「彼が反撃に手を貸してくれた…というより一人でやってのけたわ」
促されて俺は華琳の斜め後ろに立つ。
三羽烏と秋蘭以外の好奇と懐疑の入り混じった視線が方々から突き刺さっているのがわかる。
「華琳さまーこのお兄さん(?)なんで顔に包帯巻いているの?」
季衣が恐らく皆が遠慮するべきか問うべきか迷っていた質問を軽く投げかける。
「別につけている理由は身体的な理由ではないわ。ただ、あなたたちが一刀にどれだけとらわれているか試してみようと思ってね」
「兄ちゃんに…?」
華琳が包帯の意図を告げた瞬間に、軍師の3人ははっと気付くものがあったようだった。
「私は条件付きの反対です」
「あら?桂花、私はまだ何も言ってないわよ?」
「先ほどの言葉から察するに、少なくともこの男に警邏隊の隊長を任せるおつもりなのでしょう。知略の面では未知数ですが、秋蘭にも手が出なかった敵の撃退をしたという事は実力はそれなり…という事なのでしょう」
「それに、この方が入室してきたとき、凪ちゃんたちは全然動揺していませんでしたしね~恐らくは昨日の騒ぎのうちに顔合わせがおすみなのでしょう。」
風が桂花の推測に補足を入れる。
「私も反対…とまでは言いませんが、賛成は出来ません。3年前一刀殿がいなくなってから、我々は多かれ少なかれ心に傷をおい、ようやく前に進みだすことができたとはいえ、非常に危うい天秤の上にいます。凪殿が納得されているという事はそれなりの一刀殿に勝るとも劣らない人格者とは思いますが、今新しい人材を登用するのは得策ではないかと思います。ただ、一つだけ、凪殿が納得されて、我々も納得できる場合があります。それをふまえて桂花殿は『条件付き』とおっしゃられたのだと思います」
軍師3人がこちらをちらと見ながら発言する。
稟の発言から察するに軍師の面々はほとんど9割方見抜いているようだった。
顔は見えないが、華琳も笑みを漏らしているようだった。
ただ問題は…
「ええい、顔を見せぬか、無礼者が!ここをどこだと心得ている!とらぬというのならば、私の刀のサビにしてくれる!」
などと、時代劇のチンピラみたいなセリフを吐きながら、春蘭がどこからか取り出した剣を抜いてこちらに刃を向ける。
「ちょ、ちょい待ち!春蘭!ちゃんと華琳様の話聞いておかんと!後で取るてゆうてたやないか!」
「ん?そうだったか?で、霞。こいつは何者なんだ?そんなに強そうにも見えないが」
「ホンマに話聞いとらんかったんやな…簡単に言えば、こいつが華琳様の危機を救ったっちゅー話や。桂花たちは、こいつを一刀の後に据える気や、ゆーとるけど」
ここまで言ったところで、霞がこちらに背筋が凍るような刺すような視線を俺にぶつけてくる。
「あんた誰や?華琳様が認めるからには実力は相当なもんなんやろうけど、そんな奴があの戦争の時はなにやっとったんや」
聞かれるも、華琳はこちらを振りむいて、唇に人差し指をあて「しー」としてくる。
この文化はこの時代の中国にあったんだろうか。
「彼への質問は朝議終了後に返答させるわ。ただ、彼の名誉の為に言っておくと、先の大戦に参加していたわ。ただその頃はあまり力がなくてね、あまり頭角を現さなかったのよ。」
華琳がフォローを入れてくれるも、霞と春蘭は睨んでくるのをやめない。
「ねぇねぇ、流々、つまりあの人が兄ちゃんの代わりになるってこと?」
「まぁ、有り体に言えばそうかな…」
「だめだよ、兄ちゃんは兄ちゃんしかいないよ!流々だって、兄ちゃんがいなくなった時、ずっと泣いてたじゃないか!」
「いいの!季衣。華琳様がお決めになったんだから、絶対いい人だから、そんなふうに言っちゃだめだ…よ…」
流々は気丈に振舞いながらも、目には涙がたまっていた。
…くそ
「季衣、流々。国政は遊びじゃないの。それはわかってるわね?」
華琳が少し冷たい声を出す。
「…はい。でも、兄様のいる場所がなくなってしまいそうで…このまま…段々と最初から兄様がいなかったようになっちゃいそうで…怖くて…」
流々が泣きじゃくるのを見て季衣の目にも涙が浮かび始める。
…俺はこんなものを見るために3年前戦ったんじゃない
「華琳様!やはり私は納得できないません!むかつく奴でしたが、北郷がいることで我々はうまく回っていられました。やつがいなくても、我々が補う事で何とかすることができています。
ですが、まったくの部外者が入ってくるとなると話は別です。いくら華琳様のご命令といえど私は…認められません。こんなやつが北郷の…一刀の代わりなることなんてできません!」
「…春蘭」
…何やってたんだ、俺は…
