No.315658

決闘物語 ~デュエル開始~

海月さん

どうも、海月です。
今回は遊戯王の小説です。

デュエル脳の世界。デュエルの勝さが全ての世界。
強者は富や名声を得ることができ、弱者はいろいろなものを失ってしまう。

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2011-10-10 00:26:06 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:757   閲覧ユーザー数:741

 

『デュエルモンスターズ』と呼ばれるカードがこの世の中に出回り始めたのはいつの頃からだっただろうか。

「カードを征するものは世界を征する」という言葉が人々の心の中に深く刻まれていることから、

もしかしたらこの地球の誕生とともにカードも生まれていたのかもしれない。

 

 

 

 

「私のターン、ドロー。・・・私は古代の機械巨人でキミのマシュマロンを攻撃!アルティメット・パウンド!」

主からの命令を受けて、巨人の体中のギアが回り、鋼鉄で出来た丸太を思わせる腕を振り上げた。

そして、そのまま相手の壁モンスターへ振り下ろす!

「マシュマロンは戦闘では破壊されないモンスター。だが、私の古代の機械巨人は貫通効果を持っている」

巨人の腕がマシュマロンに直撃し、さらに攻撃の衝撃が相手の体へ襲い掛かる。

 ~古代の機械巨人AT3000 vs マシュマロンDF500  -2500ダメージ~

視界の下に攻撃の結果が表示され、ピピピピッと言う機械音ののちに

 ~LP3000 クロアキ Win vs Lose イブキ LP0~

とデュエルの結果が表示された。

 

「あぁ~、また負けちゃったぜ。いい壁モンスターを引いたと思ったんだけどな~」

デュエルに負けたというのに、笑顔でこちらに歩いてくる少年。

名をイブキと言い、これまでにもクロアキに何度か決闘を仕掛けてきていた。

「戦闘では破壊されず、表になったとき1000Pダメージを与える。確かに優秀なモンスターだが、戦闘に負けないからといって、安心しすぎるのはダメだ。」

クロアキはその場を動かずに、イブキに対して反省すべき点を伝える。

「今回みたいな貫通が来るかもだしな~、よし覚えたぜ!」

イブキはニカッと笑うと、

「ありがとな、クロアキ。次はもっと楽しいデュエルしようぜ!」

とクロアキの前に手を差し出した。クロアキはしばらく迷った後、

「私は、負けないぞ」

と握手を交わした。

 

 

デュエルが終わり、お腹が空いたとイブキが言ったので、二人は食堂へ向かうことにした。

本来食堂がもっとも忙しくなるであろう時間帯であるお昼頃だが、ココ、デュエルアカデミアでは現在夏季休暇中ということもあり、二人の他には数人の生徒が疎らに座っているだけであった。

Bランチセットとカツカレー(大盛り)をそれぞれ頼んだ二人は適当に席を取り会話を始めた。

「それにしても、キミのデッキは良く分からないな」

とBランチをゆっくりと味わいながらクロアキが呟く。

「もぐもぐ、ん?んにゅむ?」

口の中にご飯を頬張りながらイブキが喋ろうとしたので、クロアキが「飲み込んでから喋れ」とピシャっと釘をさす。

「ごくん、ゴメンよっと、それでなにが?」

急いで飲み込んだイブキ。

「キミのデッキのテーマは良く分からない。と言ったんだ。」

「俺のデッキか~」

そういいつつ、自分のデッキを持ち出し広げる。

「クロアキのテーマは基本『古代の機械』だよね~。」

「まぁね、でイブキのテーマはなんなの?」

テーマというのは万人それぞれで、「何がしたいのか」という方向性をデッキに与えることだ。

例えばクロアキと同じ『古代の機械』というテーマのデッキがあったとしても、全く同じデッキというのは普通はありえない。人によって思い入れのあるカードが違ったり、やりたいことが違うからだ。

