No.319013

瓶詰無双7

宇和さん

北郷(ちっちゃ可愛い)による、前回のあらすじ。

『麗羽の手から、美羽の手に(馬鹿から馬鹿へ)俺は渡った・・。これは「袁家の呪い」か、なにかでしょうか?』

2011-10-16 01:12:04 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:4090   閲覧ユーザー数:3483

物語は、前回の続きからの始まります。

そんな、こんなで。

北郷は、美羽の所にいるのだが。

 

 

「でっ、七乃。頼んでいた蜂蜜は、どーしたのじゃ?」

「すみません、お嬢様。持ってきていません」

 

 

「すみません」っと、言う割に、気にしてない顔の七乃である。

 

 

「なんと、また、持ってくるのを忘れたのか七乃!ここ3日連続じゃぞ!」

「すみません、お嬢様。「蜂蜜を持ってくるよに」との、命を受けたのは覚えていたのですが、面倒だったので」

 

「し、知っててかの!!」

「はい、3日連続とも。知っていて持ってきませんでした」

「・・」

 

とんでもない(主人の命を「忘れた」のではなく、「無視」した)、事実を述べる割に。

あっけらかんとした七乃の表情を、美羽は眉をひそめて睨むが。

 

 

「どうしました、お嬢様?」

「・・も、もういい、わらわ自身で取りに行く」

 

 

七乃の表情に変化がないため、諦めたようにドアに向う。

・・が、その背に、七乃の言葉が飛ぶ。

 

 

「なら、初めから、自分で取りにいってくださいよー」

「・・・」

 

 

その一言に、美羽は振り返って再び七乃を睨むが。

 

 

「どうしました、もうやる事を忘れたんですか?鶏も、其処まで酷く無いですよ」

「な、なんでもないのじゃ・・」

 

 

七乃の、その辛らつな一言で、若干、目を潤ませながら部屋から出て行った。

・・なんだろ、この2人の関係がちょっとおかしくないか。

「「・・」」

 

 

美羽が、蜂蜜を取りに部屋を出た後。

残された・・二人、北郷と七乃の間では無言がしばらく続いた。

 

 

「はぁはぁ・・・(萌え~)」

 

 

七乃は、北郷の姿を目で「姦」することに夢中のため。

 

 

「・・(め、目が恐ろしすぎるよー!)」

 

 

北郷は、そんな危ない目をしている七乃が怖いため。

そんな真逆な感情(喜・恐)から、2人の無言の状態は数分続いたが。

 

 

「か、かずとさん・・」

 

 

目で姦し終え満足したのか、それよりも更に満足(北郷を弄ぶ)するためなのか。

七乃が、彼女には珍しく、おどおどとした声を挙げ北郷に話し掛け始める。

 

 

「な、なぁーに?七乃さん」

 

 

そんな、美羽に拾われてからずっと危ない目(で、北郷を見ている)をしている七乃に、自分が敵じゃない事を示すため、北郷は、愛想笑いをしながら返事をするが。

 

しかし、愛想笑いとはいえ「笑顔」は、この場合はまずかった。

 

 

「・・っ」

「どうしたの七乃さん?顔を伏せて」

 

 

「(萌え萌えすぎて、気を失いかけたましたよー。・・や、やっぱり、かずとさんを私だけの・・はぁはぁはぁ)」

 

 

・・その笑顔で、七乃の胸に秘めていた危ない覚悟を決めさせてしまったのだ。

「カ、カズトさん。わ、私と、逃げませんか?」

「はい??」

 

 

北郷は意味が分らず、首をかしげる。

 

 

「で、ですからー。美羽様の所から逃げて、わたしと2人っきりで「しっぽり」はいかがでしょうか?」

「はい??」

 

 

北郷の頭の中が疑問符でいっぱいになる。

楊州に来てから一ヶ月。北郷は周りの人々から、美羽と七乃の異常なぐらいの仲のよさを聞いていた(2人の異常な話は、名物話として楊州に流行していたぐらいだ)。ちなみに、そのエピソードの数々は、北郷は呆れさせるものばかりであった。

 

その詳細を説明すると長くなるので、ベスト3のタイトルのみを載せる。

 

