No.309952

新作 恋姫無双(仮)

瑠璃石さん

皆様お久しぶりです。
私の事等を覚えていてくれる方が一人でも居れば嬉しいです。

前作の投稿の仕方に色々とご意見を頂き、こちらでの投稿を打ち切りましたが、厚かましくも新作を考えましたのでお目汚しになると思いますがご意見などを頂けると幸いです。

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2011-09-30 02:38:56 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4187   閲覧ユーザー数:3558

「今日こそ良い返事を聞きたいものね?」

 

そう言って目の前の少女を見つめる金髪の少女。

 

彼女の名は曹操孟徳

 

後の世で『乱世の奸雄』と呼ばれた英雄の一人である。

 

「何度来ても私の答えは変わりませんよ。貴女は私が仕えるに値しない、どうかお引取りを。願わくは二度と私の前に現れないことを期待します」

 

曹操の勧誘をにべもなく断るこの少女。

 

彼女の名は司馬懿仲達

 

後の世では『晋王朝』の礎を築き、かの諸葛亮孔明と並ぶ名士である。

 

「華琳様のお目にかかりながら、そのお誘いを断るだけでも気に触るというのに二度と来るななどとの暴言!!もう勘弁できん!!!」

 

 

 

---チャキッ!!

 

 

 

仲達の言葉に対し過剰なまでの反応を見せる黒髪の女性。

 

曹操の側近で『曹操の大剣』を自負する生粋の武人 夏候惇元譲その人である。

 

主のことを第一に考え、その他の者はみな曹操の命に従えば言いとさえも考えている良い意味でも困った意味でも真っ直ぐな忠臣だ。

 

「やめなさい、春蘭。このような場で剣を抜くなんて、私の品格が疑われるわ」

 

「・・しかし」

 

「二度は言わないわよ?」

 

一度で従わない夏候惇に最後の通達とばかりに睨みを利かせる曹操。

 

「・・・ッ、わかりました」

 

その曹操の気迫に圧されたのか、冷や汗を掻きながら剣を納める夏候惇。

 

「もう十分疑ってますけどね」

 

「・・・忘れて欲しいわね。貴女が仕える主の失態なのだから」

 

夏候惇の愚行がなくとも、既に仲達にとって曹操の威厳や品格は下の下以下である。

 

その事を十分に感じ取ったのか、曹操は『自分の仕える主』という部分を強調しながら仲達に話しかける。

 

「何を言われようと、何度私の下に足をお運び頂こうとも、私が貴女の下に訪れる未来などありません。お引取りください」

 

曹操の言葉を無視し、再度否定の言葉を紡ぎ頭を下げる仲達。

 

「・・・今日の所はお暇させてもらうけど、私は決して諦めないわよ?」

 

自らを否定する仲達に『自分は諦めない』と後言してその場から立ち去って行く曹操。

 

その後姿には王としての威厳が惜しむ事無く見える。

 

「・・・」

 

曹操の言葉に答える事無く、ただ二人を見送る仲達。

 

こうして決して交わることのない曹操孟徳と司馬懿仲達の三十回目の会談が終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「華琳様、何故あそこまで司馬懿をお求めになられるのですか?」

 

司馬邸からの帰り道、特に急いで戻る理由もないためのんびりと馬を歩かせる曹操に兼ねてからの疑問をぶつける夏候惇。

 

「・・・これは私の予見だから外れる事もあるでしょうけど、それでもいいなら城に戻ってから話してあげるわよ?」

 

この場で話すには向かない内容なのか?

 

城に戻らなければ話せないという曹操だが。

 

「ぜひ!!」

 

そんな曹操の深い考えなどわからない夏候惇は、ただ曹操の大剣である自分が主の考えを知らないという不満を解消したいがために一も二もなく頷いてしまう。

 

「・・・本当にわかってるのかしらね?」

 

子供のように嬉しそうな顔をして喜ぶ夏候惇を見ながら呆れた顔をする曹操。

 

果たしてこの夏候惇がどこまで一人で自分の考えについてこれるか?

