「パンプ様、パンプ様起きてください!」
年に一度パンプが外界へと赴ける日。
パンプはそれはもうぐっすり眠っていた。
「ムリですよバット執事長。坊ちゃま昨日興奮して結局寝たの2時頃ですから。」
そう話すはこの屋敷でパンプに使えるメイドたち。
彼女らは主にパンプの身の回りの世話をしている。
ここは人間界から364歩外れた世界。
ここにいるのはパンプとパンプに仕えるもの達だけだ。
とはってもこの世界はパンプの屋敷しかないのだから他のものが入ってくる事は出来ない。
そして今日10月31日は外界でハロウィンで盛り上がる日。
そう、それは1年で一回唯一この世界が外界である人の世界と同じ場所にありそこを行き来できる日なのである。
「パンプ様!今日起きないと1年間お菓子食べれなくなりますよ!」
そのセリフにパンプの体がビクッとする。
「お菓・・子?」
「そうですお忘れですか?今日は365日外界に行ける日ですよ。」
「お菓子!!」
パンプはそういってベットから飛び降りる。
そして仕度を始めるが。
「あぁ坊ちゃま私どもにお任せください。」
「坊ちゃまそこのボタンはもう一つ下にございます。」
パンプはまだ人間年齢にして1歳半。
とてもではないが自分でしたくは出来ない。
メイドたちが手を貸し仕度を終えたパンプは執事長に令を下す。
「バッドげかいにまいる!」
「かしこまりました。」
そう言うとバットはメイドたちを集め呪文のようなものを唱える。
するとバットをはじめとする使用人の姿は消え黒色の布がふわりとパンプの片にかかり首元で紐が縛られる。
「では行きましょうか。」
マントから聞こえる声にパンプはうなずき彼らは人の世界へと降り立った。
「とりっくおあとり~と、とりっくおあとりぃとー。」
パンプはそういいながら町を歩いている。
たまにいるお化けの仮装をした子供達と歩いたり、道行く心優しいおばぁさんにお菓子を貰いながら楽しそうにパンプは笑っていた。
「この瞬間があるからうれしいですよね。」
そういったのはメイドの一人。
パンプの笑顔は皆を幸せにする。
「そうですね。さて、パンプ様別の場所に向かいましょうか。」
「うん!」
お菓子を両手いっぱいに持ったパンプは満足げに頷き一旦屋敷へと戻る。
「次はどこに向かいます?坊ちゃま希望とかありますか?」
「ジャパン!にほんにいってみたい!!」
「・・・え?」とバット執事長を始め使用人たちの顔が全員凍りついた。
「坊ちゃま、まだ北のほうとか行ってませんし日本は遠いですよ?」
「にほんのお菓子食べたい!」
「ですが・・・」
パンプは一瞬起こったような顔をした後に悲しそうな顔になり泣き出しそうになる。
使用人たちは慌ててなぐさめ機嫌を取る。
「行きたいのはわかりましたが、どうして急に?」
「さっき一緒に回った黒髪の子が日本のお菓子もおいしいって教えてくれた!」
思いつきか・・・と一同が思いどうしたものかと考える。
するとバット執事長が一歩前に出てパンプに話しかけた。
「にほんはヨーロッパ付近の国にではないためハロウィンは浸透していませんからお菓子はもらえないかと・・・」
「大丈夫!その子日本人でさいきんこっちきたって言ってたけど日本でもハロウィンあるっていってた!」
パンプはすでに行く気満々である。
こうなってしまってはもう説得の仕様もない。
使用人一同は心の中でため息をつきながらも
「笑顔でかしこまりました」そう言ってマントをなびかせパンプ一行は日本へ向かった。
日本について3時間がたった今パンプは交番にいた。
その顔は頬がぷっくらと膨れておりご立腹だ。
「君、名前は?どこから来たの?」
「・・パンプ・・・あっち。」
そう言ってヨーロッパがあるはずの方向に指をさす。
「パンプ・・・外国人か・・・。で、今日はハロウィンだから仮装してるんだ。」