①『美羽、生まれて初めて涙が枯れるまで泣かされた日(もちろん、七乃に)』・・巻

②『美羽、蜂蜜壷全てに、唐辛子を入れられるも。完食するしかない』・・の巻

③『美羽、川に突き落とされたけど、突き落とした張本人の七乃に感謝する』・・の巻

 

・・仲がいいというより。

七乃の性格の「難」と、美羽の馬鹿(寛大さ)を示すようなタイトルであるが。

 

とにかく、2人の仲は、異様なレベルで良いらしい。

実際、美羽から七乃へ向けられる雰囲気は凄く仲良さげである。

 

 

なのに、もう一方。

北郷の目の前に立つ七乃は、美羽から逃げるといいだしたのだ。

 

 

「えーと、七乃さん?美羽はいいの??」

「まあ・・カズトさんあれば、もう美羽様なんて、どーでもいいかなって」

「はぇ!!」

 

 

北郷の、驚きも分る。

ナレーション?もあえて、その驚き具合を示すためわざと「テンション」を高める。

 

 

・・えー。

 

ちょ、ちょっと、待ちなさい七乃さん!

あなたと、美羽は基本「セット売り」ですよ!!!美羽を可愛がり弄ぶのが貴方の役割ですよ!!

なのに、相棒の美羽を「もういい」って、あなたの存在「アイデンティティ」の崩壊ですよ!!

 

 

・・っと、まあ、そんな感じなのだが。

 

 

「いいんです・・。あんなバカ子」

「よ、よくないよー、七乃さん。あと、バカ子って・・・」

 

「いいんですー」

「いえ、ですから・・よくないと」

 

「いいんですー」

「ひ、ひとの話しを・・」

 

 

七乃は「いいんですー」の、理由もなにも無い言葉だけを繰り返するように、表面には出てはいないが、かなり興奮しているようで。

 

 

「と、いうわけで・・。逃げるので決まりですよカズトさん」

「いうわけで!」

 

 

北郷の意見や、ナレーション?の驚きなんて一切関知せず、七乃はわが欲望のままに進み始めた。

「決まり、って・・」

 

 

俺、何も納得していないのに・・。

 

 

「じゃあ・・早速、ここから逃げますよ、カズトさん」

 

 

納得してないのに・・でも。

 

 

「・・俺の、ちっこい身体じゃ」

 

 

どうせ、なすがままだよ!!(七乃さんの手に握られて、抵抗できず、そのまま拉致)。

 

 

「(ごめんなさい美羽、別れの挨拶もできぬまま・・。俺は、七乃さんに拉致られるよ)」

 

 

そんな、感じで俺が諦めかけた時。

 

 

「な、七乃!!」

 

 

「チッ、まずい・・。馬鹿チビが戻ってきた」

「主君相手に、馬鹿ちびって・・」

 

 

手を、ワキワキさせ、俺を掴まんとしていた、七乃さんの元に、美羽の声が聞こえる。どうやら、助けが来たようだ。・・あと、馬鹿チビはさすがに酷いのでは七乃さん。

 

 

「元主君なんて、ゴミ以下の存在ですよ、坊ちゃま」

「はわ!!ひどい!!しかも、坊ちゃまって・・」

 

「馬鹿チビが「お嬢様」だったので、チビ可愛いカズトさんは「坊ちゃま」で」

「な、なんかむず痒い・・」

 

 

い、いやっそうじゃなくって!そもそも、俺は目が恐ろしい七乃さんに着いていく気なんて!そ、そうだ美羽に助けを・・!!

 

 

「みっ!!」

「まあ、ともかく。今は、馬鹿チビが食べ終えて空になってる、この蜂蜜つぼの中に」

「へっ・・」

 

 

・・助けを呼ぼうとする前に。

俺は、指で摘まれて。

 

 

「隠れといてくださいね・・。後で、持ち出しますから」

「はぇーー?」

 

 

ポチャ・・。

俺は、蜂蜜の壷の中におちた。

「七乃―!!大変じゃ!!」

「どうしたのですか・・。御嬢」

 

 

壷に蓋をした後、七乃は、なにもなかったかの表情をする。

さすがに、美羽を騙しつづける人生を歩んできただけあって。その表情は様(なにもしりません顔)になっている。

 

 

「お、御嬢?」

「はい」

 

