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真・恋姫†無双異伝 天魔の章 第二章 黒の猟兵団 第四話

海平?さん

 毎度こんばんわ。海平?と申す者です。
 試験期間中に暇を見て書いていた作品が、予想より早く仕上がったので投稿させていただきます。
 では、どうぞ。

2011-09-21 21:54:52 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:2125   閲覧ユーザー数:1929

 

 

 

 

 

 戦士対人外

 

 

 

 

 

 

一刀と霞・華雄両将軍との一騎打ちは終了した。

 

が、彼らは忘れていた。董卓軍に所属する、戦国無双の称号をとるもう一人の将軍の存在を。

 

 

一刀:「作者も忘れてたらしいしなぁ・・・」

 

メタな発言をしながら再び練兵場中央に立つ一刀は、頭を掻きながら正面を見据えた。

 

 

 

今回の彼の武器は、前回霞との戦闘で模造倭刀が壊れてしまったため、信三との組手の時に使っていた模造双剣に変わっている。

 

 

彼の目の前には、赤髪の少女が無言で立ち、こちらを見つめている。

 

方天画戟と呼ばれる武器を片手に佇むその姿は、まさに赤き戦神と称するにふさわしい覇気を纏い、神々しいまでに輝いている。

 

一方の一刀はと言えば、華雄や霞と相対したときとは比べ物にならないほどの緊張感と期待感を持って舞台に立っていた。

 

 

恋:「・・・・・・」

 

 

一刀:「・・・・・・」

 

 

聴衆:『・・・・・・』

 

恋も、一刀も、二人を取り巻く聴衆さえも一切の物音を立てず、静かに開始の時を待っている。

 

 

 

何故、一刀が華雄たちとの一騎打ちの後に、恋とまで一騎打ちを行っているのか。

 

それは、霞との試合が終わった直後から姿を消していた恋が、方天画戟を片手に試合会場に現れ、一刀に一騎打ちを申し込んだからである。

 

そう、彼女は、一刀が霞との一騎打ちにおいてすら、ほとんど実力を発揮していなかったことを看破していたのである。

 

加えて、華雄達は試合後の熱気に当てられ、すっかり恋のことを忘れ去っていたから、気まずさもあって、一刀と恋の一騎打ちに思わず是を出してしまったのである。

 

 

恋:「一刀の・・・本気が見たい」

 

そう言って見つめてくる恋に、一刀も応えた。初見で己の実力を、一端とは言え見抜いた人間の力を、一刀もまた見て見たいと思ったのである。

 

加えて、彼は恋の腕に描かれた刺青が気になっていた。

 

 

一刀:「いいだろう。戦国無双の名の由来、この俺に示してみるがいい(それに、俺の予想が当たっていれば、君のその刺青は・・・)」

 

 

 

そして、時系列は元に戻る。

 

武器を構えて見つめあう二人に向かって、聴衆の中から詠が歩み出てきた。

 

 

詠:「じゃあ、始めるわよ。準備はいい?」

 

二人の中間に立ち、審判を務めている詠。彼女の問いかけに、二人は無言で頷いた。

 

恋は、方天画戟を片手で持ち上げて肩に担いだ。それを見た一刀も、腰から双剣を抜き去り、逆手に構えて腰を落とす。

 

双方ともに戦闘準備が整ったことを確認した詠は、巻き添えを避けるために場外へ出、宣言した。

 

 

詠:「勝負は、時間無制限一本勝負!どちらかが戦闘不能になるか、参ったと言わせるまで。殺しは無し。いいわね!?」

 

最終確認を終え、一度目を瞑って深呼吸した詠は、カッと目を見開いて、怒鳴った。

 

 

詠「それでは、始めッ!」

 

開始宣言と同時に、二人は一気に飛び出した。

 

 

 

 

 

恋:「はッ!」

 

 

一刀:「疾ッ!」

 

ギィイインッ!!

 

二人がすれ違う瞬間に触れ合った互いの武器から、夥しい量の火花が散り、二人は勢いそのままに距離をとる。

 

 

恋:「・・・」

 

 

一刀:「・・・」

 

その一撃で、あらかた相手の実力が計れたのだろう。それ以降、二人はある程度距離を置いたまま、ピクリとも動かなくなってしまった。

 

二人の間に、空間が歪み景色が捻じ曲がって見えるほど濃密な殺気が立ち込める。

 

そして気のせいか、一刀の両目は紅く輝き、恋の腕の刺青もまた紫色に妖しく輝いていた。

 

 

月:「恋さん・・・一刀さん・・・」

 

 

詠:「な、なんなのよあの二人は・・・本当に人間なのッ!?」

 

目の前の風景が歪み、あまつさえ色が変わって見えるなどと言うあまりにあり得無すぎる光景に、月は言葉を失い、詠は完全に失礼なことを口走っている。おまけに、初撃で生じた雷にも似た巨大な火花を目の当たりにしては、その反応もわからないでもないが。

 

 

