「・・・・あまり休んでもいられまい、行くぞ北郷」
「ああ」
秋蘭との打ち合わせも終わった
これで、やっと華琳と再会できる・・・・
「・・・秋蘭?」
秋蘭がうつむいたまま椅子から立たない
どうしたんだろう
「・・・・ああ、なんでもないさ」
「そ、そうか」
秋蘭の様子がおかしい、こんな秋蘭初めて見るぞ
「時間がないんだ、ぐずぐずしている暇はないぞ北郷 クシュン」
立ち上がると同時に秋蘭がくしゃみをした
足元もふらついてるみたいだ
「危ない!」
ふらふらと歩き出した秋蘭の足がもつれ倒れそうになった
とっさに手を出し抱きかかえたが秋蘭の息が荒い
秋蘭のおでこに手を当てると
「・・・・・酷い熱じゃないか」
「ハァ・・・・ハァ・・・・・どうと言うことはない、この程度・・・・クシュン」
「とにかくこっちへ」
「だめだ、私は・・・・クシュン」
嫌がる秋蘭を寝床に横にさせると掛け布団をかけた
起き上がろうとするけどなんとか押さえつける
今までずっと無理を続け、蓄積された疲労が限界を超えたのだろう
状態はかなり悪いみたいだった
「北郷、私は・・・・」
「・・・・だめだ、秋蘭を連れて行くわけにはいかない」
「しかし北郷!」
「だめ、華琳のとこには俺が行ってくるよ」
「どうやって会うと言うのだ。北郷一人で・・・・」
「会うだけなら大丈夫だと思う。なんたって俺は北郷一刀だからな」
簡単なことだった
北郷一刀が直接華琳に会いにきた
そう告げればいいだけのことだ
「・・・殺されるぞ。確実に」
俺は華琳を裏切っている
俺への華琳の憎悪は想像を超えているだろう
そのせいで春蘭も・・・・・
「分かってる、けど、俺の手で終わらせたいって気持ちもあるんだ」
「終わらせる?」
「ああ、この大戦の責任は俺にある。なら、俺の手で終わらせなくちゃいけない」
秋蘭の表情が驚愕に変わった
「まさか、華琳様を手にかけるつもりか!」
「・・・・・・・そんなことはしない。したくないよ!けど俺は・・・・・・」
華琳・・・・・
「華琳も大事だけど、秋蘭も春蘭も、皆大事なんだ。そのためなら・・・・」
「馬鹿者!」
秋蘭の平手が俺の頬を打った
その力はとても弱弱しくて
「・・・華琳様を討ち、単身乗り込んだ一刀はどうなる?私や姉者はどうなる?」
「秋蘭・・・・・」
「華琳様もいない、一刀もいない、何を・・・・何を頼りに生きろと言うのだ・・・・・ウウッ」
秋蘭が泣いていた
また、初めてみた秋蘭の一面だった
寝床から起き上がろうとする秋蘭を抱きしめ
「・・・・・・・ごめん、行ってくるよ」
秋蘭をもう一度床につかせ、戦闘準備を整え出口へと向かった
「まて一刀!」
「皆に謝っておいて、それと」
「・・・・・・・・・グッ」
「愛してるよ秋蘭」
今できる最高の笑顔を
これが、秋蘭との最後かも知れないから
「さて、行くか」
許都の中心部にそびえる巨大な宮殿
ここに華琳はいる
「とまれ、宮殿になんのようだ」
「お疲れ様衛兵さん、司馬懿さんに会いに来ました」
「貴様、頭がおかしいのか?」
「司馬懿さんに伝えてください。天の御遣いが帰ってきたと」
御遣いが帰ってきた
そう言った瞬間衛兵達の空気が変わった
ざわめく衛兵達
その中から
「あなたは北郷様!?北郷様がどうしてここに」
「よ、君は確か北郷隊の」
「はい、覚えていて頂き光栄であります!」
本物と認識した衛兵は大急ぎで後方に走り去っていった
「帰ってこられたと言うことは、曹操様の元へ戻られると言うことでありますか?」
「はは、華琳が許してくれるかな」
「何を仰いますか、曹操様が北郷様を拒否するはずがありません!!おい皆、御遣い様がご帰還されたぞ!」
ざわめきが一気に歓声へと変わった
「お帰りなさいませ御遣い様!」「御遣い様万歳!万歳!」「これで晋も平和になるぞ!」
誰も戦争なんて望んでいない
平和を望むことは共通なんだ
だからこそ、終わりにしなきゃいけない
「戦争はもうすぐ終わる。だから、安心してくれ皆」
「「「「「「おおーーーー!!」」」」」」
歓喜に包まれた城門前
この期待に答えないと
するとさっき走り去った衛兵がこちらに走ってきた
「御遣い様、司馬懿様がすぐ来るようにと」
「ん、案内お願いできるかな」
「はは!」
宮殿の内部に入ると別の兵達が出てくる
「ご苦労、ここからは我等がご案内する」
「はっ!」
ここまで案内をしてくれた兵は下げられ、今度は華琳の直轄の兵が案内をすることになった
さっきの兵のように友好的空気は感じられなかった
「下手な気は起こさぬように。何かあれば即座に切ってよいと申し付けられておりますので」
5人の兵に囲まれていた
まるで重犯罪人を移送するようだった
どれほど歩いただろう。本当に広い宮殿だ
やがて、豪華な扉の前に着くと
「司馬懿様はこの先におられます」
5人の兵は後ろに下がった
一人で入れと言うことらしい
俺は意を決し扉を開いた
そこは金銀財宝ちりばめられた彫刻の並ぶ王の間
その玉座に
「よく来た。いや、よく来れものね北郷一刀」
「華琳・・・・」
「華琳?私は司馬懿、司馬仲達だ」
「君は紛れも無く華琳さ」
「まあいいわ、あなたを探す手間が省けたんだもの、じっくり殺す時間が作れたわ」
そう言うと華琳は大鎌の「絶」を構える
此方も刀に手をかけようとした
「そう言えば、どうしてこの刀を没収しなかったの?」
「無抵抗なあなたを殺しても面白くないでしょう」
戦う気満々か
でも、このまま戦うわけにはいかないんだ
「待ってくれ、聞きたいことがある」
「・・・・・ふふ、いいでしょう。嬲り殺す前に質問ぐらい許してあげましょう」
「ありがとう華琳」
「その名を呼ぶな!!」
「ご、ごめん・・・・聞きたいことだけど、華琳の部屋に何があるんだ?」
「・・・・・ふむ、質問を許すと言ったのだから答えましょう」
え、意外とあっさり教えてくれるのか?
「そうね、世界そのものがある・・・・と言ったところかしら」
「世界そのもの・・・・・?」
「そう、全ての答えが私の部屋にある」
「分からないよ、具体的に何があるの?」
「ふふ、大局よ、そう、私の部屋に大局があるの」
「大局・・・・歴史のこと?」
「私は、大局をあなたに分からせるために戦争を始めた。仲間を裏切り多くの血を流したのは
全てあなたに大局を教えるため・・・・・」
「俺に大局を教えるって・・・・大局は俺の世界の歴史じゃ」
「・・・・・・おしゃべりはここまで、さあ、私を楽しませなさい。そして、飽きたころには
目障りな連中が全滅してるはずだわ。フフフ、クックック、あーっはっはっはっは!!」
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ついに華琳と再会を果たす一刀