「はて?七乃、お前は、わらわの事を「お嬢様」て、よんでなかったか」

「いえ、ちがいます。昔から「御嬢」って、呼んでいますよ御嬢」

 

「ほ、ほんとうか、七乃」

「ええ、御嬢」

 

「ほ、ほんとに、ほんとうか・・」

「しつこいですよ、御嬢。馬鹿な上に、しつこいって救いようがありませんよ・・」

「す、すまぬ」

 

 

とはいえ、元主君(ごみ)という本心は隠し切れず。

「様」という敬称は、口が裂けても出ないようだ。まあ、それ以前に対応(「馬鹿」って、ハッキリ言っている)がおかしいのだが。

 

 

「それでー、どうしたんですか御嬢、そんなに慌てて」

「あっ、そ、そうじゃ!!た、大変なのじゃ、七乃ぉ!!」

 

「五月蝿いです、大きな声出さなくても分ります」

「えっ、あっ、ああ・・ごめんなのじゃ」

 

「・・まったく、親の顔がみたいものですね」

「す、すまぬのじゃ・・。七乃」

 

「さっきから謝ってばかりですね。あなたも数十万の民を率いる為政者でしょ、謝ってないてばかりいないで、早く用件を伝えてください」

「ひぐひぐ・・す、すまぬ」

「ああ・・もう、また、謝って。本当に、めんどくさいなー。・・死んだら良いのに」

 

 

し、死んだらって・・ちょ、ちょっと、酷すぎやしないか七乃さん。

どこまで、自分の愛する人以外に厳しい(興味が無い)んだ、この人は。

 

 

「ひぐっ、ひぐっ、ひぐッ・・・ごめん、ごめんなのじゃーひぐっ、ひぐッ・・ごめん、ごめん」

 

 

「死んだら良いのに」発言の衝撃によって、美羽のぐずりが更に酷くなった上「ごめん」としか言わなくなったじゃないか・・。

「早く、説明してくださいよ・・。なにをそんなに慌てているのか・・」

 

 

そんな美羽相手(更に酷い表現にすると、泣く寸前の子ども)にも容赦がない七乃は。

醒めた目と淡々とした口調は維持したまま、質問を続けるが・・。

 

 

「・・こーいう事よ、七乃」

 

 

その答えは。

美羽の横に鋭い鋭利な刃が振り下ろされるのと同時に、第三者によってもたらされた。

 

 

「ひっぃ!!」

 

 

美羽が、突如現れた刃に軽い悲鳴を挙げる。

 

 

「な、七乃ーー!!」

「おっと、ごめんね・・。動いてもらっちゃ困るの」

 

 

その刃の主は、雪蓮(孫策)。袁術配下の一将軍である。

とはいえ・・。今、彼女は物々しく武装した兵を連れ、その兵たちの刀や弓は主人の美羽と七乃に向けられている。

ちなみに、武器を向けられた恐怖からか、七乃に駆け寄ろうとした美羽だが、雪蓮が美羽の首に刀を寄せた為、動きを止められた。

まあ、七乃に駆け寄っても、美羽は七乃にゴミ扱いされ、いなされ地に伏すはめになったのであるが。

 

 

「う、裏切りですか・・」

「そうね、駄目な上司へのクーデターって、ところかしら・・」

 

 

七乃が、確認するように雪蓮に問うと。

予想通り、状況通りの返事が雪蓮から返ってくる。

 

 

「そ、そんなー。嘘なのじゃ、わ、わらわを守ってる兵が、外にいるはずなのじゃ・・。だから、クーデターなんてできるはずがないのじゃ」

 

 

がっ、予想と状況が合っていても、今だ合点がいかない美羽はそんな声を挙げる。

確かに、美羽の住む邸宅には数十名の兵士達が警備についており。数名しか引き連れていない雪蓮などすぐさま抵抗を受け全滅するはずであった。

それなのに、目の前に立つ雪蓮たち姿は、血は当然として、埃すら付いていない。その事は、まったくの無抵抗で此処まできていたことを示していた。その意味で、美羽は驚愕し雪蓮の言葉を否定したのだが。

 

 

「残念・・。外の兵たちは全員、私たちに無抵抗で降伏したわよ」

「なっ、なんじゃと!!なぜじゃー!!」

 

