そして次の日の朝、会場に集まった俺たちは対戦相手のくじ引きをした。
その結果
第1試合
星vs鈴々
第2試合
春蘭vs霞
第3試合
一刀vs愛紗
第4試合
季衣vs秋蘭
と言う組み合わせと成った。
「ほう・・・・・・・なんだかもう少し何とかならなかったのだろうか・・・。」
俺は微妙に盛り上がりの欠けそうな組み合わせに運命の悪戯を感じた。
『1回戦でいきなり俺と愛紗って・・・・シード制とか取った方が良かったかも知れないが・・・・どちらかが途中で負けると言うケースも考えられるのでこれはこれで良かったか・・・。』
なかなか思い通りにならないのも籤の醍醐味である。
そうしている内に第1試合の闘士が武闘場に呼ばれる。
第一試合はいきなり蜀の武将同士と成った。
『というより魏と蜀の対戦は無いのか・・・・・』
相変わらずの俺の呟きだが声にはしない。籤で決まったことだ・・・
「星とやるのは久しぶりなのだ。」
やる気満々の鈴々は武闘場の真ん中まで元気良く飛び出る。
「最近は配置も別々だったしな・・・。」
星は相変わらず颯爽とその場に歩み寄った。
「星を倒して今回の優勝は鈴々のものなのだ。」
そんな様子を見た鈴々は星を挑発する。
「ほう、鈴々、なかなか言うな・・・・しかし、そう簡単に勝てるとは思わんことだ・・・。」
そう言ってにらみ合う2人の武将。同属だからといって手を抜くとかはあり得ない雰囲気だった。
そこに進行を務める兵から開始の合図が出る。
先に動いたのは鈴々だった。
「うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃー!」
鈴々の蛇矛が常人の見えないスピードで星に向かって繰り出される。
そのスピード足るやいくつもの突きが作り出す音が一つにしか聞こえない程だ
しかし、それを難なく星は受け流す。
「相変わらす単調な攻撃だ。それでは私には通じんぞ。」
しかし、そんなことで鈴々も怯みはしない。
「まだまだぁ!」
鈴々は連撃のスピードをさらに上げる。
「うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃー!」
まるで同時に何本もの槍が宙を舞っているように見える
俺はこんなシーンは漫画でしか見たことがなかった。
「ぬぅ!」
このスピードには流石の星も手を妬き始める。
そして槍で鈴々の蛇矛を弾くと、数メートル後ろに飛びづ去る。
「相変わらず非常識な奴め、しかし、単調な攻撃では私に矛を触れさせることはできんな。」
星は若干余裕が無くなったようにも見えるがそれでも挑発はやめない。
「むー、まだそんなことを言うのだ・・・・それならさらに速さを上げるのだ。」
鈴々はそう言うと矛のスピードをさらに上げる。
「うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃ-!」
もはや見えている人間は星の他には俺や愛紗、霞と言うところだろう。
しかし、見えると言うだけで対応出来るのとは違う。
星の顔にはすでに余裕はない。
「ぬっ、こんな・・・・。」
流石の星も避けるだけではなく槍で捌く数が増えてくる
「くっ、しかし!」
星もスピードでは劣らない、その神速とも言える矛のわずかの隙を突いて反撃を仕掛ける。
連撃の間に生じる隙のタイミングを計って矛の先を槍の先端ではじき飛ばそうとした。
「ふっ、隙有り!」
しかし、それこそ鈴々の仕掛けた罠だった。
