新しいポケモン?」
「そうよ。ロシアが原産」
「……冗談だって。ドストエフスキーくらい知ってる」
「あら」
「昔はいろいろ頑張って読んでたからな。ドストエフスキーなら、戦争のために鐘が鳴るとか読んだぜ」
「いろいろ違うけど、意外ね」
「正直わけわからんかった。最後のページまで行ったってだけ」
「私も小さい頃、源氏物語で同じことをやったわ」
「祇園精舎の鐘の音ってやつ?」
「……あなた、わざとやってない?」
「ばれたか」
「わかるわよ。でも本当に意外だわ」
「まあな。源氏物語も一応最後まで辿り着いたぜ」
「私は『あさきゆめみし』に助けてもらってなんとかだったわね」
「あー、あれなあ。あたしはあれ読んでたら親父に怒られてさ」
「どんなに言い訳してもエロ漫画よね。しかもハーレムでロリで近親で処女厨」
「……ちょっとなに言ってるのかわかんねーぞ、ほむら」
「……ごめんなさい、忘れて」
「でもなんで今更、罪と罰なんだよ」
「……ちょっとね」
「別にあんたは斧で質屋のばーさんをぶっ殺してないじゃん。選ばれてる、ってのは事実だし」
「選ばれてるのかしら」
「おうよ」
「私は……そんな自信はない」
「あたしの親父が言ったんだけど、『神様は、その人が耐えられる重荷しかお与えにならない』ってな」
「ロシア聖教ね」
「らしいな。親父はそのあたり、無節操だったから。でもさ、そう思わなきゃ、やってられっかこんなこと」
「かもしれない」
「ドストエフスキーもいいけど、聖書読め聖書。トルストイは聖書一冊あればいいっていったろ?」
「あなたは読んだのよね?」
「まあね。今でも結構覚えてる」
「……そう」
「神様のせいで酷い思いもしたけど、いい気分にもさせてもらった。イーブンだよ、イーブン。おいしいところだけ、なんて話があるもんか。だろ?」
「……そうね」
「だからさ」
「だから?」
「暇なんだけど」
「祈ってればいいんじゃないかしら」
「……ねえ、杏子」
「なんだ、急に」
「神様は、いるのかしら」
「わかんね」
「真面目に聞いた私が馬鹿だったわ」
「真面目に答えてる」
「わからない?」
「ああ。いたっていい。いなくたっていい。どっちでもいい」
「曖昧ね」
「神様がいようがいまいが、あたしらの価値が変わるわけじゃねーだろ」
「それは……そうかもしれないけど」
「なら、どっちでもいいじゃん」
「……そうかもね」
「なあ、暁美ほむら」
「何?」
「お前は怒るだろうが、あたしは神様になんか価値を認めない」
「怒らないわよ。他人に分かってもらえるとは思ってないもの」
「でも、神様を信じるお前のことは信じる。それを馬鹿にする奴がいたら、あたしが許さない。絶対に」
「……そうだったわね」
「だからさ」
「……分かった。
コンビニでも買い出しに行きましょう」
「さすが、ほむら様」
「おだてても何も出ないわよ」
「知ってる」
「……佐倉杏子」
「ん?」
「ありがとう」
「どういたしまして」
(完)
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ひさびさに書いてみました。リハビリ的な短編です。魔獣出現後のほむあんがだらだら本を読むだけのお話。