「そりゃあ・・当然でしょ。ここ1月、貴方達まともに政治をやらなかったんだから。そりゃあ、皆、呆れて、私たちがクデーターおこすっていっても、誰も抵抗しないわよ」

 

 

まあ、それ以上に驚愕な理由によって雪蓮の言葉は筋が通った。

しかし、政治を1月止めるって・・「なにをしていたんだ馬鹿(美羽)」である。

 

 

「なっ、なんじゃと・・。な、七乃!どういうことじゃー!わらわは遊ぶ(北郷と)事に集中するためにと、政治は、お前にまかせてはずじゃー!!」

 

 

おっ、どうやら美羽も其処まで馬鹿(1ヶ月仕事を放置)じゃないらしい。

 

 

「すみません、知ってはいたのですが。めんどうで・・」

「な、なにをいってるのじゃああ!!」

 

 

まあ、蜂蜜壷を持ってくるのと同じレベルの理由で政治をしなかった七乃に、任せた美羽の失点は擁護しようもないが。

 

 

「まあ、元々捨ててく予定の国ですしねー」

「なっ!!」

 

 

美羽の動きが、七乃の驚愕の一言で微妙に止まる。

 

 

「く、国を捨てるじゃと、わ、わらわはそんな事聞いてないぞ七乃」

「はい?・・なんで捨ててく当人にそんな事教えないといけないんですか?」

 

「す、捨ててくって・・わらわをか、わらわは連れて行かないのか?」

「はい、御嬢を捨てていきます。邪魔ですから」

 

 

・・「邪魔」の一言で、美羽が完璧に止まった。

あっ、でも、涙だけは止まらなかった。

「あらら、美羽。貴方、張勲にまで見限られてたのね・・。かわいそうに」

 

 

2人の慌てる様を、しばらく眺めていた雪蓮は。美羽が固まったのと同時に、軽い侮蔑の笑いをみせる。普段から、ちゃけた部分のある雪蓮であるが。こういう嫌味地味た、笑みは珍しい。

 

 

「まあ、しょうがないわよね・・まだまだ、美羽は子どもなんだし」

 

 

そういい、止まった美羽の頭を軽く雪蓮は撫でる。

漢の後将軍である美羽に対する扱いではなく、ただの子どもに対する扱いである。

 

 

「・・」

 

 

その様に、七乃が若干けしばむ。

礼儀に緩い、七乃ですら嫌悪を抱く行為だった。

 

 

「大丈夫、この国は私が「貰う」から・・美羽は子どもらしく安心して遊んでなさい」

 

 

・・そして、それは普段の雪蓮なら絶対にとらない行動だった。

だが・・今、微笑む、雪蓮の心には、何時もとは異なる感情が潜んでいた。

 

 

反董卓同盟崩壊後。雪蓮は、正史と違い、たいした戦功(そもそも、戦ってもいない)もあげられず。前刺史が死亡し、後将軍の名のもとに楊州で力を振るう袁術をたより、寄食していた。

 

一応、彼女には母が残した楊州の遺領がある。とはいえ、その遺領と孫家一族(それに従う兵)、は彼女自身が若輩であるという事で、同族である孫ビンに任されている。

 

つまり、今の彼女自身に、動かせる兵は100にも満たないし、土地も無い。

 

もちろん、彼女が相応の年を取れば孫ビンから孫家の総領の座(土地と兵も)を譲られるであろうが。漢中央の腐敗と比例して高まる地方の独立傾向、すなわち乱世への道(孫家が飛躍する時)が燻る現状において、彼女はその時(総領に相応しいと思われる歳になる)まで待ちつづける余裕はなく、焦れ、沸沸とした日々を過ごしていた。

 

ただ、だからといって、雪蓮は性急に事を運ぼうとも考えていなかった。確かに乱世の影が射している世界とはいえ、今だ微妙なバランスを保ち、平穏に傾く可能性もあるこの世界を。自ら乱世に導く事は、雪蓮は求まなかった。

 

雪蓮はあくまで、乱世に焦りつつも、平穏を求め・・。

この乱世と平穏の間を振り子のように揺れ動く世界と同じく、バランスをとりつつ生活を続けていた。

 