ちなみに『古代の機械』のモンスターは攻撃宣言をするとその攻撃が終わるまで、相手は魔法・罠を使用することが出来ない。という攻撃型のデッキだ。

「俺はまだ決まってないんだよね~」

「決まってない?」

「うん、なんていうか。コレだ!ってカードが見つからないっていうか・・・」

イブキは言いながら首を傾げる。

「いろんな人と闘って、いろんなデッキを見てれば見つかるかなって思ってるんだけど~」

「・・・現状未だ見つかっていない、と」

「そういうことです~」

がっくり肩を落としながら、イブキはカレーを食べる作業を再開した。

そんなイブキの姿を見ながらクロアキは小さく呟いた。

「私に勝つのはまだまだ、かな」

その呟きはイブキの耳には届かなかった。

 

 

 

「クロアキさんっ!」

イブキとクロアキが食事を終え、食堂を後にしようとしたとき、クロアキを呼び止める声がした。

クロアキが振り返るとそこに、ツインテールの女の子が一人。

「クロアキさん、あの、今日、時間があれば――」

女の子は赤くなりモジモジとしていたが、意を決したように次の言葉を口にした。

「――その、デュ、デュエルしてください!」

 

 

ツインテールの女の子はクロアキの回答をじっと待っていた。

なんか女の子から恋の告白をされたみたい、とクロアキは思ってしまう。

(さてどうしよう?今日はイブキに付き合うと約束している訳だし・・・)

そんなことを考えながらイブキの方へ目を向けようとしたが、

「悪いな、ツインテールさん。クロアキは今日は俺とデュエルする約束なんだ。」

イブキの声の方が先だった。

少女は一瞬ポカンとしていたが、すぐに気を取り直すと、

「煩いわねっ、あなたレッドでしょ?あなたより私のほうが強いのだから、私と闘った方が面白いに決まってるでしょ!」

と先ほどとはうって変わって強い口調で言い返した。強い口調に今度はイブキが怯んだ。

「大体あなたが、何で私たちと同じブルーのクロアキさんと食事なんてしてるのよ!」

「だ、誰と食事しようが勝手だろ!」

「食事するのは500歩譲って許しても、ココはブルー寮の食堂なのよ!レッドのあなたが勝手に入り込んで良い場所じゃないの!」

「ちょっと待って」

クロアキが二人の間に割って入って喧嘩を中断させる。

「まず、キミの名前を聞いてもいい?」

「あ、ご、ごめんなさい。私っカズハといいます!」

「カズハちゃん。イブキはね、私がココへ招待したんだ。だから彼はココにいる資格がある。」

このデュエルアカデミアでは、生徒のデュエルレベルによりオシリスレッド・ラーイエロー・オベリスクブルーの3つのランクがあり、それぞれの寮と施設のレベルに差がある。

レッド寮は古い、イエロー寮は普通、ブルーは高級といった形だ。

またそれぞれの寮の生徒は今回の食堂のように施設を別に持っているため、カズハが言うようにレッド寮生がブルー寮の食堂を使うことは出来ない。ただし、ブルー寮生が招いた場合は別である。

「それにね」とクロアキは続ける。

「私はキミよりイブキのデュエルが退屈だとは思わないよ」

 

 

「そんなっ私のデュエルがレッドに劣ると言うのですか!?」

クロアキの言葉がよほど理解できなかったのか、先ほどのおどおどした感じはすっかり抜けていた。

(さてどうしよう?)クロアキがそんなことを考えていると、後ろから服が引っ張られる感触がした。振り向くとイブキがクロアキにだけ聞こえるような声で小さく告げた。

「おい、クロアキっ。自分で言うのはなんだけど。俺、たぶんあの子より弱いぜ!」

どうやら急に自分が上だと言われ、怖気づいたらしい。思わずクスリと笑ってしまう。

「分かってるよ。でも、そう言う事じゃない」

(まったく、イブキは昔から変わらないんだから)内心そう思いながら、決意を固める。

「カズハちゃん。じゃ、キミの望み通りデュエルしようか。キミが勝ったら、私の言ったことが間違っていたと謝ろう。」

「・・・わかりました、クロアキさんはレッドなんかに毒されてしまったんですね。デュエルで目を覚まさせてあげます。そして私が勝ったら二度とレッドと関わらないでください!」