矛を槍で引っかけて飛ばそうとした瞬間、鈴々はその勢いを転じて矛を半回転させ軸の部分で突く。
「とぅりゃぁ!」
虚を突かれた星は何とか槍の軸で直撃は防ぐがそのまま押し込まれてしまった。
「ぐふっ!」
お腹を押さえて蹲る星。
その隙に鈴々は矛の先を星に突きつけた
「そこまで!」
審判が試合を制止する。
「張飛将軍の勝ちです!」
会場は声援に包まれた。
そして第2試合が始まった。
春蘭対霞・・・・・・
魏軍を代表する将軍の激突だ。
「華琳様、見ていてください。私はやりますよ!。」
春蘭はあくまで華琳にアピールすることを忘れない。
そうしてそれが春蘭の力になるのだから侮れない。
案の定春蘭は出だしから全開で霞に七星餓狼を叩きつける
終始そのパワーで圧倒し続ける春蘭。霞は防戦一方だ。
「んーーー、なんか乗らへんなぁ・・・・・・。」
愚痴を言いながらも何とか春蘭の攻撃を防ぎきっているのは流石に霞だが・・・・。
『・・・・・・・・・・・・・なんだか凄いデジャブを感じるなぁ・・・・・・・』
そう言えば前に同じようなシーンがあって、俺が霞を応援したら霞が逆転勝ちをしたっけなぁ・・・・・
今回は俺も出場してるので他の選手の応援はやめておこう。
心の中だけで、『霞、頑張れ!』と思っておくだけとする。
しかし、戦いは少し趣が変わってきた。
珍しく避けに徹する霞に春蘭が段々じれてきたのだ。
空振りは体力を消耗する上に先ほどの鈴々の圧倒的な戦い方を見てあてられていた春蘭に少し疲れが見え始めてきた。
そうして更に大振りな攻撃が増えてくる。
疲れてきた春蘭が大振りな攻撃をすれば流石に隙が生ずる。
それを逃がすような霞ではなかった。
「ブン!」
振られた大剣を躱しながら横に弾く。
その衝撃でバランスを崩した春蘭に霞の飛龍偃月刀が突きつけられた。
「勝負あり!」
審判が叫ぶ。
「やったー、勝ったで。」
喜ぶ霞の隣で落ち込んでいる春蘭。
『やっぱり俺の応援があると違うのかなぁ・・・・・心の中だったけど』
そう思い苦笑する俺だった。
春蘭と霞の試合が終わって、次は俺と愛紗の試合の番だ。
俺は・・・・この場では真名を呼ばないように気をつけないと・・・・などと考えていたが、ふと昨日の夜のことを思います。
突然貂蝉が尋ねてきたのだ。
「ご主人様、ちょ~っといいかしら~。」
「いや、構わないけど・・・。」
華琳からの誘いも少し疲れたことを理由に断っていた。明日もあることだし・・・
「少~し、聞きたいことがあるの。ご主人様はなぜ私の名前を憶えていたのかしら?」
「・・・・・確かに聞いた記憶ってのはなかったんだけど口から自然に出た。頭に突然沸いたっていう方が正解じゃないかな。」
「ん~~~。それとね、先ほどの試合見させて貰ったけ~ど、こちらに来てか~ら力が上がってるじゃないのかしら?」
「あぁ、それはこちらに来てから感じてる。力が溢れ出ているみたいだ。今なら恋にも負けない気がする。」
「やは~りね。でもご主人様。油断は禁物よ。強すぎる力は別の力を呼ぶわ。なんだか嫌な予感がする~のよ。」
「・・・・・あぁ心にとめておくよ。貂蝉、忠告有り難う。」
「あぁら、ご主人様お礼に一晩一緒でも良いのよ。」
「じゃぁ、お休み。明日早そうだから寝るわ。」
そう言ってドアをバタンと閉める。
「ご主人様のイケず!」
騒ぐ貂蝉を放って置いて俺はそのまま眠りに就いた。
何となく気になる言葉・・・・・強い力を呼ぶとは?