だが、そんな雪蓮に1月と数日前だ。

その日、妹と共に主君である美羽と謁見した雪蓮の目は、美羽が嬉しそうに、そして、なにかに憑かれたのかように握り続ける金色の玉璽に注がれていた。そして、謁見を終えた後も、彼女の目は見えぬ玉璽と天を見つめつづけていた。・・そしてその日から彼女の中でのバランスが崩れた。

 

彼女の中で。

「孫家の為の天下」が「万民(平穏)の為の天下」に優った。

 

 

そして、その結果が今日の日だ・・。

機能停止に陥った袁術政権を、クーデタで追い出し、その力を奪い。

 

・・孫家が天下に飛翔する第一歩の日。

 

その意味で、雪蓮にとってこの場、この時は、大舞台のようなものであり。

その、舞台の主役である雪蓮は、自らに酔っている部分があった。

 

 

・・ただ。

 

美羽が、玉璽を得てから急に「皇帝」を名乗、董卓の変わりに新たな連合成立(群雄割拠)の「人柱」にならんと進まんとした点。

雪蓮が、玉璽を見た後、急に「呉」の創生者として楊州に「割拠独立」せんと叛乱を企んだ点。

 

この二点。

つまり、玉璽に関わった瞬間から、上記のような一種、歴史の流れに沿うような行動に進んでいる事から。

今の、雪蓮は酔っているというより、玉璽(と、その力を付与した勢力)に酔わされているというべきであった。

まあ、そんな、本来は「乱世」中心の世界ならドキドキの場面なのだが・・。

 

 

「だから、美羽、貴方には・・」

 

 

まあ、でも・・あくまで此処は。

 

 

「な、七乃―!国を、す、捨てる予定じゃったとー!!」

「はい、二回も言わせないで下さい」

 

「わらわを見捨てるのか!」

「はい、完全に捨てます」

 

「なに、さも当然の如く返事してるのじゃ!」

「当然のことですから」

 

 

「所詮」という言葉が相応しい、この「瓶詰」世界である。

 

 

「色々と立て込んで入るようだけど。と、とにかく、この国は貰うわよ、美羽」

 

 

「ほ、ほんとに、ほんとかのー!七乃ー!!」

「あーもう、だから・・本当ですって」

 

「わ、わらわがなにをしたのじゃー!なにがわるかったのじゃー!」

「なんもしてないからじゃないんですかー」

 

 

戦争なんて付加物(それ以下かも)と割り切っている、世界である。

 

 

「き、聞いてないかもしれないけど・・。安心しなさい美羽、貴方の身柄は保証するから」

 

 

「ななのー、わらわを見捨てないでくれーおねがいじゃー」

「哀れですね。・・でも、嫌です」

 

 

「あ、あなたは仮にも漢の後将軍、私には貴方を性奪する権利はないわ・・。だから、貴方は中央に送還して」

 

 

「いやじゃー!!」

「しらん」

 

 

なので、一人シリアスモード(「天下」とか「乱世」とか「謎の勢力」とか)を続けている雪蓮は。

 

 

「・・あ、あのー聞いてるのかしら?」

 

 

「ななのー!ななの!!」

「いやです」

 

 

「・・」

 

 

「わらわこそいやじゃー!(七乃が離れるのは)」

「こっちもいやです(美羽に付き合うのは)」

 

 

 

一人、世界(ギャグ)から取り残され「無視」されていた。

 

 

「・・ひ」

 

 

「ななのー!お前も大好きな、蜂蜜をつけるからー!!わらわの所に戻ってくれー!!」

「蜂蜜なんて、いりません。そもそも、私、別に蜂蜜は好きでも、嫌いでもありません・・。あくまで御嬢に付き合って、美味しそうに食べていただけです」

 

「な、なんと・・驚愕の事実じゃ!!い、いやっ・・それはともかく七乃―!!」

「いやったら、いやです」

 

 

「人の話を聞け!!!!」

 

 

そんな、雪蓮がマジギレした。

余裕もへったくれも無い(普段なら「聞きなさいよ」である)口調で。

 

 

「「・・・」」

 

 

その声で、美羽と七乃は雪蓮の方を向くが。

文句タラタラのようで、不満げの顔だ。

 

 

「な、なによ、そんな顔して!あんたら、今の自分たちの状況わかってる!!国は奪われるわ、命があぶないわの、緊迫の状況なのよ!!」

「えー、でも、さっき命の保証はするって言ったじゃないですか、孫策さん」

 

