No.328371

化物語~日々物語~

月千一夜さん

ちょっとした宣伝です
【小説家になろう】にて、今後不定期連載予定

化物語
偽物語

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2011-11-02 15:55:30 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6176   閲覧ユーザー数:5187

ーーー春休み

僕は・・・“阿良々木暦(アララギコヨミ)”は、吸血鬼に襲われた

美しい鬼だった

とても・・・美しい、鬼だった

それから色々とあったが、今では元通り・・・“ではなく”

僕は・・・“人間には戻れたが、ある種の後遺症を負ってしまった”

日光や忍辱、十字架は平気なのだが

身体能力は、著しく上昇したままなのだ

といってもそれは運動能力ではなく、新陳代謝など所謂“回復力”の方なのだが

しかし、それだけをとっても、僕はもう唯の“一般人”とは呼び難い存在なのだろう

 

これが・・・僕が、一番最初に出会ったーーー“怪異”

 

それからは、めくるめく“非日常の連続”

 

“猫”

“蟹”

“蝸牛”

“猿”

“蛇”

“蜂”

“不死鳥”

 

“怪異は、怪異を呼ぶ”などと、言っていたが

それにしたって、これは流石に多すぎやしないか?

ーーー等と思いもしたが、僕から関わっていった怪異も多く

やはり、自業自得でもあるのだろう

 

それよりも、だ

それほどの凄まじい体験をしておきながら、それらを全て“懐かしく”

しかも“思い出”として語れるようになったことを

素直に、喜ぶべきなのだろうか?

 

まぁ、いい

それはもう、いいさ

それらはもう、全て過ぎ去った日々のこと

過去のお話

今よりも少し前・・・終わってしまった、“物語”

ならば、今さら一々語らうのも無粋というものだ

 

それよりも、僕が語るべきは他にあるのだろう

例えば、“今”のこと

あの非日常が過ぎ去った後の、今の“僕たち”のこと

 

“相変わらず騒がしく、姦しい・・・僕らの、物語を”

 

 

 

 

≪化物語~日々物語~≫

 

 

 

 

ーーー†ーーー

 

「はぁ・・・」

 

と、溜め息を一つ

それから見つめた窓の向こう

太陽は、もうとっくに“お休みなさい”と地平線という名のベッドに沈んでいた

そんな太陽を少し恨めしく思いつつ、そんな太陽と入れ替わり仕事中な月に少しだけ心癒された

ーーーいや、“嘘”だ

癒されてなんかいない、これっぽっちも

 

「そもそも、勉強の疲れがそう簡単に癒されるかって話だよ」

 

等と、言ってみる

たかが勉強

“されど”勉強

元々集中力のない僕からしたら、こんな時間まで頑張れたのが奇跡みたいなものなのだ

 

「あら、阿良々木君・・・もう、くたびれたのかしら?

相変わらずだらしないわね

ゴキブリの方が、まだ頑張り屋さんよ」

 

ふと、そんな僕に、容赦のない声が聞こえてくる

其の声の主は、僕の向いに座り

そこで、僕を見ることなく

淡々と、文字を書きつづけながら言ったのだ

 

“戦場ヶ原ひたぎ”

 

僕のクラスメイトにして、僕のーーー彼女

以前に“蟹”に憑りつかれ、“重さ”を失くした経験を持つ少女

“怪異に出会ったことのある少女”

そんな彼女なのだが、今ではもう普通の少女だ

いや・・・普通とは、少し言い難いかもしれないが

そもそも、だ

 

 

「ねぇ、ガハラさん?