「仮装じゃないもん!正装だもん!!」
この会話をマントの姿で聞いている使用人達はいつ泣き出すのではないかと気が気ではない。
バット執事長は人目につかないところで人の形を成してここに向かっている。
「パンプ君日本語わかるよね、日本は始めてかな?お父さんとお母さんどこにいるかわかる?」
警官の質問に答えるのがつらくなってきたパンプはついに泣きだそうになる。
「パンプ様遅くなりました。私パンプ様の保護者のバットと申すものです。このたびは迷惑をおかけいたしまして申し訳ございません。」
「バットぉ~。」
話しながら交番に入ってくるバットにパンプは抱きつき泣きじゃくれる。
「よしよし」となだめながら警官に話しかける。
「この子はまだ日本に来て間もないものでまだ向こうの風習が抜けていないんです。」
「あ、いえ、保護者の方が同伴していらっしゃるのでしたら問題はありませんが・・・そのものすごい本格的な格好は・・・どうにかなりませんかね?」
そう、交番の届出は迷子ではない。
届出は”不審者”だ。
黒いマントにかぼちゃパンツ子供服とフリフリの付いた上着の洋服姿。
極めつけはかぼちゃの被り物をかぶっているのである。
日本でここまで仮装をしている人など何人似るだろうかといったレベルだ。
「はい、今度からはもう少しくだけた格好にでもいたします。」
「くだけたというか・・・かぼちゃを取ってもらうだけで良いのですが・・・。」
そういうとパンプは自分の顔がすっぽりとはまっていたかぼちゃを取った。
目の下が赤くなった白い肌に金髪の可愛い少年の顔がそこにあった。
「可愛いお子さんですね。」
「はい、自慢の主様です。それではパンプ様お暇いたしましょう。」
問題も解決しパンプも落ち着いたところでバットは声をかけた。
しかしパンプは声を上げる。
「ヤダ!まだ回るの!!まだ誰からもお菓子貰ってない!!」
そう、パンプは日本に来て役2時間ほど海辺の地域からここまで歩いてきたのだ。
”とりっくおあとりーと”そういいながら歩いてきたがお菓子をくれたものは誰一人としていなかった。
執事長をはじめとする仕様人たちの心配はここにあった。
日本でも確かにハロウィンの行事があるということに対する知名度は確かに高いがその行為の浸透度で言ったら日本は全然だった。
ワーワーと喚くパンプにバットも戸惑っている。
バットも今現在お菓子は持ち合わせていない。
さてどうしたものかと考えていると警官がなにやらゴソゴソとカバンをあさり始めた。
「ほらパンプ君、これでいたずらせずにおとなしくしてくれるかい?」
そういって差し出したのはカリカリサクサクのポテトのお菓子。
それを手に取ったパンプは満面の笑みを浮かべて今度ははしゃぎだす。
「ありがとうございます。」
「いえいえ、安いものですからお気になさらず。」
「では再び騒ぎ出す前に、機嫌のよいうちにつれて返ります。お騒がせいたしました。」
そう言って交番を後にする。
警官が交番を出て見送ろうと思ったときにはすでに2人の姿はきえていた。
「車でも停めてあったのか?」と思いながら警官は通常勤務に戻る。
「坊ちゃま良かったですねお菓子もらえて。」
「うん!このお菓子おいしいよ!!来年も絶対に日本行ってもっとお菓子貰う!」
そのセリフに使用人たちは来年までに対応策を考えなければと頭を抱える。
「さて・・・どうしたものか。」
しかしそういうバット執事長ら使用人の顔には笑顔が浮かんでいるのであった。
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
ハロウィンを題材にして書いた小説ですw
って投稿1日ずれてるけど気にしないww
忘れてたなんて気にしないw(投稿するのを