「そ、そうだけど!さっきそういったけど!あんたたちの態度次第では分らないわよ!!てか、私の話を聞いてるじゃない!!なのに、なんで、私を無視してるのよ!!」

「いいんですかー。漢の後将軍である御嬢を、一豪族である孫策さんが殺して。後将軍へのクーデタの時点で、漢に叛乱しかけなのに・・。あと、無視は当然です,私は雪蓮さん、なんてまったく興味が無いですから」

「そうじゃ、そうじゃー、わらわを殺したら、反逆者じゃ」

 

「えっ、いや、だ、だから・・。私はあくまで貴方を送還するといったじゃない」

「じゃあ、雪蓮さんは私たちの態度が悪かろうと、どうしようとも、命は保証するしかないんですよね」

 

「えっ、いやっ・・まあ、その・・それはそうだけど。で、でも・・あっ、そ、そうだ。あ、あなたたちに勝手にさせるわけにはいかないのよ・・逃げちゃうかもしれないし。だから、私の指示に従って黙ってなさい!」

「こんな状況で抵抗しませんよ,―。戦馬鹿の孫策さんたちに、私たちが勝てるわけないじゃないですかー」

「そうじゃー、惰弱な我ら2人が、どうあがこうともお前達から逃げれるわけなかろうー。そんな事、子どもでもわかるのじゃー雪蓮」

 

「ま、まあ・・そうだけど」

「なら、用もないでしょうしいいですね・・御嬢との話に戻っても」

「そうじゃ、もうよかろう・・雪蓮の相手(してやるのは)は」

 

「ええ、まあ、そ、そうなんだけど・・」

 

 

雪蓮は「釈然としない」・・との思いが躊躇してしまう。

なんというか、「勝者」、敗者」という単語が頭で飛び回っているのだ。

 

「自分は勝者なのだし、もっと上から言っても本来は問題ないはず?」

的な事も、どうにかこうにか考えて、実現しようと試し見ようとしているのだが。

 

 

「しつこいのー雪蓮は」

「そうですねー御嬢」

 

「・・わ、分ったわよ、勝手に続けなさいよ」

 

 

「しつこい」の一言で屈した。

なんか、人として弱くないか・・ここ(瓶詰)の雪蓮。

もうちょっと頑張れ、君は孫呉の基礎を作る孫策だぞ!玉璽を使って君を操ろうとした企み努力した一派が可哀想だろ!そんな弱いと。

 

 

「七乃―!!今後は、すっぱい食べ物も食べるから。もどってきてくれー!!」

「いやです」

 

「い、いやっ・・やっぱり、ちょっとまって!」

 

 

おっ、体制を立て直したか。

そうだ、雪蓮・・君が勝者なんだ。

もっと、この二人に厳しい態度を・・。

 

 

「もうなんですか、うざいぐらいしつこいなー。馬鹿なんですかー孫策さん」

「ほんとに、しつこいのー。もうわれらには用がなかろう」

「ご、ごめんなさい・・。で、でも・・喧嘩を続ける前に一つお願いきいてください」

 

 

「ごめん」って言っちゃたよ、敬語だよ・・。

なんなんだよー、この世界の雪蓮。

 

 

「お願い?どうしますー御嬢?」

「まあ、よかろう・・その願いさえかなえれば、雪蓮が、もうわらわ達に絡む事もないのじゃー」

 

「そうですねーうざいですし、さっさと、馬鹿な孫策さんの願いを聞いて終わらせちゃいましょう」

「うむ、じゃあ・・雪蓮、お願いとはなんじゃ、漢の後将軍のわらわが聞いてやるのじゃ」

 

 

あと、今更だけど・・。

この2人共同戦線張るときは、流石の息の合い様な気がする。

 

 

「あ、ありがとうございます・・じゃ、じゃあ・・ぎょ、玉璽をだしてください・・」

「ぎ ょ く じ?なんじゃそれは」

「ほらー御嬢・・一ヶ月前、池に落としたアレです」

 

「アレ?」

「ほら、金ぴかの・・」

 

「きんぴか?・・も、もしや!は、蜂蜜のことかーいやじゃあ、蜂蜜はわらわのものじゃあああ!!」

「は、蜂蜜じゃないです・・。だから、泣きかけないで・・(泣かれたら話し進まないし)」

 

