No.316705

キュゥべえの営業日誌 Second-Season

tkさん

『魔法少女まどか☆マギカ』の二次創作。
 そして他作品とのちょっとしたクロスオーバー的な何か第二弾。

*作中で扱いが悪い子がいても、それは書いている人間のちょっと歪んだ愛情表現だったりします。
 決して登場人物を貶める意図はありません。特にさやかちゃんとか、キュゥべぇさんとか。

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2011-10-11 19:36:34 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:872   閲覧ユーザー数:860

 やあ、僕の名前はキュゥべえ。

 年頃の少女と契約して魔法少女になってもらうのが僕の仕事さ。

 え? それだけ聞くとまるで犯罪者みたいだって? 失礼しちゃうな。これでも真摯な仕事を心がけているんだよ?

 さて、今回も他の候補になりそうな子達を捜してみようと思うんだ。

 君もついてくるかい? 僕は気分転換のつもりだけど君の安全までは保障できないよ?

 …そうか。そこまで言うなら構わないよ。

 

 ああ、それと今回は僕の知り合いの魔法少女にも手伝ってもらおうと思うんだ。

 前回の情報から色々と検討してみたんだけど、僕だけだと怪しまれるケースが多いみたいだからね。

 ちゃんとした実例を見てもらって魔法少女に親近感を抱いてもらおうって事さ。

 さあ、僕と一緒に新しい魔法少女を捜しに行く魔法少女を紹介しよう。君も良く知っている子だよ。

 

 

「人気者のマミさんや転校生だと思った? 残念、さやかちゃんでした!(キラッ☆」

 

 

 ………………………………。

「………………………………笑ってよ」

 悪いけど、今の君の発言のどこがおもしろかったのか僕には分からないよ。美樹さやか。

「うわぁーーーーん! 体をはったギャグでつかみはオーケーにしようと思ったのにぃ!」

 どちらかというと体よりもキャラをはったよね、今のは。

「ちゃんと意味分かってんじゃないのさ!」

 

 

 

 キュゥべえの営業日誌 Second-Season

 

 

 

 さあ着いた。ここは雛見沢という小さな寒村だね。

「ほんっとに寂れてるなぁー。こんな所に私の後輩になる子っているの?」

 前もって言っておくけど、村人の前でそんな事を言わないようにしてよ。

「分かってますって。これでも後輩には優しいさやかちゃんで知られてますからね」

 だと良いんだけどね。…ふむ、なかなかの資質の子が数人かな。とりあえず一番駄目そうな子からいこうか。

「駄目な子からいくの!?」

 まだこの土地の情報も少ないし、君と言うファクターが僕の営業にどう影響するかもわからないしね。

 本命は十分に情報が集まった時にしておきたいのさ。

「信用ないなぁ。じゃあ、とにかくその子の所に行こっか」

 

 一時間後、園崎家地下牢。

「どうしてこうなった…」

 まさかいきなり地下牢に入れられるとは思わなかったね。

 あの家は村でも権力のある所だったみたいだ。その周りを素生の知れない僕らがうろついていれば当然の帰結だったのかな。

「あたしらを捕まえたのって絶対ヤのつく人たちだったよね。ああ、まどかー、マミさーん、助けてー」

 杏子に助けは求めないのかい?

「…借りを作りたくないからヤダ」

 それはツンデレというやつかい?

「違うっつーの!」

 

「おや、思ったより元気そうだね。安心したよ」

 

「え?」

 思ったより早く助けが来たみたいで良かったよ。密室でさやかと二人きりなんて命の危機を感じるからね。

「それどういう意味!? というかこっちの台詞だよ!」

 

 十数分後、園崎家私室。

「いやぁごめんね。祭りが近い事もあって皆も気が立っちゃってさ」

「はぁ…」

 僕らは一種の観光客みたいなものだからね。誤解が解けて何よりだよ。

「あたしは園崎魅音。そっちは?」

「美樹さやか、です」

 僕はキュゥべえ。僕と契約して魔法少女になってくれないかな?

「魔法…なんだって?」

「ちょっとキュゥべえ! お礼も言わずにそれ!?」

 資質のある子がいれば即勧誘する。それが僕さ(ドヤ顔)

「いや、色々と間違ってるから! あんたの営業はろくでもないよね本当!」

 

 ~べえさん説明中~

 

「魔法少女ねぇ…」

 今なら願い事も一つ叶えてあげるよ。どうかな?

「なんだか新聞の勧誘みたい…」

 君らの文化を参考にしているのは事実だね。

「さやかさん、だっけ。実際どうなの、魔法少女って」

 そうだね、是非の契約者の体験談を聞かせてあげてよ、さやか。

 

「うーん。私の場合は好きだった幼馴染の腕を治す為に契約して…」

「ふんふん」

 

「本体が石ころのゾンビみたいになって…」

「…ふん?」

 

「治してあげた幼馴染は自分の友達と良い仲になって…」

「………」

 

「終いに自分は魔女になって呪いを撒き散らして…」

「…いや、待って」

 

「理解してくれた友達の自爆に巻き込まれて死んじゃった。テヘッ☆」

「この話、丁重にお断りします」

 

 なんで断るんだい?