 

楽しみな反面、ダメな時のお仕置きを考えて一人笑みを浮かべる曹操であった。

 

 

 

 

 

 

「・・・はぁ」

 

ようやく帰った曹操を見送って部屋に戻った仲達。

 

よほど曹操との会談が肌に合わないのか、疲れた表情と共に深いため息をついている。

 

「早く私の仕えるに値する主に出会いたいものですね」(ズズズーー

 

お茶を飲みながら見知らぬ自分の主の姿を思い眼を瞑る仲達。

 

陳留の地で民からそれなりに好感を持たれ、善政を布いている良き刺史である曹操。

 

今の漢王朝は高官の腐敗が進み、民達の暮らしは日に日に悪くなっており、酷い所では飲み水さえお金を払わなければならず、水を買えない民は手のかかる子供や老人を山に捨て、若い娘を官僚に売りつけ日銭を得るなどの人道に外れた行いをしなくては生きていけないらしい。

 

その点、陳留は小さな犯罪こそあるが、人売りや捨てなどをしなくても何とか生活をしていける。

 

それだけでも曹操の政治への手腕は完璧ではないが見事というしかない。

 

そんな陳瑠の良き主であると思われる曹操を仲達が嫌うのはいくつモノ要因がある。

 

その内の一つが『曹操は人を見ず才を見ている』事である。

 

これは曹操と何度も対面しているからこそはっきり言えることなのだが、曹操は自分の胸に秘めた何かをなすために才能ある有能な人物を多数集めようとしている。

 

勿論賊に自分の領地を襲わせないためには、文官に武官に有能な人物を入れておいて何の問題もない。

 

何もかも主一人で切り盛りできるわけでもないし、時には代理人として有能な信頼ある副官を送ることもある。

 

その時にみすぼらしい一般人や、兵卒などを遣いに出してはそれこそ主の品格を疑われる。

 

そういった意味では曹操の人材集めを悪いとは言わないのだが・・・

 

「ああまで露骨に普通の兵達を蔑ろにする様では曹操に先はありませんね」

 

かつて一度だけ見た曹操の軍錬。

 

仲達は曹操の一般兵への思いやりというか、押し付けるような理想の高さに嫌気が差したのを思い出した。

 

よく出来た人間に『一を聞いて十を知る』という言葉があるが、これは学を学びその才を伸ばした者のことだ。

 

今の世の中ではよほど恵まれた者でしか文学を学ぶことができない。

 

良い所でも文字を読めるかどうかであり、書くことなど一般人には夢のまた夢である。

 

当然兵士として懲役された者達の大多数は文字など書けないし読めない。

 

加えて兵法など知らないし、陣の詳しい内容など一般生活において理解することもない。

 

そんな中でも、曹操は兵士達に完璧を求めるのだ。

 

自分の兵として相応しい精兵としての力量を。

 

「兵達のことを良く知っていれば、それに見合った調練の調整など容易いでしょうに」

 

仲達が見に行った一度限りの調練でさえ脱落し退役した兵は多い。

 

それも若者がだ。

 

突然現れる天才や鬼才が普通の民に居ないなどとは思わないが、それでもこのように一日やそこらで使い潰されては才能も芽吹くことが出来ない。

 

曹操が求めているのが『今芽吹いている勇者』であることが良くわかる。

 

そして二つ目にして一番の理由だが、

 

 

「私は同性愛や行為に興味などありません!!」

 

 

『曹操は同姓愛好者(仮)』なことである。

 

 

これは曹操が聞いたら否定するであろうが、仲達は女性同士で乳繰り合うなど考えるだけでも身震いしてしまう。

 

曹操はただ『自分に見合う者が男にいないため有能な女性を愛している』だけなのだが、それでも仲達から見れば同姓愛好者に違いはない。

 