華雄:「ぬぅ・・・しかし、何故二人は動かぬのだ?恋の間合いは、北郷よりも倍以上あるはずなのに・・・」

 

 

霞:「阿呆。ウチとの戦いの最中に、一刀が使うとった飛び技忘れたんかい」

 

 

華雄:「む。そう言えば・・・」

 

そのすぐ隣では、華雄と霞の武官組が、二人の様子を観察しながら口論していた。

 

 

 

 

恋:「・・・ッ!!」

 

かれこれ四半刻後。痺れを切らせたのか、恋が一刀に向かって跳躍した。空間の歪みが消える。

 

 

一刀:「ようやく来たか・・・覇ッ!」

 

それを見た一刀もまた、前傾姿勢をとって一気に恋に突っ込んだ。

 

そこからは、激しいと言う表現すら生温い、恐るべき戦いが繰り広げられた。

 

霞の時とは比べ物にならないくらいに早い応酬。恋の膂力に対して、一刀は速さで応える。

 

 

恋:「フッ!ハッ!」

 

瞬きする間に二~三回は斬り込んでくる恋と。

 

 

一刀:「疾ッ!勢ッ!」

 

双剣を逆手と順手に絶えず持ち替えながら、攻撃を上回る速度で防御と反撃を同時にこなす一刀。

 

互いの姿が霞むほどまでに二人の攻防は熾烈なものだったが、戦闘が進むにつれてさらにそれは磨きがかかった。

 

 

一刀「神威流双剣術・・・百烈雨突(ひゃくれつうとつ)!」

 

 

恋:「ッ!?させないッ!」

 

ガギガガガガガガガガッッッ!!!

 

双剣を順手に固定した一刀の神速の連続突きを、恋は戟を目の前で高速回転させることで凌ぎ、すぐさま反撃を加える。

 

 

一刀:「双流激刹(そうるげきさつ)ッ!」

 

 

恋:「クッ!?まだ・・・ッ!」

 

ギャリギャリギャリギャリ――――ッッ!!!

 

今度は竜巻のように回転しながら連続斬りを繰り出す一刀に、戟をを前に突き出してひたすら防ぐ。

 

そして、連撃が弱まった隙に反撃し、すぐに距離を置く。

 

 

一刀:「飛刃交叉(ひじんこうさ)!」

 

 

恋:「ッ!?」

 

ブォンッ!!

 

すかさず双剣を斜十字に交叉させて振りおろし、見えない風の刃を飛ばして、離れた恋をさらに攻める。ガリガリと地面をえぐりながら凄まじい速さで飛来する斬撃に、恋は慌ててその場から飛びのいくしかなかった。

 

 

一刀:「激震撃孔(げきしんげきこう)ッ!!」

 

ズドムッ!!

 

 

恋:「なッ!?」

 

ゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!!

 

しかし、すかさず着地点付近に一刀が駆け込み、双剣を勢いよく地面に突き刺すと、その周辺だけ局地的な地震が発生し、振動が恋を襲う。平衡感覚を一瞬失った恋は、足を縺れさせて倒れ掛かり、戟を杖代わりにして無理矢理体勢を立て直し、猫のようにその場から飛びのいた。

 

 

 

 

詠:「凄・・・」

 

 

華雄:「なんと・・・あの恋が一方的に押されているだとッ!?」

 

 

霞:「・・・なんや、あの二人見よったら、『神速の張遼』なんて名乗って天狗になっとった自分が馬鹿に思えてきたわ」

 

時間と共に苛烈さを増す試合に、呆然とするもの。あるいは、今まで自分が築き上げてきた自信を粉砕されて項垂れる者が続出していた。中でも霞と華雄の衝撃度合いは大きく、二人を羨望の眼差しで見つめるとともに、密かにある決意をしていた。

 

 

そんな二人のことなどお構いなく、恋と一刀の打ち合いは続いた。

恋が戟を振るい、一刀がそれを受け流す。

一刀が凄まじい速さで連撃を放ち、恋は体捌きも交えてそれをことごとく躱し、あるいは防いだ。

手に汗握る攻防が続き、一進一退のまま、半刻が経過した。

そこで、恋が全力で戟を振りぬき、避けきれなかった一刀が双剣を交差させてその一撃を受けたことで、戦況は動きを見せた。一際大きな金属音と共に、一刀が練兵場の端まで飛ばされたのである。

 

 

恋:「これで・・・どう・・・?」

 

瓦礫の山と化した練兵場隅に埋もれた一刀を見やりながら、僅かに息を乱しながら、恋は言った。

 

 

一刀:「・・・ふむ。も少し本気でいってもよさそうだな」

 

それに対し、一時は瓦礫の中で生き埋めになりかけたが、すぐに瓦礫を蹴り飛ばし、何もなかったかのように一刀は立ち上がった。

 

 

恋:「嘘・・・。効いて・・ない?」

 

 

一刀:「まさか。ちゃんと効いてはいる。ただ、俺を倒すまでに至っていないだけだよ」

 

