No.326374

インタビュー ウィズ リザードマン

立早 文さん

ちょっと関西弁が入ったハイファンタジー超短編。

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2011-10-30 09:47:18 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:514   閲覧ユーザー数:514

「おいこら、トカゲ」

「なんだよ、猿」

「お前も叩っ頃したら、金とかアイテムとか出てくるんか?」

「ンなモン、出ぇへんわい! 物騒なやっちゃなぁ」

 

「シケたモンスターやなぁ、お前も。どばーっと、金貨100枚ぐらい出してみぃ」

「なんでぶっ頃された挙句に、金品まで渡さなあかんねん。やってられへんわ」

「でも、普通のゲームいうたら、そんなモンやん?」

「漫然と遊んでへんと、そこに疑問を持てや」

 

「モンスター叩っ頃して銭集めんと、装備やアイテムも買われへんやないけ」

「さぁ、そこや。何で、モンスターを倒したら、人間の世界で通用する貨幣が出てくるんや?」

「何でて、そらぁ、お前らモンスターが人間から巻き上げとったんやろ」

「ちゅうコトは、お前ら自称勇者は、盗品をネコババして自分で使ぉたりしてるワケか?」

 

「嫌味な言い方するやっちゃなぁ。そしたら、モンスターが自分らで金貨作っとったとせぇや」

「つまり、人間界で使う貨幣は、みなモンスターが作りよるワケか?」

「みなとは言わいでも、人間が作った貨幣も、モンスターの貨幣も、

 あらかた、おんなじモンかもしれへんやないけ」

「それは甘い。デドコロの違う貨幣を、おんなじ按配に扱おうと思うたら、

 材質や寸法、刻印とかをきっちり揃えとかなあかん。ゼニカネちゅうのは、そういうモンや」

 

「面倒くさいなぁ。もちっと大雑把でもええんとちゃうん」

「そうはいかん。それにやな、お前らがダンジョンからカネ持ち帰って使うたんびに、

 人間の世界での、貨幣の価値が目減りすんのや」

「なんでやねん。世間にカネが増えるんやから、みんなが裕福になって目出度いやないけ。

 それが、なんで価値の目減りみたいな話が出てくんねん」

「カネでも何でも、数が増えたらそのモノの希少価値は減るんや。

 お前らがダンジョンから金貨を持ち帰ったら、世間の金貨の数が増えるから、その分価値が目減りする」

 

「難儀やなぁ。そんくらい誤差の範囲でええやん?」

「あかんあかん。その上、貨幣価値の低下を放置しとったら、インフレが起こるんやで」

「なんでや」

「お前がパン屋で、パン一斤を金貨一枚で売っとったとせぇや。

 ところが、世間に金貨が増えまくって、道端に落ちとっても子供も拾わんようになったとしてみ?

 金貨が少々あっても、材料の小麦粉やバターなんかも仕入れられへん。

 そうなったら、パンの値段を上げるとか、もっと違う通貨で払ぉてもらうとかせなあかん」

 

「ふんふん」

「そうやって、連鎖反応的にモノの値段が上がっていくのがインフレや。

 第一次大戦後のドイツとか、最近のジンバブエの状況なんかがそうやな」

「めっちゃ怖いがな。その、インフレを防ぐにはどうしたらええねん?」

「世界中の経済学者が、かれこれ何十年も知恵をしぼっとるけど、これや! いうような決め手は出とらん。

 やが、小さいコトやけど、お前にも出来るインフレ防止策が、無いこともない」

 

「な、なんやねん、それは!」

「ダンジョンで、モンスター倒した後に出てくるカネを、拾わずにシカトすんのや」

「無茶言うなや! アイテムや装備も買われへんがな」

「でも、拾うてしまうと、インフレが来よるで?」

 

「むむぅ、そう言われると、困ってまうなぁ …… 」

「難儀なのは事実やが、世界経済を守るためや。自称勇者のお前やったら、出来んコトやない」

「カネやのうて、アイテムや装備やったら拾うてもええのんか?」

「アイテムや装備なら、経済的にはカネと交換する意味合いしかないからな。

 ま、拾ぉて自分で使うぶんぐらいにはええやろ」

 

「カネの場合は、そうはいかんと」

「金額さえ折り合えば、世間のあらゆる売りモンと交換可能やからな。経済へのインパクトが違う」

「ぬぬぅ …… 苦しいが、インフレも嫌やしなぁ」

「ま、これも経済の安定化、ひいては、世界平和のタメ。

 あえて、苦しい道を選ぶのも、人々の平和な暮らしを護るためじゃ」

 

「おぉ! やってやるぜ!! ダンジョンで金貨拾わずに、このミッションをクリアしてみせる!!!」

「その意気や良し。ゆくのじゃ、勇者よ!」

「うぉぉぉーーーー!!!」

 


 
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