No.310972

楽々・恋姫無双 五話

TAPEtさん

赤ちゃんの一刀ちゃんの話はここでひとまず終了します。

次回はちょっと過去に戻って、一刀ちゃんがまだ華琳のお腹の中に居た時のエピソードを言ってみようと思います。
これからは、今までのようにつながる話で一々フラグ回収しながら行かずに、いろんなところで、興味本位で話を進めようと思います。

2011-10-01 22:32:51 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:6476   閲覧ユーザー数:4971

三行で分かる前回のあらすじ

 

桃香が叱られる

 

魔王降臨(へぅ来々!)

 

あいちゃ♡

 

 

 

 

三国を巡った一刀ちゃんの旅は、3日で無事に終わったわけだが、

 

「一刀……」

 

そう簡単に終わってしまうにこれは一大事すぎるのであった……

 

「もう一度言ってみなさい。なんですって?」

「まんま♡」

「ね!皆聞いた!一刀が私のこと『ママ』って言ったわよ!」

「「「「おおおおお!!」」」」

 

……たけど、そんなこともうどうでもよかった。

 

「だめじゃ、こやつら。早うなんとかしないと」

 

未だに西涼に戻らず残っていた馬騰さんが頭を抱えてそう言いました。

 

 

「しかし驚きですね。普通赤ちゃんがしゃべりはじめるのは、生後前後だそうですが…」

「まぁ、普通の赤ちゃんならそうかもしれないけど、一刀の場合瞬間移動とか出来る時点で既に普通とかいう言葉は無意味よ」

「その理屈はちょっとおかしいとは思いますけど…まぁ、確かに一刀君って普通の子供とは違ってる気がしますね」

 

気がするだけではなく、明らかに違っていた。

第一、人間は空間転移なんてできない。

例え出来るとしても、生まれて二ヶ月やっと過ぎた赤ちゃんが持つには危険すぎる力だった。

今回は運良く安全に戻ってきたとしても、また魏の人たちが知らない間にこんなことが起きて一刀ちゃんの身に何事でもあったらその時は今回のようにはいかないだろう。

 

「孟徳、ちょっと良いか?」

「ねぇ、馬騰。見て、一刀が私のことままって」

「もういい加減戻って来ぬか!」

「!」

 

あ、やば……

 

「ひぐぅ……ぐぅ……えええーーー!!」

「「「「「<<ギロリ>>」」」」」

「な、なん、何じゃ?何故そんな厳しい目つきで儂を見るのじゃ」

「馬騰…あなたいつまでここに居るつもりなの?そろそろ帰ったら?」

「なっ」

「いつまで居座ってるつもりなの?」

「一刀君も帰ってきたわけですし、もうここに居なくても問題ないのでは?」

「つーか、最初から居る必要なかったんじゃね?」

「馬騰殿。帰るまでの護衛は私が務めます。早急許都から出て行ってもください」

「気を付けたほうがええで、後ろから刺されるかも知れへんから」

 

ここに声が出ていない人たちは放送禁止なため削除されました。

 

「お主ら、ほんとにその童のことになると目がないの……」

 

馬騰は肩をすくめながらも、昔自分もあんな感じだっただろうかと振り返って見ていた。

ちなみに馬騰は産まれたばかりの馬超を連れて馬に乗るなどと、良い母親とは縁が遠かったことは、敢えて説明しなくても良いだろう。

 

 

 

 

「いい、一刀?これからこの部屋から出ていくことは禁止よ。わかった?」

 

騒ぎが静まって、華琳は自分の部屋にある、真桜製一刀ちゃん用の赤ちゃんベッドに一刀ちゃんを置いてそう厳しく叱った……叱った。

 

「……まんま?」

 

赤ちゃんの一刀ちゃんにどれぐらい通じたかは未知数である。

 

「………」

「………まんま、まんま!」

「…はい、はい」

 

自分を呼びながら手を伸ばす一刀ちゃんを見て、華琳はため息をつきながら一刀ちゃんを抱いて自分の乳を吸わせた。

暫く母乳でなく牛乳だけで過ごしていた一刀ちゃんは、母の乳の味な懐かしかったのか、いつも以上に念を入れて吸い付いた。

 

「孟徳、少し良いか?」

 

その時、馬騰(帰ってなかったのか)が華琳の部屋に入ってきた。

 