自分が曹操の元に行けば間違いなく曹操の慰め者にされてしまうのは目に見えている。

 

ちなみに、

 

『無理やり行為に及ぶのも嫌いではないけど、常識は持ってるわよ』

 

と明言しているだけに、曹操は無理やり閨にこさせるようなことはしないのだが、そんなことは関係なく貞操の危機に見舞われることが問題なのだ。

 

「・・・どこかに隠居しましょうかね?」

 

このまま此処に留まり貞操の危機に瀕するくらいなら、妹達を連れてどこかへ流れるのもいいかもしれない。

 

そう考えてしまう仲達であった。

 

 

 

 

 

「姉上~~」

 

そんなことを考えていると、

 

「はいはい、ご飯にしましょうね」

 

すっかり暗くなったためお腹を空かせた妹達が部屋に乱入してくる。

 

親が出払い使用人が少々居るだけの司馬家にとって妹達の食事は仲達が作っているのだ。

 

(両親の仕送りも段々と減ってきてますし、本格的にどこか他所で仕官することも考えないといけませんね)

 

自分も含め育ち盛りの姉妹にひもじい思いをさせるわけにはいかないため、本気で生計を立てる方法を考え始める仲達だが、やはりここでも『曹操に仕える』という選択は出てこないようだ。

 

 

 

 

 

「「「「「「いただきま~~す!!」」」」」」

 

 

「召し上がれ」

 

暫くして食卓には仲達が腕を振るった料理が並ばれ、妹達は手を合わせ料理に手をつけていく。

 

そんな賑やかくも楽しい食事中の司馬家だったが、

 

 

 

---キラッ

 

 

 

「姉上、星が流れましたよ」

 

何気なく窓から外を見た妹の司馬孚が仲達に向かって声をかける。

 

「不吉ですね。また良からぬ事でも起きるのでしょうか・・・」

 

元来、星が流れることは不吉とされている。

 

その星が流れたことで、仲達はまた大陸に何か良くないことが起きるのではないかと暗い顔になる。

 

「あれ?姉者は町で噂の『天の御遣い』の事知らないの?」

 

暗い顔をしている仲達に、夕餉の買出しに街へ出ていた司馬馗が街で聞いた管輅という占術師の言葉を紡ぐ。

 

 

『天より光臨せし白き衣を身に纏いし者。絶望を払いし導となりて世に太平を齎さん。この者天よりの使者、御遣いなり』

 

 

「・・・随分と大きいことを言う占い師ですね」

 

絶望とは今の乱れた世のことであろうが、占いの内容から天から降りてくるのは一人。

 

たった一人の人物がこの世を変えるなど、明晰な頭脳を持つ仲達には受け容れられなかった。

 

「ホントだよね~。誰かが世の中変えられるなら、とっくに曹操さんが変えてると思うよね~」

 

司馬敏もご飯を頬張りながら仲達の言葉に同意する。

 

この様子から見てわかるように、このご一家上から幼女から聡明すぎる頭脳の持ち主のようだ。

 

人材集めが好きな曹操が気に入るのもわかる気がする。

 

なんせ全員が美少女な上相応のスタイルをしているのだから。

 

そんな管輅や曹操を含む他愛無い話をしている中、

 

 

 

---カッ

 

 

 

急に窓の外が激しく光った。

 

 

「あっ、姉上?!」

 

 

「皆、こっちに集まりなさい!!」

 

 

いきなりの出来事で姉妹達は仲達に寄り添って光が収まるのを待つ。

 

 

 

 

 

 

 

そして、

 

 

 

 

光が収まった後、

 

 

 

 

「姉様、また星が!!」

 

 

 

 

天より一際大きい星が再び大地に向かって流れていく。

 

 

 

 

 

「やはり、良くないことは起きそうですね」

 

 

 

 

この星が司馬家に交わることになるなど、この時仲達は思いもせず、また最良の主との出会いの前兆ということも気が付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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