そう言うと、一刀は双剣を、ゆっくりと手の中で回転させ始めた。

 

 

一刀:「では恋。今度はこっちから行くよ?」

 

そう言うと一刀は、腰を落として力を溜めこみ、一気に突っ込んだ。

 

 

一刀:「神威流双剣術、回転剣舞(かいてんけんぶ)六連(ろくれん)”」

 

 

恋:「ッ!?」

 

抑揚のない声で技名を呟いた直後、突如目の前から一刀が掻き消えたことに驚愕し、ほぼ同時に彼女の勘が警鐘を発した。それにしたがって戟を立てた途端、凄まじい音と共に双剣を交差させた状態で突進してきていた一刀が現れた。

 

直後、ほとんど一瞬と言っていい間に、一刀の双剣は片側三撃、計六撃を恋に向けて放っていた。

 

この間、僅か0・0002秒。

 

20mはあろうかという距離をこれだけの時間で駆け抜けた上に六回も斬撃を繰り出した一刀も相当なものだが、百キロ以上はあろうかという巨大な戟をそれほど速く振り上げ、六撃すべてを受け止めきった恋の胆力も相当なものである。

 

突進と連撃の衝撃でよろめきながら数歩後ずさった恋だったが、すぐさま反撃を加えようと改めて一刀の方を見ると、すでにそこに彼の姿はなかった。

 

代わりに。

 

 

一刀:「どこを見ている?」

 

 

恋:「ッ!?」

 

突如恋の背後から、感情を一切含まない、背筋が凍るような声が降ってきて、危険を感じた彼女は振り向きざまに戟を背後に振り抜いた。

 

ギィィイインッッ!

 

 

一刀:「甘い」

 

ドガッ!

 

 

恋:「あぐッ!?」

 

戟の一振りによって、一刀の奇襲を辛うじて避けた恋だが、続く第二撃、弾いた勢いを上乗せして繰り出された回し蹴りをまともに腹に喰らい、体をくの字に折り曲げて吹き飛ばされた。

 

 

一刀:「これで終わりだ。呉鉤十字(ごこうじゅうじ)

 

静かにそう宣言した一刀が、再び目にも留まらぬ速さで距離を詰め、恋の上に覆いかぶさり、その首に双剣を交差させた。

 

 

詠:「そ、そこまでッ!」

 

それを見た詠が即座に止めに入った。

 

 

詠:「勝者、魔人 ムゥ !!」

 

声高らかに詠はそう宣言し、二拍ほど遅れてから、聴衆達から先の二人との一騎打ちの時をも凌駕するほどの歓声が沸き起こった。

 

 

 

 

一刀

「いやはや参った。まさかあそこまで力を出すことになろうとは」

 

試合終了後、後片付けを始めた兵達を見つめながら、疲れた声で一刀はそう言った。

 

 

華雄:「そう言うな北郷。お前は恋を、我が軍最強の戦神を破ったのだ。もっと胸を張れ!」

 

そんな一刀の背をバシバシ叩きながら、華雄はそう言った。

 

 

霞:「せやせや。にしても、まさかウチとの戦いの時も本気やなかったとはなぁ~。正直自信無くしてもうたわ・・・」

 

そう言って肩を落とすのは霞である。

 

 

恋:「・・・」

 

そんな二人に挟まれて苦笑しながら話している一刀を、遠巻きに見つめているのは、恋である。

 

彼女は、震えていた。

 

 

恋:「最後の・・・一刀の目・・・怖かった」

 

そう。彼女は一刀に恐怖を覚えていたのである。

 

最後の、首に双剣を宛がった時の一刀の顔には、表情が全くなかった。瞳には一切の感情が宿っておらず、まるで全身に氷水をぶちまけられた様に、彼女の全身から一瞬で血の気が引いた。

 

 

恋:「・・・」

 

恋が見つめる先では、相変わらず一刀は霞と華雄に挟まれて談笑している。その姿は、一見すれば彼女達の下にいる普通の兵士達と何ら変わりない、人間味に溢れたものだ。先のように、氷のように冷え切った表情ではない。

 

知りたい。彼がいったい何者なのか。何故彼が“魔人”などと名乗っているのか。そして、今見ている彼と、さっきの彼と、どちらがほんとうの彼なのかを。

 

 

思わぬ形で延長戦にもつれ込んだ、董卓軍三将軍と魔人と一騎打ちは、今度こそ幕を下ろしたのであった。

 

 

 

 

というわけで、黒の猟兵団編第四話をお届けしました。

 

今回は試験期間中にもかかわらず、思ったより早く仕上がってくれたのでよかったです。

 

さて、ここでお知らせがあります。

 

本作品の序章においてちらっとお話ししたと思いますが、この天魔の章に繋がる作品が、近日中に公開可能となる可能性が高まりました。

 

当分そちらにかかりきることになりそうなので、いったんこちらの作品の執筆を中断させていただきます。

 

何卒ご理解のほど、よろしくお願いします。

 

では、今日はこの辺で ノシ

 

 

 


 
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