「レッドと関わるな、か。結構酷いこというね。じゃ私が勝ったら、謝罪してもらおうかな?」

「いいですよ、負けませんから!」

二人はデュエルディスクを構え、同時に叫ぶ。

『デュエル!』

 

 ~クロアキLP4000 vs カズハLP4000~

 

「先行は貰います。私のターン、ドロー!」

「私はローンファイヤ・ブロッサムを召喚。効果を発動!植物族モンスター1体をリリースし、デッキから植物族モンスターを特殊召喚する!現れて、椿姫ティタニアル!」

 ~椿姫ティタニアル 星8/風属性/植物族/攻2800/守2600~

「げ、一ターン目から2800の最上級モンスターかよ」

早速現れた強いモンスターにイブキが思わず声を上げる。

「私はカードを二枚伏せてターン終了です。」

 ~椿姫 伏せ×1~

「それじゃ、私のターンだね、ドロー!」

「私はモンスターをセット、カードを2枚伏せてターン終了かな」

 ~伏せモンスター 伏せ×2~

「せめて来ないんですか?」

「そうだね、今はまだ。」

クロアキはゆったりとまだ攻めるときじゃないと言った。

「いいでしょう、ならば私から攻めさせて貰います!私のターン、ドロー!」

「ボタニカル・ライオを召喚!」

 ~ボタニカル・ライオ 星4/地属性/植物族/攻1600/守2000~

「この子は私のフィールドに存在する植物族の数×300P攻撃力を上昇させます!」

 ~ボタニカル・ライオ 星4/地属性/植物族/攻2200/守2000~

「バトルします!ボタニカル・ライオで伏せモンスターに攻撃!」

 ~ボタニカル・ライオAT2200 vs 巨大ネズミDF1450~

(攻撃宣言にトラップ発動が無かった。攻撃反応系のミラーフォース等はない?)

「巨大ネズミが戦闘破壊されたことにより効果発動、デッキから攻撃力1500以下の地属性モンスターを攻撃表示で特殊召喚する。私は巨大ネズミを特殊召喚する。」

 ~巨大ネズミ 星4/地属性/獣族/攻1400/守1450~

「だったら椿姫で攻撃!」

 ~椿姫ティタニアルAT2800 vs 巨大ネズミAT1400 -1400 ~クロアキLP2600

「巨大ネズミの効果発動、デッキから古代の機械工兵を特殊召喚する!」

 ~古代の機械工兵 星5/地属性/機械族/攻1500/守1500~

「やっと出てきましたね。『古代の機械』。では私はターン終了です」

 

 

「おい、大丈夫なのか?結構押されてるじゃないか。カズハって子強いんじゃないのか?」

イブキが耐え切れなくなったように口を挟む。

「確かに、あの子は相当強いね」

「だったら――」

何かを言いかけたイブキに、

「まぁ見てなよ、これから攻めに転じるからさ」

と自信満々に告げる。

「私のターン、ドロー!そしてこのままバトル!古代の機械工兵でボタニカル・ライオを攻撃!」

「「な!?」」

イブキとカズハの声がハモる。

 ~古代の機械工兵AT1500 vs ボタニカル・ライオAT2200~

「クロユキ!攻撃力はボタニカル・ライオの方が上だぞ!」

(攻撃力は私の方が上、ということは手札か伏せに攻撃力を変動させるカードが?でも、私のティタニアルはモンスターを対象にする効果を無効にして破壊する効果がある!)