「何、馬騰。今忙しいの見えないかしら」

「耳だけ澄ませてくれて構わん。そのまま聞け」

「……言ってみなさい」

 

目は一刀ちゃんから離さないまま、華琳は馬騰に答えた。

 

「前儂が言った、童を孫呉に連れて行く話じゃが、やはりやめた方が良いじゃろう」

「なら私もここに残るわ。一刀を置いて行くわけにはいかない」

「そうじゃな…今回の事件もあったし、お主に子供を置いて無理して呉に行けとは言わん。じゃが、考えてみよ。その童が今回本当に孫呉や蜀に行ったとすれば、それは何故じゃと思う?」

「……さあ…解らないわね」

「その子がお主の面倒を見てやってるとは思わんか?」

「どういうこと?」

 

華琳が顔を上げて馬騰を見上げると、西涼の武人らしく凛々しく立っている馬騰が答えた。

 

「その童は、死ぬ時まで大陸の平和を思いながら去った奴じゃ。なのにもし自分のせいで、その平和にひびが入るようなことが起きると分かったら、以前のあの童ならどうすると思う」

「…………」

 

幼い体を全て大陸に捧げて尚皆の幸せのためだけが自分の幸せの源と思って生きた前世を持っている一刀ちゃんだった。

もし自分のせいで華琳が三国の同盟を祝う祭りに参加しなければ、確かに同盟にも影響が出る。

そしてその原因が自分だと知っているとしたら、昔の一刀ちゃんなら、

 

「またも勝手に無謀なことを起こして、私の意志をへし折ってでもこの大陸の平和のために何でもするわね」

 

だから一刀ちゃんは大陸を回った。

『お母さんが来られなくても、ボクが来たから許して』

そうでも言うつもりで…

 

「そして、今回のその童の行動がその結果じゃとすればどうなる。その童に、自分が大陸の平和に邪魔になるという考えを入れさせては行かん」

「当たり前よ…」

 

華琳には約束があった。

一刀ちゃんとの約束が……

 

「今度は、私の手で…あなたを幸せにしてあげると、そう約束したわね」

「……(ちゅっ……ちゅっ)」

「何て勝手な子供かしら」

「子供ってそういうものじゃ」

「そうね……」

 

一刀ちゃんは極普通の子供だった。

自分の思い通りにできないことがあったら泣き出して、嬉しいことがあったら笑って…

違うことがあるとしたら、華琳と馬騰が知っていたあの子は、悲しくても人の前で泣くことを好む子ではなかったことだ。

子供は大人に自分の苦しみを解ってもらいたくて泣く。でも、それが通用できない世を生きてきた一刀ちゃんは我侭を言う方法をあまりにも早く忘れてしまった。

 

だから、華琳は今度こそこの子に、幸せを、至極の幸せを与えてあげたかった。

 

「一刀」

「……んぅ?」

 

眠たそうな目で自分を見上げる一刀ちゃんを見ている華琳の顔は母の顔をしていた。

母は、この世の何もかもが壊れなくなってしまうとしても、ただ一つだけを考えるものだ。

 

自分の子の幸せだ。

 

「お母さんはもう暫くすると長い間旅に行ってくるわ。あなたは連れていけないけど、一刀は良い子だから、その間騒ぎを起こさずにちゃんと留守番出来るわね?」

「………

 

 

 

うん♡」

 

 

 

 

 

 

 

それから、二年の時間が過ぎた。

 

 

 

 

 

 

 

 

桂「ちょっと、何よ、これ!こんな計画絶対祭り日まで間に合わないじゃない!」

稟「しかし、ここまでも至らなかったら、我が国の威厳を保てません。二年間他の両国が行ったお祭りの規模を考えれば、我々の国ではこれぐらいはしてもらわなければなりません」

桂「だからって、下準備も出来てない状態でいきなりこんな発案書出されて間にあうわけないでしょ?」

稟「そこをなんとかするのが桂花を仕事ではありませんか」

桂「勝手なこと言うんじゃないわよ。もう!私はただでさえ他のことで忙しいのよ。こんな基礎からやりなおしな企画を通すわけには行かないわ。そう通したいなら、あなたが責任持って下準備から完工まで進めなさい」

風「まぁ、まぁ、二人ともそんな熱くならないでください。……うーん、でも稟ちゃん。この企画はいくらなんでも無謀すぎはしませんか?下手して呼応なかったら大損ですよ?ちゃんと計算して出してるんですか?」