 さやかは魔法少女の始まりから顛末までしっかりと説明してくれたのに。

「聞いたからこそ断りたいんだけど」

 説明が足りないと怒るくせに、全部教えても不快感を示すんだから。君たち人間はわけがわからないよ。

「あー、思い出したら鬱になってきた… ここで魔女になっちゃおうかなー…」

 それは少し困るな。僕はともかく村に被害が出ると契約が…いや、それはそれでいいかな。

 緊急事態だという事で契約してくれる子がいるかもしれないしね。

「誰かー、この珍獣を地下牢に戻しといてー。それとさかやさんはおじさんとちょっとお話しよっかー」

 待ってよ園崎魅音。なんでもいいから僕と契約してよ。

 いや、最悪それは諦めるから地下牢は勘弁しくれないかな。

 ねえ聞いてるかい? 聞いてるなら僕の耳を引っ張るのをやめてくれないかな? ねぇ?

 

 

 やれやれ、結局は地下牢に逆戻りか。

 美樹さやかを営業に起用したのは失敗だったかもしれないね。

「なるほど確かに珍獣ですねー。羽入ちゃんの同類ですかね?」

 君は園崎魅音…じゃないね。

「ええ、双子の妹の詩音です。初めて見て分かる人(?)って珍しいですよ」

 これでも観察眼には自信があるんだ。ところで、美樹さやかはどうなったんだい?

「あの子ならお姉と意気投合して遊びに行きましたよ。お姉の恋を応援するとかなんとか」

 さやかじゃ当てにならないと思うよ。

「同感です。あの子、お姉と同じで幸薄そうでしたし」

 君の観察眼もなかなかのものだね。どうだい、君も魔法少女にならないかい?

「ああ、その件で私も相談があったんですよ。契約の対価について」

 一つだけ願い事を叶えるってやつかい?

「ええ、あれはどこまで本当なのかなって」

 願いなら何でも叶うさ。その願いがエントロピーを凌駕すれば、だけどね。

「…行方不明の人捜しでも、ですか?」

 その程度、お安い御用さ。

「………なんでそんな事ができるんです?」

 君たちの希望と絶望のエントロピーを利用した技術なんだけどね。

 詳しく話していると日が暮れちゃうし、理解もできないと思うよ。

「………なるほど、話す気はないという事ですか。そうですか」

 いや、一部省略したけどちゃんと説明したよ?

「…そもそもこんな怪生物は羽入ちゃんだけで十分なんです。ええ、これは怪し過ぎます」

 酷い言い草だね。で、契約してくれるのかい?

「そうですね、してもいいですよ」

 本当かい? じゃあさっそく―

「ただし、悟史君の居場所を教えるのが先です」

 悟史君? ああ、君が言っていた人捜しの事かい?

 大丈夫、ちゃんと契約してくれれば直ぐに―

「そうやって私を騙す気なんでしょう? 悟史君の居場所を話すのが先です」

 いや、だから契約してくれないと願いを叶えられないから―

「嘘をつけっ! どうせお前が隠してるんでしょう? それとも共犯者でもいるの? 私にはお見通しなんですよ」

 えっと、僕とその悟史って人間は無関係なんだけど。

「あはははははっ! 無関係な奴がどうして悟史君の居場所を教えられるんですか? やっぱり嘘だったんですね!」

 だから僕は君と契約して願い事を叶えてあげるだけで、君の個人的事情とは無関係―

「いいですよ、そっちがその気なら強引に自白させてあげます。丁度ここには都合のいい道具もありますし、ね」

 駄目だ。一見話を聞いてる様で全然聞いてないよこの子。困ったのに捕まったなぁ。

 

 

「それで、どうなったの?」

 結局スペアの体を一つ失ったよ。人間の拷問というのは本当に恐ろしいね。

 それよりそっちはどうだったんだい、さやか。

「いやー、あの前原って奴は鈍感だから難しいわ。魅音さんも思い切りが足りないしね」

 自分で言ってて耳が痛くないかい?

「う、うるさいなぁ! それより次は?」

 次はここ、古手神社だ。この村でもっとも高い資質を持つ子が二人いるはずだよ。

「うーん、見たところ誰もいないよー?」

 きっとここから少し離れた小屋にいるんだろうね。さっそく向かおうか。

 

「待てい、なのです!」

 

「だ、誰!?」

 ノリが良いね、さやかは。声の主は社の屋根の上だよ。

「ボクこそは雛見沢の守り神にしてマスコット、古手羽入! 面妖な怪生物よ、ここから立ち去るのです!」

「怪生物って、キュゥべえの事?」

 そうみたいだね。まったく、失礼な話だよ。

「清らかな女の子を惑わして不幸にするなんて、マスコットキャラの風上にも置けない輩なのです!」

「あー、そこは弁明できないよね」

 さやかはどっちの味方なんだい?