「せやで!皆何のために今必死にやっとるとおもっとるんや!一刀の代わりは一刀しかありえへん。どうしてもゆうなら、皆に納得させてからにしてもらえんか」
「…もうよろしいのではないでしょうか。華琳様」
秋蘭が華琳に告げる。
「…そうね。流石に軍師3人は感づいてたみたいだけど。これでどれだけあなたのことを皆が思っているかわかったでしょう、一刀?」
「「「「は?」」」」
「「「はぁ」」」
一瞬にして場が静まりかえる。
軍師3人はため息をつく。
「「「「えええええええええええ!?」」」」
「もうとっていいかな、華琳」
「かまわないわ」
顔に巻いてあった包帯を外す。跡がついてるんじゃないかな。
「久しぶり!みんな!!!」
「北郷おおおお!!」
春蘭が七星餓狼を構えてこちらに走ってくる。
「一刀おおおお!!」
霞が半泣きでこちらに駆け寄ってくる。
「兄ちゃぁぁぁん!」
「兄様ぁぁぁ!!」
季衣が猛烈なダッシュでこちらに向かってくるのを遅れまいと流々も追う。
「やはり…」
「ふん、あの全身精液男生きてたのね!やはりこの私の手で殺してやるべきかしら」
「むふふ。そのわりには桂花ちゃん泣いているようですね」
「おっと嬢ちゃん。そいつは行ってやらない約束だぜ」
「おっとっと。そうですね、宝譿。桂花ちゃんが深夜にお兄さんの部屋を10日に一回掃除してたことも言っちゃいけないですよね」
「風!?誤解よ!あれは奴の弱みを探るために…!」
「そうですね、布団にくるまって一刀殿のにおいをかぐために寝具だけは洗わないのも弱みを握るためですよね」
「稟!?ちがうのよぉぉぉ!!!」
どうしよう、桂花の秘密があっちで大暴露されてる。
後で問いただすべきだろうか。
…こんなんだから種馬とか言われてるんだろうか。
「…うわ!って凪!真桜!沙和!お前たちは昨日もおんなじようなことやったろ!」
「そういえば、あんたら3人は昨日あっとったみたいやな」
「霞…どういう事だ?」
「ええか、惇ちゃん。一刀が部屋に入ってきたとき、ウチらは少しぎょっとしたやろ。戦場では包帯を巻いてる奴なんていくらでもおったけど、大戦から3年もたってからそない大怪我してる奴なんてそうはおらん」
「…つまり?」
「ほんまわからんやっちゃな!!つまり、あの3人は包帯男が一刀やって昨日から知っとったっちゅーこっちゃ!」
「おお!!」
春蘭は今頃納得したようだ。変わってないなぁ。
…でも、みんな笑顔だ。
「はぁ、みんな少しは落ち着きなさい。一人ひとり言いなさい」
「まったく、どこをほっつき歩いておったのだ、おかえり…一刀」
「改めてよく戻ってきたな、一刀」
「兄ちゃ~ん。待ってたよ~!おかえり~!」
「おかえりなさいませ!兄様!ホントに…良かった」
「こんなかわいい子泣かせたらあかんやろ~でも、ホンマよう戻ってきたな!おかえり!一刀!」
「私たち…置いていかれたかと…おもって…」
「凪~ウチら昨日あってんのに今更もらい泣きすることはないやろ~」
「そういう真桜ちゃんだって泣いてるの~」
「ふん、どっかで野たれ死んじゃってればよかったのよ!!…………おかえり」
「むふふ、桂花ちゃん。もっと大きい声で言わなきゃお兄さんには聞こえないですよ~
おかえりなさいです。お兄さん」
「風、それ以上は桂花ちゃんの”あいでんてぃてぃ”というものが崩れ去ってしまいますよ。おかえりなさい、一刀殿」
「まさかここまで皆笑顔になるとはね、おかえりなさい、一刀。ほら、あなたも言う事があるでしょう?」
そうだ、おれがあっちでも、こっちでも見たかったのは皆の『笑顔』なんだ。
「うん!!ただいま!!!みんな!!!」
やっと終わりました。
ダイハードって恐ろしいですね。
10時くらいに書き終わると思ってたら余裕で12時回ってました。
一応日曜日と言う事にしておいてください。
とりあえず、即行書きあげてしまったので時代考証などほつれがありそうですが、あまり突っ込まないで頂けると…
誤字・脱字はドンドン教えてください。
次はもうちょっと短いスパンで書きあげられるかと…
次の話は于吉サイドです。
左慈に関しては大きなオリジナル設定を予定しております。
では、また次回もよろしくお願いします。
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真・恋姫無双の魏√で消えてしまった一刀君...
もし彼が仮面ライダークウガの世界に巻き込まれたら、全て終わったときどうするかという設定のお話です。
とはいってもクウガになるまでの一刀はあのフランチェスカとかの設定に準拠したいと思います。
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