そんなことをぼんやり考えていると俺と愛紗が場内に呼ばれた。
俺は一刀を携えると試合場の中央に向かっていく。
いくら俺の力が上がっていると言っても愛紗は超一流の武芸者だ、ぼんやりしていて勝てる相手ではない。
俺は気合いを入れ直して柄から剣を抜き構えると、愛紗もいつもの青龍偃月刀を構えた。
「関羽ちゃん、行くよ!」
俺は軽く挨拶してはじまりの合図を待つが愛紗は無言だ。
気迫の入った目でこちらをにらんでいる。
俺は微妙な違和感を感じたがすぐに開始の合図がされた。
2人はあの時と同じように構えを崩さず間合いを取り合うが今回は俺から動いた。
「はぁー!」
縮地法を利用した飛び込みからの三連撃だがあっさりと愛紗には受けられる。
「流石関羽ちゃん、やるね。」
俺はにこやかに微笑むが相変わらず真剣な顔つきだ。
しかし、今度はこちらの番とばかりに愛紗が仕掛ける。
「とぅりゃー!」
恐ろしく重い五連撃。
俺もそれを捌ききるが少し驚く。
『なんてことだ、向こうの愛紗よりさらに強いな。もしかしてこの愛紗が本当の愛紗かもしれん。』
先日の一騎打ちには国の勝利というプレッシャーがあった。
枷がない愛紗はこれほど強いのか・・・・・
『恋と互角かもしれん・・・・』
捌いた手が少し痺れている・・・・・こんな衝撃はそうは起きない
『しかし、今の俺ならまだまだやれる。』
そう思えるのはまだ奥義も使用していないことだ。
そのまま何合か打ち合うが段々情勢は俺有利に傾いていた。
というか、時間が経つ毎に愛紗の動きにぎごちなさが見えてくる。
戦っている俺にはそれは疲れによるものとも思えるのだが、周りで見ていた鈴々と星はその微妙な変化を感じていた。
「なんだか今日の愛紗変なのだ。」
「うむ、先ほどまで絶好調のように思えたが、あっという間に別人のようだな。」
疲れの見えている愛紗に俺は剣を押し込む。
バランスを崩しかけた愛紗の青龍偃月刀を俺は弾いた。
勝負あったかに見えたが、突然愛紗から俺に向かって飛来するものがあった。
1本は剣で弾くがもう一本が俺の左手に刺さる。
まるで影のように投げられた二本の手裏剣
投げ短刀だ!
そのタイミングと良い二本目は俺でも急所に刺さるのを避けることしかできなかった。
「まさか!」
俺はその刀を右手で抜いた・・・・・・・・・・・・・・・・
愛紗が放ったのは刃渡り5cmの手裏剣だ。
一瞬のことで周りで見ている面子も何が起こったか気がついた者は少なかった。
「ほほぅ、愛紗らしくはないな・・・。」
そのうち気がついた星がその槍を持つ。
状況次第では横やりを入れる構えだ。
「愛紗がこんな事をするなんてあり得ないのだ。」
同じく気がついた鈴々も矛を手にする。
ただ、華琳からは丁度真逆の方向だったために何か異変が起こった程度にしか解らなかったのだろう。
俺の動きが鈍ったのを訝しんだだけだった。
俺はとっさに気で防御したため負ったのはかすり傷程度だった。
しかし、何が起こったかは解っているし、愛紗がこんな事をするとは思っていない。
操られている・・・・とも思ったが、手裏剣を放った後の愛紗は明らかに違う。
先ほどまで押し殺していた殺気が今は隠せないほどに吹き出ている。
『そうか、先ほど感じた違和感はこの殺気だったか・・・』
この殺気は・・・・どこかで感じたことがある・・・・・・
そうして俺は自分でも信じられない言葉を口にする。
「左慈、お前か・・・。」
言葉にしてみれば、前にいる愛紗が姿形はそうにしても明らかに別人だと解る。
そこで愛紗は俺につばぜり合いを仕掛けてくる。
そして耳元で言った。
「ふふふ、ふははは、まさかお前が俺と互角にやれようとはな・・・。」
「しかし、これで終わりだ・・・・・・。」
「なにを・・・・・・・うっ。」
反論しようとした俺だが急にからだが動かなくなる。
「先ほどの短刀には毒が塗ってあったのだよ。当然かすり傷で致死量に至るものだ。」
「もはやお前は体を動かすことも出来まい。」