「このボクが成敗してやるのですよ! とうっ!」

 

 ごかん! ごろごろごろ!

 

「あ、転んだ」

 着地失敗だね。

「あうあぅ~。ま、負けないのですよ!」

「ガッツあるなぁ…」

 意志は固いみたいだね。それじゃあさやか、よろしく頼むよ。

「え? 何を?」

 君を連れてきた目的は、いざという時の僕のボディガードも兼ねてるからね。

「初耳だよ!?」

「くらうのです! オヤシロビームっ!」

「なんか撃ってきたぁ!?」

 目から光線を出すなんて、あっちこそ怪生物じゃないか。園崎詩音の言っていた意味が分かったよ。

 とにかく今のが外れて良かった。さやか、急いで反撃するんだ。

「いやいやいや! あんな滅茶苦茶な子無理!」

「ボクのオヤシロビームをかわすとはやりますですね。でも次の技は防げないですよ!」

 迷っている時間はない! さあ早く!

「くっ! もうどうにでもなれー!(グワシッ」

 え? なんでそこで僕の頭を掴むんだい?

「オヤシロ様四十八の必殺技の一つ! ハリケーンミキサーなのですっ!」

「魔法少女必殺投法! キュゥべえストライクっ!」

 

 

 ごしゃっ

 

 

 こうして僕は体のスペアをまた一つ失ったのさ。結果的に相手も撃退できたけど、ボディガードの意味がないよ。

 まったく、自慢の角で突進してくるマスコット(自称)もだけど、さやかはどうしてこんな事をしたんだい?

「いやー、転校生と杏子が困った時はあんたを武器にしろって言うからさ」

 …二人の悪意が透けて見える様だよ。

 

 

 さあここで最後だ。

 資質がもっとも高い子には会う事が出来なかったけど、なかなかの子がここにいるはずだよ。

「ここって言っても、ただのゴミの山だよね… こんな所に誰かいるの?」

 いるハズさ。これに関して僕の探知能力は絶対と言ってもいい。

「ふーん… あ、あそこに誰かいる!」

 どれどれ、一体どんな子なんだい?

 

「はぅ~、かぁいい子みーつけた。お持ち帰りぃ~」

 

「見た感じあたし達と同い年みたいだし、あの子だよね」

 ………そうなんだけど。

「なに? どうかした?」

 いや、嫌な予感がするっていうか、第六感が騒ぐっていうか。

「別に嫌な感じはしないと思うけどなぁ」

 あの子自身から邪気は感じないよ。ただ…

「はっ! かぁいい子の気配! レナからは逃げられないんだよっ!」

「あ、見つかった」

 ただね、あの子も話を聞いてくれるタイプじゃないなぁって漠然と感じるんだよ。

 

「か、かぁいい~~~! おっ持ち帰り~~~!」

 

「キュゥべえが捕まった!? なに今の、全然動きが見えなかったよ!?」

 ほらね。しかも理不尽なギャグ補正能力まで持ってるみたいだ。さやか、何とか助けてくれないかな?

「が、頑張って交渉してみる!」

 頼むよ。たぶん無理だろうけど。

「はぅ~。かぁいい顔にどす黒いゲスな内面を感じるよ~。そこもまたかぁいいよ~」

 レナ、だったね。君はもう少し冷静になるべきだよ。そしてできれば今の発言を撤回してほしいな。

 

 

 と、いうわけで今回も駄目だったよ。

「…そう。良かったわね」

 そこは残念だったねと言うべき場面だし、そもそも感情がこもってないよ暁美ほむら。

「ええ。だってどうでもいいもの」

 美樹さやかが必死で交渉してくれたから良かったけど、下手をしたらずっとあの村で飼いならされていたかもしれないね。

 彼女には感謝してるよ。

「なら私は彼女にこう言うわ。余計な事しなくて良かったのに、って」

 君は本当に冷たいね。

「あんたの事にならどこまでも冷たくなれる自信があるわ」

 やれやれ。

 危うく気分転換どころじゃなくなる所だったけど、それなりに楽しめたよ。

 

 これを見ている君はどうだった?

 少しでも楽しめたなら僕も行動した甲斐があったというものだ。

 それじゃあ、また次の機会があれば会うとしよう。その時は別の魔法少女に手伝ってもらおうかな。

 

「だからどこを見て喋っているの」

 君たちの言葉で言うあとがきというやつさ。

 

 

 

   ~了~


 
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