 

「ほ、ほんとかぇ・・わ、わらわから蜂蜜をうばわないのじゃな」

「ええ、ええ・・そうよ、だからね泣かないで」

 

「そ、そうか・・ありがとじゃ・・」

「えっ、うん・・ああ、別にいいわよ(感謝されても困るし)」

 

「御嬢、そうは言いますが、蜂蜜は高級品、全部は返してもらえませんよ」

「ほ、ほんとか!!雪蓮」

 

「えっ、いや・・まあ、七乃のいうとおり高級品だから、全部はさすがに返せないけど」

「いやじゃーあ!!蜂蜜は全部わらわのものじゃあああああ!!取られる位なら、今、全部、わらわが食べてやるのじゃー」

 

 

そんな事を言いながら。

美羽は近くにあった、蜂蜜壷に駆け寄ろうとする。

さっき、自分で食べ「空っぽ」にしたのを忘れて。

 

 

「えい・・」

「ふにゃあ!!」

 

 

美羽が大いにこける。

七乃が足を引っ掛けたせいだ。

 

 

「な、なんじゃー!!なにをするのじゃ七乃!!」

「いえ、たまたま足が」

 

「そ、そうか・・なら・・蜂蜜は全部わら(えい・・)ふにゃあ!!」

「すみません、またたまたま足が」

 

 

そういいながら、再び、蜂蜜壷に駆け寄ろうとする美羽がこける。

犯人はもちろん七乃である。

一分後

 

 

「・・(どたん!!!)」

「すみません、またまたまたまたまたたまたまたまたま、足が」

「・・(すくっ)」

 

 

七乃の「ま」と「た」の量から察せられる、数だけこけ。

疲労に加え、舌を噛まないようにと考えから・・無言のままに、地に伏し(こけ)無言で立ち上がる美羽。そのコケッぷりには洗練された物が出てきた。

とはいえ、美羽に足を引っ掛けつづけ「た」と「ま」を連発する七乃の口と足捌きの洗練度にはまだまだ勝てそうにない。

 

 

「・・」

「すみません、またまたまたまたたまたままたたまたまたま、足が」

「・・」

 

 

まあ、かなり間が開いたせいで忘れられたかも知れないので補足すると。

一連の七乃の行動(足を引っ掛けているのは)は蜂蜜壷の中の秘宝(北郷)を美羽に発見されないための、行動である。

 

とはいえ、さすがにそんな行動を馬鹿みたいに続けていると。

馬鹿の美羽はともかく。

 

 

「・・その壷の中か」

 

 

雪蓮の傍で、無言を貫いていた。

孫家の明敏な軍師が見逃すはずが無かった。

 

 

「ええ・・七乃の反応がおかしいわ。2人を押さえとくから確認頼むわ・・冥琳」

 

 

美羽がこけてる間(こけても、こけても立ち上がる姿に)、元気を取り戻したのか。雪蓮が口調を戻して。信頼する、軍師の真名を呼ぶ。

 

ちょっと、カッコよくなってきたぞ、雪蓮!!

 

 

「ああ・・分った、孫策殿」

「め、めいりーん~」

 

ま、まあ、相手は真名で返してくれなかったが。

でも、頑張れ雪蓮!へこんだ顔するな!!

 

 

「ま、まだあの時のことを怒ってるの」

「別に・・」

 

 

そういう冥琳は「エ○カ様」彷彿な態度ある。

 

 

「じゃ、じゃあ、真名で呼んでよ」

「お断りだ」

「やっぱり、怒っているじゃない・・」

 

 

雪蓮の顔が悲しげに歪む。

自分の一の親友が・・いやっ、「だった」冥琳がとてつもなく冷たいから当然だ。

 

どうにも、反董卓連合の時、冥琳が。

 

「袁紹のアレは演技で、袁紹はあの方(北郷)を連れて必ず逃げる。それを防ぐため今すぐ袁家の本陣に潜んで、必要あらば一戦してあの方を取り戻すのだ」と、提言したにも関わらず。

 

味方大将本陣に潜むという行為(奇行)を雪蓮が許さず。結果、まんまと袁紹に北郷を拉致されたのが、冥琳の怒りの原因らしい。

 

 