貴女・・・“あの一件以来”、“ツンデレ”を卒業したんじゃなかったんですか?」

 

“あの一件”、というのはまぁ

彼女の過去に深く関係し、彼女の“未来”に関係していた

色々とあった、過去の物語

先ほども言ったが、過去の物語を今さら語るのも、無粋というものだ

メタなこと言えば、詳しくは“偽物語”という

やはり、過去の物語を読んでもらうほかはないだろう

 

ーーーと、話題は戻るが

その一件以前の戦場ヶ原は、それはもう凄まじい“ツンデレ”だった

ある時は、ゴミ呼ばわり

ある時は、シャーペンを目に刺されそうになり

ある時は・・・と、あげればキリがないだろうことを、それはもう良い笑顔でやってのけたものだ

しかし、そんな彼女だったのだが

その一件以来、すっかりと丸くなったというか

いや・・・“元に戻った”というほうが、正確なのかもしれない

“蟹”に憑りつかれ、彼女は周りを突き放した

それが解決し、少し笑顔が見れるようになった

そして・・・その一件を終え、彼女はようやく“戦場ヶ原ひたぎ”という

一人の少女に、戻れたのだ

 

その、はずなのだが・・・

 

 

「あら、心外ね

これは、阿良々木くんの為なのよ?」

 

「そう、なのか?」

 

“ええ”と、彼女は手を止める

そのまま、見つめるのは・・・僕

 

「私は、大好きな貴方と、同じ大学に行きたい

貴方も、大好きな私と、同じ大学に行きたい

そうでしょう?」

 

「お、おう・・・それは、まぁ」

 

「なら、今は少し無理をしてでも勉強しないと。阿良々木くん、本当にギリギリなんだから

だから、頑張りなさい」

 

 

そう言って、彼女は笑った

ああ、前言撤回だ

彼女はやっぱり、可愛い僕の彼女だ

そんな、可愛い彼女にそんなふうに言われて

奮い立たない男がいるだろうか?

いや、“否”である

なら、僕のやるべきことは、結局変わらないのだろう

 

「もう少しだけ、頑張るか」

 

「ふふ・・・その意気よ、阿良々木くん」

 

シャーペンを装備

僕は再び、目の前の参考書と向かい合う

ふふ・・・残念だったな、参考書

ついさっきまでの僕だったら、お前を前にし猛烈な眠気に倒れそうになっただろう

しかし、しかしだ

今の僕は、一味違うぞ?

今の僕は可愛い彼女の応援を受けて、勇気百倍・元気百倍だ

ドラクエ9のテンションMaxも、今の僕には勝てないだろう

 

「いざぁ・・・!」

 

かくして、僕と参考書の熱い戦いは

ここに・・・火蓋を、切ったのである

 

 

 

 

 

ーーー†ーーーー

 

色々と、あった

語るとなると、それはもう上下巻にわかれてしまうくらいに

その続編もまた、上下巻にわかれてしまうくらいに

本当に、色々とあった

そんな日々が過ぎ去った後、待っていたのは高校三年生にしたら、まぁ当然のイベント

“受験勉強”という、過酷な毎日だった

ある意味、怪異と同じくらい(大袈裟な話じゃなくて、僕からしたら本気でそうだと思っている)に大変な日々

そんな毎日が、僕を待っていたのだ

 

「戦場ヶ原と、同じ大学に行きたい」

 

と、これが僕の目標

 

「大丈夫よ、阿良々木くん・・・何年だって、貴方を待ってるから」

 

と、これがその発言の後の戦場ヶ原の言葉

 

彼女は、疑うことなく僕の“浪人”を見こして発言していた

信用ないな、僕

まぁ実際問題、今のままの学力じゃキツイのは当然のことながら

僕は、数学以外の教科は全て苦手というダメっぷり

そんな僕を、何とかしようと勉強を教えてくれているのが戦場ヶ原と、もう一人

 

“羽川翼”である

 

「何でもは知らないよ。知ってることだけ」

 

なんて、口癖を持つ彼女は

優秀にして、完璧

完全にして、最優

そして・・・以前、“猫”に魅入られた過去を持ち

そんでもって、僕の恩人でもある

 

その2人が、交互に僕に勉強を教えてくれていた

その甲斐あってか、僕の成績は以前とは比べ物にならないほどになっていた

だが、まだまだ油断はできない

相変わらず、大学はギリギリなのだから

むしろ、僅かに足りていないだろう

そんな僕に、彼女は・・・戦場ヶ原は、志望大学を僕のレベルに合わせようと考えていたこともあったようだが

それは、僕が断った

彼女には、彼女の行きたい所に行ってほしかったし

何より、好きな人の前では格好つけたくなるものだろう?