稟「そ、それはその……」

桂「ほら、あんたもちゃんと考えずにやってるんじゃない!」

稟「う、うるさいです!こっちも他の仕事が押してきて仕方なかったんですよ!」

 

 

魏で行われる第三回三国同盟記念祭りの準備で、魏の三軍師は、とても忙しい日々を過ごしていた

 

 

「……ねぇ、けいふぁお姉ちゃん見て!カブトムシさん掴まえた」

 

そんな三人が居る部屋に訪れたのは、小さな男の子。

金髪に蒼色の瞳をしたその子供は魏の王子。曹丕子桓であった。

今年で二歳になる曹丕ちゃんは、祭りの準備なんて何じゃらホイと、子供らしく楽しい日々を過ごしていた。

彼が着ている白い服は、彼の純粋さの象徴であり、この大陸の平和の証にもなっていた。

 

 

「あぁ、もう今度は何よ、忙しいから後にしなさい!!」

「!」

 

 

今日城の植林で掴まえたカブトムシを早く桂花お姉ちゃんに見せてあげたくて走ってきた曹丕ちゃんは、桂花の鋭い声を聞いてすぐに凹んでしまった。

 

 

「あ」

「……ごめんなさい」

「ち、ちがう。これは……」

 

うれしそうに頭の上にまであげていたカブトムシを持った手をしゅんと落として、曹丕ちゃんは部屋の門を閉じた。

 

「……あぁぁ…終わった……」

「まぁ、まぁ、桂花ちゃん元気出してください」

「い、今でも行ったら間にあうのでは?」

「もう無理……あの子一度ああなったら私の話全然聞いてあげないのよ。私が自分に良いこと言ってあげてると思って、むしろもっと迷惑になってると勝手に勘違いするのよ。顔には出さないけど、そんなのでもっと凹むのだから、あの子」

 

竹簡がちら場しながら机に頭を乗せて桂花はそうつぶやいた。

 

「まぁ、まぁ、桂花ちゃん、そんな気にしなくていいのですよ。例え一刀ちゃんがあのカブトムシを桂花ちゃんに見せるための風の部屋に来てカブトムシをつかまえるる方法を聞いてまだ夜城にある木という木には全部砂糖水を塗ってあのカブトムシを掴まえたのだとしても、もう過ぎたことです」

「うわぁーーん!!誰は好きでこうなるわけじゃないわよーー!」

 

マジ泣きする桂花ちゃんを前にして、稟も、トドメを刺した風もため息をつくのであった。

でも、そんなこと気にする暇もないほど、三人は忙しかった。

時期は祭りが始まる一ヶ月前。お祭りは目前だった。

 

 

 

 

「……<<しゅん>>」

 

一刀ちゃんは掴まえてたカブトムシを掴まえてた木に戻して置いて森を出ながらため息をついた。

 

「あら?一刀、こんなところで何をしているのかしら」

 

一刀ちゃんが慣れた声に振り向くと、そこには自分のように金髪の髪に宝石のように蒼い瞳をした女性が立っていた。

 

「お母さん!」

 

曹丕の母、曹孟徳は。一週間ぐらい前用事があって、新野に行っていた。

今日予定より早く帰ってきて、息子の曹丕ちゃんを探したらどこにも居なくて、ここ彼の部屋からかなり離れた森まで来たのであった。

曹丕ちゃんは母の姿を見た途端、母の胸に抱きついた。

 

「いつ帰ってきたの?」

「ついさっきよ。それよりどうしたの?顔が優れてないのだけれど、私が居ない間、何かあったのかしら?」

 

嬉しい顔も一瞬、直ぐさっきのことを思い出してまた曹丕ちゃんの顔が曇る。

 

「…実は…母さん」

「何、一刀?お母さんに言ってみなさい」

「…桂花お姉ちゃん、ボクが変なことしてまたおこちゃった」

「桂花が?あなたに怒った?」

「うん……」

 

凹んでいる曹丕ちゃんの姿を見て、一瞬桂花に怒気を抱く華琳であったが、華琳は終始も聞かず人を恨むような凡愚な王ではなかった。

 

「何があったのか話してみなさい。最初から全部」

「…はい」

 

曹丕ちゃんは、昨日風に聞いて、カブトムシを掴まえろうとしたことから、今日政務室に行って桂花に会ったことまで全部母に話した。

 