確かにすでに立っていることさえ限界に近くなってきた。
「そうだ、序でにお前の愛する者の息の根も止めてやろう。いくら曹操とて不意打ちの俺の短刀は躱せないだろう。」
「よ・・・よせ。」
「ほう、まだ声が出るのか・・・・ならばその目でしかと見るが良い。」
そう言って左慈は手から短刀を出し、それを華琳に向かって投げようとした。
俺は・・・・・・・こんな所で・・・・・また守れないのか・・・・・・・。
華琳の姿が、雪蓮の姿にオーバーラップする。
全ての俺が、俺の記憶が、俺の体に集まってくる。
いくつもの記憶が目の前に現れて、消えていく・・・・・そして、過去と現在とが重なっていく。
次の瞬間・・・俺は、左慈の・・・・今は愛紗の体を切り裂いていた。
場内は凍り付いた。
それは華琳や俺への暗殺行為ではない。俺が愛紗を斬ったからだ。
周りの観戦者から見れば俺が愛紗を斬ったと言う事実以外は見えない。
当然近寄ってくるのもそれに対する行為だ。
「愛紗、大丈夫なのだ?」
鈴々も先ほどまでの警戒とは打って変わって愛紗の心配をする。
実際斬られたのは愛紗だから当然だ。
しかし、星は少し違和感を感じていた。そして鈴々よりは冷静に対応していた。
「北郷殿、何があったのでしょう?」
そう俺に尋ねてくる。
『そこの愛紗は偽物だ!』
俺はそう叫びたいが声が出ない。
すでに意識も朦朧としている。
気を抜けば気絶してしまいそうだ。
他のみんなもこちらに近づいてくる。
不用意に近づいてはいけないと警告を発したいがそれも出来ない。
しかし、俺の心配はよそにまたまた驚くべき事態が起きた。
貂蝉が本物の愛紗を連れて現れたのだ。
「ご主人様、無事なの?本物の関羽ちゃんは助け出したわよ。」
「なんだと!」
春蘭や他の面子も驚いている。
すると、突然倒れていた愛紗が起き上がった。
「ふふっ、ばれてしまっては仕方がない。」
愛紗の姿が若い男の姿に変わっていく。
「しかし、目的は達成した。俺に恥をかかせた北郷一刀はすでに毒によって虫の息だ。」
「なっ!」
驚く華琳。俺の姿を探すが、俺はすでにその場に立っては居なく地べたに這いつくばっていた。
「一刀!」
俺の所に走って寄ってきて様子を伺うがすでに俺の息は荒く、華琳を見つめるのが精一杯だ。
「くっ!その男を捕らえなさい。」
「よっしゃ、まかせとき!」
すぐそばにいた霞が左慈に斬りかかる。
「ばかめ、俺はお前達外史の人形には傷つけられんよ。こんな傷はあっという間に治る・・・・・・」
そういった左慈は気合いを入れる・・・・がその再生能力は機能をしない。
「なんだと!俺の体が・・・・・なぜ治らん?」
本来ならすぐ治るはずの俺に斬られた傷が回復しない。
片膝を突く左慈。
そこに霞の一撃が決まろうとした瞬間。霞の体がまるで縛り付けられたようにピタッと止まる。
「左慈、此処は撤退しましょう。」
いつの間にか現れた干吉が左慈の体を抱き上げる。
左慈の周りにいた武将は皆その動きを止めていた。
「今は私が止めていますがこれだけのパワーをいつまでも止めてられません。貂蝉も居ることですし。」
「仕方がない。目的は果たした。済まないが任せる。」
「まちなさい!ご主人様を直しなさい!」
貂蝉が干吉に詰め寄るが、その目前で2人の姿は消えてしまう。
干吉が消えたことで他の武将達は自由を取り戻すが、その後には倒れた俺だけが残っていた。
「一刀!一刀!」
華琳の叫び声だけがその場に響いていた。
後もう一回続きます
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随分久しぶりですが14話目となります
真・恋姫無双のSSではなくてあくまで恋姫無双の魏ルートSSです。
ただしキャラは真・恋のキャラ総出です。
無印恋姫無双は蜀ルートでした。
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