 

そんなわけで僕は、過ぎ去った非日常が懐かしい思い出となってしまうほどに

死にそうになりながら、毎日参考書と激闘を繰り広げていたのだった

今日も、そんな激動の日々の内の一日

今日の“家庭教師”である戦場ヶ原の家で、2人で黙々と勉学に励んでいたわけです

 

 

「そろそろ、終わりにしましょうか。」

 

「そう、だな・・・」

 

そんな時間も、もう終わりを告げるようだ

二人して、同時にシャーペンを置き

そして、“ふぅ”と息を吐き出す

長時間の勉強は、流石の戦場ヶ原さんにも堪えたようだ

 

「ふぅ・・・阿良々木くんの足りてない脳みそに勉強を教え込むのが、こんなに大変なんて」

 

ーーー僕のせいだった

ていうか、コラ

 

「ガハラさん、やっぱり戻ってない?ねぇ?」

 

「冗談よ。“馬鹿々木くん”」

 

「だったら、その悪意のある間違い方を止めてくれ。

僕の名前は、阿良々木だ」

 

「あら、ごめんなさい。噛んじゃったみたいね」

 

「違う、わざとだ・・・」

 

「“言い切った”」

 

「ほら見ろ、ワザとだっ!」

 

しかもそれ、僕の知り合いの“キャラ”をもろにパくってるからな。

いや、戦場ヶ原はあんま知らないのかもしれないけどさ

 

「そもそも、私が貴方を何て言おうと関係ないわ。

私が貴方を好きだという気持ちに、揺らぎはないのだから」

 

「うっ・・・」

 

そう言われると、弱いものがある

というか、相変わらず直球

直球も直球、ど真ん中ストライクだ

よくもまぁ、ここまでハッキリとそのような言葉が言えるのかというくらいに

まぁ、悪い気はしないのだが

それにしたって、未だにテレはするさ

元々、こういうのに慣れてないってのもあるけど

ーーー僕は、戦場ヶ原のことが好きなのだから

 

 

「戦場ヶ原、好きだ」

 

「あら、そう。でも、私の方が好きよ」

 

言って、彼女は微笑む

とても、年相応に

それでいて、相変わらず可愛く

彼女は、微笑んだのだ

 

「好きだよ・・・“ひたぎ”」

 

「だから、私の方が好きよ・・・“暦くん”」

 

ああ、本当に

負けず嫌いなところは、相変わらずだけど

けど、まぁいいかな

結局のところ

僕があの“非日常”の出来事を、全部懐かしく思えるのは

彼女が、いたからなのだろう

 

“戦場ヶ原ひたぎ”

 

僕の、彼女

大好きな女の子

そんな彼女の為に、頑張ろうと思うのは

決して、間違いなんかじゃないのだろう

 

だから・・・うん、頑張ろう

 

 

 

ーーー†ーーー

 

最終的に、何が言いたいのかというと

僕が語るのは、そんな“毎日”について

他愛ない、僕らの日々の物語

“日常”の物語だったり

相変わらず、“非日常”なことに巻き込まれたり

変わったり、変わらなかったり

 

そんな・・・“今の僕らの物語”

 

ハッキリ言って、今までの物語からしたら

物足りなく感じるかもしれないけれど

そこは、まぁーーー“ご愛嬌”

当たり前な話だが、やはり毎日が毎日

あんなエキサイティングなはずがなく、静かな日々だってあるわけで

それでも、僕の話に興味があるというのなら

こうして語るのも、吝かではないということだ

 

話が、長くなってしまったが

それじゃあ、語るとしよう

僕こと、“阿良々木暦”が過ごす、この日々の中

紡がれていった、物語を

題名をつけるなら、やはりコレ

 

 

“日々物語”

 

 

さぁ・・・新しい物語の、始まり始まり


 
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