「我らは運命の主従だからきっと将来また出会えるし・・それ決定事項だし」

 

 

そんな事をブツブツいいながら(これで分るがかなり引きづってるらしい)。

冥琳は壷の蓋を開けて、中を覗く。

 

 

「・・・」

「ぐすっぐすっ・・。まっくらーこわいよーこわいよー」

 

 

パカン

冥琳は、一旦、蓋を閉め。

 

すぅー。

息を整える、そうしなければ「ひゃっほーい!!!」

 

と、言いかねない自分が居るからだ。

それは避けねばならない。なぜなら、自分と同じく北郷に魅了されていた孫策が傍に居るのだ・・。下手をすれば彼女に見つけた秘宝(北郷)を奪われかねない。

 

息を整え、落ち着いた後。

冥琳は再び、蓋を開け中を覗き込む。

 

 

「・・へっ、ひ、光が!!七乃さんー、壷の中、真っ暗でこわかったよー・・って、あれ、七乃さんじゃない、君はだぁれ?どっかでみたきもするんだけど?」

 

 

パカン

「はぇ!また、真っ暗だよ!!」

 

 

「どう、冥琳?壷の中になにかあった?」

「いやっ・・なにも、ただの蜂蜜の壷だ」

「へっ?・・えっ、でも、その中にはほん・・ぐほっ」

 

 

リアルな鳩尾(みぞおち)が七乃に入る。

 

 

「め、冥琳?」

「どうした・・うるさい敵を黙らしただけだぞ」

 

 

犯人は当然、冥琳。

動機は余計なことをいう邪魔者(七乃)の口を防ぐため。

 

 

「い、いやっでも・・急に鳩尾なんて」

「とにかく、今は、この二人の処理と玉璽さがしだぞ・・孫策殿」

 

「わ、わかってわよ」

「なら、しゃべってないで、さっさと動け・・孫策」

 

「よ、呼び捨て!な、なんかさっきより、扱い酷くないかしら」

「気のせいだな」

 

「ほ、ほんと・・」

「しつこいな、さっさとうごけ・・馬鹿孫策」

 

「・・ば、ばかって・・親友にばかって言われた」

 

 

ショックで、よれよれになりながらも雪蓮は兵を連れて部屋から出て行く。

美羽も兵に付き添われ、七乃は捕獲宇宙人の図で引きずられて出て行った。

 

 

そして・・。

部屋に残った二人。

 

 

「・・???」

 

 

その一人。

壷の中に残された北郷はわけがわからず「?」マークを浮かべ。

 

 

「(・・・さよなら、孫策さん)」

 

 

もう一人。

冥琳は、蜂蜜壷を手にしながら・・心の中で孫家を完璧に裏切っていた。

 

 

 

「ひゃほほほいー!!」

 

 

数秒後、そんな狂喜の声が屋敷に響き渡った。

あとがき(言い訳)

 

真面目に宣言と共に大改修に入ったくせに、なんだこの内容は。

と、いった感じでしょうか(笑)。

 

言い訳すると、真面目するのは「作風」の事ではないです(そもそも真面目なのを書ける訳が無い)。

真面目にするのは、これまでのssが脳内補間=自己完結が多すぎるので。もうちょっと「読んで貰う」事を意識する文に「真面目」に取り組もうとの事です。

 

ただ、今回も「玉璽」あたりの設定をボカして、伏線を張ってるんですが。そこが逆に脳難補間が効き過ぎてる恐れがあります。ここは今後も試行錯誤で改善していきたいところです。

 

 

お知らせ

 

 

『瓶詰無双』は後、2話で終了します。

元々、長編にする予定は無く(練ってないので)、正直。

 

「即オチ」→「別れの」

 

繰り返しのワンパターン。

そんなのウダウダと続けていたら、さすがに駄目なので。

 

次の、冥琳と、後もう一つで終了します。

そのため、次回からマトメに入り、だいぶ雰囲気に変化(シリアスチックな部分)が加わります(①‐⑤話も、オチのための肉付けも加えました。=北郷を連れ去る動物(セキトを除き)に、とある共通点を持たせてみました)。

 

 

※11、10、22 3時半

ご指摘の部分、遅くなりましたが修正しました。

・・しかし、12時寝で、3時おきって、私の体内時計は確実に壊れてる(笑)


 
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