「返り討ちにしなさい、ボタニカル・ライオ!」

「攻撃宣言時、速攻魔法、虚栄巨影を発動!このカードはモンスター一体の攻撃力を1000Pアップする!」

「その効果はさせないわ!チェーンしてティタニアルの効果発動!私のボタニカル・ライオをリリースして、発動を無効にして破壊する!」

「それを待ってたよ!トラップ発動!天罰!手札を一枚、古代の機械巨竜を墓地へ捨て、モンスターの効果の発動を無効にして破壊する!」

「クッ、なら私もトラップ発ど――」

「ちょっと待って、今は古代の機械工兵の攻撃中だからキミはトラップの発動は出来ないよ」

(ッしまった!)

「それじゃ、チェーン処理を行うね。まず私の天罰の効果で、椿姫の効果は無効にして破壊する。次に虚栄巨影の効果で1000P古代の機械工兵の攻撃力を上昇させる。」

 ~古代の機械工兵AT2500~

「さてこれでキミの場にはあと伏せカードが1枚のみ。私の工兵の攻撃を続行、カズハちゃんにダイレクトアタック!」

 ~古代の機械工兵AT2500 -2500 ~ カズハLP1500

「さらに工兵の効果発動!相手の魔法・トラップを一枚破壊する。」

「私の魔宮の賄賂が・・・」

「危ないなぁ、これで今度こそカズハちゃんの場は空っぽだね」

(でも、次の私のターン、手札の薔薇の刻印で相手モンスターを奪えば・・・)とカズハは思う。

しかし、それはクロアキの次の言葉で儚い夢と消えた。

「まだ私のバトルフェイズ。私はもう一枚のトラップ、リビングデットの呼び声を発動!墓地からモンスターを特殊召喚する」

(追加攻撃!?でも今墓地には、巨大ネズミしか・・・・・・あ!)

「墓地から特殊召喚するのは、古代の機械巨竜!」

 ~古代の機械巨竜AT3000~

「古代の機械巨竜!?いつの間に墓地に!?」

イブキが驚きの声を上げるが、それに答えたのはカズハだった。

「天罰のコストです。クロアキさんはあの時、手札から捨てていましたね」

クロアキが「そのとおり」と微笑む。

「・・・私は古代の機械巨竜でダイレクトアタック!アルティメット・フレア!」

機械仕掛けの竜が凄まじい熱線を吐き出した。熱線がカズハを包むと同時に、

視界の下に攻撃の結果が表示され、ピピピピッと言う機械音ののちに

 ~LP2600 クロアキ Win vs Lose カズハ LP0~

結果が表示され、デュエルが終了した。

 

 

クロアキとイブキはブルー寮の食堂を後にしていた。

あの後、カズハはきちんとイブキに対しての非礼を詫び、クロアキに対して憧れと尊敬の入り混じったような目を向けるようになった。

そして人数が少ないとはいえ多少人が居たため、そのあたりの空気に耐えられくなった二人は別の場所へ移動することにしたのだった。

「それにしても、あのカズハって子も強かったよな、まぁクロアキの方がもっと強かったけどな!」

「そうだね、カズハちゃんは実際かなりの強さだったよ。おそらくあと一ターンでも猶予があればあの子に負けていたと思うよ」

「なぁ、クロアキ・・・。あの子と俺どっちが強いと思う?」

「ん?それはもちろん。カズハちゃんだろうね」

「・・・はっきり言われるとちょっと凹むけど。そうだよな、俺もそう思うぜ。だったらさ――」

イブキがそれ以上言う前に、クロアキが言葉を被せてきた。

「私はね、カズハちゃんとイブキ。どちらと闘って面白かったと聞かれれば、イブキと答えるよ」

イブキは「よくわからん」と頭にクエスチョンマークを浮かべていた。

「イブキのデッキは確かに未完成もいいとこだ。それに比べてあの子のデッキの完成度はかなりのものだよ。次の手が分かりきってしまうぐらいに、ね」

クロアキは柔らかな笑みを浮かべた。

「キミのデッキは先が見えない、だから面白い」

 

 


 
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