「そう…ところで、どうしてカブトムシを?」

「最近、桂花お姉ちゃん仕事で大変そうだったから、元気なカブトムシを見たら元気出すかと思って……」

「そう。なのに仕事の邪魔に思われちゃったって?」

「………<<ふるふる>>」

「…何?」

 

それが凹んだ理由ではないと否定する曹丕ちゃんを見て、華琳は問いただした。

 

「…桂花お姉ちゃん、元気ない。最近皆、忙しくて、全然笑ってない」

 

幼い曹丕ちゃんは、まだこの国で何が起きようとしているのか知らなかった。

凹んでいる理由も、怒られたからではなく、桂花を元気つけようとした計画がうまくいかなかったから。

どうしても自分じゃ桂花の機嫌をとることができなかったからである。

 

「そう、そういえばまだ一刀には言ってなかったわね。あまりにも当然なことだったから言うのを忘れてしまっていたわ」

「??」

「一刀、これからもう少しで、ここで大きな祭りをするわ」

「……お祭り?」

「そう、私だけじゃなく、他の国からもいろんな人たちが訪れて、お祝いをするの」

「お祝い?……何の?」

「戦争が終わったことを。3つの国が戦いをやめて、共に大陸の民のための幸せのために頑張ると誓ったことを祝うためよ」

「そうなんだ……」

 

でも、それでもまだ曹丕ちゃんは納得いかないような顔をする。

 

「そんな嬉しい日を準備するのに、どうして皆笑っていないの?」

「確かにね。それは皆が悪いわ。でも、皆も精一杯頑張ってるのよ。皆が幸せになる祭りにするために。幸せを作るためには、ちょっとした苦労はつきものなの」

「…………」

「納得いかないって顔で」

「……うん」

 

やっぱり、それでもお姉ちゃんたちはいつも笑っていてほしいと、そう思う曹丕ちゃんだった。

 

「それなら、一刀が皆笑顔を取り戻すために、何かしてくれたらいいわね」

「……でも、何しても邪魔になるだけ」

「お母さんのことがウソみたいだったら、お母さんの言う通りにしてみる?」

「……?」

 

お母さんは曹丕ちゃんに、皆が元気になって笑顔を取り戻すおまじないを教えてあげた。

 

 

「あぁぁ………」

「そろそろ正気に戻っては如何ですか?桂花殿?」

「もう四半刻以上あんな感じですね」

「お祭りが何よ……私なんて……一刀が喜ばない祭りなんてして何になるのよ……」

「………空っぽのお弁当」

「風、あんたマジ殺すわよ!!!」

「風が言ったわけじゃありませーーーん」

「言ったのオレ、オレぇぇぇ」

 

呪いの言葉を聞いた桂花ちゃんが鬼になって風の肩を揺らすと、宝譿が落ちそうになる。

いや、落ちそうになるというか、そのまま落ちないのはどういうわけなのだろうか……

 

その時、門が開いた。

 

「一刀殿!」

「おぉ、一刀君、桂花ちゃんをなんとかしてください」

 

一刀ちゃんが、今度は無装備で部屋に訪れたのだった。

 

「一刀……」

 

半分本気じゃなくなっている桂花の前に近づいた一刀ちゃんはお母さんに言われた通りに、桂花の頬にそっと口を付けた。

 

「!」

「あのね、桂花お姉ちゃん」

 

そして、お母さんに言われた通りの言葉を、ちょっと恥ずかしそうにもじもじしながら言うのだった。

 

「桂花お姉ちゃん、いつもありがとう。お仕事大変でも、一刀はお姉ちゃんが笑ってる顔を見た方がずっと幸せだから、いつも笑っていてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「稟、さっきの案件持ってきなさい」

「は?ええ、ここに……」

「これ、規模小さすぎる。倍にしなさい。監督は私が取るからひとまず推進しておきなさい」

「良いのですか?桂花は今でも休む時間なく動いているんじゃ……」

「んなことどうでもいいのよ!一刀!」

「は、はひっ!?」

 

突然テンションがマッハーになった桂花にちょっと引きながら曹丕ちゃんは答えた。

 

「安心しなさい。お姉ちゃん頑張るから。お祭り始まったらお姉ちゃんと一緒に沢山遊ぼうね」

「う、うん…………………

 

 

うん♡!」

 

 

 

一刀ちゃんの幸せは、まだまだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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